第350話  貴族がラフ過ぎる件


6月3日(火曜日)


タナウスでは移民歓迎式典の用意が着々と進んでいた。


入港予定日。

6月8日までにサントからの3隻移民1100人

6月10日までにハムナイの6隻移民2000人

6月12日までにワールスの2隻移民600人


歓迎式典は15日(光曜日)予定。


魔道帆船(商船)で直行なら早いが、なんせ人が満杯に乗っている魔道帆船(移民船)だ、水も食料も商船の乗組員の3倍の人員を乗せている。走る航路は赤道上の熱帯、それでも概算で60リットル樽の水が1日約30人の配給分(毎食のスープも含む)。1隻に300人なら飲料水だけで一日15樽となる。(実際は帆船に乗り込む乗組員60人もいる)


食材も傷むから乾燥豆類中心の航海だ、寄港して補給した後、出港3日間は果物、野菜を出して次の港まで豆のスープと干し肉と水とパンである。補給も大変なのだ。


※わざわざ魔法袋に食材は持たせてあるが、この世の常識だから普通の移民船として航海してもらっている。


その上、コアさんが気象海象を予測して安全航路を確保するから1.5倍以上の日数が掛かっている。


そんな不自由な長旅の後なので、移住した後3日以上置いて6月15日(光曜日)に移民歓迎式典を予定している。



歓迎式典の用意は内政部が全て取り仕切っている。


神都代官ベルン・リュードスを先頭に、財務政務官のニール・オットマン、民生(移民)政務官マール・ニクラス。元チリウ王国の宰相、財相、外相3人が率いていた政務官23名に当時の部下達の執政官22名の計48名が付き従う。神都警備職の元騎士団と元守備隊の26名を入れると、これが内政部の陣容だ。


この下にコアさんが率いるメイド部隊、執事部隊がいる。実は教会セレモニーも内政部の主導で検討されてベルン代官の上司のコアさんの承認を受けて催しが決まっていた。


今回も横断幕の作成から到着式典、家の抽選会、街区の名前まですべて決まっている。乗船の時に移民団の団長が決められて皆に紹介され、納得された時点で街区の名前は移民団長の名前になっている。


新しい土地に行くのは皆が不安だ、その不安の中で幌馬車隊の隊長がいるのといないのでは全然違う。移民団長や副団長は皆の相談を受け、一緒に乗船したタナウスの移民相談員が問題を解決する。2か月の航海で移民団は一つになっていた。


移民団は一隻一隻がそれぞれが新しい土地へ一緒に踏み出す仲間になっていた。抽選で職種別に店が決まると家も決まる様になっている。その家は移民時の団長の街区に抽選で決まる。逆に店は隣近所が違う街区の人達でお互いに顔見知りを作る様に抽選される。


代官の名前が付くベルン街区の目抜き通りを中心に今回の多岐に渡る職業集団の店や職場は建てられている。そこで働く人は、それを囲む様に郊外のベッドタウンに帰って行く感じだ。


船から降りて岸壁の根元に作られた漁協の解体施設で預かった荷物の受け渡し。そのまま家の抽選会と家族分の支度金が渡される。家が決まり次第にメイドと執事が荷物を持って家に案内する。ポヨーン村の人達が来た時と基本は同じ。


歓迎式典では船から降りる移民団団長と10人の副団長に学校の子供達から花束が渡される。


アルムさんとクルムさんは花吹雪用の色々な花びらを集めてファーちゃんに渡し、同じものを沢山合成して花吹雪を精霊魔法で舞わせると言っていた。


アルノール卿は移民船が入るたびに歓迎の花火が揚がる多段魔法陣を組んで綺麗に見える場所を選びながらメイドと執事を引き連れて設置している。本当に宗教国に相応しい賢者だ。


俺の移民に関する仕事は無い。


俺はシズクとスフィアを連れて開門村セットを作りに行って、村の掟に裁かれた汚れ者をせっせとナレス村に運んでいる。



・・・・



奴隷狩りは5月21日より誘拐し始めて7日で後進国や未開国の現地実動部隊を狩り尽くした。現場には奴隷狩りの痕跡もないほど施設も全部持って来た。今は拠点もクソも野原しか無ぇよ(笑)


奴隷狩りの一次生産者が絶滅したので当分タナウスに入荷は未定だ。今は週末に奴隷検索して引っ掛かった者を狩るだけだ。


今ね、世には奴隷を運ぶ船が無いの、新たに奴隷商が船を買ったり、奴隷用の庸船契約すると週末の検索に引っ掛かるから奪いに行く。その船に乗る予定の奴隷狩り要員も芋蔓式に狩るから大丈夫。


狩って連れて来るのは簡単でもコアさん達が大変だった。すでに1~2月の略取奴隷の大量誘拐で奴隷受け入れのノウハウは確立されてるが、最初の1週間は一日4000人単位でタナウスに連れて来て大混乱になった。今回は返すのでは無い、タナウスに保護する人々なのだ。


もう2週間経った事で受け入れは徐々に落ち着いた。


誘拐して来た奴隷は衛星都市5か所で部族ごとに分けて近郊の開拓地に入植させはじめている状態だ。未開地の村なので街の生活を知らない。一部族100人から300人の村単位で移送されていたのでその単位で保護している。


タナウスで事情を説明して、村単位で奴隷狩りから助かった事が分かると皆が元の土地に帰りたがる。元の土地へ帰って、あのならず者たちから部族を守れるのか?と俺が族長を説き伏せる。この国は宗教国なので安全に暮らせると言っても、簡単に信じない。良かれと思って勧めてるのに疑いの目で見られるから説き伏せるのがマジ大変で面倒臭い(笑) 


基本は捕えられた全ての者が一瞬で違う土地に来た事を知っている。手枷足枷から解放されて神の大魔法と平伏してくれる。しかし族長ともなると侵略の権力者と対峙したり他の部族との駆け引きの経験からか大魔法関係なくその利害を疑ってくる。


まだ大部分の原住民は疑ってタナウスへの帰化に難を示している。そんな部族は衛星都市近郊にある農民用の村に寝起きさせて落ち着いた部族から好みに合う土地を見せて顔色を伺う(笑)


好感触だと似たような場所をコーディネイトしてメイド部隊が開拓し、連れて行く状況だ。


連れて行ったら連れて行ったで色々と問題が有る。その土地が本当に住めるのか部族で話し合って色々確かめるのだ。当然だ。得体の知れない国に連れて来られてここで暮らせと言われても信じられる訳が無い(笑)


開拓された土地に来ると最初は槍作って海や大森林で獲物を獲り出すのよ。食料の豊富さを知るとニコニコして部族総出で大人しく村づくりに励んでる。獲物が取れたら部族は平和だ。


今回知った奴隷狩りの一次産業。


俺はそれを目の当たりにして現地組織を学ばせてもらった。奴隷を狩って来る実働部隊宿舎、収穫によって払われる賃金受け渡し事務所、酒場、娼館、医療施設のある奴隷集積場の拠点、積み出す港(水深のある入り江に奴隷船が停泊して小舟で往復する)大陸で売る奴隷商人と集めている商人が違った。


大陸で売る商人が証文と共に集めている商人に金を渡すと、証文の奴隷が集積場から出荷される。世の習いで最初の金が払われた時点で捕まえられた者は奴隷の焼き印を押されてしまう。


奥地の村はご丁寧に中継拠点を構築してからから襲撃していた。沿岸の村を狩り尽くすと中継拠点を建て、そこから200人超のならず者が更に奥地を襲う。


海沿いの拠点があるところは、まだ奥地は開拓されてない。奥地に行く前の海沿いに村があるから手っ取り早く海沿いの村を襲っていた。捕まえやすいので集められた奴隷の7割は海の近くの民が多い。


タナウスで開拓された海の近くの土地を用意すると、簡単な高床式の家を皆で建てるから食事の用意と簡易的に雨がしのげる大きなキューブハウスを置いている。塩と毛布と寝られる屋根が有ったら自分達で生きていける人達だ。


この二週間はマジ忙しかった。


最初の4日間で未開地、後進国(国の守備隊が不整備で助けを求めても放置される)で暴虐ぼうぎゃくを働く奴隷狩りは一掃した。次の3日間で先進国に寄港する奴隷船を全部奪って来た。やってる間にタナウスに受け入れ態勢が整うと、タナウスに進路を向けた奴隷船は船ごと海上から居なくなった。


飛空艇で大砲を奪うのも、奴隷狩りを誘拐するのも一緒だった。街の住民を一撃で隷属して布教してしまうアルに奴隷狩りの一行200人、奴隷集積拠点に寝静まる300人など一瞬で無力化してタナウスに連れて行く。


奴隷狩りから視た情報で、どの国にも望まれるのは共通語を話せる後進国や未開国の人間と獣人だった。捕まった人種も獣人も牢に入れられる扱いは一緒で平等も不平等も関係無い。


後進国と海上に稼働中の奴隷狩りがいなくなると先進国に寄港中の奴隷船を奪った。乗組員も全部誘拐した。関係者から芋蔓式に情報を得て奴隷の情報を得て行く。そして検索だ。


奴隷狩りは俺から見たら盗賊と一緒だ。逆らう奴は皆殺しする連中は雷雲の傭兵団と一緒のだ。


まずは第一段階。

奴隷に携わると何もかも神隠しにあうと駐在司祭を使って都市伝説を流した。


現地の拠点まで失ってまだやるなら考えもある。


だから週末に一回奴隷船検索したらもう大丈夫。俺は開門村セットを作りながら村の掟破りの家族をナレス村に連れて行っている。


略取誘拐の父は健在だ。


・・・・


そんな奴隷狩りは6月初旬には片手間になった。

メルデスの北西にある第三駐屯地(学校用地)に滅んだ国からもらって来た学校セットを置いた。元々運営していた学校の各種施設にメルデスの各種ギルドの要望を満たす教育施設があれば良い。平民用の校舎を3つと各ギルドが実技を教える用の武道場を6つ置いてやった。ギルドが実習に使う用具を置けば毎回教材を持ちこまなくて良い筈だ。校庭には遊具を作り、体育館施設も用意した。来年春からの学校なら不備があれば言って来るだろう。貴族用の学校は別に作るらしいが用地も決まって無かったので俺はノータッチ。他の街も学校を作るとか大叔父ミウム伯は言ったがその後も詳細は全く聞いてない(笑)


元からある練兵宿舎は邪魔なので取った。返せというまで預かっておく。何も言われなかったらクランで使うから一石二鳥だ。



・・・・



6月4日(水曜日)の朝からマルテン領で開門村の整地で木を切ってる最中呼び出しがあった。


お爺様からロスレーン家、ミリス家、ギシレン家の銀行契約書が出来たからサインしにこいと言う。


「はぁ?」

「サインがいるじゃろうが?お主で良い」

「?」

「銀行の使用料はお主に払うんじゃろうが!」

「あ!」


「あ!じゃないわ、ロスレーンは2月から5月分の銀行使用料を書類もなく口約束で使用料を引かれておる状態じゃ、ミリスとギシレンは書類なく5月分の使用料を払っておるぞ。子供の小遣いでは無い、いい加減にせよ(笑)」


素直に従おうと思って気が付いた。これはまずい気がする、証拠に残っちゃう。取り合えずシズクとスフィアをタナウスに返して切った木を仕舞って実家に帰った。


「この書類を預かってサイン貰って来ますね?」

「どうせ、お主が作っておるのじゃろうが(笑)」

「内部なら良いですが、これ残りますよね?」


「あ!そうじゃの。ミウムとマルテンはどうなっておる?」


「マルテン領は、完了日より月〆で銀行に入った分をロスレーンに教えているだけです。領内の建設が全て終わってから、収益から代金の回収次第に譲渡の条件で契約しようと思ってました。まだ建設が済んで無いので一カ所を建て終わる都度に領都の執政官に申告してます。ミウムは建て終わった直後に申告すれば建設代金が銀行に入るので次期計画の資材を発注してくれてますよね?」


「お主に伝えられた代金分の資材と仕事は書面でミウムに渡しておる。しかし、そんなに時間が掛かるのか?今までは二三日中には終わっておったではないか」


「サルーテと王都で視察した開門村、S.A、武官の詰め所、銀行の四種を二領は領内全域に作っています。ミウムは3000人の町まで銀行やS.Aを作り、武官の詰め所も王都に真似てます。王都のS.A代金など目ではない勢いです、流石にマルテン領は人口も多いので建設代金も重く、建設代金回収次第に譲渡の形になりました。」


「全てを領内全域に?!」


シュミッツが驚く。


「詰所は王都案の武官の駐屯所か?」


「それです、お二人共が王都を視察して決められました。マルテン領は武官の詰め所はそこまで作っておりません」


何も言わずにお茶を出してくれるジャネット。


「なんと、それを受けたのか?アル」

「11月を期限に受けました。あそこの二つは身内です」


「ミウム伯とマルテン侯が忍びで参ったのはそれか?」


「サルーテから聞いてませんでした?」

「執政官を激励に来たとは聞いた」


「私が迂闊うかつで何も知らなかったのです。マルテン侯爵は聖教国の事もリズの事も、私の事も全てナレス王家から聞いて知った上で、ロスレーン家のアルを陰で守ってくれていました。廃嫡を知ったミウム伯と同じく私を孫の様に可愛がってくれてたのです。お返しのつもりでサルーテにお二人を誘って便利な物を教えました。報告が遅れてすみません」


「うむ、グレンツの婚姻で貴族の間で噂に聞いたが言わぬが花もあろう。良いわ」


シュミッツがウンウンする。


「その二領は人口も有り、確実に税収は増え民は喜びます。恩返しには丁度良いと思ってお誘いしました」


「そうじゃの、儂も世話になっておる。済まぬの(笑)」


「イエ、気持ちだけですから(笑)」

「その気持ちが大事じゃ(笑)」


「それでは、この書類を神教国の神都都督代官のサインでよろしいですよね?」


「もらってこれるのか?」

「当然に、今からもらってきます」俺の国だ。


「出来たらお爺様のサイン付きで開門村、S.A、銀行の契約書の数量と金額抜きの証文書類も三種で三部出ませんか?一緒に侯爵家と辺境伯家に建設が終わり次第に提出します。ロスレーン、ミウム、神教国で各一部を保管でいいですよね?」


「アル様、それは絶対に・・・」


「良い!サインしてやる、シュミッツ用意せよ(笑)」


「シュミッツごめんね(笑)」

「ここだけのお話と言う事に(笑)」


シュミッツは書類を作りに出て行った。


「そうだ!アル、王都のS.Aが動き始めた話は儂も聞いておるのだ。王都より礼状が来た」


「え?」


「王都の職人1000人が先日執政官と共にサルーテに参った。宰相の礼状ならびに陛下の親書を賜った。4月26日(光曜日)より鑑札を売り出したらしい。5月6日付けの親書であった、大好評で連日行列が出来ておるらしいぞ(笑)」


「あ!王都視察の時もそうでした(笑)」


「アランに付いておった家臣団(執政官集団)は王都でS.A案を見た時、3日に一回の頻度計算を甘いと言ったそうじゃな?領の執政官はトイレが何度でも使えるなら皆鑑札を買っている実績から、結果王都でも同じくクリーンとシャワー施設は混むとの予見も聞いた」


「まぁ、そっちの方が得ですね(笑)」


※トイレ一回、銅貨1枚。クリーン&温水シャワー一回、銅貨2枚。鑑札1日券、銅貨3枚(トイレ・クリーンシャワー共用)。比較としてロスレーン開門村銅貨3枚、場外S.A、トイレ1日券銅貨3枚、開門村共通鑑札銅貨5枚。(開門村の宿泊は給水紋と街路灯小が付いた時に銅貨2枚から3枚に値上げ)


「王都の(無料トイレで使っている)水路が綺麗になったそうじゃ(笑)」


「まぁ、混んでも仕方がないですね。当初は鑑札買った者から行列の不満が出て宰相の責任問題と思いましたから。当初の案の三倍以上の数を作って行列なら嬉しい悲鳴では?(笑)」


「そうじゃ、宰相の手紙にはそう書いてあるわ、簡易詰所とは図面にあった武官の小さな駐屯所じゃな?あれも民に好評だと書いてある。守備隊より武官の騎士団は貴族じゃ、皆が恐れるものが立つだけでS.Aの行列も割り込み一つ無いらしいぞ」


「あはは(笑)」


「あれは武官が余っておる今、各領が一番に望む仕事かもしれぬと書いてある。もっとも、うちはそのお陰で中立派の武官を寄こしてもらえるがな(笑)」


「そうですね、間が良かったようです」


そういうのは日本の知識で少し助かったな。侍の士族が警察の前身で明治政府がお侍で作ったのが始まりだ。余った武官も警察か自衛隊みたいな活動が出来たら民も喜ぶよ。今までは完全に王直属の戦闘部隊で怖すぎる貴族集団だったしな(笑)


集めなければならない武官の数を視た。


視たら男爵家3位の戦力は有事には1000人の兵を出せないとダメらしいが守備隊や同行執政官も冒険者も雇って数に入れても良いみたい。それでも出来たばかりの何も無いサルーテで武装勢力を1000人集めるのは痛い(笑)


他の爵位では子爵領で3000人、伯爵領で5000人だって。侯爵、辺境伯8000人、公爵軍10000人ウゲー!そりゃ公爵様が暁の4000人手元に置く訳だ。今となってはマジ賢いわ、戦時は高いが平和ならリストラ出来ちゃう。リノバールス帝国も侯爵、公爵は皆4~6000人も傭兵団持ってたのはこれか!(笑)


うちの領は多分18万行くか行かないかだから人口比約3%の兵は妥当な気がするな(笑)


「話は変わりますが、5月初旬にお父様が帰って来た時、貧民街の大掃除しましたので空いてる建物やゴミの山だった土地を利用したら如何です?貧民もサルーテに結構流れて人も少ない様でしたよ」


「やはり、お主か(笑)」

「分かりました?(笑)」

「貧民街が綺麗になったとアランに報告が来た」

「クリーンし尽くしました(笑)」


ALL「(笑)」


「いらん老朽化した建物を取ってくれるか?執政官の要望に比べて4番街の土地が全然足らんのじゃ」


「そんなに?」


「何を言っておる。サルーテに向かう荷駄隊は全部ロスレーンに逗留するじゃろうが。それを考えよ!(笑)」


「あ!そうですね(笑)」


「建物を取るのは構いませんが4番街だけ増やすなら、東西南北の門の間に島の様に・・・こんな案もありますよ」


以前考えていた通路と出島の構想を話した。


「城壁で覆うと大工事なので、馬車の通り道分と小さな島を周りに作ってしまいます」


「とても手が回らん。サルーテの執政官事務所が実質3月から動いて4~5月で商用地の区画割りや次期工事の土地の割り振りでじゃ、これ以上仕事を増やすな(笑)」


「今、相互通信機はこの部屋とサルーテです?」


「おう、そうじゃ。とても役に立っておる」

「来年の王都行の分、1台置いて行きます」

「おう!それは助かる」


シュミッツが書類を作って帰って来た。


「シュミッツ、悪いがな。4番街の不要な建物をアルに取ってもらう。予定地の貧民はどうなった?」


「120人程おりましたので守備隊が川奥へ追い払いました。しかし、その地の裏町に住む様になっております」


ホームレス追い払ったってよ(笑) 地球と同じだわ。


「仕方ないわえ、邪魔にならなければ捨て置け。いつの間にか流民や貧民は住み付くでの。無くせた話もついぞ聞かんわ(笑)」


お爺様も辛辣に言うが、領都に2000人弱は居たと思う。今の貧民が120人なら残りはサルーテに行ったかもな。俺は行き場のないネット喫茶難民を知っている。追い払ったと言われて笑う余裕はとてもないわ。


「取り壊し予定の廃屋でよろしいですか?」


「うむ、どうせ取ってもらうなら商業地と貫通させても良いぞ、どうせうちはすぐには取り掛かれぬ、更地にして権利が欲しい者は建てるじゃろ」


「商業地です?住宅地です?」

「両方じゃ」


「神聖国から以前もらって来た住宅や店ならありますよ。今建てさせるのも資材も大工もいないでしょ?置いてあげますよ。貸したらどうです?1年前まで使っていた執政官の宿舎も有りますから各領の荷駄隊に使えば一気に・・・」


「なぜそれをもっと早く言わん!」

「え?今の話じゃないですか!(笑)」


お爺様も苦笑する。


「その宿舎は貰った!サルーテの執政官宿舎が出来るまで使わせてもらう、それであれば家族も会いに行けるわ」


「・・・」


「そんじゃ、1週間後に来ますから・・・」


「待っておれ!シュミッツが計画図を今から用意する。再開発の図面じゃ。取り壊しの所を取ってくれたら良い」


「えー!」


シュミッツがサッといなくなる


「アル様、セリーナに子が生まれましたよ(笑)」

「え!あ!もう6月か」

「女の子でございました」

「セリーナがお母さんとか信じられない(笑)」

「それはアル様も大きくなったという事ですよ」

「元気でいるの?」

「今はマーガレットとノーマが手伝いに(笑)」

「そっかー」


サルーテの執政官宿舎を置くなら、作ってる教会の横に孤児院置いて良いか聞くとお許しが出た。教会は来年の3月に出来てそれに合わせて司祭を王都教会から招聘しょうへいするらしい。中古の孤児院置いて人口が増えて教会に布施が集まるまで銀行の上のアパート収益で孤児院を賄おうと思っている。


シュミッツが来て俺の前に取り壊し予定の街区図を広げる。ロスレーン家の屋敷は3Fだが出来た当時は最先端の建物だった。今は4番街の新しい建物が最先端で4Fの建物が普通になっている。古い2F~3Fの建物は周りと同じに4Fの集合住宅や兼用の店舗にして行く案を言うと、シュミッツも俺に任せてくれた。


何か問題あれば交換してくれと・・・。



結構な時間を使って4番街の計画図で検討した後、昼を食ってから貧民街の建物をごっそり取って帰って来た。店や家や庁舎は近いうちにやる。


あーあ!


キジも鳴かずば撃たれまいに・・・。


ついつい良いと思うと後先考えずに提案して仕事を背負いこむのは変わって無かった。いつまで経っても実家とベッタリだ(笑)



・・・・


コルアーノ13時>タナウス15時。


丁度スコールが来たみたいで皆が坂道に出て大きな虹を見ていた。


タナウスの執政官事務所に行くと、職員全てがアロハだった。


タナウスで歩いてる分にはまったく気にならないが、そんな風体ふうていが固まってると異様だった。他の真面目な国から来たらギョッ!とする事を知った。


上はアロハ着てたら下はお構いなし。スカート状の民族衣装みたいの穿く人もいるし、貴族の正装で着るタイツみたいなピッチリの穿いてるのもいる。短パンから長ズボンまで自由裁量。


この派手な服装のカオスな奴らはこの国の数少ない貴族だ(笑)


貴族がラフ過ぎる件。


間違いなくこの世界で異常だった。


ちなみにアロハは海の家で販売してタナウスの国民服の様になっている。貴族はコアさんが支給してるみたいで部署によってカラーが統一されている。平民は2色、貴族のメイド、執事は3色、貴族は4色、王族は5色。


カラーは黒、紺、紫、緑、青、空色、黄色、赤、オレンジ、ピンク、白、柄はヤシ、船、酒瓶、エールジョッキ、果物、花、蝶、鳥、魚、動物、太陽、海、二つの月などベースの色に合わせて柄も多種多様でドワーフの服屋が来てからデザインが増え続けている。


平民2色銀貨1枚(1万円)だが、亜熱帯のタナウスでは大体の人が国民服として移住した時の支度金で買って、1年以上経つ今では2~3着持っている。




次回 351話  パターン青:使徒です

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