Aの章
灰色の街にて
あたしとレイが出会ったのは、ホントに偶然だった。運が良かったという意味では、『運命』だと思う。そんな言葉でまとめたくないけど。
あの日、あたしは上司の指揮官とともに、中立地域の貧困街へ向かっていた。
中立地域はたいていどこも貧困に苦しんでいるんだけど、貧困街は特に酷い。…いつも思うけれど、もうここは街ではなく、ゴミ山だと思う。
街全体は泥か排泄物か分からないもので、覆われていて、建物自体もあちこち崩れている。廃墟というより、瓦礫の山のような有り様で、その瓦礫の隙間にウジ虫の涌いた腐った死体が落ちていたりする。
また、通りにそういった死体が少ないのは、野犬や子どもたちが持っていくからだ。彼らはそれを燃料や食糧にしている。
…ここでは、死体すら貴重な素材なのだ。
『地獄』という単語を聞いたとき、あたしはいつもこの街の光景を思い出す。戦場で敵の攻撃に怯えるのとは、異なる絶望がここにはあった。
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