第388話 うさぎの国
9月12日。
海賊を追ったオーランド群島19時。
タナウスより東に海賊はポツポツしか居ない。ミランダから西に行けば行くほど海賊が居た。目端の利く海賊は確かにオーランド群島に逃げていた。
盗賊は数人から数十人で隊商や旅人を襲う。海賊は船に何百人も乗るだけ襲う獲物も大きい。交易船を丸ごと、人も積荷も船まで奪う。
盗賊はその国の悪人。国や冒険者、傭兵が退治する。海賊は国際的な悪人。軍船を持つ国が主導しないと退治できない。広い海で行き会わないと退治できない。
当然海賊は知っていたが、内陸出身のアルは海賊のヤバさを知らなかった。地球の海賊はどうやって滅びたのか検索して驚いた。地球では未だに国が軍船で追いかけまわす、決して滅ぼせないゴキブリの様な奴らだと知った。
なんと地球では貧しい国の村が丸ごと海賊。漁船で操業して深夜近くを通る商船を襲っている。同じく貧しい国の高速魚雷艇の国籍を隠して軍人が小遣い稼ぎに襲っている。どちらもマシンガンを持って乗り込み乗組員が持つ金目の物を奪っていく。抵抗する者は殺す。
地球でも海賊は滅んでない。強盗も滅ぼせない(笑)
絶滅できないゴキブリの様な奴ら。次から次へと湧いて来る盗賊や海賊や奴隷狩り。被害に遭う人達に降って湧いた不幸を思うと助けずにはおれなかった。
その日からアルは海賊狩りに変わった。
海賊横丁と言われる海域の生息数は半端無かった。オーランド群島を始め西のラウト、アウリム、カリンスポートの交易補給港の島でさえ拠点が存在する札付きの海域だった。(日本人が島と言えば小さな島だが、四国クラスの島である)
そんな交易中継港には奴隷身分がたくさんいた。
流民や貧民が今の生活を変えたくて自らを売る、未開人が子供を売って奴隷身分になっていた。そんな奴隷は商船にも交易品で運搬されるから海賊が大喜びで奪う積荷だ。コルアーノでも借金奴隷、戦争奴隷に生まれた奴隷の子や親に売られた子が流通してるからどうしようもない。
オーランド王国近隣の群島。海賊が闊歩する港街は全世界胡散臭い街選手権だ。海賊上がり、盗賊上がり、元罪人が逃亡の末にその港に流れ着いた札付きばかりだ。海賊船寄港地は羽を伸ばす罪人の吹き溜まり。補給を終えた海賊船が出航する噂を聞くと、札付きが俺も乗せてくれと得物をアピールして海賊船に乗り組む。
殺人に罪悪感が無いどころか、無様に死んでいく所を笑って喜ぶ連中の街。かっぱらいで生計を立てる者が盗品をかっぱらわれたついでに殺されると笑い話の酷い街。薬物依存が酷く汚染される人間が後を絶たない街。一歩街の裏街に入ると野生の獣の街で無茶苦茶だった、スラムなんて可愛いもんだ。
街ごと消すに足る街だった。
そんな認定を下す前、アルは色々と確かめた。貴族服に帯剣でも襲ってくる。金を見せたら子供の後を舌なめずりして付いて来る。身なりの良いサラサラの髪は金持ちとしか認識して無い、子供も躊躇なく襲って来る。ゾンビが生者を襲うようなもんだ。金の匂いに寄ってくる亡者たちだった。
海賊船の船長が縄張りを主張してみかじめ料まで取る。海では海賊、街では盗賊と兼業して見境なしに襲ってくる。これ以上逗留すると不具のバカ共が増えるので早々に街の存在を諦めた。
小さい街なら2000人~大きな街なら1万人程の海賊拠点を丸ごと誘拐して来た。旧約聖書のソドムとゴモラと一緒だ、腐った街は使徒が滅ぼした。火と硫黄の雨は降らさず街の住民を全部衛星都市のマリンへ連れてナノさんに選別させた。
周辺国も最悪のごろつき共が集まる未開の島を一掃など出来なかった。仮にその島を取っても実入りが無く無駄なのだ。男は黒々と焼けた半裸にふんどしに曲刀やら斧やら鉈やら単鎗。女は蛇や蜘蛛や華の毒々しい刺青が胸や腿を強調する。極めつけは誰も生産しないこと。海賊の収奪品がグルグルと回る経済活動だ。
未開国を舐めちゃいけない。アルでさえ時代考証が違い過ぎるだろ?とツッコミ入れるエジプト文明やらメソポタミア文明的な島だ。
海賊や盗賊になっちまった様な連中はいつ死んでもいいやって、その日暮らしの享楽を追ってゴミ溜めの様な街を這いずり回っていた。捕まれば死罪、襲って返り討ちの死、襲って奪えば今日だけは良い目が見られる。死ななかった一日、その一瞬を生きていた。
アルの視た海賊は既に未来の無い亡者に視えた。悪人度で言えば盗賊より海賊の方が数段上だった。奇しくもアルは内陸の出身で海賊について初めて知ったというぐらいの知識で視たらハンパ無い暮らしぶりだった。
海賊が目にするのは死んだ者の断末魔だけ。後始末は海に投げ込んで終わりだ。流した血は海の水で洗い流す、投げ込んだ死体はサメが始末する。すでに慣れ親しんだ死という状態の人間に麻痺して遊びで殺して海に投げ込む。船は犯行現場を勝手に離れて行く、そして新たな獲物と交戦して死んだ仲間をまた海に投げ込む。
そんなその日暮らしな奴らが海賊だった。戦えば死ぬ気で戦う背水の陣、気合が違う分厄介な相手だ。最初から死と隣り合わせ、死を受け入れている職業なのかもしれない。
アルも諦めて能書き言わずにさっさとどぶ掃除する。
オーランド群島諸国の海賊島を次々襲って壊滅させていった。田舎の街には商店を開いて悪事をしてない家族や母子もいたのでナノさんに振り分けてもらっている。手当たり次第に海賊を狩った。衛星都市マリンではナノさんが選別し、海賊を後ろ盾にする者も、盗品を知って買う商人も根こそぎ更生村に強制入植だ。
一日1200万SPも奪う恩寵ポイントはすさまじかった。
この世の理不尽が総力を上げて捻じ曲げた人間が集まり、澱み切った血まみれの街。未来の無い刹那の人生から更生村で楽になれ。目の前の幸せをつかみ取れ。心穏やかに収穫を楽しみに畑の世話をして生きて行け。
薬物依存に
街は徹底的に破壊した。金目の物や資源ゴミ(使える建物)は奪い、土地ごと地に沈めて成長促進で密林に変えていく。船はすえた臭いが漂い、メンテもされず腐る箇所も多ければ漁礁にしてやった。良い船を鹵獲したら乗り換えるつもりだから掃除もしないし直さない。そんな始末に負えない奴らを神教国に連れて来るのだ、更生村と衛星都市のメイド部隊がが臨戦態勢で選別に当たった。
海上の海賊狩りと並行する拠点狩りなので現在10日過ぎで23万人を連れて来ている。元の神教国の国民入れたら約50万人だよ。真っ当な移民が1万人ぐらいだから強制移民は49万人、98%以上が札付きの極悪人だ(笑) どんな国やねん!
隔離政策と言うか水際対策と言うかタナウス海峡を挟んだ北側のヘブン島(アルが呼んでいる名前)の更生村で平和に暮らしてるから良いけれど、隷属して無かったら最凶の島だ・・・元は斬首刑が確実な極悪人の島。今更ながらに俺はとんでもない事してる感がハンパ無い。
ヒトデナシみたいな考えだが、何かあればコアさん達に任せて逃げたい気分だ。唯一の慰めは極悪人も更生村で心安らかに暮らす事。海賊も人の一生を終えたら、次の転生は少し早くなるかも?という希望的な観測だ。
※更生村送りとは布教をされ、過去を反省して生まれ変わるために農民になることを決断したという理由の隷属しかされてない。(悪事の程度によって労働は振り分けられ、布教されて罪を憎むから自分から悪い事しない)
更生村で悪人を集め過ぎて悪の総統みたいなのが生まれてこないか心配になっている。世の悪を極めた奴らの恩寵を奪っても、血統に極悪因子が入っていたら生まれそう。
魔眼や攻撃恩寵を持った子が更生村に発現したら将来的に考えるタナウス魔法学校に入れるのも良いかもしれない。これから生まれて来る子はよく働く両親の元で寺子屋に通うから大丈夫とは思うけど、平民に魔眼や武術の才が多数発現してきたら極悪因子を持ってないだろうな?とさすがに心配はしてしまう。
後から分かった事だがオーランド王国は真っ黒の国だった。
オーランド王国が税を課して貴族として遇し、島国に敵が攻め寄せたら海上戦力として働く。金が取り持つお互いの共生だよ・・・地球の覇権国もやってたそのままだ。正にも負にも磨くのは器の
背中が煤けるクソバカ共を隷属してオーランド王国をタナウスの
港街を丸ごと隷属してタナウスに連れて行くライフワーク。島の現地部族は静かになって喜んだと思う。ついでにハーヴェスの目の前、ズサ沖の群島海域の海賊も狩ってやった。
1か月半後に終わった頃には更生村だけで50万人を超えた。
途中でコアさんが泣きを入れる程も狩って衛星都市マリンでの選別が追い付かず海賊狩りを休んだぐらいだ(笑)
あぁ、海賊狩りの最中は俺の一人旅?だよ。
時差がコルアーノから5~8時間、タナウスから7~9時間もある広い海域だからラウトという現地交易補給港にリフォームハウスを出して海外出張していた。
次から次へと緊急案件ばかりで旅行どころでは無い。汚いものを二人に見せたくないのでシズクとスフィアは一旦クルムさんにお願いしてる。
・・・・
海賊狩りや拠点狩りと並行して行う事もあった。
・ミランダとカナディオの戦争。
紛争の元凶の海賊を狩っている最中だ。これから海賊被害が少なくなるのに戦争を継続して国力を疲弊させるのはバカらしい。現在は1500人以上の戦争奴隷が現在進行形でカナディオに搬送されている。
・カナディオ王国での
カナディオ王国の政策に反対するうさぎ部族がいて子爵領が揉めている所に今回の紛争が起こった。寄り親(伯爵家)の要請で慌てて援軍は出したが、ラマス子爵軍の補給物資を子爵領の(国策)否定派が妨害して糧秣到着がしばしば遅延していた。地元伯爵の食糧支援で子爵軍のうさぎ獣人2000人は凌いでいた。
そんな内紛と共に子爵領に秘匿された救いだすべき難民的な人々がフラッシュで視えたのだ。この紛争に理由を付けて子爵領の内紛に介入し助けに行かねばならない。
・バルガは逃げた盗賊二名がコモンドル商会へ意趣返しする事を心配していた。バルガは見てはいないが店の外に居た2人が逃げた事を把握している。その2人が再襲撃しないか心配していたのでとっ捕まえて〆ようと襲撃現場を視たいのだ。
・・・・
9月17日。
海上の海賊を粗方攫った後に港町の海賊を潰しながらも副業を行わないといけない。世を住み易くするのは転生させてもらった神への恩返しなのだから。
ミランダとカナディオの国境での顛末は伝令の早馬だとすぐに届く。ミランダ軍が大敗を喫した事が皇帝に届けば火に油を注ぎそうだが、軍の編成などすぐに出来ない。進軍含めて二月以上掛かると思うが見過ごすわけにも行かない。いずれにせよ決着させないと両国の傷は時間が経つほど深くなる。
ミランダ皇帝を
命じたのはコレだ。
・皇帝は貴族派閥の長を呼び出し、誉れ高きミランダの公爵が戦地で言われた口上を聞かせて激怒する。
「
この事態を招いた叱責で各派閥の武装商船を取り上げ、戦死した公爵家や宮廷魔導士への賠償を国中の貴族から集める。反対する者は何人たりとも皇帝の名において亡ぼすと宣言する。
・貴族家に与えた魔動商船が生んだ周辺国との軋轢を教訓とし、全ての武装商船は皇帝の命の元で運用され海域の安全を図る。
・護衛艦隊を個別には出せないが、周辺国海域の騎士団として海の安全をミランダが努力する事をカナディオに約束する。
・武装商船三隻をカナディオに賠償として譲渡する。譲渡完了後はカナディオが捕えたミランダ捕虜の全てを返還してもらう。捕虜返還が成されればカナディオとの遺恨無き国交正常化を宣言し、ミランダは迷走していた国策を詫び周辺国に書簡を出す。
皇帝は以後半年は掛かるであろう書簡や交渉に忙しくなる。
※戦争奴隷はコルアーノで言えば末端価格で約金貨4枚以上(400万以上)する。貴族家の身代金の期待できる者では白金貨クラスだ。
カナディオの参謀は最前線にいる宮廷魔術師を後方に逃がさず最優先で狙った。(魔法士はウザイので最優先で殺す目標)今回は特に公爵が優秀だと誇ってしまったので死に物狂いで最前線を空爆した。その結果、公爵やら子爵、騎士団の爵位持ちの指揮官クラスが皆死んでしまい。貴族を捕えられなかったのはカナディオの大損害。
戦争捕虜の扱いは、コルアーノ王国は身代金を要求するか、捕虜を売って戦費にするか、売れなければ鉱山奴隷に連れて行く。戦費がある以上、金にするのが優先で選択肢が決まって行く。
鉱山奴隷の場合は罪状を真偽官が暴いて、民を殺した盗賊扱いで生涯奴隷にしてしまう。
売れる場合は何人殺した騎士団の武官と値を吊り上げる。
今回の捕虜は凄い数の武官で金に換えるのも大変。負傷兵は最低限の機能回復してやらないと売れない。領境や利権の紛争で捕えた傭兵や兵士の数ではない。
奴隷市場の末端価格は奴隷商人が時間を掛けて奴隷教育し、食わせて商品化した価格で国からの仕入れはせいぜい末端価格(金貨四枚(400万円)の四割。(400万なら160万円)今回の大量の捕虜を見た執政官は三割(120万円)でも売れるかなぁ?と苦笑いした。
身代金を取れない上級武官なら金貨6枚の値も付く。女で見目麗しく魔法の才があれば何年も教育して奴隷メイドにすれば上級武官クラスの値が付く。
※売られた奴隷は元が高いので主人に大切に使われる。、大体購入額の3倍ほどの価値を生み出すと奴隷籍は抜けて一般使用人として給金がもらえるようになるのが聖教国のルールだ。それは早くて15年から平均20年、長いと25年から30年の奴隷期間となる。
冒険者クラスの戦争奴隷は安く、恩寵の高い上級武官ほど高い。
今回の戦後補償の武装商船三隻は、俺が元々の原因を作ったせいで巡り巡って捕虜になっちゃったね?という気持ちの表れだ。無事に全員ミランダに帰してあげる。
カナディオ王が納得しなかったら、それはそれで頑固親父は〆てやる。まぁ喉から欲しい最新鋭の技術の詰まった武装商船が貰えたら納得するだろう。
・・・・
9月20日(木曜日)
俺は海賊狩りをしている最中、戦争の拡大は防いだし、そろそろカナディオで発見したラマス子爵領で迫害されてる人を何とかしなくちゃなぁと思いだした。
一旦キリを付けて、貴族馬車の護衛聖騎士とコアとニウも一緒にカナディオ王国、ラマス子爵領都まで跳んだ。
ラマス子爵領13時。
跳んだ地点から2kmほど進み、馬車はなだらかな丘を下って緩やかな右曲線で密林のブラインドカーブを進んでいた。領都まで16km、馬ロボなら約1時間の地点だ。14時なら領に立ち寄った宗教国の皇太子で子爵家を訪問しても良いだろ?
「アル様、前を!」ニウさんが御者台で言う。
「え?」馬車の中から視る。
曲がった先にある見通しの良い直線で声を掛けられ異変に気付いた。領都方面からこちらに向かって来る馬車がうさぎ騎兵に追われている。
見通しの効く街道、こちらに向かって逃げる貴族馬車がうさぎ騎兵に襲われている。矢が肩や腹に刺さったままで剣を振り回していたうさぎの御者が今斬られて虫の息。御者がやられて馬車が止まったので時間の問題。
これがうさぎの国、子爵領の内紛である。それをそのまま見てしまった。目の前の事件があろうが無かろうがこれから内紛に干渉するから関係ない(笑)
馬車は街道に斜めに止まった。
その時点で一瞬にして事態をフラッシュで飲み込んだ。
慌てて襲われる馬車の周りに土魔法で壁を作った。襲撃騎馬がせり上がったアースウォールに乗ってしまい、そのまま倒れちゃった。ギャー!馬ちゃんゴメン!将を欲してないのに馬を射てしまった。
思わずアースウオールで馬車を防御したらうさぎ騎兵がこっちに向かって来ちゃった。
俺達に気が付いた騎兵12名の内、6名が向かって来る。
襲われた御者が虫の息なのを確認して向かって来た騎兵を聖騎士とコア、ニウに任せる。俺はアースウォールが囲む貴族馬車の天井に転移した。
転移してから俺の悪い癖が出た事に気が付いた。凄い勢いで向かって来る騎馬から兵士が落ちて死ぬかなと麻痺を
もう転移しちゃったから仕方がない。
虫の息の御者二名をヒール。すぐに騎兵が落ちない様にシャドが巻いて隷属。「お前たち、こっちへこーい!」と声を聞かせてゲッシュ。馬車後方にいた襲撃側弓士もとっ捕まえ、矢で戦闘不能にされ街道に転がる荷馬車の御者と護衛もヒールで治す。腹や肩に矢が刺さるのが本気の殺し合いの証だ。巻き込まれて矢の刺さった馬やアースウォールに巻き込まれ座り込む馬もヒールしてやる。
襲われた使節団に事情を話されても面倒なのでその場の全員隷属しておく。
殺し合いの両陣営。襲った方と襲われた方をキッチリと追視した。
カナディオ王国は大きな森に住む獣人部族と人種の豪族を貴族として認めて出来た国なの。今回の戦争が起こる半年前に王国からお触れが出た。ミランダ包囲網を周辺国に構築しようとしたカナディオ王は、国内の安定と部族の調和を周辺国にアピールしようとした。
王様が各獣人部族の代表に参勤交代の様な王宮駐在制度のお触れを言い出した。調和の象徴として部族の男女代表二名を王宮に参集せよとのお触れ。
突然王宮に獣人の部族代表が駐在せよと言われた参集令。
うさぎ獣人族では代表が長老だ、長老会議では人質ではないのか?部族の代表は子爵では?と議論は紛糾してしまった。獣人と人間の代表する意味の感覚が違う。総代表の長老は領主の子爵だが王都に駐在するのは流石におかしいとの結論に辿りついた。
次の代表は6部族の長老?とまた紛糾した。何処のうさぎ部族も長老取られたら困っちゃう(笑)
部族に対する人質?とか、女性なら
部族でも論争の挙句、人に近い見た目に生まれた見目麗しいうさぎ獣人を送り込むことに落ち着いた。落ち着いたのは良いが、紛糾する間に人に対する疑念が渦巻きエスカレートする事で強硬派部族が武力行使に出てきたのだ。
このうさぎ子爵領は7つの部族の意見が分かれていた。
・王家に忠誠を示し領の安堵と繁栄を願う4部族が肯定派。
垂れ耳うさぎ族:ツインドリル状の耳、ジャンプが得意。
穴うさぎ族:短耳、穴で暮らすので暗視が得意。
毛長うさぎ族:中耳、獣毛がカラフルでモコモコ。
雑種族:耳も体も性格も何もかもがいい加減。長い者に巻かれろと子爵派に付く。稀にキレると怖い。
・王宮参集令を部族の人質と解釈し、屈辱を強いるなら他の森に移住したい参集絶対阻止の否定派1部族。
ピン耳うさぎ族:長耳、スピード族とも言われる。
・部族内の意見の反目からうさぎ領の分裂を
丸顔中耳うさぎ族(耳も体も中肉中背のオールラウンダー)
鳴きうさぎ族(短耳、警戒心が高くシャイ)
このうさぎ族は歴史のある部族で、過去に豪族の弾圧から膨大な森を勝ち取った背景があり、余計にプライドが高く揉めていた。森を勝ち取ったのは大陸に散らばるウサギ獣人に檄を飛ばし部族を越えたうさぎの大軍団をこの森に作ったからだ。
エルフの様に精霊魔法を持つ森の狩人じゃないので獣人は太古から居住権を人族に認めさせるのが大変だ。そんな時代にうんざりする程のうさぎ獣人を大陸から集めて抵抗を続け、時代が移り変わってカナディオ王国の子爵領として認められて成り立つ。
屈辱は受けたくないと他の森に移住を画策する否定派はまだ移住先が見つかって無い。王家に媚を売ることに反対だから、部族代表使節団を阻止しようと焦って武力に訴える。現状維持肯定の総族長派は4部族の多数派だけど、部族をまとめ切れ無い現状に族長も変わるべきとの引退論が出ている。(人族の子爵はそう簡単に引退とかうさぎ族には関係ない)7族をまとめる垂れ耳の総族長が子爵の領主だ。
国を作らない獣人が国に組み込まれて無理矢理に子爵領になっている(笑) 国が出来る過程においては治める部族の土地を国に取り入れて貴族にして国を作る。森の獣人に戦争しても国も得るものが無いからうさぎ獣人族を子爵領と認めた。
族の抗争など知らんわ!クソ面倒な!
内紛ぐらい自分達で何とかしろ!俺の知った事か!と思ったけど簡単な方法も無いでは無い。取り合えず皆で仲良くしなさいと肯定派と否定派をゲッシュしてお茶にした。以後は意見は違えど仲良くするからケンカしない。
視た上に、質問をする時間。うさぎたちにお茶の接待をした。全員で34名も居るのは300m以上後ろに否定派の弓士が8名、荷馬車隊2人と初撃で矢を射られた護衛騎士6名もいたからだ。経緯を視たらその中に気になる指令を下すうさぎのお婆々が居た。
「コアさん、ちょっと交換会話で見て」
「はい、なんでしょうか?」
「こんな祈祷お婆々が9月20日に指定してるの」
「アル様の存在を知らせてませんね?」
「うん、僕の事は一切伝えて無いの」
「20日に肯定派の馬車を襲えと言ってる」
「はい、未来眼の可能性がありますね」
「うん、シズン教ほど未来眼も高度じゃなさそう」
「調べて見ますか?」
「禁忌に近付いて巻き込まれそう(笑)」
「巻き込まれに行くのですよね?」
「禁忌から逃げる訳にはいかない、絶対助ける。でもどうせ子爵領に行くんだし、紛争中に使節団を襲撃する奴らはテロみたいなもんだよ、否定派にお灸は据えてやる」
お茶を飲みながら使節団と否定派のうさぎ獣人に王宮への出仕はこんな意味があるんだよと言い聞かせ、カナディオに忠誠を誓う垂れ耳派(子爵領使節団)は王都に胸を張って行く様に言い、否定派には出仕の意味を族長(男爵)に知らせよと返した。
広大な森の子爵領には14万人も居た。領には2万人弱の大きな街が7つもある。各街を束ねる長老の意見が食い違うのも仕方が無い。獣人は森が養える許容量を超える前に半分に分かれて新しい森を目指す。本来は別々の森に住んでいた部族が人間に対抗する為にたまたま大きくなっても食料豊富な森だったので分かれずに済んだ。元々は人族に対抗する為のうさぎの大軍団なのだ。
うさぎ獣人の子爵領はとても大きな杜の都だよ。交易も特産も普通の物は売ってるし、人族も入り込んで普通に生活してる。土地が大きいだけの普通のうさぎ獣人の街だ。
そのうさぎ族が対外的に公にはしていない事があった。
そんな内情を国境紛争で活躍するたれ耳のうさぎ兵からフラッシュで知ってしまった。うさぎ族が禁忌と隠し迫害する者達を見てしまった。必ず助け出す。
・・・・
使節団と襲撃団を見送ったら16時近くにラマス子爵領都に着いた。まさかカナディオの国策を語って両派閥に言い聞かすなんて思って無いから今日のスケジュールもクソもダダ遅れ(笑)
もう子爵家の訪問は無理と貴族宿を取って聖騎士に明日の謁見の先触れを出した。コアさんとニウさんと俺で夕食まで子爵領都の森の中を散策した。ここは手工業が盛んで木の皮、竹の皮や素材を使った工芸品が沢山あった。背中の
実はこの世で鉄以外で出来た骨の傘を初めて見た。布張りの開閉傘を貴族は使う。頭にそのまま乗せる藁笠や竹の編み笠は屋外作業用に普通にある。タナウスの農民は竹の編み傘を日よけに被っている。地球で言うとベトナムで農民が被っている竹や藁の編み笠の大きい版。森の石松が被る三度笠や時代劇で旅の女性が片手に下げる日よけ兼用菅笠みたいな大きさの編み傘だ。
冒険者は笠を頭に載せずにフード付きの外套を着るがコアさんが竹の開閉傘を作る工程を見たいと言うので日が暮れるまで傘屋にお邪魔し(繊維が荒くガサガサの)和紙を張った開閉式傘を買った。タナウスにも竹が多いので農民は藁か竹で編んで被っているが竹で出来た開閉式も安いなら平民にも手が届くし使うに丁度良い。村の産業に良いかもしんない。
・・・・
深夜にカナディオ王を〆に行った。
「ラマス子爵領(うさぎ獣人領)男女代表二名は王都に参集し王宮に駐在せよ」
意味分んない。長老会議で紛糾するわ!
王様は参集令の獣人代表は
カナディオ王は人は良いだろうが、ぶっちゃけ人種だ。ラマス子爵領の内情を知らず人の文化を基準にして物事を考えていた。獣人部族は森に住む田舎者と見るやっぱりな結果だった。
部族調和を周辺国にアピールする前に善政だと思うなら国内にアピールしろ。王宮で体現するなら参集する前に計画とか周知とか責任持って中身からやれ。政務官が戸惑ってる時点で思い付きなんだよ!(笑)
王様の寝室では隷属紋が刻めないので王宮近くの公園に王を誘拐した。寝たままシャドが掴んで公園でピョンと跳んだだけだ。
クソ!冗談じゃねぇぞ!戦争を終結するために仕方が無いとは言え、ミランダに続きカナディオ王まで隷属しちまった。海賊野郎の親玉だったオーランドの王も隷属して
王様に隷属したゲッシュの内容は以下の通り。
・王宮への出仕は各部族の窮状や要望を王家が直接聞き届け、各獣人の居住地を管轄する貴族家に円満に治めさせるための政策であること。参集した獣人部族たちが揃ったら、謁見の間で宰相含め政務官や部族代表に趣旨を説明してカナディオの貴族全体に趣旨が伝わる様に書簡を出して通達する。
(うさぎ獣人族は多く、居留地を領に定めて子爵を与えられているだけ。他の獣人は貴族家の領地の森に居住を許されているので領主の命に従ってとっくに代表を送り出している)
・部族代表の職務はご意見番。政務官待遇の俸給。
以上をカナディオ王に
趣旨が分かれば優秀な政務官がその様に動くだろ。後は勝手にしたらいいよ。帝政ミランダに対抗するために周辺国と結束を高める国の政策など俺は知らん。
俺ならハムナイ国の街ラムールの様に獣人部族や未開部族との相互発展を目指すなぁ。獣人は体力あるんだし、人と平等に武官に取り立てて国の治安に貢献とか?それなら調和して国の発展に貢献してるって言える。まぁ俺は言うだけの無責任だけど(笑)
こんな国内の内紛まで面倒見てたら死ぬわ。でもうさぎ領の騒動が落ち着くまで何人か死にそうだったので仕方が無かった。
明日は朝から迫害される者を助けに行く、ついでにうさぎお婆々の祈祷師を視に行く。
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