第3話曾祖父

 話の原点でもある曾祖父の話をしよう。彼は中学の時、親の不在時にたまたま帆船のセールスマンがきたらしい。彼は帆船が気に入り購入の契約をした。


 当然ながら親に怒られたのだが、彼は「それなら自分で稼ぐ」と言い商売を始めた。うちの父親はすでに死去したが、運や神や霊的なものを信じない人だったが曾祖父に関しては運というものが存在するとしか思えないと言っていた。


 やることなす事全てが当たり、尋常ではない莫大な資産を築いた。人付き合いが苦手な父親であったが、たまに話が弾むとよく〇〇さんの話をしていた。最初は誰の事だろうかと思っていたら、その当時の総理大臣が祖父とは馴染みだったらしい。


 〇〇さんは曾祖父の家を気に入り、同じような家を建てようとしたが資源が非常に貴重なため日本全国から探したようだが見つからなく断念したらしい。祖父の時代に車のセールスマンがきて車を購入したが、誰も免許を持ってなくその上車自体が我が一族しか所有してなかったため全員無免許運転で捕まった全科があると言っていた。


 私の父親も思い返せば免許が無いのに車を購入した。数年運転手を雇っていたが自分で運転したいらしく免許をとったが、すこぶる下手な運転であったため、高速道路でパトカーにもう少しスピードを出してくださいと言われたほどで、これ以上は無理だと言うと後部にパトカーが安全のため高速道路を降りるまでつけてくれたと言っていた。


 曾祖父の最後の言葉は”マッカーサーの文句”を言って死んだらしいが、財閥解体後も現実離れした遺産は残っていた。銀行が出来ればまず最初に挨拶にきていたとか、現金だけでも一兆円ほどはあったらしい。父親以外もそれをよく話していたのでそうなのだろう。


 ある時、祖父が議員に立って欲しいと頼まれて立候補することになった。ライバルの立候補者がうちは警察に賄賂を贈っていると密告した。実際、車の免許が無いにも関わらず、他に誰も車を持っていないので何度も捕まるうちに警告だけになっていたようだ。それのせいもあってか度々、高級洋酒を警察に渡していたらしく関係者を含めた六十名ほどが警察署に呼び出され、調書を取ろうと部屋に呼ばれた。話も全く進む前に、その部屋に警察署のトップらが挨拶に来て「〇〇さんはお元気ですか?」と聞いてきたら、その場ですぐ無罪放免になったと言っていた。


 今ではない話ではあるが当時はそういう世界であった。親族には天皇陛下の誕生日などにも呼ばれていたらしく、都道府県の発展率や人口密度によって人数が決められていたらしい。当時、迎えに来る乗り物を聞かれるらしく、自動車か四頭立て馬車だったらしく皆、馬車に乗る機会はその当時は少なかったため皆馬車を選んだと言っていた。


 私がここに何故記載しているか、まだそれを書くには早いのかもしれないが、これを読んでくれた人に言いたいことは、明日に何かがあるとは言わないが、人生の折り返し地点までまだ何年もあるにも関わらずあらゆる事が起こる可能性があると言いたい。日々の積み重ねの結果、必ず良い結果が出ると決まってもいないし、何が起こるか分からないことを知ってほしいからだ。


 たかだか五十年もたたないうちに今の金額に変換すると現金だけで一兆円あり、使い道がないため、趣味の囲碁をやって気に入った人には家を買ってあげてたらしく、しかも何十人にも買ってあげてたと父親は言っていた。その当時、庭付き一軒家が二千円だったらしく、現金だけで一億円は家にあったと言っていた。きれいさっぱり消えてはいないが多くは無くなった。


 私は幸も不幸も多く見すぎた。見て体験し、そこから得たものは私にとっては非情に大切なものだ。そうでなければ今の私は無かっただろう。

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