6th stage:光呼ぶ歌声
光の差さない避難所に阿鼻叫喚の声が
「ルヴォリュード……。俺が、必ず……!」
自分が行くしかない。かつてルヴォリュードと融合して戦った自分なら、彼を目覚めさせることができるかもしれない。
「流星君!」
突如、
彼女に隠れて出ていくことなど出来ないと、何故か流星には分かっていた。
今こそ、彼女に真実を明かす時なのだということも。
「杏奈ちゃん。俺……ずっと君に黙ってたことがあるんだ」
「え?」
「一年前の戦いで、俺、あの巨人と……」
彼がそこまで言ったところで、杏奈は、その口元をふっと柔らかく
「待ってたよ。いつか自分で言ってくれるのを」
「え……?」
「待ってた、っていうと、ちょっと違うかな。でも、そうだったらいいなって思ってた。あの巨人の光の暖かさと……あなたの手の温もりは、同じだったから」
杏奈は流星の腕を掴んでいた手を放し、彼の手のひらをそっと握り直してきた。
どくん、と心臓が強く脈打つのを感じる。幾度となく握り合ったその手を通じて、杏奈の心臓の鼓動までも伝わってくるようだった。
「杏奈ちゃん……」
絶対に負けられないと流星は思った。杏奈を――いや、彼女と自分が肩を寄せ合って生きる、この美しい世界を守るために。
ルヴォリュードを蘇らせることが本当に出来るかは分からない。自分が融合することで本当にあの怪獣に勝てるのかも分からない。だが、それでも。
「光を信じて……俺は戦う!」
流星が杏奈の手を強く握り返した、その時。
先程まで横倒しのカメラが街の地獄絵図を映しているだけだった、街頭の巨大スクリーンから、何かの歌が流れてくるのが聴こえた。
「あれは……?」
流星は杏奈と揃って大画面に目を向ける。
誰かが歌っている。ボロボロの衣装を
その様子から不思議と目が離せず、流星はしばらく画面に意識を釘付けにされていた。だが、画面の中の彼女の歌がサビに差し掛かる寸前、暴れる巨大怪獣が引き起こす一際大きな揺れが街を襲い、流星と杏奈はたちまちアスファルトの地面に身体を叩き付けられた。
「ッ! 杏奈ちゃん!」
自分の身体の痛みもよそに、流星は杏奈に目を向けた。彼女は腕を押さえて上体を起こしながら、スクリーンに映る誰かを見上げ続けていた。
周囲の人達が悪態をつくのが聞こえる。何のつもりだ、と。こんな時に歌なんて、と。
画面に映る女の子は、それでも歌い続けていた。この世界にまだ希望が残されていることを、皆に訴えかけるように。
「……」
一足早く立ち上がった杏奈が、流星に手を伸ばしてきた。本当にどっちが彼氏だか分からないなと思いながら、流星が彼女の手を取って立ち上がると――
「流星君。わたし、今だけあなたの彼女をお休みするね」
「へっ?」
杏奈は出し抜けにそんなことを言って、そっと優しく彼の手を放してきた。
「アイドルは、恋愛しちゃいけないから」
「杏奈ちゃん、何を――」
杏奈はちらりと大画面を見上げると、顔を隠していたキャップとサングラスを取り去り、ふっと笑顔を見せた。
現役の頃と変わらない金髪のショートヘアが、濁った街の風の中で煌めきを放っている。
流星は悟った。杏奈も戦おうとしているのだ。彼女の戦場で。
「戦いが終わったら、またデートしよっ」
そう言い残して彼の前から駆け出していく、その華奢な後ろ姿を見て――
「……ああ。次はちゃんと、俺から
流星はぐっと拳を握り締め、自分の戦場を目掛けて走り出した。
◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆
わたしは歌う。この日のために練習を重ねてきた一曲を。レイの、アヤの、リオの、みんなの思いが詰まった、大切な一曲を。闇に覆われた空に、きんいろのパンチを繰り出すように。
だけど――
「何なんだ、あの子」
「おかしくなったのか?」
「どうしようもねえよ。こんな時に歌なんか聴かされたって」
耳に入ってくる周りの人達の声は、冷たかった。
それでも。この中継が届く先には、きっと、わたしの歌を元気に変えてくれる人がいるはず。
そう信じて、わたしは歌い続ける。たった一人でも二人でもいい。この歌で誰かを勇気付けられるなら、わたしは――。
「――っ!」
突然、一際大きな揺れがわたしを襲った。そのまま地面に叩き付けられたわたしの耳に、がしゃっと音を立ててカメラが倒れる音と、周りの人達の悲鳴が飛び込んでくる。
危ない、と誰かが叫んだ。わたしが咄嗟に顔を上げると、傍のビルの壁面が崩落して、わたしたちのすぐ近くに瓦礫が落ちてくるところだった。
「きゃっ……!」
重たいカメラと痛む足を引きずって、わたしはそのビルから離れる。周りの人たちが、きっと親切心なんだろう、そんなカメラは捨てて逃げろと険しい声を掛けてくる。
わたしはふるふると首を振った。一度倒れたくらいで諦めたくない。いや、何度地面に倒れ伏したって、わたしはわたしの光を走りきってやるんだ。
「みんな……聴いて。わたしの歌を聴いて!」
わたしは必死にカメラを引き起こし、もう一度歌い始める。視界の彼方には、石像と化して倒れたままの巨人と、その近くで怪獣と戦い続けるヘリと宇宙船。あの子も――アイちゃんもまだ諦めず戦っているんだ。わたしが先に音を上げるわけにはいかない。
『地球人類よ。無駄な抵抗は諦めるがいい!』
暗雲の中から、あの侵略宇宙人の声が不気味に響き渡った。その凶悪な笑い声と混ざり合うように、怪獣を中心に広がる闇の渦の中から、無数の女性の嘆きの声のようなものが聴こえてくる。聴覚ではなく意識に影を落としてくるような、ぞくりとした寒気に満ちたその声。
先程の怪人が言っていた言葉がわたしの脳裏に蘇る。あの宇宙人は人の絶望を利用しているんだ。闇の中から伸びるのは、夢破れたこの星の歌姫たちが生み出した闇への手招き。人の心から希望を奪い、絶望に
周りの人たちが次々にその闇の恐怖に飲まれ、狂ったような悲鳴を上げて逃げ惑っていた。もう、わたしを止めようとしてくれる人さえいない。誰もがその顔に恐怖の色を貼り付け、ある人は逃げ、ある人は力なく地面に膝をつき、ある人は顔を覆って嘆きの声を上げている。
『散れぇぇ!』
刹那、宇宙人の声とともに、怪獣の吐き出す熱線がシャインレンジャーのヘリを撃ち抜いた。空中で機体が爆発四散する、その衝撃の光景に続いて、また大地を揺るがす巨大な揺れがわたしの身体を地面に引き倒す。
『ハッハッハッハ! 目障りなハエめ、次は貴様だ!』
わたしは怪獣との戦いから思わず目を背けていた。あのアイという子の乗る宇宙船が、次の一秒でどんな目に遭うのか、見届けることをわたしの本能は放棄していた。
「できないの……?」
わたしはうつ伏せに倒れたまま、拳を地面に叩き付けていた。涙に
「わたし一人の力じゃ……何も……!」
希望を塗り潰すような侵略者の
「ひとりじゃないよ」
頭上から、懐かしい声が聴こえた。
「え……?」
わたしは恐る恐る顔を上げ、そして見る。
紫色のステージ衣装を身に纏った、戦友の姿を。
「レイ……!」
かけがえのない仲間の一人。今はレニーと呼ばれるレイが、そっと私の前にしゃがみ込み、その手を差し伸べてくれていた。
「もっと笑って、カナ」
そう言って、くしゃっと歪むレイの笑顔は――
どんなスターになっても変わらない、一緒に夢を追っていた頃と同じ
そして――
「そうだよ。諦めちゃダメ」
もう一人の誰かの声が、
わたしがレイの手を握って身体を起こし、振り向いたその先には。
「どんな絶望の中でも……諦めなければ、必ず光は差すから」
色白の肌に、金髪のショート。見る者全ての目を惹き付ける絶対的な可憐さに満ちた、誰もが知る国民的アイドル。
「杏奈先輩!?」
驚いた声を上げるレイと、息もできず目を見張るわたしに、ふっと笑いかけて――
「涙拭いて。前を見て。――行くよ!」
ULT78の伝説のセンターは、わたしたちを導くように歌い始めた。
◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆
「うおおぉぉ、レニーだ!」
「
闇に閉ざされた秋葉原の街は、今や突然の狂乱に沸いていた。街頭の大画面に、店先のテレビに、人々の手にする携帯端末に――突如、伝説のアイドルが現れて歌い始めたのである。
高校を中退してアイドルの追っかけに専念していたこの少年も、思わぬ出来事に興奮を抑えきれずにいた。今の今まで恐怖に震え上がっていた心に、一転、希望の炎が灯されたかのようだった。
「お、おい、見ろよコレ」
「サクラ! 優姫サクラだ!」
「何で今頃!?」
近くのオタク達がパッド型端末を指差して歓声を上げている。彼も覗き込んだその画面の中では、可愛らしい衣装に身を包んだバーチャルアイドルが、身体をくねらせ、上目遣いの笑みをこちらに向けてきていた。
『みんな、見てる? 杏奈ちゃんやレニーちゃん達が今、日本中の人を勇気付けようと戦ってるわ。みんなの力をあの子達に貸してあげて。私からの、オ・ネ・ガ・イ♪』
「すげぇ、本当に優姫サクラだ」
「消えたんじゃなかったのかよ」
「でも、なんかオカマっぽくねえか?」
やたらオネエ的な仕草でぶりっこを振り撒いてくる、そのバーチャルアイドルから目を離し、彼が大画面に映る生身のアイドル達に再び視線を戻したとき――
「この星の皆さんっ!」
いきなり空から声が響いたかと思うと、SFアニメに出てくる宇宙船のようなものが、白い煙を上げながら人々の頭上に向かって飛んできた。
そして、開いたハッチから身を乗り出してきた銀髪の少女が、人々に向かって空から何かをバラ撒いてくる。
「皆さんの力を貸してくださいっ! 今こそ、一緒にロックしましょう!」
周りの人達が次々とその物体を受け止める中、彼もまたそれを手にした。片手にしっくりと収まる、よく見慣れた筒状のそれは――。
「サイリウム……?」
「お願い、皆さんの光を! 希望の光を、あの巨人に!」
それだけ言い残して、銀髪の少女は再びハッチを閉め、そのまま宇宙船で飛び去っていく。また別の場所でもサイリウムをバラ撒くのだろうと、容易に想像がついた。
「どうする?」
「どうするって、やるしかねえだろ」
「俺達の光で、巨人を蘇らせるんだ」
周りの人達の手元に、次々と色とりどりの光が灯ってゆく。
大画面に映るアイドル達の笑顔を見上げ、彼もサイリウムのスイッチを入れた――
◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆
――ゴォォォォッ!
伝説の猛虎、オーバンサーの力強い拳の一撃が、並み居る
その力量に見とれている場合ではない。あたしは青い
「食らえ!」
正確無比のコントロールで撃ち出すビームが、ぐるりと円を描いて敵の四肢を背後から捕縛した。ぐがっ、と唸ってあたしを振り返るそれを、もう、かつて憧れた先輩だなんて思っちゃいけない。
ディスポロイド何号だか、ドラゴン何たらだか知らないが――
いい加減、年貢の納め時なんだよ、テメエは!
「やっちまえ!」
あたしは敵を縛るビームを固定したまま、真紅の戦士達に呼び掛けた。
「ハアァッ!」
水晶の赤を纏った竜の英雄が、鋭く大地を蹴って宙へと跳び上がり――
「
『Yes, sir!』
真紅の水晶を
時を同じくして、灼熱の赤を纏った鋼鉄の拳帝が、大きく右腕を振りかぶり――
「ロケット・フィストォォッ!!」
ぎゅんぎゅんと唸る機械の腕が、噴射の勢いを乗せて敵目掛け撃ち出される。
「
鋭く敵を
二つの
◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆
流星は
瓦礫の街に溢れるのは、アイドル達が紡ぐ希望の歌。それをかき消さんばかりの勢いで、闇の中から醜悪な宇宙人の声が天地に響き渡る。
『地球人類め、何をしようと無駄だ!』
暗雲から広がる闇のオーラが、巨大な怪獣と融合していく。流星がその光景に目を見張った瞬間、怪獣は天を
『ハハハハハッ! 我ガ真ノ姿ニ恐レ
侵略宇宙人と融合を果たした怪獣は、その醜悪な身体を元の姿の幾倍にも膨れ上がらせていた。
炎を上げる高層ビル群を遥かに見下ろす巨体と化した超巨大怪獣が、石化した巨人をさらに踏みつけ、闇の炎を浴びせかける。人々の目に絶望の光景を刻みつけ、その心から最後の希望を奪い去るように。
だが、流星は――
「この星の光は、決して敗れたりしない!」
どこまでも希望を信じ、目を上げて走り続けた。
視界の先には無数の光が広がっている。歌姫達の呼び掛けに応え、人々が掲げる希望の光が。赤の、黄色の、紫の、桃色の、緑の――虹色の光の海が。
四方八方から掲げられる全ての光は、色とりどりの軌跡を描いて天を駆け、巨人の身体へ集まっていく。無数の光が
「!」
突如、流星の視界の端で巨大な火柱が上がった。そして、一条の青い閃光が天上に伸び、暗雲の渦を引き裂くように光の文字を描く。「
『流星君、今っ!』
大画面に映る杏奈が叫ぶ。流星は拳に力を込め、地を蹴った。
光が、自分を呼んでいる。
「ルヴォリュゥゥ――ジョンッ!!」
重力の
◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆
「――君は誰だ――俺を助けに来たのか?――」
「――いや――世界を救いに来たんだ――」
「――この歌は――この光は、なんだ――」
「――これは――この星に溢れる希望さ――」
「――なるほどな。来てみた甲斐はあったらしい――」
『――光は満ちた。ともに行こう、アイゼン、リュウセイ!』
◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆
『無駄ダァァ、人間ドモォォォ!!』
歌い続けるわたしたちの視界の彼方で、天を貫く巨大な怪獣が咆哮を上げる。虹色の光を集めた巨人の石像を、今まさに、その背丈の何倍も大きな怪獣の足が踏みつけようとしている。
「いやぁっ!」
わたしは思わず歌を放棄して叫んでしまっていた。巨人に集まる光が、怪獣の巨体に遮られて――
「ううん。大丈夫」
天城杏奈が隣で言った。それに被さるように、怪獣と融合した宇宙人の巨大な声が響く。
『何ッ!? 馬鹿ナ――何ダ、コノ
そして、わたしたちの視界は一瞬、目が
視界が晴れたとき、巨人はもう倒れてはいなかった。闇を吹き飛ばさんばかりの閃光に包まれて、巨人はその場に立ち上がっていた。
今にも巨人を踏み潰そうとしていた巨大な足を、
『ディィアァッ!』
自分の何倍もの大きさに膨れ上がった怪獣の巨体を、巨人は難なく押し戻した。そして――わたしたちの視界いっぱいに、再び赤い閃光が広がる。
「あれは――」
それは、黄金の巨人の背にはためく真紅の翼だった。
きらきらと煌めく灼熱の輝きを宿した巨大な翼が、天を覆わんばかりに広がっている。
『ルヴォリュード、貴様ァァァ!』
巨大怪獣が吐き出す闇の火球が、着弾して地面を叩き割る、その瞬間。
『シェアァッ!』
光の巨人は雄々しく地を蹴り、巨大な翼で天に舞っていた。
闇を引き裂いて飛ぶその神々しい姿を見上げ、わたしが目を見開く、その隣で。
「ルヴォリュード……フェニックスフォーム……!」
いつの間にかギターを抱えてこの場に合流していた銀髪の少女――アイが、希望に瞳を輝かせて、巨人の名を呟いていた。
怪獣が邪気に満ちた咆哮を上げ、天上の巨人に向かって熱線を撃ち出す。巨人は身体を後ろに反らせて熱線を
紅蓮を纏いしその姿は、人々の想いを宿す不死鳥の翼。邪悪の炎も、奈落の闇も、
『オノレェェ、ルヴォリュードォォォ!!』
巨大怪獣も竜の翼を広げ、風を巻き起こして空に飛び上がった。渦巻く闇を纏い、炎を吐き出しながら一直線に巨人に迫る凶暴な竜。だけど――
「負けない。光の巨人は負けない!」
杏奈の力強い一言に、わたしも、レイも、アイも頷く。
そして、わたしたちは再び歌い始める。
周りを見れば、いつしか多くのギャラリーが光を掲げて集まってくれていた。
みんなのために、歌うんだ。この星に満ち溢れる希望を。わたしたちの光り輝く未来を。
「
レイと二人で声を合わせ、わたしは叫ぶ。杏奈が伝説級の笑顔を振りまき、アイが激しくギターをかき鳴らして、わたしたちの歌に同調してくれた。
数えきれないほどの光が。赤の、黄色の、紫の、桃色の、緑の、青の――虹色の光の海が、わたしたちを取り囲んでいる。
みんなの想いに呼応するように、巨人の纏う希望の光が、
天使の如く
『エクシウム・スラッシャー!』
巨人は両腕を振り抜き、三日月状の光の刃を放った。二条の光跡が闇を裂いて怪獣の翼を斬り落とし、その巨体を地面へと叩きつける。
『終わりだ、デストピア星人!』
遥かな空から怪獣を見下ろし、巨人が腕を広げていく。地上に溢れる七色の光が、一手に巨人へと集まり――紅蓮の翼が、灼熱の輝きに満ちる。
『サイリウム・ブラスター!』
巨人が腕をL字に組んだ瞬間、虹色の希望を宿した光の奔流が、地上の超巨大怪獣を目掛けて一直線に
『グ……ギャアァァ!』
怪獣が苦悶の咆哮を上げる。撃ちてし止まぬ勢いで浴びせられる虹色の光線が、超巨大怪獣の外殻をびしびしと砕き、蒸発させていく。怪獣の巨体のあちこちで七色の火花が散り、邪悪な
『オノレェェ……!』
遂に怪獣の外殻は全て跡形もなく爆散し、融合を解かれた醜悪な侵略宇宙人が光の中にその姿を晒した。
『認メンゾォォ! コンナ辺境ノ星デ、コノ私ガ敗レルナドォォ!』
最後の抵抗を試みるように、宇宙人は地を蹴って空に飛び出した。その全身から放たれるどす黒い邪気の奔流が、巨人を闇で覆わんと迫る。
『まだ分からないのか、デストピア星人! いかなる闇に閉ざされようとも、人の心から、希望が消え去ることはない!』
右腕を大きく振りかぶり、巨人が空を駆ける。きらきらと燃える翼にみんなの希望を乗せ、巨人は一直線に敵へ突っ込んでいく。
「行けぇぇっ!!」
わたしは天を仰いで叫び、そして――
『デュアァァァァッ!!』
希望の色に輝く
(続く)
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