異世界の魔術文字が漢字だったので······

しょうわな人

第1話 初めまして

 僕の名前はコルク·カインズ。カインズ公爵家の次男に産まれた。現在七才で、乳母のマアヤと一緒に庭を散歩している所だ。


 僕には他の人と少し違う所がある。僕には前世という記憶があって、そこでは五十七才まで生きていたらしい。らしいって言うのはその記憶が本当の事なのか判断できないからだ。

 それでも鮮明に五十七年生きた記憶とその前世で得た知識がハッキリとしているので、僕はそれを本当の事なんだろうと思っている。けれどその事は誰にも言ってない。信じて貰えないかも知れないし、信じて貰えてもそれが何か? と言われたらそれまでだからだ。

 僕はその記憶を誰にも話さないと決めたので、カインズ公爵家でこれからの人生に役立つ記憶があれば、ひそかに役立てて行こうと思っている。


 僕が産まれたカインズ公爵家は魔術の大家たいかでもある。この世界の魔術は、先程の前世の知識で言うとカタカナに似た文字で言語が表される。

 例えば火の初歩攻撃魔術である【ファイア】なんかがそうだ。いにしえの時代にあった魔術文字は現在と違っていて、更にその威力も桁違いに強力な魔術だったそうだが、誰も読めなくなってしまいすたれてしまったそうだ。何で誰も読めなくなったんだろう? 僕はそこが不思議だったんだけど、誰も理由は分からないそうだ。王様のお城の研究者の人が解読しようと頑張ってるらしいけどね。

 けれどまだ、僕の曾祖父ひいおじい様以外は誰も成功してないらしい。そうは言っても曾祖父ひいおじい様も成功はしたらしいけど、曾祖母ひいおばあ様と当時七才だった祖父おじい様の目の前から消えてしまってそれ以来姿を見せる事はなかったそうだ。祖父おじい様から聞いた話だ。

 消えた曾祖父ひいおじい様が帰ってこないのを嘆き悲しんだ曾祖母ひいおばあ様は、カインズ公爵家にあったいにしえの【魔術大全の書】を、当時曾祖父ひいおじい様に次いで大魔術師と呼ばれていた曾祖母ひいおばあ様の持てる力を全て使って封印してしまったそうだ。

 今でもカインズ公爵家の地下室に【魔術大全の書】が封印された状態であるらしい。

 これは兄上に教えてもらった話だ。僕はいつかその書を見てみたいなぁと漠然と思っていた。ただ、いくら前世の記憶があっても僕は大魔術師だった曾祖母ひいおばあ様の封印を解除したりは出来ないから、無理だろうなぁと諦めていたんだ。


 そう、六才までは本当にそう思っていたんだよ。

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