第340話  心優しきパリピ王


4月10日。


実は今でもテズ教とラウム教、サンテ教の後始末に飛びまわってる毎日だ。教皇のいなくなった宗教国の進む道を模索している。


宗主国でTOPになった者たちの教育だ。

信徒に威厳や風格やありがたさをかもし出すキンキラキンの生活を改めさせている。


華美な装飾、食事習慣、平民が見て顔をしかめる行為は避ける様に教えて行く。聖教国の過ごし方(食事は華美でなく美味しく食べきれる量など)をそのまま教えて新生宗教国に生まれ変わらせている。シズン教国、シーズ教国、パリス教国(ミンの寺院は元々質素)で先行して行う政策なので特に問題は無いが、めんどくさい(笑)


聖騎士団を出身別に編成して教国全土に派遣して村や街に駐屯させ任期で異動する。信徒国でのお布施や寄進は頂いた領地で使い領主が寄進したと明示、民に領主の徳を言及する。改築、修繕、孤児院の経営立て直しが必要な教会に御子や聖女を派遣して法術キャンペーン(廉価な回復魔法を振る舞うチャリティー系)を行う。教会の敷地には畑を作り汗を流す。孤児院の拡充には総本山や神教国が援助する。


一つずつ決めて徹底してガイドラインを作って行く。


何の事は無い、聖教国がやっている事をそのまま真似してるだけだ。教義書を神教国準拠にして神に感謝を捧げる事と教育している。最後に神の加護を見せて神の存在を強固にアピールして欲に踊っていた以前の教会運営を反面教師に研修を行う毎日だ。


俺は何してるんだ。全然冒険の日々じゃないよ。


まぁ、こんな生活で身を入れて鍛錬出来ないからネフロー様が稽古を付けてくれたんだろうけど俺の冒険が内政チート物語になってるのは否めない(笑)


ほんとにさぁ、最初の話でハーヴェスがカラムに攻めて、勝ってめでたしなら良かったのに!一緒に喜んであげたのに!面倒臭い内情を知っちゃうからどうしようもない。


笑わないでよ?バーベキューやってる前の道で戦争から逃げてきた餓死寸前の難民がヨロヨロしてたらどうする?って話だよ。俺には関係無いから難民は死んで行けと言える奴は凄い奴だぞ!


普通の人なら焼いてる肉あげるでしょ?ソーセージも食べさせるでしょ?俺は難民にソーセージやるだけじゃ済まない。戦争やって難民を作りだしたアホを知ったら俺は〆られるからさ、怒れちゃってなにやっとんじゃーい!とぶっ飛ばしに行ってしまう。


でも怒ると毎回、正直めんどくさい。

なにやっとんじゃーい!と怒る分だけ後始末が大変。難民は可哀想だね?と同情してソーセージ食わせてバイバイしたら終りなのに、出来るなら助けたれや!同情するなら動いたれや!と俺の良心回路が悲鳴を上げる。


そんな事は分かっちゃいるけど毎回怒ってぶっ飛ばしに行く、ぶっ飛ばしたら結局自分の蒔いた種だから最後までケツを拭く。まぁ俺は生活出来てるし、出来ない奴見たら仕方が無い。


手取り足取りでは無いけれど、俺の意向でテズ教とラウム教、サンテ教に神教国の教義を教えてくれるコアさんニウさんとシスター部隊がいるから回ってるだけだ。シズン、シーズ、パリス、ミンもまったく同じ事で介入して教義を教えるノウハウを蓄積してる所が俺がアホな証拠だ。


ぶっ飛ばす以外のインテリジェンスを感じさせる静かな決着がスマートな事ぐらいは俺だって知っている。しかしさぁ、盗賊みたいな殺して奪う分かり易い奴らの相手してから、知恵の回る巨悪みたいなの見ると止まんないんだよ。


毎回、なにやっとんじゃーい! 笑うしかない。


バカは死んでも直らないというが、7同時攻略ハーレムルート激ムズコースをわざわざ選んで冒険してる気分だ。俺は何を冒険してるのか?


神教国作って教祖様になって分かる。


俺に教祖様は向いてない、脳筋には無理な職業だ。正直に言うがなんで俺がまったく知らない国の奴相手に神はどうとか丁寧に教えなきゃなんないのよ(笑) 


神の世界を視て体験して知ってるの俺だけなんだよ。そんなの知らず見てもない半信半疑の人に懇切丁寧に説明するのも徒労感が半端無い。この大陸の宗教国は聖教国の様な下地が無くて、栄華を誇って武力でやってきた宗教国。ぶっ飛ばした手前、面倒見るのは仕方が無いのは理解してるが、ぶっちゃけ時間取られてしょうがない。


でも教えないと宗教国は変わらない。教会幹部に神罰の恐ろしさと偉大さを教えないと神に仕える選民意識で我田引水に神託を出してた凝り固まった組織は変わらない。


それをコツコツ教えて神罰としての恐ろしいカウンターバランスを教えないとダメ。登り詰めた教会幹部は調悪事に自分でブレーキ踏まないのよ、破滅するまでアクセル踏みやがる。


ずーっと、堂々巡りで考えるのよ。


戦争には手を出さないって決めたけど、なかなか割り切れない。知ってしまうと怒れちゃって、なにやっとんじゃーい!になってしまう。宗教家嫌いの爺さんにあおられただけで頭に来て殺す言う俺だ、教祖に向いてないのは分かってる。自分では優しい積りでいるんだけど自覚してないだけで俺は充分に短気だ。


いつのまにやら愚痴を言ってるな。


明日から三国の王権の移譲をさせる。


ユウド、ルーミス、ブラン。特にルーミスなんて海賊行為やってたから拉致って来たの2度目だよ。ルーミスの公爵家に事件を話して次の王になるように説得だよ。ウエイかDQNかパリピか知らんが、何で俺があのバカ殿の尻拭しりぬぐいしてんだよ・・・。


王を拉致らちってなんて言ったら独立国ならどうなるか分かるでしょ?普通はルーミスと戦争よ。その場の全員を麻痺させ、力ずくで王を指名する俺が視えるわ!未来視持ってないけど分かるわ!


本当に気が重い。


青筋立てて怒る家臣団に事件の全貌を語り、泣き崩れる王妃、側妃をなだめ、子は隔離し、王の罪悪とアホさ加減を家臣団に納得させ、皆が前向きに国を支えるように説得するんだよ。王をハーヴェスに引き渡して敵認定されてる俺が恫喝どうかつ懐柔かいじゅう入れてユウド、ルーミス、ブランの次の王を決めてくるんだよ。俺は何ゲーしてんだよ?ムリゲーとは言わないけど勘弁してくれよ。


俺にも愚痴を言わせてくれよ、頼むよ。


何でこんな嫌な役割やってんだ!本当に困る。


文句を言いプリプリ怒りながら行った。


夜中にハーヴェスの牢に行った。


毛布にくるまり寝静まる堕ちた平民をながめた。アホタレどもめ!俺が夜中まで働いてるのにスヤスヤ寝やがって、目にクマが出来ているのは高いぞ!(笑)


処刑される寸前だもんな。


「怖かったよな。もう充分反省したよな?」


寝顔に静かに問いかけた。


隷属して布教し、民を安んじ飢えた者には麦がゆを差し出せる優しい心を持つ王になれとゲッシュした。名前を元に戻した。宰相は国を良くするための政策を率先して行い、民の為に尽くす様にゲッシュした。


民を惑わす調子こいた王を滅した。


アルはなんで人の事でこれ程まで悩まなきゃならないのか。なんでアホ王の事でこんなに悲しくなるのか不思議だったが心の中で黙殺した。


明日から何もなかったように国に返す。大丈夫さ、元凶の教皇以下TOPは陛下の処刑をまぬがれたんだ、カラム王国無血移譲のハーヴェス帝国の伝説の為に陛下に掛けあってやるよ。布教と誓約以外は今まで通りの王様だ、心優しきパリピ王やDQN王に転生しただけだ。


・・・・


自分勝手な考えで嘘まで吐いて補償要求に来たムカつく最低野郎。アホ王に天誅と思いハーヴェスに連れてきたが、落ち付くと可哀想になる自分の揺れる心と悩む心。王妃や側妃、その子供、家臣団全てがこんなアホタレに嘆き悲しむ姿が目に浮かぶ。なにやっとんじゃーい!と自分から介入して挙句の果てに悩んで揺れ動く模索する着地点。元凶のシナリオで踊った癖の強い人間の裁定に戸惑う心優しいアルだった。



故意犯の悪事の多様性。



立場を利用して調子に乗り神教国を騙してやろうと来たアホ王ども。場当たり的に流されて思い付く悪事とで雇った運び屋冒険者や大店を皆殺しにする信念に基づく計画的悪事の越境盗賊団。


両者は悪の質が違うのだ。前者は民の迷惑や大陸の混沌まで考えが足らずに己の利を追い調子に乗って踊ったアホ。後者は富を得る手段として人を殺すのに迷いもない悪心に染まりきったアホ。アルは剣の誓いに仇を討たせた。更生の余地無しと歯牙にも掛けず平気で殺させた、ナレスの法に裁かせた。


なんでこんなに悲しくなるのか不思議。


それは大いなる神の加護を持つ者が苦しんで乗り越えるべき正当な悩みだった。アルが割り切って答えを出すには若過ぎた。



・・・・


翌日。

3人の王と宰相が早々に処刑されても困るので朝一でハーヴェスに助命嘆願に行って来た。最近は宰相の応接から宰相を伴って陛下に謁見するコースになっている。皇帝陛下謁見ツアーに行くと陛下が目に見えて喜ぶので俺も嬉しい。用件を切り出し、牢に入れられ処刑を目前として当人たちは心から反省していると除名嘆願した。


テズ教の教皇以下カラム王国の国王さえ処刑されていない。


今回、海賊行為を主導したカラム王国はハーヴェス帝国への無血移譲となり、それは歴史に残る偉業である。その偉業の前に小物の処刑などは論外と訴えたら神教国預かりにしてもらった。以後は国として交易のお付き合いはするがハーヴェス帝国及びカラム王国には入国禁止の王と宰相に決定した。


俺はそのまま王と宰相を身受けして祖国に送り返した。テズ教国に帰った昼食時、お爺様が銀行の事で聞きたいことがあると連絡があったのでロスレーンに跳んだ。


テズ教国12時>ロスレーン8時


モグモグしていたロールパンを飲みこんでパン屑を確認してから執務室脇の応接でノックをする。


「アル様、いらっしゃいませ」

「シュミッツ、久しぶり!」


シュミッツに開けてもらった扉で執務室に入りながら言う。


「お久しぶりです、お爺様」

「おう、元気そうじゃ。最近はその恰好なのか?」

「はい、宗教国絡みの仕事が多くて・・・」

「ふむ、どんな場所にもやる仕事はあるからの」

「まぁ、その通りですね(笑)」


「アル、会ったら話をしようと思っとったが、丁度良いので色々相談に乗ってくれ」


「色々相談?何ですか、改まって(笑)」

「お主、ジャネットの所に使用人を預けておるな?」

「リサ、メグ、カルラです?」

「うむ、あの3人を伯爵家にくれぬか?」


「え!」


「うちも去年、今年と使用人を増員し雇っておるが、あれぐらいの年代が丁度おらんのだ、今のままではメイドは勿論、守備隊、騎士団合わせても人がおらずサルーテは男爵家にも奏上できぬ(笑)」


「そんなに人が足りないんです?」


「うちも伯爵家になって3年でやっと有事の動員武力を満たそうかと言う時にサルーテじゃ、武官も文官もメイドも執事も何もかも足りぬわ。マルテン侯爵家とミウム辺境伯家、ルーミール伯爵家、ロンド子爵家、セルス子爵家と中立派が協力してくれるが、さすがに所帯を持った中堅の武官、文官は無理じゃ。メイドも含め若手の編成になってしまう。そして他領から来た者を使うにはうちを知っておる子飼いの使用人がおらねば話にならん(笑)」


「3人共ミウム領の出身です。本人に貴族家のメイドになりたいか聞いたら良いでしょう。元々はメイド修行後に伯爵家の紋章腕輪が頂けると聞き、喜んでジャネットの元に来た子達です」


「助かった!レノアのメイド修行も助かっておるのだ」


「え!そこまでに?(笑)」


「3位の都市持ち男爵家の使用人も揃えられんじゃ、サルーテ子爵家など夢の話ぞ、いつになる事やら(笑)」


「すみません、思い付きで子爵家などと・・・」


「いや、笑い話じゃ。しかしサルーテ領は今も進んでおる、子爵家を見据えて使用人を集めて行かねばならん」


「年代って3人は20、19、19。その辺が薄いんです?」


「そうじゃ、若いのは各貴族家でつのってもらえるが、12歳から仕えて7年以上の年代は何処も手放してはくれぬ。ベテランになり何でもこなせるからの」


「まだ、あの子たち3年経って無いですよ?」

「ジャネットの元で3年やればどこでも通用するわ」

「ジャネットもそう言ってました(笑)」


ジャネットが笑う。


「イヤ、助かった。3人には話をしておく」



「それとな?銀行の費用はどうなっておる?グレンツに聞くと白金貨1枚と聞いたが安すぎやせんか?ロスレーンとサルーテで2軒だから2枚じゃろう?シュミッツは白金貨2枚でも価値があると言っておる。武官と文官、輸送費まで経費削減になった上、街の住民は領主が使用料を払えば、銀行使用料も両替手数料も無料など有用にも程がある。他領からも必ず話が来るぞ?どうじゃ?」


「やっぱり来ますかねぇ」

「そりゃ、来るじゃろ(笑)」

「王都のS.Aでも来ると思ってるんですよ」

「・・・まぁ、絶対来るな(笑)」


「うーん、銀行も来そうですね。そんじゃ他の領に先駆けてロスレーン領には貸し出しますか?」


「ん?」


「ロスレーン領は、ミリス、ギシレン、サルーテに銀行を、小さな町には払えないでしょうし」


「うちの領は地形的に良い感じじゃのう(笑)」


「はい、領都以外の街は最寄りの銀行で預けて頂ければ警護の経路は半分になります」


「あ!サルーテが税を取り始めたら有料にしましょうか?」


「お?」


「平民は月大銅貨1枚(1000円)それでヘクトやモルドの人口の多い町や、小さな4000人程の街にも付けてやれば領の民は喜ぶ筈です」


「(笑)」


「4000人の街なら大人は2000人、大銅貨1枚で年で白金貨1枚ありますよ(笑) サルーテ領の3万人以上なら月で白金貨1.5枚あります」


「集まると大きいのう」


「それならばロスレーンとサルーテは2軒で白金貨2枚(4000万円)領内の男爵家は1軒で良いので1枚(2000万円)と領内の住民は大銅貨1枚、現状無料なので2年後に税を取るのは不満が出るかも?うーん・・・やっぱり使用料は元を質せば民の税です、民は無料で行きましょう!」


「男爵家はキューブハウスとS.Aで収入増えてますし使用料は問題ないと思いますが、民は使用料など取らず還元しましょう」


「よい案じゃの。シュミッツ、どう思う?」


「問題ございません、民の銀行使用料はサルーテ領が税を取るまで無料期間2年と周知致します」


「え?無料で良いのですが・・・」


「アル様、サービスには対価は必ず必要です。大銅貨1枚でも銅貨5枚でも金額はお好きになさって良いと思いますが、必ずお取り下さい。でないと領民の税が流民や貧民に使われる事になります。御承知下さい」


「あ!済みません、筋を外してはいけませんね」

「お分かり下さり、ありがとうございます」


「シュミッツ、2年を目途でまとめてくれ。大銅貨1枚なら良いじゃろ?ミリス家とギシレン家に視察に来るようにアランに伝える。今回は皆が同行しとる、領都に着いたら説明の者を用意してくれ。要項にまとめてあると良いな」


「かしこまりました」


「毎月使用料は預金から引かれるようにしますので執政官にその旨をお伝え下さい。2月分は2月10日からの21日分の日割りで引いておきます。今月から毎月30日にその月の使用料が預金から引かれます、この4月は2月3月4月の3カ月分引かれますのでご注意下さい」


「よし、分かった」


「あとな? ロスレーン領の農産品の生産量が4年間ずっと伸びておる。お主何か言う事は無いか?」


「・・・」


「どうした?何かないのか?」

「天候が良かったのでは?」

「・・・そうかのう・・・(笑)」


「食料は簡単に増減せぬ。サルーテ領の様に人と金が集まると普通は食料から物価は上がる。物の値段が上がらんのは金が集まった分、農業生産量が上がっておるからじゃ。物が足りず物価が上がればその土地に向けて物が流れ出す、流れ出せば手間が掛かり周りの物価も押し上げて行く。金が入っても生活は変わらん、金の入らん者は生活が苦しくなる。


生産量が上がった農産品で、サルーテの食料が賄えておる、丁度うまい具合にバランスが取れるとはのう。稼いだ分は暮らしは楽になる、非常に良い事じゃな。そうは思わんか?」


「良かったですね(笑)」

「良かったそうじゃぞ、シュミッツ(笑)」

「は!(笑)」


お爺様が息を吸い込んだ。


#「バカモノー!」


目が点。 うぉー!魂が震えた。


#「おって!鉱山奴隷の恩寵を農民に分けたであろう!何を隠そうとする!たわけ者が!」


「・・・」やられた。


「まぁ警戒するのは非常に良い(笑)」


「・・・」


「そういう事でじゃな、領の人口も増えて開拓村も増えておるのだ、まだ恩寵を持たぬ農民に付けてやってくれぬか?」


#「最初からそう言って下さいよ!紛らわしい!」


「そう言うな、アルから仔細を聞きたかったのじゃ(笑)」


「あ!そっか(笑) えーとですね、大体ですよ?3年半~4年で農業恩寵はLv1からLv2に上がってます。職業恩寵ですから畑で働くだけで上がってますね」


「お!そうか、ステータスボードも無しに神の恩寵は上がるのか?それはよい!尻上がりに収穫が増えると言う事じゃな?」


「あ!そうですそうです。Lvが上がる期間は長くなって行くと思いますが大体そうですかね。最初に恩寵を付与したキャンディルの報告では平年並みの天候で初年度10%増でしたからロスレーンも3年前は10%前後上がってると思います。2年目からは前年度より少し上がる感じかもしれないです」


「充分じゃ、よくやってくれた」

「はい(笑)」


「まだあったな」

「えー!まだ?」

「何じゃ?やましい事でもあるのか?」

「そんな訳では・・・やましいって!」

「まぁ、良い(笑)」


「メイドと銀行と恩寵とあと何です!」

「嫌そうな問いじゃな(笑)」


#「お爺様が私をイジルからでしょうが!」


「王都で派手にやったそうじゃの?」


「え?」


「アランに聞いたが神教国一行がすごい魔法でS.Aを見る間に建てたと聞いたが?」


「あぁ、アレですか」ホッ!


他国の奴隷とか、領主まで奴隷とか色々やり過ぎて何を言われるのか戦々恐々。話が出た瞬間に逃げる気満々なアルだ。


「S.A契約直後に神教国一行が王都に現れたそうじゃな?お主の大魔法が目立っておらぬのか?ハルバス公の密偵はどうなっておる?」


「あー!密偵!お陰さまで外れました」

「お!外れたのか」


「密偵が外れたの先月中旬です」

「外れたなら当分は探られぬかも知れんな」

「やっとロスレーンを歩けます(笑)」

「それも大変じゃったのぅ(笑)」


「神教国の大司教様が王都で連日大魔法を見せつけましたから、私の話題なんてかすんでしまって出ませんよ。半年したら吟遊詩人が導師の伝説と一緒に神教国の大魔法を歌います(笑)」


「そうか!アランの話を聞いて心配しとった、大丈夫なら良い。神の御子さえ知られなければ良い」


話しこんでいたらテズ教国の執務(教皇以下大司教の研修)に食い込みそうだったので、この辺で切り上げる事にした。


「それでは、そろそろ予定もあるので一旦戻ります」

「おぅ、そうか。わざわざ済まなかったな」

「いぇ、また何かあればおっしゃって下さい」

「うむ、たのむぞ」


帰りにロスレーンの貧民街を少し視てみた。


大幅に人数は少なくなってる。働ける者は皆サルーテに行ったみたいだな。残ってるのは人生を諦めてる人ばかりだった。諦めても酒は飲みたいようで小さな仕事で小銭稼ぎを探してる。孤児院の炊き出しを当てにしている。


どうせ貧民街で酒に溺れて野垂れ死ぬならと実験してみようと思った。仕事がやりたくてみなぎる様に隷属したらどうなるんだろうという好奇心だ。どうせ転がってるだけだから布教もしない、諦めて動かねぇんだもん。そんな貧民だ。


隷属するのは簡単だ。それもどうなんだと思ったが、どうせ世の貧民を救う実験だ。恐怖の人体実験でデータとして他の貧民のかてになるならと理由を付けて納得してやったった。


小金は酒飲んで消えるなら、働いて好きな酒を少しでも多く飲んで死んで行けと道の端や廃屋に転がってる奴らにやったった。とにかくみなぎって働く人になるといいな(笑)


ゲッシュの言葉は「働きたくてしょうがない」


また暇になったら視に来よう。




次回 341話  侯爵のサルーテ訪問

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