第325話  辿り着いた入り口。



2月30日(光曜日)


ギルドで見つけた冒険者の卵はブラスと言う。ブラスを連れて横殴りのミゾレから雪に変わった中、貧民街スラムに向かった。


貧民街の廃屋が兄妹の部屋だった。

土間に焚き木の跡と水差ししかない部屋に妹が乱雑な布団や毛布にくるまって寝ていた。視るとメルデス中を歩き回って拾って来た布団や毛布で寄り添って寝てる。真冬に拾って来た湿った寝具を乾かすのも大変だったみたいだ。


流民の子、兄:ブラス(12) 妹:アマリ(8) 親は他界、この冬を親父は越せなかった。隣のケルンから二人で90km歩いて来た。冒険者になったからだ。よくやった!めてやる。


ブラスは7位の依頼が取れないとパン屋と食堂のゴミ捨て(穴掘り、穴埋め)を手伝ってた。ゴミ出しが終わると、店屋夫婦が売れ残りや客の残り物をくれていた。


北東ギルドで毎日出る7位二十枚の清掃依頼表がブラスの命綱だった。一日馬糞清掃して大銅貨五枚、北東ギルドでは二十枚しか出ない。流民の子で装備も何も持ってない、北や東にも同じ依頼がある事や他の仕事のやり方も知らない。毎日行って取れなきゃ飛び込みで使って下さいと店に行く。


妹が病気でビタミンC欠乏症だった、壊血病かいけつびょうと出る。症状を視ると下半身に紫色の痣がすごい。歯茎や目、爪の毛細血管から出血で慢性貧血だな。パン屑と露店のおかゆ煮の暮らしが続いてる、危なかったけど餓死よりいいよ。振り返って兄を視る、兄は自覚症状ないが検索で同じ症例が引っ掛かった。


兄妹にクリーンを掛けて妹と兄に癒しのヒール(光や聖は本人の体力も使う)内出血は収まったな。病気のリセットは出来たかなぁ?ミカンジュースでビタミンCは取れると思うけどなぁ・・・。


二人にパタパタする様に言う。頭なんか灰色だよ(笑) 粉が落ちて服が綺麗になってるのに気が付いて目が点になってるのが可愛いな。


仕入れたミカンジュースを兄妹にやった。飲んだ途端に兄妹の顔に赤みがさした。甘いものは効くのかな?ビタミンCかな?


これは良いかな?とカロリー有りそうなゴマ団子を出した。雪の降る暖房の無い室内に出来立てのゴマ団子の湯気がもあもあと上がる。


「これ、食べられそうか?」

「うん、食べます!」

「頂きます!」


熱々を千切って手に乗せてやるとハフハフ言いながら良く食べる。わーい。雛に餌やってる気分だ。


「一人三つまでだ。あんまり急に食べるとお腹がビックリして痛くなるからな?」


兄妹はあっという間に食べきった。


食欲は兄妹とも凄かった。依頼票が取れた時に稼いだ金で食いつなぎ、露店の食べ物を何かしらお腹の中に入れてたので胃腸は活発だ、病気があること以外は戦後日本に餓死した浮浪児だな。あばらが浮いてそのままだ(笑)


さぁ、行くかと外の雪見て思い出した。12歳の冬に買った布のバラライカはこの兄妹にピッタリだ。


「お前達これを頭から被れ」


言いながらブラスにズボッと被せる。


「アマリもな」


ズボッと被せて首を覆ってやると妹をおぶって上から毛布をかぶる。


「何か持って行く物はないな?」


中に入れる食べ物も無かったろうに、拾ってきた欠けた食器を集めて袋に持つ兄貴。


「よし!行くぞ!」


雪の吹雪く中、俺達は外に飛び出した。


・・・・


雪の積もった毛布をかぶって入ったクランハウス。毛布かぶってるのが俺と気付いて驚く事務員たち。見渡すとクランハウスは女だらけだった(笑)


「明日は3月だぞ!どうなってんだこの雪は(笑)」


話のタネに振る。


「さっきからメンバーが凄い勢いで帰ってます(笑)」


副クランマスター:イコア。


1期事務員。

事務長:小言:リナス。

副事務長:ルミナス(育休)、マイア、エレクトラ。


2期事務員:アレッタ、コリー、ヘルド、リエン。

3期事務員:ピア、セザーリ、ロタ、ネピス。


事務員補助

1期事務員:魔女宅:カレン


今こんなに女子の園なの?(笑) 月一の早朝しか来ないから知らなかった。


「リナス、こいつはブラス(12)、冒険者になったばかりだ。メンバーに入れてやってくれ。こっちは妹のアマリ(8)クランハウスの上の住込みに入れてカレンの下で仕事を覚えさせろ。カレン。お前の部下だ、可愛がって教えてやれ。アマリの俸給は月銀貨五枚。こいつは体調が悪いが野菜を食ってなかったせいだ。食堂で日替わり食ってたら体は治る。沢山食わせろ、残ったらこの器に入れて持たせろ、食堂は量が多いからな」


銀貨五枚を出す。


「これをアマリの支度金として渡す、俸給出るまでの食事代だ。序列はカレンの下の事務員補助となるから名札も頼む」


リナスがメモを取りながら頷く。


「アマリはカレンと同じく俺の使用人だ、服と下着と仕事着、靴を季節で必要量、後は日用品を買ってやってくれ、くれぐれも貴族の使用人だと言う事を忘れるな」


ALL「はい」


「次のこいつはブラス、冒険者の卵だ。今まで妹を守ってきたがこれからは一人で立って歩く。今から宣誓の儀を行う、そのあと雷鳴商店で最低限の装備を揃える、服も武器もな」


「ブラス、7位に装備は必要無いがついでに借りておけ」


ブラスは矢継ぎ早で何言ってるのか分かんない。宣誓の儀って何?で止まっている(笑)


止まっているブラスに宣誓の儀を行った。

すでに事務員の皆が受けてはいるが、ブラスの頭上から七色の光が淡く降り注ぐのを見て、まさしく神の祝福だと感嘆した。


敷地内からブラスを連れて雷鳴商店の裏口へ入る。少しの距離でも雪の中で頭が濡れる。


「おーい!」

裏口から雷鳴商店の事務室に押し入った。


「アル様!」

スルマン店長と嫁のセリアが暖炉にくっ付いている。


「おぅ!ちょっと装備買わせてくれ!」

「あ・・・はい!」後ろのブラスに気が付いた。


雷鳴商店で夏冬服の上下二着とマント(外套)、桶、鍋、下着、タオル、冒険セット(蝋燭ろうそく燭台しょくだい、火打石、ロープ、解体ナイフ、コップ、砥石といし背嚢はいのう、安い鉄剣、革鎧(厚革の半袖ベスト)、手甲、脚甲、靴を全て中古で揃えたが小金貨(20万円)相当は掛かる。残りの銀貨1枚大銅貨3枚、銅貨2枚を持たせてやる。


今までも貧民出のズタボロの奴らに世話してるから装備選ぶのは慣れたもんだ(笑)


クランハウスに帰ると、副事務長マイアとエレクトラとアマリが居なかった。早速住み込みの部屋の準備をしに行ったようだ。


「アマリは自分の部屋に案内されてる。心配しなくていい」


「アマリはまだ小さいので二階の応接と食堂の前で皆の声の聞こえる部屋にするとマイアが案内しています」


「だそうだ(笑)」


そのまま事務長のリナスに言う。


「宣誓の儀と小金貨一枚貸付、明日からギルド窓口で報酬から二割引きだ」


「はい、わかりました」


「ブラス。この代金はクランが貸し付けてやる、ミウムの税金とギルド手数料、クランの借金でギルドの報酬カウンターで三割取られるからな(笑) 銅貨十枚稼いだらギルドに三枚取られるって事だぞ?」


「はい、ありがとうです」


「ブラス、ステータスと言ってみな」

「ステータス。あ!」

「それがステータスボードだ」

「俺に見てもらう様に思ってみな」

「・・・」


「そうだ!それを持ったら強くなれる。朝7時頃に外で泣き叫ぶ生徒が居るから鍛錬してる先生に僕もお願いしますと頼め。時間を作って幽玄流の道場で先生に剣術を教えてもらえ。そのステータスボードに剣術が付くまで頑張れよ。朝は5時45分に音楽が鳴るから起きて教室に行くと読み書きを教えてくれる。依頼票が読めないと仕事出来ないからな?」


「はい」


意味が分かって無い、初めての場所で色々言ってもダメだな。まぁ、同室とかいろんな奴に聞くだろ。飛び込みで仕事くれと言う奴だしな。


「それじゃこの大荷物持った奴を・・・ヘルド、宿舎に案内してくれ、暖房紋と風呂・・・今更か。頼むぞ!」


目が合ったのでヘルドに頼んだ。


「はい、アル様」すぐに寄宿台帳の棚に向かう。


「お前の妹は明日からここで働く。ちゃんと食べて、ベッドで寝て規則正しい生活が待っている。妹はもう心配しなくていい、大丈夫だ。今度はお前だ、歯を食いしばって登ってみろ。自分で獲物を捕って食えるようになれ。まだ7位だ、紙にサイン貰って当分暮らせ。そのうち先輩たちがどうやって稼いでいるか見えて来るからな、周りを良く見て教官に教えをえ」


「アル様、用意が出来ました」


「お前は入り口に辿たどり着いた。めてやる!」


笑顔で頭をポンと叩いた。


「ありがとう・・・」兄は泣いた、オイオイ泣いた。


周りの事務員も泣いた。俺は我慢した。

我慢して他の話にすり替えた。


「カレン、明日アマリを読み書き教室に連れて行け。慣れるまでお前の側に置いてお前が仕事を教えるんだぞ。お前はアマリと同じ俸給銀貨五枚から始まった。その後クランの運営が軌道に乗り銀貨七枚半から九枚、奉公二年の昇給で十枚チョイ(十万二千円)となってるな?(リナスに家賃と食費を入れて銀貨四枚(四万円払っている)」


「はい」


「来年成人になったら俺個人の使用人である事務員補助からクランの正式な貴族家の使用人で採用だ。初任の俸給銀貨十五枚となる。リナスがもう直ぐ結婚する、一年早くここの三階に移っても良いぞ。リナスの所のご飯は食べられなくなるからリナスと話し合って二人で決めろ、ラーナ婆ちゃんが寂しがるならまだ一緒に暮らしてもいいぞ(笑)」


「リナス、一緒に暮らす者同士で話し合ってくれ」

「かしこまりました」


「カレン、二年経って痩せてたお前も大きくなってる。食費も増えてる筈だ、リナスと一緒に住むなら来月からリナスに銀貨五枚入れろ(笑)」


「はい、アル様!(笑)」


「ミッチスのダン、タロス、リンダ、ユーリィも孤児だが俸給を稼いで自分の足で立っている、お前も来年そうなるんだ。もしもハウスに移るなら一緒に暮らす事務員の皆とアマリの面倒を見てやってくれ。八歳だ、まだ仕事も生活も食堂の券の買い方すら知らないんだ、教えてやってくれ」


「はい、アル様。ありがとうございます」


「最近やってないな、一人二枚。事務で分けてくれ。イヤ施設管理長のラーナと管理員のミリラの分も渡しておく」


ミッチスのタダ券三十枚をリナスに渡す。


ALL「ありがとうございます」



管理棟から冒険号に跳んだ。

パイナップルジュースがまだだ。


・・・・


メルデス14時半>冒険号15時半。


昼食食わずに時間食ったな、貧民街も行ったしな。サロンで自販機のボタンを押して日替わり定食を出す。


出て来たトレイを持った瞬間にワールスのランジェロさんから相互通信が入った。


(御子様、第一回の移民募集面接日は3月14日(光曜日)13時でよろしいでしょうか?本日2月30日で締め切りました。第一陣は六百名の予定です)


「あ!お願いします。その日程で構いません。面接ブースとカウンターの方はお願いします。十二名のスタッフはこちらから連れて行きますので宿の手配もお願いします」


(そちらの方は倉庫の事務所を予定して、横の倉庫を持ち込み手荷物の倉庫にする都合上、港湾倉庫の見張り員寮を一棟用意してございます)


「あ!手荷物倉庫の事言ってましたねぇ。それで構いません。面接後の出航予定とか変わりませんか?」


(面接後一か月の出航予定は変わっておりません、事務所も用意しておきます。14日(光曜日)の13時にお越しください)


「分かりました、連絡ありがとうございます」


トレイを机に置いたままそのまま考えに浸ると、気が付いた時には定食のスープが冷めていた(笑)


食べながら、午前中にお爺様に助言したS.A案の抜けが無いかを考察して独り言を言う。


「用地が決められないなら乗ると思うけどなぁ」


強行か委託の二本なら、俺なら委託だけどなぁ。赤字店舗を潰した後の優良店舗を買えば宰相なら大勝利だよ。しかし何処どこの組織にも強硬派の猪突猛進ちょとつもうしんタイプはいるしなぁ。


(!)


強硬でも委託でも俺には関係ないわ。相手が選ぶんだ、俺が決めるんじゃねぇ。モアベターな方向を提示はしたが、それは目的じゃ無い、お爺様が宰相に寄り添って王家の相談に乗った実績が欲しかっただけだ(笑)


あの案はめて動かない用地問題を進捗しんちょくさせるのが目的だわ。進んだら王家か神教国の予算で作る事になるから、どの道作るのは決定となる。今のうち有効な用地案出さなきゃ効率悪いぞ。鑑札買って繁華街のS.Aでクリーンの大行列出来たら宰相が胃潰瘍になっちまう(笑)


そんな時、サロンの扉が開いた。


「あれ?アル君!」

「アル、この時間に一人で食べてるの?」

「どうしたのよ?みんな(笑)」


「変わった病気の様なのがあって、コアさんに見てもらおうかと思ったのよ」


「クルムさんが分からないのは、僕も分か・・・るかも知んない」視ればな(笑)


「何よそれ!(笑)」

「コアさーん」

「何でございましょう?」

「そういう事だって(笑)」

「かしこまりました」

ALL「(笑)」


「折角来たからお茶飲んできなよ」

出来立てのゴマ団子を出す。


「あ!ムンのホカホカだ!」

「うん、二か月前のホカホカ(笑)」

ご年輩にはお茶受けに丁度良い。


「何でそこで押すの!」

「美味しいんだもん」

「アルムじゃから(笑)」


クルムさんはHOTのお茶のボタンを押す。


シズクとスフィアはクリームソーダを押した。今、俺を読まなかった。自分で押した。


「団子熱いわね、揚げたてよ」

「どんな病気なの?危なそう?」

「心配になる病気(笑)」

「病気は心配でしょ!なにそれ、その感想(笑)」


「ホント熱い!(笑)」

「動きがねぇ、遅いのよ」

「はぁ?遅い?」


「うん、村がみんな遅いのよ」

「何かの呪いっポイのよ」

「マジで?呪術系はあぶな・・・くないか(笑)」


俺の知る呪術師は死兵を操る奴らぐらいだ。


「危ないわよ!」口からゴマが飛ぶ。

「呪い調べて呪いにならないでよ?(笑)」


「何か分かったら教えて」

「アル君行かないの?」

「行きたいけどやることがなぁ・・・」

「何やるのよ?」

「アル、変な村人だから見た方が良い」

「うーん!まぁ、視るだけ見るか!」


「そうよ、あれは絶対変よ、笑えるほど遅いの(笑)」


「え!そんなに遅いの!マジ呪いじゃん」

「アル君も絶対笑うわよ(笑)」

「これ!アルム!」


「国はどこよ?」

「こちらに」


あ!そっか!この人たちは転移装置でその土地のダンジョンにコアさんが跳ばすんだよ。そして行ってしまえば転移恩寵でそこに跳べる感じだわ。俺と全然違う。


半透明のモニターが出る。

プロット見るとフィリピンぐらいの緯度だな。


コントス王国 北緯16度、西経125度

https://www.pixiv.net/artworks/104869304


「コントス?温かい場所っぽいね」

「そこの国。隣の村は何ともないの」

「よし行こう!」


皆で飛空艇で跳んだ。


・・・・


冒険号16時>コントス8時


コントス、アルムさんの見た村の上空。

山を越えると砂漠だ。山も砂漠に侵食されて山裾やますそ禿げてる。山裾やますそが境界線みたいだ。単に気象条件だろうな。


飛空艇を下ろす場所に村を見降ろす山を選んだのが間違いだった。山の中に人が一杯いた。動かない人が・・・魂はある、生きてるけど動かない。そんな人々を視ながら飛空艇を仕舞う。


「ここの人動かないね」

「息はしておるな、脈もある」


俺は視た。


高い所に行きたくなって山に登って来た。なんじゃそれ?周りを検索したら居た!十人ほどは死んで転がってる・・・真っ白で腕や脚がもげてる。


「みんなーこっち!こっち来て!」

「アル様!止まって!」


「え?」


皆がそこから動かなくなる。


「このまま、全員で冒険号の格納庫へ跳んで下さい」

シャドが巻いたので全員で跳んだ。


「アル様、新種と思われます。そのままお待ちください」


皆をショートジャンプの輪が包んだ。

跳ばされたところは5番艦ユピテル(検体収集船)だった。


メイドが次々に現れてそれぞれをシャワーブースへ案内してくれる。そして素っ裸で薬液のシャワーで洗われた。バスローブで広間に隔離された。俺は知っている。これは感染隔離処置の筈だ。コアさんを視ても何も分からない。


「未知の進化病原体の兆候ちょうこうがありました。コアの知らない人族の死に方でした。十分程でルーツが解析出来る筈ですので、今しばらく解析をお待ちください」


やっぱり! 呆然とする。


「アル、どういうことじゃ?」

マキ赤痢ってどんな場所で起きる?」

「沼や汚い水溜まりの毒が井戸に入って起きるな」

「あれね、毒じゃ無いのよ」


「はぁ?何を言っておる(笑)」


「沼や水たまりに目に見えない魔物が居るの」

「・・・」

「精霊見えるでしょ?アレより小さくて見えないの」

「精霊は見えんがそんな魔物がおるのか?」


そう言えば感じてるだけだった(笑)


「アル君が言うなら居るのよ」

「目に見えないけど何処どこにも居る」

「どこにも?」


「食べ物が腐ってカビが生えるとお腹壊すでしょ?あれも小さな魔物が増えて毒を出すからなの」


「おぉ、カビはどんどん増えるな」

「元は目に見えないのが見えるほどに増えたの」

「マキもそういう見えない魔物なのじゃな?」

「そうそう」


「その目に見えない魔物の変異体、赤みたいのに出会ったかもしんないの。変異体の病気だから治療法が無いかも知れない。今コアさんが調べてるから少し待っててね(笑)」


「シズクとスフィアは大丈夫!お前たちは最強だ!」


笑って言うが、心が沈むのを読まれてしまう。


「アル君、誘ってゴメンね」


「何言ってんの!調べてもらったのは僕のせいだ、僕こそみんなにゴメンだよ(笑)」


「でも!」泣きそうだ。


「大丈夫、何があっても大丈夫!」


「あ!忘れてた!」


部屋全体にピューリファイ浄化シールドディバインサークル状態異常回復を掛けた。


「三人共ステータスは健康だから大丈夫と思う」


「アル様、判明いたしました。元々哺乳類に寄生するカビ菌の一種です。今回人に感染する様に変異しておりました」


「分った?ワクチンは?」

「用意出来ます」

「良かった!」


「変異前は奥地のサルに寄生が一般的な菌でした」



「人が菌を吸って感染しても根治するよね?」

「アル様たちは体内の免疫が抗体を用意しました」

「この部屋はどう?」

「ピューリファイは有効です。死滅いたしました」

「大丈夫だったって!良かったねぇ(笑)」


「ただ、現地では胞子の飛散汚染を防がないといけません。吸い込んで発芽すると四カ月から六カ月で哺乳類は乗っ取られます」


「え!」

「寄生細菌です」


「・・・げー!」


そういや記憶を視ただけでステータスはノーマークだったな、何より本人が自覚して無かった。ステータス視てたら寄生スライムみたいに寄生って出てたかもしんない。しかし魂とか重なってなかったけど・・・小さすぎて視えなかっただけか?


「どうした!アル!」


「寄生されるとどうなるの?」


「体内で菌糸を伸ばし、血管を辿り脳に達すると鞭毛で操られます。菌糸を伸ばすまでは食欲が増し栄養を求め血中糖度で菌が育ちます。脳に達する菌糸が増えると宿主を掌握しょうあくし、高い所を目指します。あの山の中の人がそうです。


高い位置で菌に活動停止させられ、生きたまま菌が旅立つまで停止したまま生き続けます。菌が成熟して旅立ちを迎えると宿主は殺され菌の培養体となります。体中から菌糸を出し胞子を作り、高い位置から風に乗せて新たな宿主となる哺乳類の体内を目指します」


アルムさんが口と鼻に両手を当てて震えている。

クルムさんは呆然と聞いている。

俺は平然と聞いている。

シズクとスフィアは棒の付いた飴を舐めている。


「よし!もっかい行くぞ!」

「アル!ダメじゃ」

「アル君!ダメよ」

「もう感染して治ったから、カビ菌は大丈夫!」


震えているから連れて行ったら可哀想。


「コアさん、二人をタナウスに跳ばして休暇ね!7日は教会のお祭りだよ!二人共出てよね?」


「かしこまりました」


二人の頭上にショートジャンプの輪が出来て吞まれて行った。


「よし、シズク、スフィア!コアさんも行く?」

「お供いたします」


三人をシャドが巻いた瞬間に跳んだ。


飛空艇を出して高空に上がる。


「カビ菌に名前はあるの?」

「数字のコードネームだけで名前は無いです」

「そんじゃいいや」


なんかそんな進化したカビ菌検索。


「ウヒョー!結構風に乗って広がってるよ、高度300mだと地平線まで行ってる。700mまで上がってみるね」


「お願いいたします」


「大体50km先まで胞子が飛んでる。それ以上は行ってない。直下の人は三、四か月前から?おかしいなぁ、死んだ人が四から六カ月前ならもっと広がってるはずなのになぁ」


「胞子は飛散して何日以内に哺乳類の体内や適度な水分の培地で無いと発芽出来ないと思われます」


「あ!飛散する時間に効力が無くなる?」


「最初に菌を持って来た人が死んでた人なのかなぁ?あの人たちから胞子が飛んで風下の村人が感染したと考えるのが自然だよねぇ?」


「死んで培地として菌糸が体表に出て飛散します」


「てことは最初の菌はどっかから来てるよね?」


まぁいいや、全滅させたらいい。気にすんな。


アルムさんかクルムさん?持ってるなぁ。見つけるのがピンポイント過ぎでしょ。言ってた通りこの吹きおろしの方向なら胞子は隣村に飛んで行かない、大丈夫だわ(笑)


ピューリファイ!


飛空艇を頂点にこの魔法の真骨頂、浄化のベールで半径50km範囲を覆う。どんな穢れも近寄れないと言う上級司祭の必殺技!


もう一回検索。

もう居なくなった。プロットで埋め尽くされていた胞子も菌も何も出ない。


念のためやっとくか。

ピューリファイ!ディバインサークル!


浄化のベールが降りた後に状態異常回復のドームが地平線を覆い尽くす。


「もういなくなった筈」

流石さすがアル様!」

「何言ってんの、流石さすがコア様なのに(笑)」


山に向かって降下して行く。


「あ!下見て!人が動き出した(笑)」

「普通に歩いてますね(笑)」

「止まってるのはもう死んでるわ・・・」

「菌糸が出る寸前の固体ですね・・・」


シズクとスフィアが船べりから下をのぞき込む。


「しまった!ゆっくりの見て笑えなかった!」

「アル様!(笑)」


一応船と皆にもピューリファイを掛けておく。


恐ろしい星だよここは。


地球の寄生生物を検索したら山ほどいた(笑) 菌も生きるの必死だわ。冬虫夏草やハエやバッタ病なんてやつまでモロにコレ系の菌だった。




次回 326話  連絡連絡また連絡

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