第383話  異世界の腐った蓋


9月4日(曜日)


8時に起きた。


昨日はオーバーワークの上に遅く帰った疲れもあり10時間寝てスッキリ起きた。起きて顔を洗うとアロちゃんとフィオちゃんが甲斐甲斐しくお世話してくれる。メンバー面接のロスダン夫婦の新居も建てた。


ここ一週間程走り回って当面の予定が片付いた。

リズの誕生日まで丸々20日も休みがあると思うと心も弾む。


外はザーザーと雨が降ってゴロゴロとも言うので雷雨だ。


取り合えず・・・今日は雨と。


「アロちゃん、イコアに連絡してくれるかな?」

「はい、何でしょう?」


「クラン職員の名札なんだけどの項目との三人の名札取ってくれる? そのまま本物の伯爵家メイドになっちゃったのよ(笑)」


「そう伝えます(笑)」


「後ね、イコアに教会の孤児を男女二名来年の春に入れるから司祭にその様に伝えてくれる? ミッチスの客商売だから愛想の良い、よく笑う子がいい」


「その様に」

連絡も伝えるもイコアが聞いてるのと一緒だ(笑)


話を終えて目の前の朝食を見ると豪華。


「何で極厚ベーコン出してんのよ!(笑)」

「昨日はお疲れでしたから」

「お前たちが考えるお疲れじゃ無い!」


「アル様は昨日盗賊を千人も狩られましたから」


「・・・そうだけど・・・」


言いながらニヤつくのがしゃくに障る。


「お腹減ってるから食べるんだぞ!滋養強壮で食べるんじゃないからな!」


ベーコンをフォークでグサッと刺してかぶりついた。


・・・・


食事の最中。雨の予定を考えながら思い出した事がある。


サルーテの預かりサービスの話を三外相に相談し煮詰めたのが1月。ロスレーンに銀行として運用を始めたのが2月。その時点でサント海商国、ワールス共和国を主導に各国主要港に銀行を置く話が水面下で進んでいるのだ。


勿論、主要港だけに都合よく銀行を置くことなどできない。国首の許可を取り、国や領の公的施設として税法の優遇を受け、土地を用意させて銀行使用料を払ってもらうのだ。


そんな見た事も聞いた事も無いを持って行き、交渉してるのがバーツさんとランジェロさんだ。そういう夢物語を信じてもらうのは肩書と信用が無いとどうしようもない。


初期に銀行を運用するのは六カ国と言う話だった。使用料と敷地を国首が用意する契約ではという名声も絡めば、国首をその気にさせ易いとの話があった。要するに初期に銀行を置くと言った六国は、世界同時開業が望ましいとの話だった。


交渉に当たっている六国、それは商国連合に一番都合のよい港を選定していると言う事だ。そんな交渉をするに足る大貿易港だと俺も期待している。


実は船と代金、もしくは船と積荷と言う様な財産はそれを担保される利益に乗っている。沈めば痛いが、その保険となる分は利益率に転嫁されているのだ。保険制度が無い時代はそんなもんだ。屋号を次代に繋げる豪商は紀伊国屋文左衛門の様な綱渡りの大勝負で荒波に出たりしない。


話が逸れたが、もうそんな話から七カ月が過ぎてしまっている。

銀行のガイドラインを相談した導師とアルノール卿にもキャンディルと聖教国で実験の話をもらっていた。当時はロスレーンにも出来て無いので、サルーテ銀行の実証試験後としたが、すでにロスレーン、ミウムやマルテンまでS.A込みで銀行が出来てしまった。


いつ各国の銀行をと連絡が来てもおかしくない。なんせ六カ国に勧めている銀行設置数も分かってない。取り合えずやる事を後ろに回して国レベルの設置要請が来たら日数的に困る事になる。


どうせ雨なら銀行の件も含めてキャンディルにS.Aと詰所の話だけでもしておこうと思いなおした。あっちも雨なら計画を詰めたらいいし、天気は西からと言うから晴れてきたらレンツ様の見た事が無い銀行と詰所を見せたらいい。


たまには雷雨も良いもんだ(笑)


聖教国は領地どころか国だ、規模が違い過ぎてS.Aの話なんか出来ない(笑) 今日はS.Aと銀行のセールス日にして関係資料を持ってキャンディルに跳んだ。


・・・・


ナイス!


あんなに降ってたのにキャンディル晴れてたよ。こっちに雨雲が通ったかどうかも知らんが(笑) メルデスは東側が大山脈で通り雨や豪雨で天気が変わり易いからそっちかもしんないな。


キャンディル宮殿の転移部屋からベルを鳴らすとメイド長のマリーさんがすぐに執務室に案内してくれた。


「おぉ御子様、今日は?」

「レンツ様にS.Aの話をしにきました」

「おぉ!」

「遅くなってすみません」


「王都も出来たばかりと聞きましたぞ、遅くはありませんな。王都が良い見本となり、春には注文を取るだろうと思っておった所です(笑)」


「レンツ様もやっぱり注文を取ると思いました?」

「ん?王都が手始めでは無いのですかな?」


「やっぱりなぁ。王都からロスレーンのS.Aを建てたいとの話が来ちゃって・・・アレ、土地の無い街だと大変なので売る気も無かったのです」


「ははぁ、確かに街路灯の様には行きませんな(笑)」


「まぁ、王都に作った以上はお世話になってる領には優先してこうやって回ってるんです(笑)」


「御子様が直々に来て頂けるだけで光栄です」

「光栄って、身内じゃ無いですか(笑)」

「そう思って頂くのが光栄な事ですな(笑)」


レンツ様はフラウ姉さまの婚礼時に開門村やS.Aを視察している。


「一応、ロスレーン領の開門村、S.Aの実績です、王都もこれで換算して計画案はこちらです。新しいタナウス信用金庫(銀行)の役割の資料はこちらです。疑問があれば出来た銀行のカウンターで聞けば丁寧に教えてもらえますからね?」


資料を出すと、執事のダムトルさんも寄って見る。


「それに銀行の建設案件はこちらになりますね、2F以上の上階に銀行で働く神教国の使用人宿舎が作られます」


「ダムトル、執政官を呼べ」

「は!」


「お勧めの組合せはおありですかな?」


「その前にお約束があります。今回の施設は街路灯と違って非常に大規模です。街路灯の様に聖教国の魔法と言い切れないのです、普通の魔法士では魔力が圧倒的に足りない建築物になります。そこで神教国と言う魔法大国が作る事となっております」


「ベントがおる国じゃな?」


「あ!そうです、そうです。発注はロスレーン経由で神教国が請け負う建前です」


「実は御子様が建てておられる(笑)」

「魔力は無限の!それはご内密に(笑)」バシ!

ついついノリツッコミしてしまう。


「実は中立派の長が知らねば派閥の名折れと言う事でマルテン領を始めミウム領はすでに建設済みです。やっとキャンディルに来ることが出来ました(笑)」


「おっほっほっ!うちは国王派ですぞ、ハルバス公より早いのですな?(笑)」


「キャンディルは身内なので(笑)」

「ありがたい事じゃな、マリーよ(笑)」

「はい(笑)」


マリーさんもお茶のお代わりしながら笑ってる。


「それでですね、王家はこんな書類で自由に作成。マルテン侯とミウム伯にはこの様な領主の全権委任状を発行してもらい、料金の徴取吏員や守備隊、騎士団の詰め所なども現地で執政官に指示していたのです」


「ほう、マルテン領は開門村、S.A(詰所)、銀行の全権委任となっておりますな?」


「マルテン領は騎士団がある大きな街と、一定規模の守備隊のいる街に詰所を作り、小さい町は吏員に料金徴取を任せてます。街の規模にもよりますが代官の判断だと領都に人員の伺いを立てる関係上S.Aの運営開始が遅くなるのです」


「ほうほう!それを御子様が代官に指示して実質、運用開始してからの領都へ報告ですな?」


「そうです、運営した事のない初めての施設を仕切るのは執政官が大変なので用地決めから建設後の人員だけ割り振って運営ありきで執政官に経験を積んで頂きます」


「それが良いな、何も分からぬでは動きようがない」


「そうですね。こっちは私が現地でサインするS.A執行書の写しですが実質私から領都への完了報告書になってます」


「領都からは指示要らずなのですな(笑)」


「現地の執政官事務所から報告を受けるだけで結構です。一か月運営が遅れると領全体では白金貨1枚では済まない収益なのです(笑)」


「分かりました、御子様にお任せいたしましょう」

「話が早くて助かります」


「ご存じの通り、ライトの吸魔紋を御子様に見せて頂いたお陰で街路灯はクリストとアミア(フラウ姉さまの両親)が刻んでおりますでな、だいぶ資金は浮いております」


キャンディル領は山間の小さい街が多く田舎なので、朝まで灯す街路灯は必要ないとキャンディルの田舎の街路灯はレンツ様が伝えた街灯紋で自家製だ。日が落ちて24時まで点灯したら田舎は寝静まる。


「それなんですがマルテン侯の領地は広大で人口も多い事から開門村、S.A、詰所、銀行までやると莫大な予算になりました。そこで神教国が施設を建て現地の武官や吏員が使用料を徴取し、上がった利益を代金として2年を目途にマルテン領に譲渡する契約になってます。キャンディルもその案が一番財政的に楽かと思います」


「ほうほう」

「その根幹を成すのがこちらの銀行のシステムです」


「よし分かった、うちのダムトルも開門村もS.Aもロスレーンで見ておる。キャンディルの主要の街については御子様に任そう、温水紋はロスレーンよりは気持ち温度を高くしてもらえるかな」


「あ!・・・いいか」

「どうした?御子殿」


「マルテン侯爵領も北でしたが、ここより雪が少ないので大丈夫だと思い直しました(笑) キャンディルは雪が降り込まぬ様にしないとダメですね」


「冬のキャンディルは運用益も落ちますぞ(笑)」

「え?」


「馬糞も人糞も凍って臭くないんじゃ。凍った物を掴んで畑に投げよる、街角ですら春まで雪に閉ざされる人糞もあるぞよ(笑)」


レンツ様がいかめしい顔で言う。


「あー!あはは!」


「それでは、ここの図面のラビリンスになってる敷居を増やした方が良いですかね?風があるとやっぱ寒いかな?」


「間取りはロスレーンと同じで良い。アレに木の扉を付ければ湯気にて部屋も温まろう」


「付けてもらえるなら!それが良いですね」

「初期投資不要なら、扉など訳なく作れよう」

「分かりました。温度だけ少し高く、その様に」


「取り合えず見本を貴族街の公園に建ててきます」

「儂も行こう。マリー!ダムトルに伝えてくれ」

「かしこまりました」


・・・・


レンツ様の目の前でS.Aをあっと言う間に広場に建てた。レンツ様もおぉー!と驚く速さだ。聞けばやっぱり武官の有効活用で共通券を売るとの事なので武官の詰所も建てた。


「ここの街灯紋を点けて入ります」

「ほうほう・・・」


「御子様。執政官とて風呂まで持たぬ、喜ぶのう」

「粉を流せるだけで嬉しいですよね(笑)」

「これは・・・月料金にしようかの」


「え?」


「券を売る手間も減り、貴族証に印打てば俸給から引けるわ、家族分も引いて証を持たすか?」


「・・・」


「まずは券を売って実績を知らねばな、民が月平均何日利用するかまずは運用せねば分からぬな。平均20日使うなら1か月分を20日分で売り出せば皆が間違いなく得だと月料金で買うじゃろ?運用益も計算できる上に手間も減るぞ(笑)」


「勉強させて頂きました」ペコリ。


「一応サルーテでは一日共通券でトイレが自由に使えるので毎日民は買っております」


「お!そうか・・・」


「ただサルーテは毎日大汗掻いて働く人足なのでキャンディルの民とは比べられないとも思います」


「S.Aの共通券は幾らで売っておる?」


「銅貨3枚。開門村との共通券が銅貨5枚ですね」


「S.Aのトイレは大きいな。マルテン領の収益は凄くないか?」


「凄いですね、2年掛からないと思います」

「やはりのう。このトイレだけは別格じゃな」

「ロスレーンでも当初から人気でしたが?」

「さもあろうな、街の糞害が間違いなく減る」


あー!流石に山間の領主。馬糞の話を笑ってするし、街の糞害も気にせず問題として発言する(笑) 


ここで衝撃の事実を明かしておこう、多分地球の近代中世の事を調べた人なら知っていると思う。ギルドの馬糞掃除と言うのは実は人糞も兼ねる(笑)


この世は一歩裏町に入れば、建物の影にしてあるのが人糞だった。


幸か不幸かこの世ではトイレの下には桶の入る穴が掘ってあったり、川の支流が町中にあり捨てられる。公衆トイレは川の支流に作って排泄物は川に流れていく。王都や領都でも無ければ土むき出しの土地に穴を掘って板を渡して板塀に囲ってあるトイレが定番。屋内ではオマルに桶が内蔵のトイレも有るので、川に流したり穴を掘って処理も出来る。世にはそんなトイレが多いので感染症は一発で蔓延する。


の様に頭上から降ったり、街中に撒かれる事は無い。宿屋ではスライムもいるし、高級な宿ではクリーンを持つメイドもいるからオマルの便箱も粉が溜まるだけだ。貴族家はそんな感じだ。


日本ではそもそも人糞は肥料の代名詞だ。

江戸時代には肥料集めの為に各家のトイレ(かわや)は家の外にあり誰しも使ってよい物で、溜まった人糞は肥料として農家に売れ、野菜や米になって返されていた。古来から日本は人糞をリサイクルして肥を汲みとる職業があり、畑には肥壺こえつぼが置かれ人糞の堆肥化たいひかで自然の肥料を作っていた。


おじいちゃんおばあちゃん世代には子供が肥壺こえつぼもしくは肥溜こえだめに落ちて溺れて死んだという話が普通にあった。死なぬまでも学校のクラスには遊ぶついでに畑を歩いて肥壺こえつぼに落ちた者が何人も居たのだ。


明のお爺さんも子供の頃、凧揚げで夢中になって農道沿いの畑に作られた肥壺こえつぼの蓋の上に乗り、腐った蓋を踏み抜いて落ちている。川でどれ程洗っても匂いと色が落ちずにほとほと困って家に帰った話を聞いた。


話が逸れた、一体何を書いている。


異世界物だから異世界日本肥壺こえつぼの話もOKなのか?違う気もする。

(間違いなくソレは違う)


要するに何が言いたいのか。


川の近くの茂みに走るし、間に合わなければ街角の隅に普通に用を足す。とにかくトイレは必ず必要な事と、世のトイレ事情を一変するS.Aの凄まじさが分かって頂けたら幸いだ。


※S.Aや街路灯は元々開門までの数時間の一夜を明かすために作った。開門村が新年に宿泊施設に運用された事から始まっている。開門村のトイレ事情と給水、S.Aに導く常夜灯を必要と考えたアルによって作られた。


だからS.A建設は来年の春にも注文が殺到する。王都→マルテン→ミウム→キャンディル。このラインはS.A年内稼働を死守して後々出て来るS.Aの注文に応えるという心積りがあった。身内だから忙しくなる前に作っておきたいのよ。


年内稼働は良いが、そこに6カ国の銀行建設が入ってくると怖い。だからキャンディルを後回しにするにも時間的な限りがあることに気が付いた。


・・・・


11時にキャンディル宮殿に帰るとS.Aの資料を熱心に読みふける執政官達がいた。


「やっておるの、結構結構(笑)」


「フラウ様の婚礼に出席した者を集めました」

「それでよい、知らねば語れぬ(笑)」


「銀行に集められた代金は、街路灯と同じく領地の特産を発注する原資としてキャンディルに帰ってきますからね?(笑)」


「それもまた凄いのう(笑)」

「お金ではなく子爵領を作る物資が欲しいのです」

「うむ、了解した(笑)」


検討の結果、キャンディルは領都と6つの街のS.Aと銀行をセットで着手。開門村については冬の間には行商も少なく門前に一夜を明かす大きなログハウス施設や、雪を避けて馬は馬車ごと一夜を明かす暖炉付きの厩舎がすでにあった。無いと凍死するらしい。


S.Aの建設費は神教国持ち、銀行は白金貨1枚でキャンディル2万人以下の街は男爵領並みと見越して半額にした。そしてS.A代金の上がりはキャンディルに資材を発注する事でS.Aに落としたお金は領に還流する。


マルテン領の前例がある上に全領地と言わず慎ましい数なので話が早かった。イケイケの辺境伯領や侯爵領の様な人口の多い財政豊かな領では無いのだ。ロスレーン家も含めてどこも財政豊かな領では無いのだ(笑)


昼食を共に取り、レンツ様の全権委任状を持って昼には建設執行に取り掛かった。


・・・・


領の人口は5年前より1万人増えて25万人の人口がキャンディル領だ。25万人が領地全域に散らばった上に、土地も広く込み入った設計も何も要らない。小粒な街が多く用地も困らずサルーテ並みにスイスイ建てる事が出来て拍子抜け。


後回しにしてないで早くやっておけばよかったと言うのが俺の感想だ。キャンディルは開門村要らずのS.Aで一番簡単で早く作れた。


俺がS.Aや開門村に尻込みしたのは、領によって条件が違い過ぎるからだ。開門村なら開拓から、武官の多いミウムは全て詰所付、銀行付。マルテンは同じ詰所でも小さな町は吏員が住み込みの家族と一緒に同居できる家型のキューブハウスが詰所となる。


キャンディル領都4万6千人、ロスレーン領都と同じように1/3の1万5千人が毎日利用する比率で東西南北に建てて行き、銀行は中心地に建てた。以後はS.Aと詰所に扉や窓を付け、料金を徴取すして銀行に納める仕事は執政官に丸投げだ。


キャンディル領都のS.A試算で弾き出した建設代金は1万5千人/1日×銅貨3枚×30日×12か月×2年=白金貨162枚(32億4千万円)を償還する建築費とした。月にそれ以上の収益なら領都S,Aの譲渡が早くなる。


王都のS.A建設の様に野次馬を伴って歩く大名行列ではない。アルが跳んでは用地を気にせずパパっと作るS.Aと詰所、たった7カ所の銀行建築だから王都の1/3の時間で出来てしまう。


王都10万人分を10日である、キャンディルは6つの街に3日だった。キャンディル領都こそ1万5千人分のS.Aだが他の6つの街は6千~1万2千人分で約6万人分で済んだ。王都の様に擁壁を整地したり、2F~3FのS.Aや暗渠を作らなくて非常に楽。またミウム、マルテンの様に開拓から始める開門村建設が無いのが最高だった。


人口一極集中の王都10万人分は運用説明が楽だったが、キャンディルの場合は運用の指示が辛かった(笑) その指示にしても鑑札印と料金徴収人員を手配するのに2週間は掛かると思う。


ミウム領やマルテン領の様な特別に人口の多い領地ばかりではない事を実感出来た。このキャンディル伯爵領が良い練習になった。他領からの発注では有無を言わさず野次馬が集まる前に建ててしまえばこのペースで完了する。文句言われない様、全権委任状だけ持っていたら大丈夫だ。


ロスレーンみたいな空き地の無い領地だけはマジ勘弁。人の集中するS.Aの大混雑を緩和するのに一か月以上かかったのよ(笑)


・・・・


4日の晩は王都別邸に泊まり応接に居たキャットの落ち着きぶりを見ながら暖炉に冷房紋と暖房紋、トイレにもクリーンの魔術紋を付けに行った。


キャットが俺を見るなりテテテと寄って来て尻尾を足に絡めて部屋まで付いて来るだけで切なくなる。お前の好きな御主人様はなんだよ、偽の主人で勘違いさせてごめんな・・・いつもの撫で方も分からないが頭を何度か撫でて声を掛けてやった。


「機会が有れば会わせてやるからな」


と口に出して閃いた。客間の一番奥の部屋が俺専用の部屋(いつでも転移できる用)。クローゼットの中に送迎門(転移装置)を置いた。明日もキャンディルに行くので小さいアルを三日ほど滞在させて会わせてやることにした(笑)


まぁ、そんな話は置いて、王都にS.Aを設置したロスレーン家の王都別邸に設備が無いのは変だ。食堂と調理場にも冷暖房紋を5つ付けて温度調節の仕方をメイド達に教えに行ったのよ。



5日の晩はロスレーンに泊まり、キャンディルの首尾を伝えた。キャンディル領都の発行した時価相当の特産品目録をシュミッツにお土産で渡した(笑) 月締めでキャンディル領のS.A代金を銀行で集めてロスレーン家は特産品換算で発注する。


実家のS.Aと銀行の話を聞いてフラウお姉様は大層喜んだ。話の区切りにジャネットから家の冷暖房紋のお礼が出た。それを聞いたヒルスン兄様も執政官事務所の冷房紋は本当に助かるとお礼を言われた。ヒルスン兄様は文官なので一日中事務所の仕事か週の半分はサルーテにモニカ姉様と仕事に行っている。モニカ姉さまは土魔法士叙爵なので城壁の土台固めで同行だ。


そんな話をする食堂も快適な温度に調節されていた。まだまだ9月の頭で残暑が厳しい。


・・・・


9月6日の晩にハウスに帰るとハーヴェスからの造船所の資材、第一便の魔動商船が6隻出航したと聞いたが俺はすっかりそんな話を忘れていた。


ハーヴェスの造船所のクレーンやウインチの重機をバラして消耗部品を交換し、船を造船所に陸揚げするレールや架台を整備した後の出航なので時間が掛かるとは思っていたが第一便の重機整備だけで3か月以上掛かったみたいだ。その整備時間が神教国に誠意を見せてくれている時間に思えて嬉しかった。


予定では10月中旬に到着予定との事。わーい。




次回 第384話  変身は長兄が一番

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