第377話  魔人災害



8月30日(雷曜日)


ペンテの街を出た馬車は聖騎士に先導されて街道から脇道に逸れていく。馬車を操るニウさんが御者窓から教えてくれる。


「街道から脇道に入りました」

「はーい。クリアになったら教えて」

「かしこまりました」



「なんかさぁ、あの伯爵も長男も盗賊からしたら温いよね? 野獣感が足りないって言うか、温室育ちの悪党と言うかさぁ」


「捨て身で殺しに来る気迫が野獣感なら迫力が無いかもですね(笑)」


「あ!それ!捕まったら斬首なら暴れ回って野獣感も出るよ。あいつら権力で揉み消そうとするから野獣感ないわ(笑)」


「アル様(笑)」


「そろそろ大丈夫です」

「うん、ありがとう」


「さて、次はクリスクのどこの街?」

「子爵領都ブラスです、王都の隣ですね」

「そんじゃブラスに行こうか」

「はい」


一筋の影が差すと大司教の一行は掻き消えた。


ルウムリアのペンテ11時>クリスクのブラス郊外12時。


ルウムリア>クリスク地図(ラウム教国の上)

https://www.pixiv.net/artworks/103781828


「そのまま馬車でブラス教会に入って挨拶したら昼食に出よう。昼食食べたら司祭に事情を聞こうか」


「子爵に謁見えっけんはどうしましょう?」

「あ、予約取らないと!」

「予約!(笑)」


「教会到着の使者を出して昼食後でも謁見えっけん出来るようにして」


「かしこまりました」


クリスク王国はブラス子爵領、この領主の長男に対して神前決闘ディバインデュエルが申請された。伯爵家長男から子爵家長男に向けての神前決闘ディバインデュエルだった。


神前決闘ディバインデュエルは貴族の名を掛けて行われるが、早々貴族同士の公開決闘がある訳でも無い。この国では12年ぶりとなる教会裁判での貴族同士の決闘となる。一般的に上位貴族かラウム教会の調停により解決を図るのが普通。


子爵は今年騎士団に入った長男が多数の者に喧嘩を売り、相手に抜かせて斬り付ける事を悩んでいた。正当防衛を主張し相手の貴族は不具に、平民(冒険者)は斬り捨てる巧妙かつ粗暴な息子だった。


今回神前決闘ディバインデュエルを申し込まれた事を教会司祭から子爵が聞き、伯爵家の長男を殺すのを恐れて司祭に相談したのだ。


司祭は子爵から経緯を聞いて王都大教会に相談の書簡を送った。神聖な神前決闘ディバインデュエルが魔眼持ち対一般人の出来レースになってしまうのだ。普通の司祭には荷が重かった。


ブラス領都の教会に入って自己紹介と部屋を案内してもらった。大司教到着の先触れを聖騎士にお願いして謁見えっけんの打診をする間に昼食に出る。


俺達が平民服に着替えるとシスターが『あらまぁ!』と言った。教会服では街の定食屋に入れないと笑ったら納得してくれた。


以前奴隷を誘拐しに来たが改めて見ると美しい街だった。歴史があり偉人の銅像が至る所に立っている。昔からブロンズ系の銅の合金で栄えた街だ。俺はこの世で雨を集めて下水に流す雨どいの付く建築や屋根に降った雨水を合理的に雑用水として溜めるを初めて見た。


それはどこの街でも普通にあるが、ここの街は銅合金をスズのハンダで接着して工作してる。海が近いから腐食しにくい銅で色々工夫してたりする。


視て行くとクリスクって銅とスズの砲金(青銅)で携帯用小型大砲を作って売ってる国だった。この子爵領は銅とスズが産出するみたいでテズ教の陰謀いんぼうのお陰で儲けてるわ。


街の評判で検索して小汚い食堂を見つけ五人で入って注文する。店に負けじと小汚い親父や小汚い冒険者たちが俺達をジロジロ見るが小汚い感想を述べる俺は美味しい店なら小汚くても一向に構わない。


店で働くお姉さんが声を掛けて来た。


「あんたたち見ないね?この食堂初めてだろ?」


「初めてでも食べさせてくれる?」

「え!そんな意味じゃないさ(笑)」

「さっき街に着いたの、食事の店聞いたらここが美味しいって」

「あぁ!そういう事かい!(笑)」


「昼のセット五つね」

「あいよ!」


お姉さんは通りすがりにお客たちに言う。


「あんた達!聞いてやったよ!」

「分かった分かった!(笑)」


ジロジロ見ていたお客たちが笑う。


「最近物騒でね。みんなジロジロ見ちまうのさ」


横で昼を取る冒険者二人連れが教えてくれた。


「何かあったの?」

「失踪だったり盗賊だったり色々さ」


「えー!街で?」

「街でよ。消えちまうんだ(笑)」


「もしかして冒険者ギルドで依頼とかある?」

「捕縛の懸賞金は出てるが、護衛ばっかだな(笑)」

「旅行者がうろうろしてたら来るかな?(笑)」

「金を数えながら歩けば俺が行くぞ(笑)」


一緒に食べてた冒険者が笑いながら言う。


「ギルド連れて行けば懸賞金出ますね!(笑)」

「俺が捕まえた!」相棒の手を掴む。

「あ!しまった!」


ALL「(笑)」


笑い声の中、コアさんが耳元で囁く。


(アル様、アーロン・ブラス子爵が昼からでもお会いしたいとの連絡です。教会に馬車を用意しておきます)


(おねがい)


・・・・


「ラウムの総本山から参りました。大司教のアルベルト・カミヤです」


「大司教様、遠路遥々はるばるようこそいらっしゃいました。アーロン・ブラスと申します」


神前決闘ディバインデュエルの心配の件とは司祭から聞きました。軽はずみに言えないとして子爵様から直接聞いてくれとのことでした。心配とは何か問題がございましたか?」


「長男フラベルが神前決闘ディバインデュエルを申請されております」


「はい、聞いております」

「・・・」


あ!メイドを出すつもりなんだ。


~~~~


お茶を入れたメイドが出て行った。


「受けたくないので?」

「受けたくないと言うか・・・」

「お悩みなのは分かります」

「また・・・フラベルが殺してしまうのです」


「え!」と驚いておく。


視て分かるが聞かないと話が進まない。


「その神前決闘ディバインデュエルのお相手は?」


「伯爵家長男カーツ・バファエル卿です」

「どのような遺恨が?」


「貴族学校の卒業の打ち上げの時に同級生のクリスト・バファエル卿の腕をフラベルが落しました、カーツ卿の弟君おとうとぎみです」


「決闘だったのでは?」


「フラベルが執拗に挑発したそうです。貴族たる者、ここまで言われて剣も抜かぬのかと、同級生の前で執拗に罵倒ばとうし、抜いたとたんに腕を落しました」


「今までもその様な事があったのですね?」


「はい、冒険者や騎士団の若き者まで同じ様な罵倒により斬られております。必ず多数の目撃者を集める様にしてから・・・叱っても物ともしません。相手が剣を抜き掛かって来た正当な防衛だったと笑っています」


「それは・・・正当な防衛ですね」


「元々粗暴ではありましたが、王都学校に行き卒業してからは手が付けられなくなり・・・その視線に家族も怖がります」


「その視線とは魔眼ですね?」視て確かめている。


「!」


子爵の手を取り言う。


「子爵様、お見捨てください」


「え!」


「もう子息は魔眼に呑まれております」

「呑まれる・・・」


「たまにいるのです、親が庇えば庇う程増長して罪を犯す貴族の子息が、特に家督を継ぐ長男は将来の権力に酔い増長して悪事を重ねます。今回助けても、また必ずや同じ事を繰り返します。魔眼に呑まれじ曲がった魔眼持ちは手が付けられません、自分が神に選ばれた人間と勘違いして、上位貴族も関係なしに虫けらのように殺します」


「そのような・・・」


「違いますか?」


「そうかもしれません」


「お知りの様にラウム教は魔人災害を鎮圧ちんあつする法力を大陸に示す事で成り立ってきた歴史があります。今度の事も災害とまでは行きませんが、そうなってもおかしくない災厄の種という意味で魔眼人災と割り切って考えて頂けないでしょうか?」


「それほどまでにアレは災厄の種ですか?」

「すでに災いを撒き散らしているご様子」


「次男はおられますね?」

「はい、おりますが・・・」


「子爵様、今決断なさって下さい。廃嫡はいちゃくをご決断下されればラウム教が以後全て丸く収まるように致します」


「これが神の思し召しなのか!酷過ぎる!魔眼など発現しなければ良かった!私たちが悪い!フラベルの育て方を間違ってしまった!大司教様、お許しください」


「子爵は何も悪くありません。魔眼が魔をって子息を呑んだとお思い下さい。魔眼が悪いのです。親が庇う愛を吸って魔眼がフラベル卿の性格を捻じ曲げたのです」


「今すぐ廃嫡手続きを。あとはラウム教が問題を片付けます。どの様な結果になっても平民の事とお捨て下さい」


「どのような結果とは・・・」


「街で聞いた不穏な事件に関与している可能性があります」


「え!領都の賊に?」


「神のみぞ知る事。神を信じて下さい、その為の教会です」


主犯だ。もう盗賊の首領気取りだよ。あーぁ、街の賊なんか自分達で解決させたかったのに。そんな街の悪党まで視ると切りが無いと思って視ないとコレだ。大元の問題児が親の領都で事件を起こす賊とはな・・・子爵領の騎士団小隊長が賊の首領ってもう頭膿んでるわ。公になると子爵領が取りつぶしになる、どうすんだコレと切り出した廃嫡の話(笑)


執事長を呼んで子爵が本日付の8月30日に廃嫡はいちゃくを宣言した。その場で魔術証文が作成され教会裁判で俺が使う事になる。発覚前の廃嫡なら公に言い訳も立つ。


・・・・


子爵邸を出てコアさんに後を頼み、焦る気持ちのまま馬車の中からバファエル伯爵領都に跳んだ。


15時、バファエル伯爵領。


検索GPSに従ってカーツ・バファエル卿のいる騎士団を訪れ、神前決闘ディバインデュエルの件で来たラウム教の大司教を名乗り呼び出してもらった。


「ラウム教国、大司教のアルベルト・カミヤです」


「その様なお年で大司教とは恐れ入った。カーツ・バファエルです。神前決闘ディバインデュエルの件とお聞きしましたが日時は決まりましたか?」


「はい、齢は15歳なんですよ(笑) 教国は法力の強さで序列が決まりますので、お笑いにならないで下さい」


「お見それした。して神前決闘ディバインデュエルの日時は?」


「日時を決める前に率直に申します。フラベル・ブラスは魔眼持ちです。普通の武官では赤子の手を捻るようにやられます。この神前決闘ディバインデュエルの件、悪い様に致しません。ラウム教に預けて頂けませんか?」


言った途端にもの凄い威圧が降りかかって来た。


「日時はまだ決まらんのか!わざわざ教会の者が神前決闘を預けよなどと不抜けた事を申しに来たのか!決定事項を伝えに来たかと思ったぞ!腰抜けのブラス家は教会に幾ら積んだ?フラベル・ブラスめタダではすまさんぞ!」


アルはそのまま言った。


「どう済まさないんです?」

「貴族には貴族のやり方がある。黙れ!」


「お前こそ黙れ!誰に物を言っている!」


威圧を倍にして返し。麻痺付けてやった。


「法力の強さで序列が決まるって言ったでしょ?ホント脳筋は戦いたがるなぁ! こんな相手にあんたはどう戦うのよ? そうやって寝てるだけじゃ無いの。魔眼持ちってのは一筋縄ではいかないのよ。お分かりになります?」


「日程決めたらあなたが殺されるからわざわざ来てやったのに・・・納得した?口は動くからしゃべってみ?」


頬をペチペチ叩いて威圧掛けて睨む。


「わ!わかった!すまぬ、許してくれ」

「頭が冷えたなら謝罪を受け入れましょう(笑)」


子供が頭を撫でてやる。


「ラウム教国の大司教は伯爵位だからね。口には気を付けてよ? あなたまだ伯爵位じゃないでしょ?」


「し、失礼した」


「解きますよ?椅子に座って話をしましょう」

「わかった。お願いする」


「フラベル・ブラスにやられた弟さんのクリストさんはどちらにいらっしゃいますか?」


「屋敷にいると思うが?」


「弟さんに会わせて頂けますか?出来ましたらバファエル伯爵にも謁見えっけんをさせて頂きたく思います」


「わかった、先程のラウム教に神前決闘ディバインデュエルを預ける話になるのだな?」


「そうです、伯爵があなたの様に怒らない様に止めて下さいよ?バファエル家にとっても良い話を持って来たのですからね?(笑)」


「わかった、すぐに屋敷に行こう」


・・・・


バファエル伯爵の私室に席が設けられた。


「父上こちらが、ラウム教国から参られた大司教のアルベルト卿です」


「アルベルト卿、クリストの所に母上もおられたのでどうか同席をお許し願いたい」


「構いません、大事なお話ですからね。ラウム教国から参りました。大司教のアルベルト・カミヤです」


「ルドルフ・バファエルだ、こちらが妻のルイーズだ」


「大司教様今日は・・・」


「待て!クリストが自己紹介もしておらんではないか、気はだろうが落ち着けルイーズ(笑)」


「クリスト・バファエルです。今日は兄上の神前決闘ディバインデュエルの件が決まったお話ですか?」


「その通りです、ご了承頂けたらのお話ですが」


「ご了承?」


「相手のフラベル・ブラスは魔眼持ちです。まともにやっては誰も勝てません」


「魔眼持ち!」

「クリスト卿の受難は魔眼人災と言われるものです」


「魔眼人災ですか?」

「過去の災厄で騒乱の元と言われる魔人災害ですかな?」


「あ!すみません、魔人災害の小さい奴です(笑)」


クリスクに伝わる魔人の昔話を視て確認した。


「魔人災害はまさしく魔眼持ちの昔話です。大陸や国を巻き込む災害まで育って無い魔眼人災と私は呼んでいます」


「ブラス子爵領には正当防衛として不具とされたり殺されている騎士団員や冒険者が出ておりました。ブラス子爵は今度の神前決闘ディバインデュエルでもカーツ卿が殺されると心配し、フラベルを止めて欲しいとラウム教会に助けを求められたのです」


「なんと・・・」

「魔眼の者を裁くには法力が無いと難しいのです」


「クリスト卿、思い出すのも苦痛でしょうがお聞かせ下さい。その傷を負った時に体に異変があった筈ですが?」


「剣を抜いた瞬間に胸に痛みが・・・言い訳ですが」


「いいえ、言い訳ではございません。魔眼であなたの動きを止めたのです」


「え!」

「なに?」

「そのような!」

「その様なものが魔眼です」


「他言無用に願います、ラウムの大司教に誓えますか?」


「誓おう」

「誓う」

「誓います」

「誓います」


「フラベル・ブラスは魔眼:衝撃眼の持ち主です。ラウム教にもいますがね? 普通は殴るような衝撃を相手に与えます。フラベルがそれを気付かせないのは、その魔眼を研究し魔素の具現化を最小にして相手の動きを止めているのです。クリスト卿の胸を細い棒で突いたほどの衝撃と痛みなら、充分に相手への注意がれます。相手が止まってますから斬るのも容易。そういう相手です」


「大司教様、魔眼を持つフラベルとの神前決闘ディバインデュエルはどうしたら良いでしょうか?」


「当日私が別件の教会裁判でフラベル・ブラスを裁きます。私が法力でフラベルを無害にしますので、そのまま腕でも足でもたたき斬ってやってください。当然殺しても構いません」


「大司教様が?」

「法力で?」


「そこら辺の野良魔眼持のらまがんもちにやられる様な法力では魔人災害を防げませんよ?(笑)」


「野良・・・(笑)」

「野良(笑)」


「ブラス子爵にこれをもらって来ました。」


魔術証文を取り出す。


「え!」

「お!これは!」


「そうです。すでに平民になっております。子爵は大層胸を痛めておられました、息子の教育を誤ったと・・・子爵をお許しください、それは教育がどうのこうのでは無いのです。フラベルは人より優れた魔眼を神に授かったと思い込み、神より認められた一段高みの存在と囚われているのです。


それを魔眼に呑まれると言います。その様な存在は人間を見下しております。それは関わりになったクリスト卿が一番お分かりの筈。人を人とも思わず、捕えた虫けらの手足を憐憫れんびんの情無くむしる感覚で殺します」


皆が息を飲んで話を聞いている。


「ご安心ください。教国から魔眼に呑まれた者を滅ぼしに来ました。教会裁判で生涯奴隷に落として贖罪しょくざいさせるつもりです。体中を切り刻んだ末に五体満足でブラス領の鉱山に奴隷で送るのも自由です。クリスト卿と同じ右肘から落しても結構、殺しても結構。殺さず生かせば魔に呑まれた者は鉱山で一生を使って悔い改めます」


伯爵の喉がゴクリと鳴った。


「本当はこんな事をしてはいけないのですが・・・神前決闘ディバインデュエルの後、クリスト卿の右腕を治して差し上げましょう。内緒ですよ?(笑)」


「え!」


「みなさん誓いましたね?」


皆が面白いようにコクコクする。


「平民に落ちた、ただのフラベルにクリスト卿が治った腕を見せる事が一番の復讐になるかと思います」


お母さんのルイーズ夫人が輝く笑顔で息子の治る姿を夢見て喜んでくれてる。腕を無くしたコルスンの皇太子殿下の親と同じだった。秘儀を見せる対価は充分に頂いた。


「さて、日程です!」


「ご家族で神前決闘ディバインデュエル見物は如何いかがですか?」


「いつに決まったのです?」

「明後日にしようかなと思ってます」


「場所は?」


「ブラス子爵領、ラウム教会前広場を使って教会裁判と共に行おうかと思います。仔細は子爵と決めますので少しお待ちを」


「1か月はかかる距離でないか」

「私が法力でお連れ致します」

「は?」

「送り迎えすれば出席はよろしいですか?」

「予定があればキャンセルするが・・・」

「わかりました、少しお待ちを」


相互通信機をこれ見よがしに置く。


「コアさん?」

「はい!」


「ブラス子爵に連絡を。明後日の光曜日に教会前広場で教会裁判と神前決闘ディバインデュエルを行う予定で子爵に連絡を。今夜に被疑者の用意もあるし光曜日の方が観衆も集まるでしょう。バファエル伯ご一行は当日僕が迎えに来る。午前中に・・・9時からにしようか。そんな感じで調整をお願いしますね、仔細は明日にでも子爵とすり合わせます」


「かしこまりました。今回はルウムリアのようにアル様の到着を首を長くして待っていた領ではございません。すでに雷曜日の午後、今からお伺いを立てても光曜日の開催は怪しいとお考え下さい」


「明後日が駄目なら、来週の光曜日にと子爵にお願いしましょうかね?」


「それがよろしいかと」

「そのように」

「かしこまりました」


大事そうに相互通信機をマジックバッグに入れるフリしてインベントリに仕舞う。


「明後日9月2日(光曜日)か9月9日(光曜日)に決定次第にお知らせして、当日お迎えに参ります。朝の8時にしましょうか?」


「よろしくお願いいたします」


「ブラス子爵にも伝えてしかるべき席を作って頂きます」


「大司教様、わざわざ訪ねて頂きバファエル家にとても有意義な提案を頂いた。本当に感謝する、この通りだ」


「ネロ様の力を借りるラウム教は信者の味方です、明日の土曜日は仔細が決まり次第に連絡を差し上げますが、ここの部屋を使わせて頂けませんか?」


言いながら席を立つ。


「分かった、ここの部屋で話そう」


「それでは失礼いたします」


大司教は微笑みを浮かべて手を振りながら消えた。


ALL「消えた!」


家族が顔を見合わせて驚く。


カーツがアルが消えた場所を手で恐る恐る触る。


「ラウム教国・・・恐るべき法力だな」

「真に、消える恩寵など聞いた事がありません」


「昔話の魔人を狩る教会を目にするとはな」


「ラウム教の大司教という高位の神職など学校では話にも聞いた事がありません。消えてしまうなど魔人を討伐した昔話のようです。それほどの相手という事でしょうか?」


クリストが目を輝かせて言う。


「そうであろうな、歴史の激動には魔人災害がよく起こったと言う。今でこそ聞かぬが混迷の世ならその様な魔人が跳梁ちょうりょうしても不思議ではない。力を示せば我が物となるなら、その様な者は真っ先に出て来るであろうしな・・・」


「魔眼の恩寵は喜ぶと聞きますが怖いですね」


「うむ、魔眼に呑まれるとは恐ろしい事だな」




次回 第378話  魔眼狩り

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