第3回(SFバトルアクション小説)

「……バトル……バトル……バトルぅぅ」

「どうしたの、ミクニちゃん。卓上端末インターフェースの前でコワい顔しちゃって」

「カスガさん。バトル物ってやっぱり難しいですね」

「今回はバトル物を書く練習をしてるの?」

「はい。歴史物やファンタジー物の練習も大事ですけど、わたしの脚本家としての本分はやっぱりSFバトルアクションなので」

「そもそもの発端からして、アイドルが魔物と戦う話だもんね……。でも、それなら今さら練習なんかしなくても、ミクニちゃん書けるんじゃないの?」

「ぜんぜんですよ。これまでのは、雰囲気でごまかしてるだけ。ちゃんと正面から戦闘描写に向き合ったことがなかったんです。だから練習しなきゃと思ってるんですけど、思った以上にハードルが高くて……。だって、わたし、銃なんて撃ったこともないし、格闘だってしたことないですもん」

「それを言っちゃったら、お酒だって飲んだことないし、お人形さんの着せ替えだってしたことないじゃない?」

「まあ、そうなんですけどね。未体験の世界を、いかに想像力だけで描写できるか。創作者に必要なのは結局そこの部分ですよね」

「それで、今回もまた昔の電網書籍ブックを参考に特訓してるの?」

「そうなんです。21世紀のSFアクションの傑作、****さんの『********』……アクションの勉強するならこれしかないって、AIに勧められて」

「なんか、ミクニちゃん、21世紀好きだよね」

「コンピュータやインターネットが普及して、自由な創作が社会全体で活発化した時代ですからね。名作が多いんですよ」

「今回はどんなお話なの?」

「サイボーグって言って、生身の身体に機械を埋め込んだ人達が戦うスタイリッシュ・アクションです。昔の人は面白いこと考えますよね。まずは説明抜きで原文を見てみてください。カッコイイですよ」



 ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆



(原作引用部分 省略)



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「……すごい、確かにカッコイイね。銃弾を一瞬で弾き返すところとか」

「人間を超えた力を持つサイボーグの戦いぶりが、巧みな筆致で迫ってきますよね。激しい銃撃と格闘の光景が目に浮かびますよ。文章だけなのに絵コンテを見てるみたいです」

「ミクニちゃんの書き換えたバージョンは?」

「この原文を読んでもらった後にお見せするのは恥ずかしいですけど、こんな感じです」



 ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆



(リライト部分 省略)



 ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆



「……なにこれ。例によってほとんど別物じゃない」

「わたしもちょっと反省してます。前にも言いましたけど、わたしが書くと、どうしても状況説明が長くなっちゃうんですよ。原文みたいな疾走感のある文章を書けるようになるのが今後の課題ですね」

「元の文では主人公が『ぼく』って言ってるのに、ミクニちゃんの文は『**』って名前で呼んでるね」

「一番のカベはそこでした。原文は主人公の主観ですらすらと話が進んでいくんですけど、わたし、サイボーグの男の子になりきるなんてできないですもん……」

「原作者さんだって別にサイボーグではないでしょ?」

「わかりませんよ? ……それにしても、やっぱりバトルって難しいなあ」

「わたしには、ちゃんと戦いの流れもリライトできてるように見えるけど」

「リライトだけならね。言うなら、既にある映像を見て文字に起こしてるだけです、わたしのは。でも原作者さんはイチからこの戦いの動きを考えて、頭の中でコンテ切ってるわけじゃないですか。わたしにはできませんよ、とても」

「そこは文章力以前の経験の問題なのかもね」

「バトルの経験ってどこで積んだらいいんですか……。ともあれ、カスガさんも読んでみてください、『********』。全編にわたってケレン味の利いた文章で、ほんとにカッコイイですから」

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