第3話 曽祖父と曾祖母

曾祖父ひいおじい様、曾祖母ひいおばあ様、初めまして。僕はコルク·カインズです。六才になりました」


 僕がそうご挨拶すると二人は目を細めて嬉しそうに僕を見ていた。そして、曾祖母ひいおばあ様が大きな声でこう言った。


『まあ、何てしっかりした子なの。本当にマルコの孫なの?』


「母上!」


 即座に抗議の声を上げる祖父おじい様。僕も流石にその言葉はどうかと思ったので、曾祖母ひいおばあ様に一言お返しした。


曾祖母ひいおばあ様、祖父おじい様はとても立派な方です、ご自分で育てられた子供を否定するのは良くないですよ」


 僕の反論にビックリした顔をする曾祖母ひいおばあ様。それを見た曾祖父ひいおじい様が笑いだした。


『ハッハッハッ、これは一本取られたな。マーヤ、君の悪いクセをひ孫が指摘してくれたよ』


『あら、サラシ。私は悪いとは思ってないわよ。コルク、この言い合いはマルコが子供の頃からしている事なの。言ってみれば気心が知れているからこそ、言える冗談なのよ。でも、ご免なさいね。その事を知らない貴方からすれば不快に思ったわね』


 曾祖母ひいおばあ様も立派な人だった。小さな子供である僕に対して、自分が悪いと思ったらちゃんと謝れるって凄い事だと思う。


「いえ、僕こそご免なさい。知らなかったとはいえ、酷いことを曾祖母ひいおばあ様に言ってしまいました」


『もう、本当にウチの家系の子なの? 今までこんなしっかりした子は居なかったわよ』


 曾祖母ひいおばあ様はそう言って僕を褒めて下さったんだ。そして、僕に聞いてきた。


『それで、私の可愛いひ孫はこんな場所にどんな用事があったのかしら?』


 僕は勇気を出して言ってみた。


「僕はいにしえの【魔術大全の書】を見て研究したいんです!!」

 

 良し、噛まずに言えた。僕が真剣に言ってるのを感じてくれたのか曾祖母ひいおばあ様は少し考えてから僕に言った。


『う~ん······ アレはサラシが死ぬ原因になった書物だから······ でもサラシの場合は魔力を込めて試してたからだし······ 魔力を込めなければ発動しないから大丈夫だけど······ 研究するなら魔力を込めないと分からない事もあるだろうし······ う~ん······ コルク、一つ私と約束出来るかしら? 成人するまでは書物を見る(読むため)だけの研究にするって。魔力を込めて実験をしないって』


 僕は曾祖母ひいおばあ様、曾祖父ひいおじい様、祖父おじい様の顔を順番に見る。三人とも僕をジッと見ていた。


「はい、曾祖母ひいおばあ様。コルク·カインズは成人するまで書物を読む為の研究だけを行い、決して魔力を込めない事をここに誓います!」


 僕はそう宣言したんだ。その宣言を聞いた曾祖母ひいおばあ様は頷いてから一冊のとても分厚い書物を魔術で僕の目の前に出してくれた。僕はそれをしっかりと両手で受け取った。そしたら曾祖父ひいおじい様が一つ教えてくれた。


『私は中に書かれている文字は何一つ読めなかったんだが、ヤケになって適当に言ったらまぐれ当たりしてな。それが【テンイ】の魔術だったらしくて、行き先なんか決めてなかったから空間に閉じ込められてしまったんだ。その時に言った言葉は覚えてないけど、【いそうころば····】とか言った様に思う。魔力を込めていたからそんな事になってしまったから、コルクは本当に気をつけるんだよ』


 そう教えてくれた曾祖父ひいおじい様と曾祖母ひいおばあ様に別れを告げて僕と祖父おじい様は地下室から出てきた。


 祖父おじい様は有り難う、怖がらずに私の父上と母上を受け入れてくれてとお礼を言ってもらった。僕はまた会いに行っても良いかと聞いたら、是非行ってやってくれと言われたので、二人の大魔術師に魔術を教えて貰えるかもとワクワクしたのを今でも覚えている。

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