第5話 書物は日本語


 さてと僕の家族も紹介したし(誰に?)、そろそろ僕は部屋に戻って【魔術大全の書】を読みたいと思った。

 けど、父上に待ったをかけられました······


「さてと、コルクよ。ばあ様から与えられた書物についてだが·····」


 父上がそこまで言った時に母上が、


「あら~、それはコルくんのモノなんだから、いくら父親だとしても取り上げるなんてダメよ~、ヴァン」


 ナイスです。母上。本当に僕は成人したら母上と結婚したいです。こんな素敵な人が僕の母上だなんて僕は幸せです。


「ん、いや、取り上げるんじゃなくてだな。危ないからコルクが十才になるまで預かろうと思っていたんだが······」


「それもダメだわ~。おばあ様はコルくんを信用して渡したのだから、私達親もコルくんを信用してあげないと~」


 もう、母上を一人の女性として見てしまいます。ダメだ、この人以上に素敵な女性を探さないと僕はダメになってしまう······

 そんな感じで母上を惚れ直していると父上が反省したようだ。


「んん、そうだな。親が我が子を信用しないとな。分かった、コルク。お前の好きな様に研究しなさい。但し、ばあ様との約束だから、成人するまでは魔力を込めた研究は無しだぞ」


「はい、父上。僕は成人するまでは魔力を込めた研究は絶対にしません」


 僕はちゃんとそう誓ったんだ。何故か早々に破ってしまうんだけど······


 それから僕は部屋に戻って机の上の【魔術大全の書】を開いた。一ページ目から読めないと思ってたけど······

 【日本語】だ、コレ。読めるよ、僕。

 そこには平仮名、漢字が混ざった文章が書かれてある。内容はこうだ。


【この書物を読める者にここに魔術の真髄を記す

ここに記すのは古の魔術にして強力無比なる魔術である 心して読むように また、この書物に記した魔術は悪用出来ない事をここに記しておく 何故ならば······ 】


 ウオーッ! って思っちゃった。読めるんだもん。前世の記憶のお陰でスラスラと読めてしまうんだけど······ これならもしかしなくても魔力を込めた研究をしても大丈夫じゃないかな? そう考えた僕はそっと呼び掛けてみたんだ。


曾祖父ひいおじい様、曾祖母ひいおばあ様、近くで見てくれていますか?」


 僕がそう呼び掛けると二人の霊体が僕の部屋に現れた。


『コルク、聡い子だな。どうして私達が見ていると思った?』


 曾祖父ひいおじい様にそう聞かれたので、僕は正直に答えた。


「いくら誓いを立てたとはいえ、六才の僕が危なげなのはわかりますから。必ず見守って下さっていると思いました」

 

 僕の返事を聞いた曾祖母ひいおばあ様は少し考えてから言った。


『間違っていたらごめんね。コルクは渡り人じゃないかしら?』


 渡り人? が何かはわからないが僕は曾祖父ひいおじい様と曾祖母ひいおばあ様なら馬鹿にせずに聞いてくれそうだと思い、前世の記憶らしいものがあると正直に話した。


『やっぱりそうなのね。安心して聞きなさい。コルクの様な人は今までにも何人か居たのよ。私達はその人達を【わたびと】と呼んでいるの。前世のこの世界じゃない世界の記憶を持って産まれた人は貴方だけじゃないからそこまで心配しなくても大丈夫よ』


 曾祖母ひいおばあ様は優しくそう教えてくれた。僕は今まで不安だった気持ちが落ち着くのを感じた。


『それで、私達に呼び掛けてくれたのは何でなの?』


 曾祖母ひいおばあ様に聞かれたので僕は言った。


「実はこの書物の文字が読めるんです。前世の記憶にある日本という国の文字なんです」


 僕がそう言うと曾祖父ひいおじい様と曾祖母ひいおばあ様が驚いた。


『な、! 本当かい、コルク?』


『まあ、それは凄いわ!』


 そこで、僕は曾祖父ひいおじい様に言った。


「魔力を込めた研究はしないと言ったのですが、読める事を実証するために、この二ページ目に書かれている水魔術をやってみても良いでしょうか?」


 僕の問い掛けに二人の返事は······



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