第328話  殺してやるぞ海商王!


3月5日。


コルアーノ王国、カークス子爵領13時半。


カークス子爵領の領境となる大山脈の中腹に止めた飛空艇の甲板でモンにいるハーヴェス艦隊と連絡を取り終わると、飛空艇は大空へ飛び立った。


アルはハーヴェス艦隊を恫喝する北の海商王、ルーべンス商会について調べようと思ったが思い留まった。


商業国家連合のバーツ会長、ランジェロ会頭、ラムール会長の三人にはそれぞれの自国内で移民募集の案件をお願いしている最中。北の海商王について聞くのは簡単だが余計な話に巻き込みたくなかった。


「色々お考えは進んでいますか?」


飛空艇の運転をしている俺にコアさんが話しかける。


「ん?・・・進まないねぇ」

「今回の件はハーヴェスの思惑でございます」

「思惑?」


「一部の政務官が武力にてルーベンス商会を接収する案を提案しております。捕えた国主、領主、海賊、鹵獲物を運搬する商人からルーベンス商会が鹵獲品を一手に引き受けていた自白を利用しております」


「武力で接収って事は力ずくって事だね(笑)」

「詮議すれば、無実が分かるので武力かもですね」


「海賊行為の検索で引っ掛からなかったのは、商人の言い分の通りかも?と思ってるの。ただこちらの商取引の常識を知らないからさ、盗品と分かって売ったらダメっぽいかも知れないと思ってる(笑)」


「明様の法律では知っていたらアウトですね(笑)」


「そうなのよ、人が作った法律だしね。商人の道徳や商取引の常識を明日は視て判断しようと思ってるの。ルーベンス商会だって領主の圧力や商人仲間の義理で引き受けたかも知んないでしょ?」


「アル様的には落としどころですよね?」

「そう。落としどころの基準を僕は知らない(笑)」


視るにしても俺の知らない常識や基準では視ようがない。知らない事は検索できないのだ。そんな時は実際の会話を使って何のイメージをしているのか、何を根拠にその言になるのかを視て常識や基準を把握するしか無い。


「明日、商人さんの落としどころを参考にして決めるよ。武官は恫喝どうかつされた瞬間に帝国の意地があるから引くに引けなくなっちゃう、神教国の名前を出さないと収まらないと思うの」


「バスティー様は感謝されているかと思います」

「あのは心からと僕も思った(笑)」



・・・・


「アル様、ベント様から相互通信が入っております」

「はい、繋いでくれる?」

「お繋ぎ致しました」


「導師?何でした?」


(6月1日(光曜日)に神聖国の大聖堂の完成式典じゃ。儂もリードもお主も世話になっとるから聖教国の大司教として三人で出席するぞ)


「そういや、一年ほど師匠に俸給持ってってないや!」


#(バッカモーン!)


「だって、リズもいるしロスレーン歩けなかったんです。お兄様の結婚式も出てないんです(笑)」


言い訳だった。完全に忘れてた。


(む、そうか。儂が今から持って行ってやる)

「奥さんに渡したらダメですよ!」

(そりゃ、儂が言ったんじゃ!アホめ!)

「あ!そうだった!忘れてました(笑)」

(仕方がない奴よのう・・・)

「仕事はちゃんとやってるんですって!」


(まぁよい。お主の俸給もファーちゃんに渡して置くぞ)


「ありがとうございます」


「そういや、アルムさん達の俸給も渡してないや」

#(バカモンが!何をやっとるか!)


「ごめんなさい、ごめんなさい」


「導師達も渡してないですよね?」

(毎月16日にファーちゃんがくれておるぞ)


「え!あ!そう言えば、タナウスの人は一番最初に支度金しか渡してないや(笑)」


「・・・」


「毎月アルムさん達にも渡すように言います」

(酒の壺はお主から貰っておらんぞ!)

「あ!そんな事言いましたね!」

(お主、国主が言った事をたがえてどうする!(笑))


「今から買って来ます!お待ちください(笑)」

(気長に待つわい(笑) 6月1日じゃぞ?)

「はい、出席します」


「コアさん、アルムさん達に俸給渡してくれる?」

「いつからの分でしょうか?」

「分かんない」

「アル様!」

「ごめんごめん!ホントごめん!」


「今月3月16日分からコルアーノ小金貨一枚とタナウス銀貨10枚をうちのPTメンバーに渡してくれる?」


「かしこまりました」



・・・・


パーヌで壺をしこたま仕入れて来た。


クルムさんに俸給の事を聞くと小さなメモ帳を出して来た。俸給をもらうのが村から出て来て初めてなので嬉しくて付けていたと言う。


こんな人に俺は給料渡してないし・・・えーん。 orz


なんと渡し忘れも入れて十八か月分も渡してなかった。滞納分の俸給小金貨十八枚(360万円)をアルム、クルム、シズクに渡した。スフィアは十四か月分(280万円)渡した。神教国の報酬は銀貨百二十枚を全員に渡した。来月からファーちゃんかアロちゃんにもらえと言っておく。


俺はファーちゃんから聖教国の俸給一年分小金貨三百枚(6000万円)をもらった。三賢者(導師とアルノール卿とジェシカさん)には大壺八個ずつ支給しておいた。


お爺様にバレたら酷い目に遭いそうで背筋が寒くなったので、コルアーノの俸給を副執事長のモースに調べてもらい十四か月分の俸給小金貨二十一枚(420万円)もらって来た。


明日は早いのでタナウスで寝た。


・・・・



3月6日(雷曜日)


5時にタナウスのアルムハウスで起きた俺は御子服に着替えてモンに入港中のハーヴェスの艦隊に跳んだ。メルデスからだとモンまで7時間も時差があって辛いのでアルムハウスで寝たのだ。


10時に艦隊旗艦の甲板上に現れた。

勝手知ったる他人の家じゃないけれど盗賊関係者を何人連れて来たかわかんないほど来ているので感慨もクソもない。湾内なので波静かなエメラルドグリーンの海だ。


御子様が見えられましたとの伝令が船室に走り、使者ニコライ・セシリと海軍政務武官バスティー・モンツ。政務武官(バスティーの副官)ファゾ・ドラク。神都王宮メイド長 コア・ラキストスが甲板に上がって来た。 (今回は護衛で連れて来ちゃったけどコアさんのタナウスでの肩書はそうなんだってば!)


使者の方とお互いに自己紹介を行う。


「神教国タナウス、皇太子 アルベルト・ド・カミヤ・メラ・タナウスという。今日はハーヴェス帝国に成り代わりそなたの主人に会いに行こうと参った。よしなに頼む」


「皇太子様、私はニコライ・セシリと申します。昨日の晩、神教国タナウスはこの件の裁定を下さる宗教国とお聞きしました。主人の言い分を聞いて下さるとのお言葉を聞き神教国皇太子様に感謝しております。この様な事態を招きましたこと申し訳ございません。よろしくお願いいたします」


「分かりました、お父様にお会い致しましょう」

「なぜそれを!」殺気立つ。

「神に隠し事は出来ませんよ(笑)」


口が滑った(笑) 途端に看破を疑われてしまった。


「参りましょう。神教国の大魔法です、驚かぬ様に」

シャドが巻いた瞬間ルーベンス商会へ跳ぶ。


・・・・


これはバロック庭園な宮殿だな。


門の遥か向こうにお屋敷が小さく見える、俺には馴染みが深いリノバールス帝国建築なお屋敷が建っている。よっぽど暇じゃ無いと門から歩いて家まで行きたくない距離だ、こんな邸宅誰が作った!(笑)


その正門にうちらは五人で立っている。ハッと気が付いたニコライが門の守衛に開門と邸宅に向けて先触れを走らせ、門の横に建っている右側のの様なティールームに導かれる。左側のタケノコが守衛の詰所になってる。


お客は必ずここで待つのか、守衛も利用してるのかメイドさんが三人待機していた。俺達に出してくれたお茶とお菓子をパクパク食べた上にインベントリに仕舞う。


「あなたの許可があれば直接伺うのですがねぇ」

「それはお許しください」


気にしなくていいのに。


宮殿正門までの馬車が来るまで待たないとダメだ(笑)


その間に詳しく見て行く。

この息子はニコライ・セシリ(34)北の海商王と言われるルーベンス商会の会長ルーベンス・セシリ(74)の三男に当たる。ルーベンス・セシリは元子爵だった。


ルーベンスは子爵家の次男だった。

幼いころに天然痘に掛かり、子爵家の保有する別荘に隔離された。長男を除いた六兄妹の中で天然痘に掛かった五人はルーベンスしか生き残らなかった。


この世の病気は普通に腸チフス、ペスト、天然痘、麻疹、コレラ、マラリア、盲腸、剣戟による敗血症、破傷風。言い出したらキリがない病気がある。罹患らかんしたら普通に死んでいく。インフルエンザと言わずとも普通の風邪や水疱瘡みずぼうそうによる重症化でも死んでしまう。栄養状態が悪いと真菌にやられて死ぬし、普通の傷から菌が入り腐って死んでいく。こないだクランの使用人になったアマリの壊血病は栄養不足で徐々に死んでいく病気だった。以前言ったが朝になっても起きて来ない様な死に方だ。



天然痘は小豆大のブツブツが体中に出来る病気で致死率も凄まじく高く二割から五割という恐ろしい病気だった。子供が掛かれば並大抵では生き残れない。


ルーベンスは生き残ったが天然痘で出来る痘瘡とうそうというあばたが特に顔に酷く、屋敷では母親がルーベンスを見る度に悲しみ、父親が気が重くなると遠ざけられ別荘が与えられた。街に出ると一目で顔を背けられる痘瘡とうそうで差別を受けた。学校にもあばたがコンプレックスで内向的になり友達も出来なかった。象のような爛れた皮膚の痘瘡とうそうなのだ。苦悩と共に勉強に明け暮れた。


船乗りに憧れた。こんな狭い世界から逃げ出したかった。親に手紙を書き懇願こんがんし船を買ってもらって商人の真似事を始めたのがきっかけでルーベンス商会が出来た。


交易船の船乗りは指が千切れていたり片手、片腕、隻眼の者も数多くいた。海賊との交戦だ。船の上で年月を重ねた職能と鋼の身体で片手でも戦えたら乗せてもらえる。一隻に百二十人から百六十人の船乗りが帆を上げる。


船乗りの世界であばたをどうのこうの言う奴は居なかった。戦力になるかどうかがキモだった。勇敢に戦う奴が正義、働く奴が正義、頭を使う奴が正義だった。真面目に頑張ってたら三十歳過ぎた頃、惚れてくれる女が出来た。姿かたちは関係無いと言ってくれた。その女の為に生きるだけでやってこれた。


子供にはあばたが無かった。

親に似ると言うから心配していた。泣くほど喜んだ。


五十歳まで商会をやっていた時、セシリ子爵家を継いでいた兄が死んだ。兄は成人になってから麻疹はしかに掛かり子供が出来ない身体だった。すでに弟ルーベンスに三男四女がある事を知って養子も取らなかった。


兄だけは両親が弟にした仕打ちを恨んでいた。


ルーベンスは醜い己が家督を形だけついで長男に領地を任せた。次男を補佐に付けた。子爵家の使用人は万全に揃っている。今でもセシリ子爵家は動いている。そしてルーベンスは長男次男が嫁と子供を作り落ち着いた時に家督を長男に譲って子爵家領主を降りた。


三男ニコライは父ルーベンスの話を良く聞いた。北の海商王と噂に高い父親が辿って来た道を聞きたがった。そんなあばたのルーベンスと三男ニコライの思い出が視られた。


お迎え馬車がタケノコの里に着いたと言うので皆で乗った。


・・・・


案内された豪奢ごうしゃな応接には執務机の前にレースのカーテンが掛けられていた。カーテンを隔てて閣僚が座りそうなひじ掛け付きの大きな椅子が四脚用意されていた。椅子に着くと同時にメイドさんからお茶の用意がなされた、何事も卒のない対応だ。


執事長が、使者となったニコライ様の報告の仔細しさいを当主のルーベンスが聞いているのでお待ちくださいと言う。


三十分程して違うドアの音がした。


レースカーテンの向こう側に薄影の北の海商王が席に着き、お待たせして申し訳ないとルーベンスから話しかけられた。


「お待たせ致し申し訳ございません。私がルーベンスと申します。天然痘のあばたがひどく握手してもらうのも大変な男でございます、高貴なお方にはお目汚しとなります故、この様な薄い幕越しで済みませんがお話をうかがいましょう」


そこに人型が見える程の薄いレースのカーテンだ。


ニコライがホスト役でハーヴェスの二人を紹介する。


「こちらがハーヴェスからお越しの艦隊全権を持たれる海軍政務武官バスティー・モンツ閣下、こちらが副官をされておる政務武官ファゾ・ドラク閣下でございます」


レース越しに挨拶を交わす。


「こちらが神教国タナウスから見えられた・・・」

「神教国タナウスの皇太子 アルベルト・ド・カミヤ・メラ・タナウスでございます」


自分で挨拶した。


「神教国タナウスとは先程の報告で宗教国と聞きましたが?浅学で申し訳ない。どの辺にある国なのでしょうか?」


「国を聞くよりも神教国タナウスの者が北中央大陸の聖教国セントフォールを2700年前に作ったと言う方が分かり易いかと」


「それなら聞いた事がありますな。失礼だが、声を聞くに殿下は相当お若い方かな?」


「はい十五歳になりますね」


「なんと!その齢でこの会談に出席されておるとは、神教国は、イヤ、何処にあるやも知れぬ国の皇太子殿下はハーヴェス帝国と商国連合との仲立ち、もしくは問題の預かりが出来ますかな?」


過剰なあざけりが出ていた。今起こっている問題に十五歳の皇太子を仲介者に寄越したハーヴェス帝国に失望し、怒りまで湧いていた。仲介ならばラウム教皇もしくは土地を統べる大司教が出て来るのが筋なのだ。


「神教国がこの様な下世話な争いを預かるとは申しておりません、あなたに神託をたまわりに来ただけです」


あざけりにはあざけりを返すのがアル流儀。


「おっほっほっほ。有名な神のおっしゃる神託ですな?どこの宗教国も同じですなぁ、皆その様な事を言う。殿下もその様にの神託を言いに来なさったのですな?」


この爺ぃも言うねぇ。そこまで宗教国が憎いかよ、と乗ってやる。


「あっはっはっ!よくご存じですね。その様な下世話な俗物と付き合うと本物が見えない程も目がくもるらしい(笑)」


お互いに笑い合うがすでに異常な空気である。


「聞いておりますぞ、看破か鑑定持ちだそうですな」

「あぁ、御存じです?神のお許しは得ておりますよ」


「おや、普通は癇癪かんしゃくを起すのですが、さすが殿下、顔色も変えませんな(笑)」


「看破ごときで驚かれても困りますがね(笑)」

「心中穏やかでないのは見えておりますよ(笑)」


「神教国をこうも侮るとは滑稽こっけいですね(笑)」

「どこの宗教も同じですな。高慢さえも(笑)」


「あっはっはっ!そこまで眼が曇るとは救いがたい」

「殿下はなかなか骨がおありの用だ(笑)」


「金勘定しか見ない目は持ってませんよ(笑)」

「お布施をせびるお口はお持ちでしょう?(笑)」


下賤げせんな者と付き合うとお里が知れますよ」

「神をかたる者には近寄りませんな(笑)」

「近寄って仲良くしてるのが視えますよ(笑)」


「・・・」看破されたと思っている。


下賤げせんやからといるとその様に眼も曇る(笑)」


バスティーとファゾが勘弁してくれ!と問題解決どころか口汚い当てこすりの応酬にすくんでいる。


ニコライが仲裁も出来ず棒立ちで眼が点だ(笑)


アルがすっくと立った。


「まずはお目に掛かりましょうか?顔も見ずに話をしては、お互いの事も分かりません。齢だけ食った年寄りでは己の思い込みの愚かさに気が付きませんよ(笑)」


微笑みながらスッと立ってカーテンの向こうに行く。


「お初にお目に掛かります、神教国の皇太子、アルベルト・ド・カミヤ・メラ・タナウスです。ルーベンス・セシリ殿、よしなに」


カーテンを越えて来る来客など初だった。ルーベンスの顔を涼しい顔で見返すアル。呆然ぼうぜんとするルーベンスに握手の手を差し出す。後ろに控える護衛も驚くばかりで使者の皇太子をはばむ度胸も無い。余りにも可愛い子供がにっこりと手を差し出しているのだ。


爺ぃが俺の目を覗き込む。俺は視線を外さずにっこりとうなずいてやった。恐る恐る痘瘡とうそうが残る手で俺の手をつかんで握手した。


ルーベンスは見た、それは子供の眼では無かった。ルーベンス程の豪商すら飲み込む気迫と信念と力強さを兼ね備えた者だった。アルは一回死んであっちから来たから怖い物なしの豪胆さだ。


「みんな、神託を降ろすから静かにしてね」


レースの向こうに話しかける。


「それではルーベンスさんに神託をたまわります」


「聞かせてもらいますかな?(笑)」


ヘラッと笑いやがった。


目をらさぬアルをさげすむ言葉を侮蔑ぶべつを込めて吐いてしまった。


#ここまでやってやったのにクソボケがー!


ボーナス確定!


アルが鬼に変わった。みるみる間にレインボーオーラがスーパーサイヤ人の様にアルを覆った。


殊更ことさら大きい声で言ったった。


「神の御前で病に抗った証である痘瘡とうそうを誇りもせず、神に感謝も無い本当に情けない爺ぃだ。己の容姿を気にする前に曇った目を治せ!」


ALL「な!」


「神に感謝もせず詐欺師の魔法にすがだまされた己を棚に上げ神教国をバカするにも程がある。一回死んで来い」


アルは侮蔑ぶべつを込めて言ったった。侮蔑ぶべつのこもったと言われてブチ切れた。北の海商王が面と向かって言われたことなど一度も無い言葉をあばたの顔面に叩き付けた。


商人の言い分をわざわざ聞いた上で公平に裁定しに来てやったのにこの言われよう。人の好意を足蹴にして唾を吐くこのクソ爺ぃにクソミソに言われっぱなしで我慢ならんかった。


その部屋の者が全員固まった。


言われた本人が一番キタ。図星を突かれて痛くない者などいない。それはアルにしたって同じ事だが、根本が違う。助けるための神託を侮蔑ぶべつを込めておとしめめられたら誰だって鬼になる。


爺さんの威圧が膨れ上がる、アルをくびり殺そうと北の海商王と言われるだけの活力を備えた覇気はきがみるみる噴き出し顔色が変わった。


「こんなボツボツ気にしなくていいのに(笑)」


アルはキレている。爺ぃの覇気はきなど全く気にせず爺さんのハゲ頭の痘瘡とうそうをバシッ!と叩く。(来るなら来い!)やったるつもりだった。


アルの覇気も二十倍界王拳並に膨れ上がっている。


瞬間動いた護衛が前のめりになって昏倒した。釣られて動いた護衛も麻痺して昏倒した。爺さんは何が護衛に起こってるか分からない。武装商人を護衛する手練れなのだ。


#「てめぇら何動いてんだ。天罰が下るぞ?(笑)」


襟首掴えりくびつかんでルーベンスの顔を引き起こす。昏倒した護衛を見もせずに殊更に低い声でルーベンスの眼の奥を覗き込んで脅しをかける。


「そっちは静かにしていてね」


薄幕の向こうに何でも無いよと可愛い声を掛けるが、何が起こっているか薄いレース越しに見えている。


身代わりの珠を三つもしてやがる(笑)

取り上げた後に爺さんが麻痺で五体が動かなくなる。


「爺ぃよう?聞こえたよな?」


襟首掴んで持ち上げ、下からめ付ける。


「神託は一回死んで来いだったな?」


首筋掴んで威圧全開で睨みつけて動かない。爺ぃの瞳に初めて恐怖が映り、アルの目から視線が外せない。


「皆聞こえてる?この爺ぃは隣の部屋に借りて行くよ」


皇太子が神託でルーベンスを殺すと言った。カーテン向こうの余りの衝撃展開に皆がハッと我に返った。


「おい!ニコライ!親父の最後を見せてやる(笑)」


アルも人が悪い。爺さんも聞いている。


ニコライが抜剣して走り込んで来た。こいつも武装商人だ。なかなかいい感じの鍛え方してた。


「何勘違いしてんだ!バーカ!」


爺さん抱えたまま、足払いと言うよりローキックの足蹴りで派手にぶっ飛ばして剣を取り上げブブブとビンタ。息子がノビたのを親父に見せてやる。


「使用人!その部屋から動くな。神をも恐れぬクソ爺ぃと息子は預かる」


執事とメイドは凍り付いた。


文言はまんま、人質立てこもり犯だ。


爺ぃを肩に乗せて子供が気絶したニコライを引きずって行く。ニコライの足首持って隣の部屋に引きずる皇太子装束のミスマッチにその場の無事な者が目をいて驚いている。


麻痺した爺さんを隣の部屋のソファーに寝かせて裸に剥いた。


対面のソファーにニコライを座らせてヒールで起こす。ハッとなり、取り乱すのを麻痺させて素っ裸の爺さんを見物させてやる。


「海商王の最後だ!殺してやるから良く見てろ!」


ドスの効いた子供の声が部屋に響き渡る。海商王の爺さんも聞こえている。余りに腐れ外道な言葉に爺さんの心が震える。


三男も親父もアガー!ウゴー!と息をしながら精一杯叫んでるが身体はピクリとも動かない。まな板のコイになっていた。


ルーベンスは裸にくと、顔だけじゃ無い痘瘡とうそうが全身に過ぎるので何年も使って無い美容術で爺さんをツルツルお肌にしてやった。禿げ頭も毛根から再生してフサフサにしたのは今まで苦労して来た分のサービスだ。


ニコライは治って行く父親の肌を最後まで凝視していた。


「ニコライ!見ただろ?神教国をバカにしやがったクソ親父の最後を!ブツブツ親父は今死んだぞ。あっはっはっは!」


隣りの部屋から高笑いが聞こえて来る。相手が死んで楽しそうだ。


ニコライとルーベンスの麻痺を取った。


「親父に服を着せて、そこの洗面台で自分の姿を見せてやれ。あとな、昼が近いから昼食後に会談にしよう。神の国をバカにしない生まれ変わった親父となら話せそうだ。次はお互いにカーテン無しの対面で話しをするぞ(笑)」


「次も同じ態度だったら、天罰を与えるぞ!(笑)」


指差しで言ってやるとニコライがコクコクした。 


「そこのメイドさん。他国から来た高貴な使者だからモンの美味しいお昼を用意してくれる?あと、このルーベンス親子は放心状態だからお世話してやってね。髪も整えてあげてね。昼食後に会談の席を用意してもらえる?」


「かしこまりました!」


「そんじゃ、倒れてる護衛の人も起こしてあげてね、寝てるけどメイドさんが揺らせば起きるからね」


「はい!」




次回 329話  帝国のプライド

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