第359話  戦略的撤退



8月9日(雷曜日)の晩20時に夏祭りの開幕を告げる魔法花火が宮殿の広場から上がった。呼応するようにアルノール卿の作った魔法花火が波止場からも上がる。魔法花火が近くと遠くで弾けて幻想的に乱反射してる様に見える。夏祭りを知らせる花火大会をリズと一緒に宮殿から見上げて楽しんだ。家のベランダやテラスから飲みながら見る人と、飲食店のオープンテラスで見る人とそれぞれが楽しんでる夏の風物詩になりそうだ。



8月10日~11日(光曜日)の二日間はタナウスの夏祭りで更生村含めて全ての村で祭りとなる。祭りの用意は気の早い村では7月中旬から始められて、神都では早い街区で7月下旬の二週間前からお祭りの用意をしていた。(俺は知らなかった(笑))


神都を中心に今晩0時より風曜日までの三日間は反射魔法結界が張られて、スコール、雨天一切関係なしのネロ様以下六神のお祭りパレードが開催され、三日目の風曜日は全国民が夏祭りの片付けを行う。


翌日の土曜日は、宮殿のテラスから民ににこやかに手を振る。リズと座って街区ごとに練り歩く巨大なネロ様や、神像の神輿や山車を作って、各移民の出身国の鐘やシンバル、太鼓を鳴らしながらパレードする姿を見て拍手だ。一日は国主として顔を見せておかないといけないのでテラスでお祭りを楽しんだ。


アルム、クルム、シズク、スフィアはファーちゃん達と一緒に俺とリズの人形を作って海側から練り歩き宮殿の広場を一周して、出し物をした。人形には胴体、手、足に棒が付いて執事は五人でアル人形、メイドも五人でリズ人形を操る大掛かりな人形だった。まぁ、貴族の男の子と女の子が分かる大雑把な人形だ。そして操る演者たちの執事はアル様マスク、メイドはリズ様マスクをしていた。


俺がリズに求婚して、指輪をやると蹴り倒され、迫るとビンタされ、泣き崩れる傍らにある花を摘んでリズに渡すと受け入れられてラブラブになるような劇を見せられた。


いい加減にしろ!

どう拍手すればいいんじゃい!

リズとセオドラとナタリーは大ウケだった。


メイド部隊と執事部隊は竜を模した中華風の竜の舞(棒付きの頭と胴体で竜が飛び回る)で宮廷広場で練習していた成果を神都中を練り歩いて披露した。タナウスの貨幣に一律にあるレリーフの竜(コボルさん)を模している。



例によって大聖堂では司教とシスター達の説法と歌と踊りの歌謡ショーが整理券と共に満席に次ぐ満席。こんなに熱狂する教会なんぞ俺は知らん。うちの国だから大人しいけど、他の国ならダフ屋が整理券を売るレベルだ。


教会広場で行われてるメイド隊コンサートでは移民たちの聞きなれた聖教国、テズ教国、ラウム教国、サンテ教国、シズン教国の耳触りの良い神を讃える歌が披露され、その中で森の子ヤギの歌が歌われた(笑) それ題そのものが違うからな。


アルムさんが森の子ヤギの歌を覚えて歌う→俺がいいよと許した。その時点で神教国では森の子ヤギの歌が解禁になっている(笑)


演奏も最近はマリンバっぽい木琴や、タイコやティンパニの様なパーカッション系の楽器も増えている。音が多彩で歌声は自在の少年少女合唱団。タナウスの超科学が生んだオーケストラボーカロイドだ。


勿論紙芝居や人形劇もやっているがジャグリングするメイド隊や執事隊もそこらじゅうの辻で投げ銭を稼いでいた。今回のお祭りは色々と出し物が増えていたのよ。各国の首都教会に駐在する神教国司教のニウさんが各国のお祭りや出し物を観測して民にウケる出し物ばかりを神教国に輸入してるからだ。


十年も経てば経済の中心ばかりではなく文化の中心も夢では無いぞ。パクリ文化が過ぎるけど(笑)


ドワーフの洋品店が夏祭りに銀貨一枚の新作アロハや水着を露店に並べ、ハムナイの宝石研磨師とドワーフが組んで作ったメガネや老眼鏡、虫めがね、単眼オペラグラスや単眼望遠鏡も販売してた。


ベガとクレアさんが使用人三人使って店の前に並ぶ子供達の列をさばいている。クレアさんがアイスクリームを麩菓子ふがしの皿に一杯銅貨二枚で売り出して子供達の大人気店になった。飲み物も食べ物も温かくも冷たくも自由自在なエルフのお店なら亜熱帯のタナウスなら大盛況になるよ(笑)


ベガの大判焼き屋で使われている使用人。実は神都の中にも元奴隷だった人たちが少なからずいる。街で暮らしてた富裕層の平民雑用奴隷か貴族付の使用人かメイドである。使用人として言い付けられた事は完遂する能力で食っていける者は街で暮らしている。庭の手入れや掃除、商店や職人の手伝いなど使用人側の仕事なら得意なのだ。


ドワーフの洋品店の型紙切りとかにも使われていた。コアさんが適材適所ニッチな仕事を探して紹介してくれている。タナウスは戦争否定の宗教国で難民や国から迫害を受ける人たちの救済国と言ってあるので、元奴隷も獣人も未開の人達も保護してタナウスに住んでいると周知されている。


日曜日の朝は浜で地引網!子供は生け簀の魚のつかみ取り。浜から帰る道沿いに魚や貝やエビの焼き立ての露店とメイド隊の露店のエールの販売など、移民街区でも露店が立って色んな催し物があった。


土曜日の晩と日曜日の晩はダンスパーティーだ。アル様マスクとリズ様マスクを付けて踊る男女が半数ほどいた。露店で売ってるのだ。一夜の恋は如何いかがとカップルに声を掛けるメイド隊。


男女の仮面を付けた大勢の人が教会の広場で踊る。ライトアップは灯火管制が敷かれ、ムードある演奏の中で中央のかがり火の炎が艶のある仮面を照らし出す。


俺も仮面を付けてリズと踊り明かした。

リズと一緒に連れてきたメイドや侍女達も仮面を付けて立つと執政官や政務官の仮面の男子に誘われて一緒に踊る。村も街も関係なく俺とリズの出し物が披露されて、男女が仮面で踊ってると思う。まぁ、そういうのが物語となって国に語り継がれるのだ。何千年も経つと神格化されて神話にもなると思う。そんな神話を元にして貴族も平民も関係なく夏祭りの夜のダンスを楽しむならアリだと思った。


日常を忘れて今宵を楽しむための仮面なのだ。



・・・・



夏祭りが終わった頃、ラムール商会にマルテン侯爵領の探鉱の話を振ってみた。今回たまたま縁で鉱山の代官に任命され伯爵位に叙爵された事を告げると俺に功績を付けようと乗り気になってくれた。


お爺さん達は十二人が名乗りを上げた。マルテン領に行ってくれると言う。早速マルテン侯爵と引き合わせて領の地図を引っ張り出した。それぞれがこの辺が臭いだの、この地形を先に攻めるのが筋だの爺ぃが泡を飛ばして口論する(笑)


それぞれがマルテン侯爵の採掘許可証と侯爵の委任状を持って三か月を目途に山岳地帯を歩き回る。マルテン領には大きな山脈が二カ所しか無いので遊びに行く感覚だ。


お爺さんの要望通り、拠点になる場所に暖房紋、クリーン施設と転移装置の付いたキューブハウスを山脈の要所に立てて行った。山師は拠点から放射状に歩きまわり次々と有望と見られる鉱物サンプルを取って行く地味な仕事だ。


秋から初冬に下山してサンプルをラムール商会の山師達で鑑定して報告すると聞いたので楽しみだ。


・・・・


そんな俺は、アルムさんとクルムさんを置いて主従水入らずでシェル、シャド、シズク、スフィア、リルの精霊とコアさんとニウさんと旅行に出た。


正直、外から見るとコアさんとニウさんに引率されるお子様三人である。


今回の大陸はミランダのある(俺の中では第三)中央大陸だ。ここにサルマン教国と言う宗教国があるのだ。ネロ様以下六神どころか多神教である。日本も主流は仏教だが天照大神あまてらすおおみかみから道祖神まで拝むので同じ感じと思う。


この大陸を信徒国で網羅するサルマン教国の教義と実質的な運用を知っておきたいのと、俺自身が検索して知っている失われた遺跡群(穢れのお墓や埋もれた宮殿)を巡って歩きたい。現在、この世界の多くの遺跡群は密林の中、山脈、地中、極寒の地、海底にばかりあるのだ。決まった休みに予定しないと片手間に行けない所ばっかりだ。行き易い平地に遺跡があっても他国の領地のど真ん中じゃ揉め事を起こしに行くようなもんだ(笑)


遺跡は穢れのお墓以外に各地に一杯ある。それは失われた文明が有った事を表す重要な手掛かりでコアさんも知らない一億年前からの情報を得る事にも繋がる。五番艦ユピテル(検体収集船)は密林の中で古代遺跡の舞台とか思われてたぐらいで、そうした前人未到の苔むした秘境もあるってことね。


そんな訳で国土がほぼ密林と言うガイナック王国から旅を始めた。まず基本情報はねぇ、この星を構成する大地はカルスト台地が16%近くあるってこと。地球も10%~12%ぐらい石灰石の大地と言われている。それが示すのは古代の海底がせりあがって出来た大地って事ね。


ガイナック王国 西経118度、南緯11度

https://www.pixiv.net/artworks/104869304


この第三中央大陸は全域が石灰岩の大陸。海の浸食で削られた海岸線は白っぽい石灰岩で出来ている。そんな大陸の山も灰色がかった石灰岩で出来て雨の浸食で凄い鋭角に削られてたりする。中でも炭酸カルシウムの率が高く、特にもろい白い箇所は浸食でポコポコと大穴が空いている。キャンディルの猿人の住んでた大洞窟もそうだよ。カルストと呼ばれる石灰岩の山地には降雨で溶食されて地下深くまで水の通り道として雨水で侵食された大洞窟石灰洞が沢山あるのよ。


そして、そんなカルストの中に調べたい遺跡と地底の住居に亜人が居る。亜人と言うか食べる為に襲って来るから人間的にはモンスターと言った方が早い(笑) 


リザードマン(トカゲ人)、フォレストサハギン(半魚人)、ハーピー(鳥人)、上位種セイレーン(鳥人)、オライオン(馬人)、カトブレパス(牛人)、ウェアウルフ(人狼)、ラミア(蛇人)、上位種メドゥーサ(蛇人)、モルモー(コウモリ人)、上位種ケライノー(吸血鬼)


カトブレパスの上位のミノはこの密林にいない。


人と掛かってるだけあって、知能も高く人っぽく群れで生きる。当然攻撃力も高い、だから大魔神と宇宙の騎士と精霊軍団でやって来た。俺は上記の奴らに横堀の魔穴で散々鍛えてもらった恩があるから、襲ってきたら恩を倍返しにしてやる。特殊攻撃など鉄壁のパールさんが跳ね返す。俺以外のPTメンバーには効かないと思うから俺は自分の心配だけで非常に気が楽だ(笑)


現地の慣れた冒険者でも恐れて踏み込まない前人未到の口を開けるロストワールドの遺跡を探検だ。


コアさん、ニウさんも知らない世界を覗けて嬉しそう。この人たち観測命だからな。そんな訳で密林の大地に直径100kmにも及ぶ大きなカルストの落とし穴にやって来た。中に手付かずの遺跡があるのよ、ふふっ。


穴の大きさはさておき、深さが50m~100mも断崖絶壁だ。命知らずの冒険者だって行かねぇよ、そこらじゅうに横穴が開いて亜人が襲って来る所に誰が行くか(笑)


そんな石灰岩の断崖絶壁を覗き込むと、多重視点で視た通りに横穴が多数開いている。ハーピーたちの巣だ。ロープで降りようもんなら襲われて落ちちゃうわ。当然そんな横穴の中には上位種のセイレーンも住んでいる。ハーヴェスから封印するために預かったセイレーンの声帯はまさしく北海の浸食された石灰岩の断崖絶壁に住み、沖を航行する船を襲うセイレーン討伐の品だ。


そんな目の前に見えてるハーピー穴も転移でパスして降りちゃう。


降りても密林だ(笑) 何千年何万年も動植物が死んで死骸の上に植物が・・・を繰り返して石灰岩の上に土壌があるのよ、普通の木が根を生やしてる。


五人がニウさん先頭に俺>シズク>スフィア>コアさんと続く。遺留品検索に色々引っ掛かるが腐食しきった剣、魔鉄の鎖、皮製品など腐り落ちて養分になってるよ。全部さらわれてきた人間の遺留品だった。


「アル様、足元にご注意を」

「え!あぁ・・・」


大きなカルストに開いた穴、そこに根っこが絡んでまるで落とし穴の様に腐葉土が穴を隠す。これ下手に転移して脇の下までズボッと行ったらカッコ悪いなぁと思うと精霊たちが笑うのが分かる。


あぁ、見てるよモンスターちゃん達が、陽が落ちるの待ってるのね、そんなヨダレ垂らさないでいいよ。食べられるの俺だけだから、あんま肉ついてないよ。


無言の行進なのに精霊たちに大ウケ。


ニウさんに言いかけて止めた。お目当ての洞窟に右に折れるのは高空からお見通しだ。


「そのまま折れて市街に入ります」

「うん、おねがい」


何千年も経つと市街と言ってもあっちの世界の古戦場や城址みたいに知ってる人じゃないと分かんないぐらい自然に埋もれちゃう。人口建造物はグズグズに崩れてる。自然石を使って作った物はかろうじて残ってる。人口建造物って二、三千年ぐらいでダメになっちゃうみたい。ここは二万年ぐらい前の遺跡だから見る影もない。


何かヒューンと飛んできた。

「ビッグホーク系の魔獣ですね」


言ってる間に無音で低空飛行に移って襲って来たのでシズクが磔にしてニウさんが斬ってオワタ。


「飛べる奴は普通に上の密林から降りて来るんだね」

「鳥系は目が良いですから(笑)」


ホークアイ鷹の眼だった(笑)


「アル様!あそこ!」


巨大トンボだった。羽根が8枚もある。検索したら羽根の多いトンボも地球にはいるみたいだった(知らんかった)羽根から羽根まで6m程で肉食、視たらとんでもない複眼で俺達を見てやがる(笑)


俺かシズクかスフィアを見てるからさらうつもりだな、と思った途端にトンボが切り刻まれて墜落した。墜落シーンが戦闘機が落ちて行く様に錐揉きりもみしながらバラバラになって落ちて行った。


スフィアの頭を撫でてやる。

なんか俺のファンネル=シャド、スフィア、シズクの様に思えて来た。俺がティリリリンと感知すると俺の魔力で自由自在に攻撃してくれる自立思考型ファンネル。そうなるとリルはビームサーベルの役割だな(笑)


脳波連動無線誘導サイコミュ遠隔攻撃ビーム兵器。


精霊のウケも良いようだ。



突然聞こえる声。


「蜿、縺咲屐邏?↓繧医j縺薙?蝨ー縺ォ遶九▽莠コ髢薙?縲∵?縺ョ繧ゅ?縺ァ縺ゅk縲ゅ◎縺ョ縺セ縺セ豢樒ェ溘∪縺ァ騾イ繧?縺瑚憶縺」


「アル様?」


(えらい所に踏み込んだかも知れない)声をひそめて言う。


シズク達はもう知っている。


(交感会話で。ニウとシズクとスフィアは警戒)


「何か分かりました?」


「古き盟約によりこの地に立つ人間は、我のものである。そのまま洞窟まで進むが良いって言ってる」


「僕がしゃべると心声で相手に分かるかも知んないからそのまま跳ぶ、逃げてダメならやったるわ。盟約を持ち出したから荒神あらがみだと思う、でも肉声使ってるからそこまでの存在じゃない気もする。もし僕が相手を知ろうと視たら半神も僕の存在を理解してから視れない」


「そういう事で荒神あらがみはまだ早いって言われてるからね、理論で逃げる。追っかけて来るかも知んないから跳んだ先で待ち受けるよ、来たら全力でやるからね(笑)」


「かしこまりました」

ALL(はい)


(交感会話を解いた瞬間跳ぶぞシャド!)

(はい)


アル達はその場から消えた。



・・・・



飛んだ先は魔獣ネズミで滅んだ国、マジス王国。


ミスリル鎧のポヨーン魔法を起動して、防御恩寵MAX、釘バット剣を出した。戦うにしても相手の陣地よりマシだろ。このメンバーで負けるなら本望だ。でも出来たら来ませんように・・・。


五人で全周囲警戒。


(シェル、見た感じどうだった?)

(大きな存在とは思えなかったです)


(音声で僕に喋ったけど、シュウ様の時はシェルに話しかけたんだよね?あの時なんて呼ばれたの?)


(無鉄砲な小僧の眷族けんぞくはお主か?と)

(・・・ごめんね(笑))


(あの荒人神はシェルの存在を見てました)

(今回はシェルに気付いて無いっぽいね)


(シェルには気を回してません。シズクとスフィアは具現化を感知してます)


(あそこの洞窟はモルモーコウモリ人ケライノー吸血鬼しか感知してなかった。そもそも実体化してなかったら感知出来ない?)


稀薄きはくなら無理です)


(吸血鬼の上位種?バンパイア特性ならノーライフキングとかが荒神に当たるのかな?)


(地の盟約ですから地に縛られてるかもです)

(ここには来ないってこと?)

(そう思います)

(よかったー!半神と死闘かと思った(笑))

(アル様なら半神でもイケるです)


(ダメダメダメ!何言ってるのシェル)


(アレは存在が小さいです)

(そんな小さな半神居ないって!舐めちゃダメ)

(関わらないのが安全なのは確かです)

(そうそう!その通り!)

(取り合えず、やり合わなくて良かった)

(はい)


「大丈夫そうだね(笑)」


「シェルの話だと地の盟約を持ち出す相手だから土地に縛られる存在かもって。追って来る心配は無いぽい」


「実体のない者への攻撃は、ニウとコアには魔法しかありませんので不用意な交戦はけるべきと考えます」


「僕は何かに縛られてる存在だけでもご遠慮するよ、そんな存在普通な訳無いもん。普通の器は土地や盟約に縛られないもん(笑)」


「シェルは存在の大きさ的に僕が勝つみたいな事言うけど、まだ僕は出来上がってないから逃げておく。ケライノー吸血鬼は間違いなくいた、あの存在はいなかった。と言う事はケライノー吸血鬼に変えた真祖系の荒神って事もあるんよ」


「かしこまりました」


「やっぱ古代遺跡は今は止めた方がいいわ、いにしえから遺跡守ってる変なのが居そう。コア達も待ってね、自信が出来たら必ず連れてってあげるからね、少し待って」


「お気になさらず」


「イヤ、元々不死系のモンスターって魂の輪廻のその辺どうよって聞きたいの。現世に留まる時間を長くして磨いてるとも言えるでしょ?襲われたらやったるけど、そういう事も知らずに仲良く秩序の元に住んでる所に乗り込んで知的に話す奴までやっつけてたら僕らが奴隷狩りみたいじゃん。それ混沌衆まんまよ?(笑)」


「ごもっともでございます(笑)」


「その辺の所を説いて、納得するなら解き放つし、襲って来るなら解き放つし」


「二択になってません(笑)」


「僕たちは大人しい生物いきものですと言うなら何もしないよ、でもなんて言ってる奴はろくなもんじゃない。そのうち〆てやるって事よ、囚われた吸血鬼が居るなら魂を解き放つ方向?」


「何言ってもどうせ襲って来ますよね?(笑)」


「襲ってきたらやるしかないじゃん。生存競争だよ、僕だって率先して死にたくないよ(笑)」


ALL「(笑)」


「さて、戦略的撤退したけど不利な状況を回避しただけだ。ケチを付けられたのは気に食わないけど空いた時間をみんなで休もうってのは本音なの。だから場所を変えて旅行は続けます」


精霊たちが喜んでくれてるのが分かる。

コアさん達は指示待ちだなコレ(笑)


「サルマン教国は後回し、リケット教国圏を見に行こう。ニウとコアさんは執事とメイドに、僕らは貴族服に変えて旅を続けます」


「かしこまりました」


「リズの誕生日まで40日ある。好きに行こう!」


「クラン面接をお忘れでございます」


「あ!そうね・・・」




次回 360話  7位ギルド講習

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