第8話 初級から規格外

 曾祖父ひいおじい様が僕に聞いてきた。


『コルクよ。一つ聞くのだが、初級の攻撃魔術にはどんなモノがあるんだ?』


 僕は書物をめくって調べて見た。   


曾祖父ひいおじい様、恐らく素直に読んだ方が分かりやすいと思いますので、普通の読み方をしてお伝えしますね。発動時には違う読み方になりますが」


火【火球かきゅう】 

水【水球すいきゅう

風【風弾ふうだん

土【石礫いしつぶて

光【光弾こうだん

闇【吸精きゅうせい


魔術大全の書に書かれている読み方は、


火【火球ひとだま

水【水球よーよー

風【風弾びーびーだん

土【石礫みずきり

光【光弾まめきゅう

闇【吸精さきゅばす


だったけど······ これは意味が分からないだろうなと思ったので、普通に読んだんだ。水球よーよーって······ 絶対読めないよね。


「初級の攻撃魔術として載っているのはこの六つです」


『では、火から順番にあの的に向かって打ってみなさい』


 そう言われて僕は的を見た。凡そ十五メートル先に何かの金属で出来た直径五十センチ程の円板がついた棒が立っていた。

 僕は魔術を唱える。


火球ひとだま!」


 赤よりも青い色が多い火の球が的に直撃した。そして、的がドロリと溶けた。

 僕が二人を見ると二人とも目が飛び出そうな位に見開いて、大きく口を開けてパクパクしている。


「えっと······ 曾祖父ひいおじい様? 曾祖母ひいおばあ様?」


 僕が声をかけると絞り出すように言う曾祖父ひいおじい様と曾祖母ひいおばあ様。


『何で、初級で溶ける······ 魔鉄にミスリを混ぜた魔術耐性もある合金だぞ······』


『私の最大の火魔術でやっと溶ける位なのに······』


 二人は呆然としてそう言った後に僕を見て、曾祖父ひいおじい様が少しの間、研究を止めてくれと言ってきた。


『コルクよ。伝手つてを使って、もっとちゃんとした的を用意するから、その用意が出来るまで魔術の研究を控えてくれるか? 二~三日だけ待ってくれ』


 僕はこの書物を熟読じゅくどくしたいと思っていたので、それを了承した。むしろ二~三日といわず、一週間位の時間が欲しかったので曾祖父ひいおじい様にそう言ってみた。


『何、一週間もくれるのか? ならばアイツの所にまで行って来れるな······ よし、コルクよ。一週間後にまたここで会おう』


 そう言うと曾祖父ひいおじい様は見えなくなった。僕は少し不思議だった。霊体になった曾祖父ひいおじい様に伝手つてってどんなのがあるんだろう? と。そんな僕の考えが分かったのかまだいた曾祖母ひいおばあ様が僕に教えてくれた。


『コルク、私達は霊体になっているけど、その存在を感じ取り親しくしてくれている昔からの知り合いがまだ生きているの。その人に頼みにサラシは出掛けたのよ』


「そうなんですね。僕の為に有り難うございます。曾祖父ひいおじい様にも伝えてもらえますか?」


『勿論、伝えるわ。それじゃあ、私も行って来るわね。コルク、一週間後に会いましょう』


 そして、曾祖母ひいおばあ様も居なくなったので、僕は書を持って部屋に帰った。ちょうどお昼時だったので、部屋にご飯を持ってきてもらい、行儀ぎょうぎは悪いが書を読みながら食べさせてもらった。内心では、一週間でも全部は読めないかもと不安だったので······ 


 しかし、読めば読むほど面白かった。これは日本という国を知らないとダメだろうなと思う。魔術はイメージが大切だから、言葉からそれをイメージ出来ないと発現出来ない。例え発現したとしても、明確なイメージがあるのと無いのでは、その威力は桁違いになる。僕はそれを知っている記憶があるから凄い威力になってるんだろうけど、この世界の人が例えこの書を読めたとしても、魔術の威力は出ないだろうなぁと思いながら、書を読み進めていったのだった。

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