番外編 いつか私も、この街に
4-1 あやかし法廷
「――以上、原告の証言及び各証拠と照らし合わせれば、被告が労働基準法第39条に定める年次有給休暇の付与義務を怠っていたことは明らかである」
弁護士
机の上の書面を手に取りもせず、後ろ手に胸を張った姿勢ですらすらと述べる彼の
「よって、原告は、訴状の通り、本件内容証明の発信日から
当事者達を挟んで真正面には、黒の
「――キュウリの支給を求めるとともに、今後の労働環境の改善を強く要望するものである」
頭の皿と背中の
(……周りの人達も、よく落ち着いてられるなぁ……)
膝の上に広げたノートにせかせかとメモを取りながら、弁護士のタマゴの菜穂は、ほぅっと小さな感心の溜息をついた。
あやかし特区を擁する府県で弁護士登録したら、自分もこうした法廷に立つことになるのだろうか。この街に来るまで想像だにもしなかった、この冗談のような法廷に。
「では、被告側……」
白河が着席した直後、裁判官は被告席に顔を向けた。そこでは、カッパ達の雇い主である
妖怪の当事者達の争いを裁く、新潟地方裁判所民事部の「あやかし法廷」。
菜穂がこの場に足を踏み入れることになった
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