第2話 六才の誕生日

 六才の誕生日に僕は祖父おじい様にお願いして地下室に連れて行って貰ったんだ。

 祖父おじい様は乗り気じゃ無かったけど、僕はどうしても見てみたいと孫の可愛さを利用してオネダリした。祖父おじい様はしょうがないなぁと言いながらも僕と手を繋いで連れて行ってくれた。

 あっ、祖父おじい様は前世と違ってとても若いんだ。年齢は四十八才で、前世だったら父親でもおかしくない位なんだよ。この世界は結婚が早くて、祖父おじい様が祖母おばあ様と結婚したのは二人とも十七才の時だって。十九才で父上が産まれたって言ってた。まあ、その話は今は関係ないか。

 

 地下室には色んなモノが並べられていた。武器や防具、書物も勿論なんだけど、入口の近くにはワインや蒸留酒が並べられていた。ワインは祖父おじい様が、蒸留酒は父上が集めているモノだそうだ。お客様用? 違う違う。全てが自分達で飲む為のモノだって。でもワインだけでも二百本位あるんだけど······

 そこまで見て祖父おじい様が、さあ戻ろうって言ったけど肝心なモノを見てない僕は更に奥に入っていったんだ。祖父おじい様がその奥は危険だって言って止めようとした手をすり抜けてね。


 そして地下室の奥に扉を見つけた僕は祖父おじい様が大声で止めているのにも関わらず、扉を開けてしまったんだ。その瞬間だった。その部屋から二人の幽霊? が出てきて僕を見つめていたんだ。

 二人はとても若くて、男性は祖父おじい様と目元がそっくりだった。女性は顔の輪郭りんかくとすっきりとした鼻筋が祖父おじい様に似ていた。

 そうして僕を暫く見つめていた二人は、今度は僕の少し後ろに立っていた祖父おじい様を見て言ったんだ。


『『マルコか? 二年ぶりだな、会いに来るのは。我が息子ながら老けたなぁ······』』


 その言葉で僕は気がついた。曾祖父ひいおじい様と曾祖母ひいおばあ様なんだって。


 祖父おじい様は二人から突然そう声を掛けられてガックリとしていた。そして、


「父上、母上、久しぶりに見た息子に大層なお言葉ですね。お二人が若いのは霊体だからでしょうに······」


『ハッハッハッ、気が短い所はマーヤに似たな』


『あら、貴方に似たんですよ、サラシ』


 僕は呆気にとられてそのやり取りを見ていたけど、不意に曾祖母ひいおばあ様が僕を見て言った。


『貴方がコルクね。私の曾孫ひまごなのね。そんなに不思議そうな顔をしないの。私達はこの場所に縛られている訳じゃないから、この家の中での事は知っているのよ。普段は見えない様にこの家の中をウロウロしてるのよ。私達二人はカインズ家の秘術で霊体としてここにある【魔術大全の書】を護っているのよ。マルコから聞いて無かった?』


 僕は首を横に振ってから祖父おじい様を見た。祖父おじい様はバツの悪そうな顔をして僕に言い訳した。


「その~なんだ、コルク。コルクが私の父上と母上を見たら怖がるだろうと思ってな······ お二人を見たお前の兄であるボトルは地下室に入れなくなった位だから、コルクもそうなるんじゃないかと心配したんだよ」


 祖父おじい様はそう言って僕の頭を撫でてくれた。僕は祖父おじい様の気遣いが嬉しかったので有り難うとお礼を言ってから、曾祖父ひいおじい様と曾祖母ひいおばあ様の方を向いてご挨拶したんだ。

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