第348話 アリアとイーゼニウム
奴隷問題で朝から晩まで天罰を下す中。神聖国の大教会が完成式典を迎えた。二時間程のリハで立ち位置と打ち合わせは昨日済んでいる。
6月1日(光曜日)
タナウスでいつも8時まで寝ている導師とアルノール卿が7時に起きて食事もそこそこに聖教国に跳んで行った。朝の5時から大量の御子、聖女を含む聖教国御一行と出席関係者のタクシーだ。
式典は9時からなのでタナウスでは10時に出たら余裕で間に合う。今日の式典にはまだ一度も神聖国に来た事が無い王都コルアノーブル別邸のアリアとジョゼット、執事長のラストールとメイド長のカレンも連れていく。
導師は聖教国関係者を神聖国に送った後でリード師匠を連れて神聖国に跳ぶ。
俺は現地時間の8時にリズとセオドラとナタリー、PTの四人とコアさんとニウさん。ジェシカさん。王都別邸の四人の十五人で神聖国に向かう。
9時に導師がリード師匠とアルムハウスに来た。
「よう!アル久しぶりだな(笑)」
「師匠!お久しぶりです」
「密偵外れたってな?ご苦労さん(笑)」
「お爺様から?」
「おう!」
「お兄様の結婚式もリズと出られませんでした」
「アル!すぐに出るぞ。姫を迎えに行って来い」
「え!もう?向こう7時ですよ」
神聖国は7時前の状態で凄い人出だという。聖教国の関係者も控える場所がなく導師の控室とリード師匠の控室は譲ったという。俺の控室に
俺の控室は神聖国のステレン教皇、聖教国のライトス教皇、聖教国皇太子のアルベルト教皇代理で三人並んでテラスから手を振るので部屋が大きく三部屋が繋がっている。
三教皇がテラスで手を振りながら新教会の祝福を行う。淀川花火大会(大輪の花火魔法)>サンバカーニバル(光の乱舞)>清浄滝流れ2000m(光の洪水)を順に披露する事になっている。
慌ててメルデスのリズたち三人と王都別邸の四人を迎えに行くと約束の1時間前でも用意出来ていたのでそのままタナウスに跳んで皆に紹介した。
「この方が伝説のキャンディルの賢者様だよ」
「まぁ!お会い出来たことを心から・・・」
「おぉ!以前は王宮で拝見を・・・」
「よいよい二人共。引退した爺ぃじゃ(笑)」
導師が信者を前に何とも言えない顔で俺を見た。
そんな中、皆がリズの格好を見て息を飲む。誰もリズに声を掛けられない。クラウン型のティアラが頭に乗るナレスの王女に誰が話しかけられると言うのだ(笑) でもアリアがお姉さまと絡んでタスキに付いたナレス王族の序列章を触らせてもらっている。一緒に来たジョゼットがアリアの正気を疑ってるのが笑える。
実は今日のリズとのデートが公務に変わったのだ。
今日の式典に来賓のナレス王が欠席の為、駐在政務官が出席の所、リズの同行を耳にしたアルノール卿から王女への代理出席の打診があったのでリズは王室の正装になっている。
総勢十七人で神聖国に跳び俺の控室に入った。
お世話係の侍女さんが三人、目を見開いて驚く。聖教国の秘儀の話は聞いてもこんな大人数がいきなり現れたら驚くよな(笑)
「アルベルト教皇代理様。十七名様のご一行で間違いございませんか?」
「はい、その通りです」
「このリボンを胸にお付けください」
リボンに教皇の間と書いてある。迷子防止札だった。
アルノール卿が部屋に入って来ると、リズをナレスの王族控室へ連れて行くと言う。式の進行を知らないので急遽控室で打ち合わせするらしい。ナレスの駐在政務官も一緒にいるらしいので、セオドラとナタリーに目を合わせてお任せする。
リズを見送り、窓から外を見てみた。
見渡す限り人人人・・・これ将棋倒しとか危ないんじゃないのか?
「アリア、ジョゼットこっち!見てごらん」
「まぁ、凄い人です!」
「まぁ!」ジョゼットも来て目を丸くする。
(先程お兄様を教皇代理様と)
(あぁ、今そういう事になってるの)
(どうやったらなるのです!)
(以前大司教になったでしょ?)
(表彰ですよね?)
(そうそう、その関係なの)
横にいるジョゼットの耳がマギー審司だった。
恐ろしいぐらいの人が詰めかけていた。今なら分かる、ロスレーンの交易路より広い道は絶対に必要だ。こんな人見たの俺は初めてだ。明治神宮の初もうでの比じゃない。神のいる世界の信者、教会参拝は半端じゃ無かった(笑)
流石の導師も余りの人に目が点だ。
人に押されてこのデカイ教会が傾くんじゃないかと錯覚する位凄い。窓の直下を多重視点で視ると噴水前広場と教会の入り口前階段で聖騎士団が柵で防御線を張っている。
「集まり過ぎじゃないですか?」
「教会の中も関係者で寿司詰めじゃわ(笑)」
アルムさんが人に酔って気持ち悪いと椅子に座る。クルムさんは遠近感がおかしいと目を揉んでいる。それほど見渡す首都の道と言う道が人で溢れる凄い光景だ。
皆が座ってお茶を頂く。
ノックがして内ドアからライトス教皇が
「御子様、来ておりますな?(笑)」
「はい、おはようございます。いつもこんな人ですか?」
「今日は特に多いな、もうこの区画一帯に入って来れんだろうから早めにやるかもしれんな」
「やっぱ多過ぎですよね(笑)」
「首都の大教会のお披露目式典など何百年に一回ですからな。信徒が一緒に祝いたいと思うのも無理もないことですぞ(笑)」
「各国の来賓もさぞ驚いておるよ(笑)」
中央のテラスから、両翼がゆったりしたラウンドフォルムで前にせり出す。中央にある噴水を中央に望んで大観衆を懐に包み込む様に大教会が建っている。両翼のテラスの部屋は来賓の国王や使節大使にあてがわれて窓辺で大観衆を眺めているのが分かる。
前の教会と比べて高さは二倍、両翼も三倍程は有る。皇帝の居城と大奥を潰して建った神聖国の教皇の居城となる大教会だから異様にデカい。何万人が関わると丸四年でこんなすごい教会が出来る建築技術があることに驚く。
俺は三か月レベルで家の建築資材を村で用意して、光曜日に村の総出で一気に家を建てるレベルの建築しか知らない。アレだ、現代日本の
そこにステレン教皇も内ドアからやってきた。
「御子様、教皇様、今日は宜しくお願いします」
「盛況で何よりだ」
「聖教国で慣れてもこの数には驚いております」
「神聖国は聖教国より羽振りが良いからな、心に余裕がある分教会に向かう人も多い。互いに平穏なのは良いな(笑)」
担当の神聖国大司教様が連絡に来た。
「予定通りの9時からでは今の大観衆が奥からの圧力で潰れてしまいます。記念式典は前倒しで8時から執り行いますのでご用意下さい」
「あと20分だね(笑)」
「なかなか無い事だな(笑)」
「なにぶん初めての事で・・・」
笑いながら三人の教皇が煌びやかな教皇服一式に一瞬で着替えた。それはそれで絵になった(笑) 正装のリズが惚れ直したかなと姿を探してしまいガッカリしてしまう俺。でもアルムさんとクルムさんがヘヘン!と誇らしくしてくれるので嬉しい。
当然のごとくアリアとジョゼットとお付きの執事長ラストールとメイド長カレンはモノホンの教皇装備を間近でみた。頭のクラウンから足元の変なとんがった靴まで見て目が点だ。小さな属性石の付いた杓丈が妙に渋かったがツッコミ入れる余裕は無い。ぶっ飛び展開に頭がすでに回って無い。
皆が見つめる中で三人が談笑している。
無理もない、この大陸の者はこの聖教国始祖の系譜の者にステータスボードを与えられるのだ。宣誓の儀、それをこの大陸に与える聖教国の頂点だ。
大教会の鐘がカラーン、カラーンと鳴った。
ザワザワしていた大観衆が一瞬シーンとなる。
「現在予想を超えた人出となっております。一時間式典を前倒しし、これより神聖国大教会完成記念式典を執り行います」
楽隊が俺達がいるテラスの真下で音楽を奏で出すと大教会の両翼に反響して心地よい音が広場に響き渡る。その下は高さ8m以上ありそうな両開きの観音扉になっている。多重視点で視ていると荘厳な演奏に乗ってドワーフ製の
中央の天上の門が開き切ると南を背にした大聖堂のステンドグラスを透過した優しい光が観衆の眼に映る。次いで観衆から見て右の祝福の門と左の旅路の門も同時に開いてこちらもステンドグラスが綺麗な色の光を放って観衆の眼に映る。
三つの門はそれぞれに人は神の祝福を受けて人生の旅路に出て魂を磨くと言う教義に基づいて名付けられた門だ。中央の天上の門は神々の世界への門を表している。
入り口は3カ所で中央が一番大きく左右が少し小さい観音扉だ。噴水広場から十段ぐらい上がった階段の上が踊り場になり教会の入り口となる。
祝福の門の上のテラスから司会の大司教が拡声魔法で式次第を読み上げ。観衆から相対して右側のウイングに注目させて来賓の名前を読み上げては紹介していく。その中にサント海商国議長バーツ閣下の名前を聞いてテラスまで見に行ってしまった。
テラスから乗り出さなくても張り出したウイングから見えた。バーツさんがテラスから姿を出して音楽の中手を振っている。俺は中央のテラスからひょっこり顔を見せたのを一部の観衆に見られて笑われた。
そしてナレスは王の代理で第三王女殿下が祝賀式典に駆けつけてくれたと大司教が紹介してくれた。リズベット・アナ・ヴォイク・デ・ナレス王女殿下と紹介されると流石に華のある王女様で王様たちより観衆のウケが良かった(笑) 笑顔で手をゆっくりと振っている。
バーツさんはリズを紹介されて知っていたが俺が王女と言って無いのでとても驚いていたし、サントはナレスでのリズベット姫の婚約報告も書簡で受けていたが相手が俺だとは予想もして無かった(笑)
周辺国の国王、サント、セイルス、リンデウム、バルトロム、ナレス、チノ、コルアーノが順に読み上げられたがコルアーノ、チノは駐在政務官の代理出席だった。首都が遠いしな(笑)
聖教国教皇代理、皇太子アルベルト・ド・ミラゴ・イ・クレンブル様と読み上げられ、俺が錫を左手、右手を振りながら左のテラスから顔を見せると観衆がワッ!と沸く歓声。手を大きく振って観衆に応える
次いで神聖国教皇ステレン・ド・ミラゴ・イ・クレンブル様と読み上げられて、右側のテラスから姿を現す。またしても大観衆の歓声が凄い。錫杖を左手に右手をゆっくり振って観衆に応えるステレン教皇。
最後に聖教国教皇:ライトス・ド・ミラゴ・イ・クレンブル様と読み上げられ。中央テラスにライトス教皇が顔を見せる。大観衆の歓声がもの凄い。音楽が完全に掻き消える程の歓声だ。手をゆっくり振って観衆に応えるライトス教皇。
ポーチに三人の教皇装束が並んだ。当然神聖国の大観衆及び周辺国の王族、貴族は驚いた。三人の教皇装束が並ぶなど(ナレス以来)初めてなのだ。
皆が勘違いした。孫>お父さん>お爺ちゃんと勘違いした。
名前的に勘違いするに決まってる(笑)
・・・・
三人の教皇装束が神聖国大教会のテラスに並び立った。三人は大観衆に向けて手をゆっくりと振っている。
リハの通り両脇の二人が手を振りながら中央のライトス教皇に寄って行き、三人が寄り添った。
ステレン教皇がリハで練習の通りに錫杖を天に掲げてからゆっくりと噴水の直上の空を目掛けて高く傾けた。(そう見せるだけで魔法が出るのは腕輪だ)
ヒューン! ドーン! ヒュヒューン! ドドーン! 青空に7色の軌跡が後を引きアルノール大司教の組んだ多段魔法陣から淀川花火大会が始まった。(あくまで個人の感想です)
「三つ前です。二つ前です。一つ前です。はいお願いします」
続いてライトス教皇が錫杖を高く掲げて祝福を腕輪から発動する。ここぞとばかりにアルノール大司教が無理矢理押し付けた光のサンバを教皇様が発動した。晴れとか太陽関係なく大教会中心位置のテラスを囲んでキラキラの極大光が踊りつくす。
(リハのアルノール大司教案では花火大会>滝流れ>サンバと多段魔法陣の少ない順だったがいつものように無視されていた。あの人はホント魔法になると融通が利かない)
俺はサンバの終わりを拍子を取って数えていた。
サーンバ、ビーバ、サーンバ。カ・ツ・ケ・ン・・・
「そろそろですぞ!三、二、一御子様!」
合図と共に俺の半径二千mにセットの天上からの滝流れが始まる。こんな高い所でやった事無かったが天からこぼれだす滝を思わせる光の奔流が天からテラスまで降り注ぎ、スモークの様にテラス真下まで流れて行く。光の洪水は地面に至ってから観衆の腰の辺りまで埋め尽くし、その波はピュアの浄化効果を乗せて同心円状に広がって行った。。
途轍もないアルの魔力によって生まれた魔法。半径二千mの大観衆の眼は三人の教皇に魅了され、集まった全ての人の水虫、たむし、インキンはすべて死滅した。
余りに凄い祝福の競演に観衆は一旦静まり。一拍置いてうぉー!と地鳴りのような歓声に変わった。教皇による祝福が行われました!と大司教が二回絶叫した。
・・・・
程なく祝福の門への防御柵が聖騎士によって解かれると、圧力に押し出される様に人の波が門へと吸い込まれて行く・・・。
「これより御子と聖女による祝福がございます」
「皆様、お進みください!」
「これより御子と聖女による祝福がございます」
「静かにお進みください!」
「これより御子と聖女による祝福がございます」
「この列は御子様です、お並び下さい!」
「皆様、お進みください!」
「ここは聖女様ですよ、お進みください!」
外の喧騒が凄い。プラカードで誘導する司祭とシスター。
実は大聖堂で御子、聖女が五十人体制で祝福の祈りを授けてくれるのだ。聖教国と神聖国の新年の祝福の大規模なやつだ。祝福をもらおうと群衆が集る。今年赴任予定だった御子と聖女、来年赴任予定の御子と聖女が予備も含めて七十三人来ている。昨日の朝と今日の朝でタクシーに行ったアルノール卿と導師が予備員含め聖教国から運んで来た。
中央の大聖堂ではシスターと司祭が宣誓の儀の列を捌く。今日みたいな一日の光曜日に当たる日は縁起を気にして宣誓の儀が多いが、今日は特に多いと言う。聖教国から司教以上の聖魔法の達人、つわもの達が待ち受ける。
これは神聖国として信者を
教会の両翼から式典関係者がテラスより下の観衆に手を振っている。皆が見上げながら列に流されて手を振ってくれる。俺と二教皇も下に向かって手を振る。
「みんなもおいでおいで!」
俺が皆を立たせてテラスまで連れて行く。この光景を皆に見せたかった。連れて来た拍子に左手のテラスのバーツさんを見たら目が合った(笑) こんな状態じゃ声も届かないのでバーツさんに手を振った。
「うわー凄いねぇ!」アルムさんが喜んでくれた。
十七人がテラスに出て下の観衆に手を振った。
手を振りながらアリアが耳元で話しかけて来た。
(アル兄様?)
(ん?)
(お兄様を聖教国皇太子とお呼びに)
(あ!あれねぇ・・・)
(はい!)ズイ!と近寄って来る。
(あれから出世しちゃったの(笑))
(え!どうしたら皇太子に?)
(聖教国は血筋じゃ無くて聖魔法の強さなの)
(お兄様の神の加護です?)
(そうそう、そんな感じで僕は聖魔法が強いの。家族の皆にも内緒だよ?みんなビックリしちゃうからね。何になっても僕はアリアのお兄様のままだからね(笑))
(はい!)
(ジョゼットにも適当に言っておいて(笑))
(えー!どうやって言ったらいいのです?)
(お兄様は聖教国で出世した(笑))
(それは・・・(笑))
(適当に(笑))
(適当に過ぎます!)
「左右と中央の大聖堂で四千人は入りますので少しは混み様も緩和されると思います」
「四千人も?」
「左右の大聖堂で約二千席、中央大聖堂で約二千二百席あります」
俺は何度も新教会へ来ているが、二階のオペラ座のバルコニー席のような場所しか見た事が無い。中央大聖堂は二階にベランダ状になった六列ぐらいの椅子があり、そのサイドの壁にバルコニー席が三つ左右の壁に付いている。それも旧教会や旧執政官官舎を取りに来て書類を待つ合間にチロッと見ただけだ。
話していたら侍女さんが今日のお祝いの焼き菓子を持って来てくれた。御子と聖女の祝福が終わって旅路の門から出るとシスターたちから配られる袋菓子だ。
お茶とお菓子を食べながら教皇様と話していたら、話しの流れで欠損を治した皇太子の話が出た。半年後の去年の10月にコルスンの王家全員で聖教国参りに来たそうだ。王太子のたっての願いでネロ様に感謝の報告がしたかったそうだ。俺はそれを聞いて奇跡の巡り合わせで治ったのだから、その感謝は正解だよ。と思った。
「その後、エリクサーは?」
「まだ心配ない」
「ステレン教皇様も困った場合はライトス教皇様に連絡を取る様にして下さい。聖教国の秘術なら教皇様が行かないとダメです。こないだの様に国王からの親書が来た場合は助けて差し上げましょう」
「そうしよう。あの状態は本当に酷かった」
「私も連絡頂けたらすぐに伺います」
「御子様、その時はお願いいたします」
「いざという場合は芝居とエリクサーで」
「うむ、使いどころは間違わんようにする」
聞いていたクルムさんが俺にニコッとした(笑)
・・・・
俺達が座る席と離れてアルム、シズク、スフィア、リズ、アリア、ジョゼットとコアさんニウさん始めそれぞれの執事、メイド達がそちらに行って。姦しくお茶とお菓子で神聖国の事を話している。
俺は導師とリード師匠と最近の事を色々と話した。暁の傭兵団はリノバールス帝国の脅威が無くなってから村を襲うレベルの徒党を組んだ盗賊団殲滅依頼を追っかける様になり。千人の傭兵団は縮小し四人の副団長と共に各自が百人クラスの傭兵団に再結成され、紛争や盗賊退治の依頼を受ける為にセイルス商国や神聖国に拠点を変えて散ったという。
そのうちに昔から見知ったアリアに導師が連れていかれてジョゼットと魔法科の課題の答えを聞き出そうと質問している。お前らコルアーノの至宝に何しょーもないこと聞いとんじゃーい!
笑ったリズが導師より先に優しく教えるが、それは激しくカンニングだ。
・・・・
昼食会では教皇様二人は各国の貴賓と同席だった。チノ、サント、セイルス、バルトロム、リンデウムの国主と同席など
結局気になって視てしまうが・・・リノバールスに略取された獣人奴隷解放の密談の時に教皇様が連れて来た御子が皇太子様だったのですな。と妙な符号が一致して今日のテラスでのお爺さん、お父さん、孫の競演になったと凄い勘違いの会話が噛み合ってスパイラルで話が弾んでいたのが笑えた(笑)
何を言われても、そうですな、そうですな、良き事ですな、と笑みを絶やさず聞き役に徹する柔らかいライトス教皇も政治家だ。俺は神教国の国主として激しく見習わないといけない。おれは
神聖国の聖女ユーノが各テーブルに挨拶に来てくれた。まだ赴任した事のないデビュー前の沢山の御子と聖女は大聖堂で祝福している中、モノホンの聖女は神聖国赴任後4年も経ってリノバールス帝国赴任当時の18歳の少女と女性の狭間など消えて美しく輝く女性になっていた。
懐かしくて、席を立ち「ユーノお姉ちゃん!」と握手に行くと凄いハグをされ耳元で言われた。
(建国の時には驚きましたがもう納得していますよ(笑) リノバールスの子爵家子息として素性を
(お姉ちゃん!内緒内緒!)
それは弟に対する親愛の情のこもった挨拶だった。皆に聖女のユーノお姉ちゃんと紹介して、建国時には旧教会で半年以上一緒に仕事していたと紹介する。
またもやアリアの目が光った。おれはイーゼニウムのイの字もアリアに伝えて無いからだ。どんな経歴持った兄やねん。怪し過ぎるのは自分で良く分かっている。
聖女ユーノが去った後、俺はとても豪華な食事会で師匠と一緒にワインを飲みまくった。凄く美味しいワインで各国の王族に出すレベルが良く分かった。俺達が普段飲んでるワインのレベルを知った(笑)
恐縮してたのは王都別邸から来た執事長、ラストール・ミールとメイド長、カレン・ユーノス。長い間コルアーノ王家の使用人として仕えて来た貴族でも
主人と一緒のテーブルで各国王族と並んで食事を出されて一緒に食べているのだ。各国の駐在政務官も立場が一緒なのだがそれを仕事にする者と違う者ではかしこまり方が違った。
食事が終わると各テーブルに大教会を案内する神聖国の司祭が付いてくれた。一般信徒の祝賀とは別の順路で誰も居ない大聖堂の二階席から眼下の一般客を見ながら三つの大聖堂見学コースは組まれていた。
サント御一行組がすぐ前の順路に案内されてバーツさんと自然に話し込む。
「御子様はホントに聖教国の皇太子でしたな(笑)」
「私を何だと思ってたんですか(笑)」
「ナレスの姫の婚約の知らせは確かに見ました。サントは祝いの親書と贈り物まで両国にしたのに、まさか御子様の事だとは思いもしませんでした。あの時、婚約者と王女様を紹介されていたとは(笑)」
「大っぴらに紹介すると品位を失うので(笑)」
「品位の前に先触れを覚えて欲しいですな(笑)」
ぎゃー!言われた!
「僕、贈り物もらって無いですよ(笑)」
「国に対して祝いを送りますからな(笑)」
「そう言えば、聖教国の名は言って無かったですね」
「ロスレーン伯爵家のアル様か、神聖国の御子様しか伺っておりませんぞ。酷い話です(笑)」
「知らなくても御子様でいいんですよ(笑)」
(帰りにサントまでお願いできますか?)
コソコソッと言われた(笑)
大教会全ての柱の上部には神を
それぐらい神の眼はどこからでも見ている事を語っている。監視社会の防犯カメラどころじゃ無い。全部神様に見られているんだよ(笑)
見られている神をアリアが見上げて見つめている。
鬼畜なリノバールス帝国が滅んだと隊商から聞いたアリアが喜んで来たがった神聖国イーゼニウムにやっと連れて来られた事が嬉しかった。
アリアが間違いなくこの国の名付け親なのだから。
俺の部屋の窓辺に置かれたイーゼの花の国だ。
次回 349話 ミニス農業、家事Lv2
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