第356話  ロスレーン家の勲功



7月29日に急に見つけた奴隷狩りで8月1日までは忙しかった。8月1日の夜の時点で拠点施設のプロットも出なくなったのでもう安心。あとは食事の後にでも見つけて捕まえて来るルーチンとなる筈だ。



8月2日(風曜日)


昨日は光曜日なのにリズとデートどころでは無かった。朝から跳び回って彼岸島のゲストを誘拐して晩にホッと一息入れたら、情け容赦のないアロちゃんに言われた。


「明日はクランの面接が7時からです」

はーい面倒臭い

「アル様のお仕事ですが?」

#「はーいって言ってるじゃん!」

「面倒臭いと思考するはーいが観測されました」

「・・・」


そんな日常は変わらない。


朝から早めにクランに行った。


昨日面倒臭いと図星を言われたアル。自分で食いつき気味に面接に行き、面倒臭い観測を真正面から否定しようと思うアル。7時からのイコアさんの集会前に面接を終わらせてやる。ざまぁみろアロちゃんめ。(まったく関係の無いアロちゃんはざまぁみない)


今日の面接希望のPTは6時30分には13名が集合してた。クラン雷鳴の噂を聞いてるだけに心がけがよろしい。6位PTが6人と7位PT5人とソロ2人の13人。特に7位の7人は冒険者技能を磨こうという気概が見えた。


親元で手伝いをしながら情報を集めて7位の依頼が終わる頃に雷鳴に入ろうとPTで決めた5人は余裕を持って徐々に家業から冒険者にシフトしていた。ステータスボードを得るのに親にも苦労掛けたくないと雷鳴に来たソロ一人。一人前の冒険者を目指す最短コースは雷鳴だと来たソロ一人。


7位の依頼は30の依頼達成で6位の鉄級になる。


30枚の依頼票の達成。依頼票は大銅貨1枚~2枚の依頼など無い。一日動き回って大銅貨4枚~6枚(4~6000円)の依頼だ。依頼達成で取り合えず食えるのだ。貧民なら今まで通りの場所で寝たら食事代だけでお金が溜まる。冒険者ギルドは成人になる者の救済機関と言う理由はここにある。


初心者は最初ここで間違える。稼げて食えると安心して大銅貨3枚(3000円)の宿に泊まってしまう。それをやったらアウトだ。1日の稼ぎが3食と宿代で吹っ飛ぶ、食っていくのが精いっぱいの自転車操業になってしまうのだ。


6位になっても金が貯まらないから装備が最低。剣を研ぐ事すら忘れて生活に追われるようになってしまう。


実は30回の依頼をこなすと大体小金貨1枚(20万円)弱の金額になる。この期間にどれだけ装備を6位の依頼に耐えられる物にするかが7位なのだ。


今日の冒険者7人は平民で余裕がある分、情報を集めて夢を持ち親の元で金を貯め、共に依頼達成の金を武具に突っ込んでた。そして俺のクランで計算通り無利子の金を借りて全員が6位の鉄級になる前にステータスボードを手に入れた。


平民と貧民の違いが分かると思うがそれ程環境が違う中で7位の冒険者も生きている。俺としては貴賎は無い。どちらの言い分も分かる。今日の奴らは分かってる、分かってる分突発的な嵐に弱い。ズタボロの貧民上がり、生活に追われて6位になっても稼げない奴らは生きるか死ぬかでやってきたので心は強い。


そう見るとどちらも公平に見えるのだ。物質的に恵まれてると見ると前者だろう。しかし魂の磨きを前提に考えると情報に裏打ちされた計画に移す知恵、吹きすさぶ寒風に耐えて来た精神と考えるとどちらの器も公平に思える。


そういうのを考えると(魂を磨く器達を)神が助けない理由がおぼろげながら見える。前者も後者もどちらを見てもそのことわりを知るアルが環境を整えてやりたくなるのは分かると思う。


そして平民と貧民という尺度を広げると王様から貧民に至るまで器として生まれた人ならば神の元に公平なのが分かって貰えると思う。人だけなのか?それはおかしいと思えるならば全ての生き物は公平なのだ。


夢を持って前進する奴らを見て俺も元気をもらった。


アロちゃんの当てつけに早く出て来たはいなくなっていた。


ご機嫌でハウスに帰るとアロちゃんがお帰りなさいませと微笑んだのでアルも微笑んで言った。


「朝食をお願いね。アロちゃん!」

「かしこまりました」


7時前に面接を終わらせたアルを見てイコアさんが明確にその理由を予測していたのをアルは知らない。


・・・・


・服が出来たと洋品店の連絡が来たので取りに行く。

・銀行にマルテン候の使者が俺に会いたいと来た。


朝食の後、やる事は色々あったが、メルデスの洋品店へ大人の貴族服一式、大人の冒険服一式をガンズ地区のドワーフの洋品店に取りに行った。


変身してやらかした時に慌てて作った服だ。


アルの各種衣服はとりあえず1年分揃えてあるので、明の身体用の服をたくさん作った。以後は明の身体をベースにして変身することにした。それなら服は共通だ。その数なんと20枚。アルの時にも着られる服で大人になっても違和感が無い服。


それをサイズ自動調節オートアジャストの魔法紋でアルの時から来てたら良いのだ。それならお着替え後の変身でアルの服→アジャストの服→変身で大丈夫。このルーチンを覚えないとまた破っちゃうからダメ。


俺は貧乏性だからさ、折角身体の成長に合わせて1年分持ってる服は勿体ないと思うのよ。折角持ってるからちゃんと着てやりたい。


冒険服や剣帯も大人の身体に合わせてドワーフの洋品店で新調した。平民が着る冒険服こそ最強の衣装なんだよ。見ただけで普通の冒険者を体現してる。(当たり前だ)


全部アロちゃんに渡してサイズ自動調節オートアジャストを付けてもらう。


・・・・


もう一つの用事。


俺に用事が有るとマルテン領都の銀行に使者が来たらしい。


10時にマルテン侯爵家に行って来た。

俺としたことが転移の大魔法用の部屋を用意してもらって、サルーテや王都S.Aの視察の後に政務官の会議にも出たのに、作りに行く事ばかりが頭にあって相互通信機をマルテン侯に渡すの忘れてたのよ。


領都の銀行に俺を呼び出す侯爵の使者って、やっぱ作ってるの知ってるから連絡来るよなぁ(笑)


そんな訳でマルテン侯爵の執務室横の応接に跳んで、呼び出しの呼び鈴を鳴らした。すぐに隣からメイド長のカーラさんが顔を出し、侯爵を呼んでくれた。


「アルベルト卿、早かったな(笑)」

「これをお渡しに来ました」


相互通信機を出す。


「これは?」


「この相互通信機は、ロスレーン、ミウム、ナレス、私の家、リズの家に置いてあります。使ってみましょうか(笑)」


「ロスレーン家の方どなたかおられますか?」


(アル様!ジャネットでございます)

「お爺様はいらっしゃいます?」

(今は、演習場の方へお客様をご案内に)


「そんじゃいいや、これマルテン侯の執務室に相互通信機が入ったので危急の場合は話せますとお爺様に伝えてね」


(かしこまりました。要件はそれでよろしいですか?)

「うん、お願いね」

(お伝えいたします)


「魔力を込めて何々家の方と呼び出して下さい」

「すごい魔道具じゃな」

「はい、銀行と同じ神教国製でございます」

「すごい国であるなぁ!(笑)」

「はい!」


「あ!呼び出しの要件であった」

「カーラ、アルベルト卿の昼餉も用意せよ」

「はい」

「長くなりそうなのでな、先に頼んだ(笑)」

「長く?」


「この度の紅玉の発見だ。代官が早馬にて送って来た塊を鉱物商に鑑定してもらった。産出の場所を是非見たいと言うのでな、鉱山技師、鉱石学者と一緒に儂も見に行ったぞ(笑)」


「どんな感じでした?濃い様には見えましたが」


「非常に有望であるという話だった、資材と人員を投入すれば10年規模は確定で算出する量との見通しじゃ。近くの碧玉も緑石も同時に町を補給基地にすれば効率よく採掘出来ると聞いた。よくぞ見つけてくれた」


「そうですか!よかったー!(笑)」


景気の良い話に執事長のゴアさんとメイド長のカーラさんの顔がほころぶ。


それでな、顔料鉱石の採掘はヨレンソ公爵領の鉱山技師が有名らしいが、鉱石商の伝手でナレスから呼ぶ事にした。採掘開始は小規模施設が整う1年後、1年掛けて荷下ろしの山道を整備せねばならん。急斜面に出来た平地に鉱物商が跳び上がって喜んでおったぞ(笑)」


「あそこはちょっと急過ぎですよね?(笑)」

「小規模の採掘には充分と言っておった、どんな鉱山も採算が出てから少しずつ拡充して大きくするらしいからな、それ程鉱山の経営は金が掛かるそうじゃ」


「開門村の建設は調度良かったですね」

「ん?」


「領内S.A分の投資抑制に政務官が頑張ったからマルテン領には余裕があります(笑) 現在、S.A分の収入は当初収入では王都の1.5倍も稼いでおります。王都は30万人に対して10万人規模、マルテン領は50万人に対して30万規模のS.Aです。予測では民に周知される3ヶ月以後には3倍以上の安定収入となるはずです。王都と違って用地は潤沢で橋梁などや複雑な構造のS,Aが無い分、安価に出来ております。その収益なら2年も掛からずマルテン領に譲渡となる筈です。鉱山が拡大していく頃には開門村の投資も取り返し、その上街中のS.A収入も入って来ます」


「おぉ!開門村の収入報告は良い話を聞いておったが、そうか。街中のS.Aはそうなっておるか。喜ばしいのう」


「人口がロスレーンと全然違いますからね(笑)」


マルテン領はロスレーン領20万人弱の2.5倍の50万人ほどいるはずだ。コルアーノでも屈指の領だ。キャンディル領が4年前に24万人だったこと。その時分のロスレーンは16万人程と考えれば王領と並ぶ屈指の領地と分かる。


「ミウムも同じものを作ったが、うちはミウムとは領の構造自体が違うからの、ミウム領は運営自体が特殊過ぎる。普通の領ではああはいかぬ(笑) うちはナレスを背負しょってる分、武官も少なく税も適正で済む農業、漁業、林業の真っ当な領だが今度は真っ当な鉱業が持てるわ」


「ミウムは真っ当じゃ無いと言ってますよ(笑)」

「何度もカレノフミウム伯に言っておるわ(笑)」


この地はコルアーノ建国の際、ナレスとの国境を策定する都合上、北の大河で二国を分けた際にナレスのアルタミラ公爵家三男の領土であったものを、ナレス王との申し合わせで、コルアーノの領土に併合しマルテン侯爵領とした。


それは1000年以上続くナレス王国に忖度そんたくして、有事戦力や人口縛り無くしてナレスの王族から侯爵家になった家柄である。当時は有事になったら隣の国にいる親のアルタミラ公爵家が助けに来るからである。事によればナレスが国として兵を挙げる血筋の濃い家だった。


マルテン侯爵領はそのナレス王家の血筋だけで人が集まった。コルアーノ王国の侯爵位で、大河を挟んでナレスの公爵家が親。民もこの領は戦乱も無いだろうとコルアーノ王国建国の際に安住の地を求めて移住して来たのだ。豪族時代が終わったばかりの黎明期れいめいきのコルアーノはそんな国だった。


「さて、褒美を考えねばな(笑)」

「いえ、褒美は結構です(笑)」

「何を欲のない。聖教国はそうなのか?(笑)」

「あ、そうです。教義で!(笑)」

「取って付けたように言う(笑)」


「廃嫡となりカレノフが励まそうと演習地を与えたら大きな実績で返って来たと聞いたではないか。儂は何も与えておらぬ、与えておらぬのに実績で返されたら侯爵はどうしたらよい?(笑)」


「それは・・・」並列思考がフル回転で答えを弾きだす。


「富人は財を贈り、貴人は言を贈ると言います。ナレス王家の貴人のお言葉を下さい」


老子の言葉がヒットしたので改変した。


「む!・・・ゴアよ聞いたか?」

「は!」

「聖教国の皇太子は頭が良いぞ(笑)」

「ラルフ伯のお孫さまです」

「違う麒麟児が出たの(笑)」

「え?」


ゴアさんが書類を出した。


「まぁ良い!鉱山が軌道に乗った時の権利書だがサインせぬか?リズベット第三王女と結婚する頃には有効になる。結婚祝いとして調度良いと思っておるのだ」


「お気持ちで充分です。領の宝はS.Aの様に領民へ」

「・・・」

侯爵がゴアさんを見る。

「・・・」

ゴアさんも侯爵を見る。


「お主はロスレーン家が昇爵すると嬉しいか?」


「え?」


「子爵から伯爵家になった。あれは嬉しいか?」

「それは、嬉しいです。認められたんですから(笑)」

「そうじゃの、認められるのは嬉しいの(笑)」


「そこのゴアが去年お主の兄の結婚式に出た」

「はい、ありがとうございます」

「去年の話じゃ、ゴア聞かせてやれ」


「は!ルーミール伯からロスレーン家とよしみを結びたがる貴族が派閥を越えて多数あり、アルベルト様を守らねばならぬとのお話がございました」


「え!私を守る?」


ルーミール伯は王都にも近く、国王派ハルバス公、ベークス侯、貴族派ヨレンソ公、マルベリス伯とも領地を接している。


「次男ヒルスンにはサルーテの子爵領への奏上が王家に為された、養子にもらう事は出来なくなったな。アルよ、次は誰じゃ?」


「モニカ姉様ですか?」

「長女もおるな、しかしロスレーン家は伯爵家じゃ、家格と息子の年齢が釣り合わねば長女はなかなかもらえんぞ(笑)」


「・・・私ですか?」

「そうじゃ(笑)」マルテン侯がニヤリとする。


「普通なら、叙爵されて貴族家として嫁をもらう三男が廃嫡されておる。色々と消息を聞かれておったそうだぞ」


「はぁ・・・」


「簡単に言おう、廃嫡のお主を召し抱える。もしくは次女、三女と結婚させ領地を与えようとする貴族が去年の結婚式の時点であったのだ」


「もうですか?私は15歳ですよ」(あと4か月で16歳)


「立派な成人じゃな、学院なら婚約しても恥ずかしくはない。まぁそんな話はコルアーノの貴族の話じゃ。しかし裏では聖教国の皇太子というお主にはナレスの姫と一番に結婚してもらわねばならぬ。それはナレスの国を挙げての願いじゃ(笑) 寄り親の侯爵家はどうすればよい?」


「邪魔をすれば良い?」視た事を言った。


「そうじゃな、だからルーミール伯の情報で噂を流した。ラルフが廃嫡した三男は放逐し、家にはおらんと言う。しかしアルよ、よく聞け。お主の健康状態に気付いておる貴族もおる。その貴族家が探し出す前に、寄り親の所にいると噂を流した」


「あ!」


「そうじゃ、中立派閥の侯爵家におるならどんな派閥の貴族家も手が出せんと話が収まっておった(笑)」


「ありがとうございます」ぺこり。


「しかしな、5月の中旬、サルーテのS.Aや建てたばかりの王都のS.Aを見せてくれたじゃろ。利用する民が凄かったの?あれは不味いと思ったが、王家から振ってきた話では仕方がないとも思った」


「え?」


「王家がロスレーン家に近付く口実を与えてしまった。S.Aのロスレーン家への発注、それすらも街路灯献上の礼に発注した口実かもしれんがの(笑) 王家に確たる勲功を示したロスレーン家に褒美を出すなら。ラルフを喜ばせるためにお主を王家に召し抱え、不名誉な廃嫡を貴族院に取りなし復活させる目が出て来た」


「えー!」


「そういう可能性があるのじゃ。儂の邪推じゃすいかも知れん。しかしS.Aの王都民の盛況、確たる増収の道、あの小規模な騎士団の詰め所を各地の領主が見たら武官の使い方に舌を巻くのは儂だけでは無いぞ。領主は皆真似をする筈じゃ、どこも武官が余っておるからの(笑)」


「はぁ・・・」


「王家自らが率先して、有事の備えとしての武官は平時はこう使えと示した事になった。S.Aにしてもいにしえの名残ある王都、言い換えれば古くて狭い土地を活用してあのような収益を上げる施設を作ったんじゃ、褒美を与えてもおかしく無いぞ」


「そこで相談じゃ」

「はい?」


「そこな契約書にはサインをすれば鉱山発見者として莫大な利権が書かれておる。サインをすれば鉱山の政務官として伯爵4位(一代爵位)を与える事になっておる」


「お主をそうやって守ると、どうなるとおもう?」

「さぁ?」


「簡単にお主を召し抱えられなくなった王家は、何かの理由でロスレーン伯爵家2位を1位に上げようと動く可能性に変わる」


「えー!そんな簡単に?」


「当然普通はそんなに簡単ではない。各派閥に摩擦が出来る方向、中立派の勢いが増す方向へは行かん。しかしロスレーン家は別だ。国王派、中立派、貴族派皆に利権を分かり易く分けておる。利権を派閥で独占するのが貴族派閥じゃ。先程顔料鉱石の話をしたがヨレンソ公爵領の鉱山や販売ルートは全て貴族派の寄り子で独占されておる。鉱山技師をそこからは都合できんのが本音じゃな(笑)」


「幸いにもうちはナレスとよしみの深い家じゃ、小規模な鉱山から始め、ナレス、神聖国、チノ、スラブ、ギブラル、マハルまでナレスの隣国への販路を少しずつ拡大すれば貴族派閥に睨まれずに済む。農業、漁業、林業主体の領が小さな鉱山で敵を作るまでもないからな(笑)」


「そんな訳でロスレーン家に褒美を与えても、コルアーノでは反感を買う貴族はおらん」


「はー・・・」


「それでは言葉を贈ろうかな(笑)」

「はい」


「セフェリ・マルテンより・・・ではないな。セフェリ・ド・アルタミラ・デ・ナレスよりアルベルト・ロスレーンにマルテン侯爵領都 伯爵位4位を叙爵する」


「はぁ?」 なんじゃそれは、その言葉は!


「叙爵の仕方を知らんのか?(笑)」

「・・・」ぽかーん。

「ほれ!剣を捧げんか(笑)」


頭真っ白。


「ゴア!」

「は!」


頭真っ白な俺を立たせて剣を俺に持たせてカッコだけ付けさせるゴアさん。


「アルベルト・ロスレーンをマルテン侯爵領、伯爵位4位に叙爵する。新鉱山の代官として政務に尽くせ」


「え!」


「家名はリンバスを名乗るが良い」


「リンバス家の家名をアル様に?」

「そうじゃ。ゴア、その名で叙爵じゃ」

「は!」


えー!


「アルベルトよ、リンバス家とは現王家のヴォイク家、アルタミラ家、ノヴァ家と同じ由緒ある古来のナレスの家名じゃ、穢れと戦った誇りある家の名だ。ここはコルアーノ王国、古来のリンバス家を名乗っても第三王女の婿であれば陛下も笑ってお許しになるであろう」


「あ!ちょっとお待ち下さい!」


アルはその場で消え、3分ほどで帰って来た。


「これを!」

「?」

「ナレスの公爵家の両手剣と片手剣だそうです」

「これを何処で手に入れた?」

のみの市で」※ガラクタ市

「はぁ?」


「蚤の市で売ってたマジックバッグの中から出てきました、ナレスの金貨と高貴な衣類と一緒に」


「・・・」


「聖教国にマジックバッグの解錠を行う技が有ります、まぁ危ないので禁呪にされてますが、それで魔法の練習にちょっと・・・」


「ゴア、紋章官に見せよ」

「は!」

「済まぬな。いにしえの名ではあっても紋章までは分からぬ」

「いえ、突然思い出しました(笑)」

「(笑)」


「商人の見立てではドワーフの技モノだそうですよ」

「ほう」


ゴアさんは両手剣と片手剣を持って出て行った。


「カーラ、茶をくれんか」

「ただいま」


「アルベルトよ、これよりお主はマルテン家に仕える名誉伯爵、アルベルト・リンバスとして貴族名鑑に名を連ねる事になる。それはしいてはラルフの昇爵への布石となる。街路灯の献上、S.Aでの王都民の生活向上、貴族への規範、財政への貢献、サルーテ奏上による王国全土への景気拡大、それはコルアーノ王家に対する充分な勲功となろう。流石にいつかは分からぬぞ、お主が言ったS.Aの投資が利益に転換以降の公算が高いな。それは非の付けようのない増収の功績となるからの。派閥の長はそう読む筈じゃ、そして文句は出ぬ(笑)」



マルテン侯はお茶を飲みながら言った。



次回 357話  神聖な者

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