第318話 タナウス信用金庫
1月27日(
朝5時に起きると冒険号へ行って鍛錬を行う。鍛錬を終えると銀行の案件をまとめて行く。もうカラムにはハーヴェス艦隊が迫っている、時間が無い。
シュミッツの話ではロスレーンとサルーテの金勘定と護衛の手間を減らしたい。街路灯の大きなお金がロスレーンに集まり、サルーテでは特産を運んだ代金や普請の進捗に応じて代金を支払う必要がある。
話は代金の移送だけでは無い。それを小銭に変えて各領地の執政官が現場で使う人足の賃金を配り易くしないと大きい金ばかりでは普請が回らない。
要するに困ってるのは小銭を勘定して、白金貨一コインから大銅貨であれば二万枚に両替した小銭を運用するロスレーンだ。
両替する小銭は幸運な事に全領の開門村とサービスエリアで恐ろしい数の銅貨が集まっている。流民センターの預かりサービスでも細かい単位の貨幣が集まる。ロスレーン家には各地から大きな単位の貨幣が集まる。
太い金額と細かい金の両方を同じ樽に入れて出力すれば入出力が同じならばいつまでも回る。金勘定は観測すれば間違わないし、贋金などは一発で弾く、利息は付かず銀行手数料は預金から引けばよい。
コアさんに聞くと互助会の預かりサービスを利用している人間はなんと3万6千人にも及んでいた。流民だけじゃない、人足たちも執政官も利用していた。貴族のお屋敷と知って、皆が預けてるからと右へ
個人と魔力紋を特定したら日付と時間と金額が出入金表で出せる。ロスレーン領とサルーテ領の出入金表は月〆でお願いしておいた。
大体の概要が決まった所で、タナウス大金庫の場所をコアさんと決めた。岩盤固く大山脈ほどには高くない山の中に大金庫を作った。
大金庫の下部は絞りが入って自動的に硬貨選別機に入る様になっている。単純に言えばコインカウンターと一緒だ。払い出された金額が指定の座標に転移で跳ばされる。
後はタナウスの科学にお任せ、銀行業務に俺の入る余地など無い。
・・・・
タナウス10時>ミン国ラプカ寺院8時。
ラプカ寺院の鍛錬に顔を出した。年末年始で帰ると言って、以後帰らずにこのまま2月になったら泣いて逃げたと思われる。寺の鍛錬広場に顔を出すと俺の顔を見て驚いているから
皆が驚いても鍛錬の手と気合の声は止まらない。
そんな練習の列に正対して構える。
誰でも相手に来い!の構えで静かに正対した。
皆がエイ!エイ!エイ!と型を一つずつ鍛錬する姿を見て静かに構えて待つ。
程なくして特別可愛がってくれた師兄が指を鳴らしながら出て来てくれた。朝から師兄に組手でラプカ寺院拳の波動の極意を悟った事を知らしめる。(泣いて逃げたのではない事を知らしめる)
教わった物全てを出して技を受け切り、跳ね返す。
組手を続けるうちに皆の鍛錬は止んだ。
それはネフロー様から教わったとても大切な認識を元にした武術だった。クロメトの魔力線の仕組みとラプカの波動と捻じりの技術を教わったと共に、物質世界の認識と概念世界の認識の根本にある意識の至宝を理解した武術に昇華されていた。
俺の拳を見て寺の門徒総代(寺院拳師範)が目を
帰りに寺を振り返ると、何百年も踏みしめられた広場に出来た真新しい陥没した足跡に皆が
それは戦いの神、ネフロー様の足跡だよ。
・・・・
お昼に冒険号の自販機コーナーへ行くと、お土産コーナーが出来ていた。ブランデーもホールケーキも干物もボタンが並んでいる。カラム王国のお土産を買い過ぎて、ルージュ由来のボタン率が高くなったが、暇が出来たらスーパーの買い物順路の様にする意欲がわいた。
そんな事を思いながらボタンを押すと、訳の分からない日替わりランチが出て驚く。視ると雷鳴食堂の季節の山菜プレートと言うらしい。俺が喜ぶだろうとイコアさんがメニューを追加してるみたいだ。俺はタナウスの宝に何させてるんだと反省しながら
※漁醤的味付けを出汁で伸ばしている。アルは興味が無ければ放置するので漁醤を見てもふーんで終わっている。当然集めてもいないしお取り寄せもしない。
覚えていないかも知れないが、コアが明の記憶からカシューナッツからピーナッツ、ココアバター、コーヒー豆など、この世に有る原種的な植物種子はコアに特定されている。
特定されてても、コーヒー豆のローストしろとかナッツ類のローストとか、チョコを作れとか、醤油を作るとか味噌を作るとか言わない。だからあっちの複雑な嗜好品の様な物は何一つ出来ていない。
出来たのは芋の素揚げぐらいなもんだ。材料が目の前にある大判焼きかとんかつ位しか作る気が無い。色々と一通りの料理は出来るけど作らない。アルは餃子や肉まんなどの肉餡系やタコ焼き作らせたら絶品なのに作らない。自分でパンを作ってロールパンに切れ目を入れてバターと小豆入れたら小倉ネオマーガリンと思っても作らない。
ベガが作るお好み焼きは聖教国の噴水公園前の露店のお好み焼きの真似で日本の物ではない。
アルは出て来たものが美味しかったらそれで満足する。家で雫がいるからご飯を作るとかの仕事なら普通にやるが、料理には興味が無い、ベガみたいに料理が趣味とか聞くと協力するが自分は趣味じゃ無いので作らない。
ルネッサンス情熱な子供だったら60円でコロッケ食べながら歩かない。押し入れにカップ麺を溜め込まない。その辺は普通の庶民だし、コーヒー豆の焙煎の仕方も知らない。当然味噌や醤油を作る訳がない、そんな事しない普通の日本の子だ。
明は水産高校か農業高校に行ったらかまぼこや味噌や醤油が出来て良かったかも?
(異世界でそれを作るために高校選ぶ奴は居ない)
・・・・
冒険号で日替わりランチを食べて、コアさんと交感会話で色々な動向を聞いて行く。
銀行の素案を遅くまで検討していた商国連合の三人は午前中に身支度を整え大判焼き屋のベガを訪ねたそうだ。忙しいから一回だけだぞ、と嫌味を言われながらワールスに跳んで街並みを見て来たそうだ。ベガが自分の国の国首とも知らずに御子様との友人関係を聞きながら三人を鑑定して腰を抜かした(笑)
クレアさんの焼いた大判焼きを照れながら『折角来たなら食べて行きな』と手渡したそうだ。
三人共が海洋国に住んでるにも関わらず宮殿に向かう途中に何度も振り返って坂下の海を見たそうだ。視界の右端にある岸壁がドキドキポイント。ショボイ岸壁を指摘されそうでアル的に弱い所だ。
※陸地から繋がる沖に岸壁の突堤が二本、使用したのは遭難したライナの船関係だけ。
そんな報告を聞いてふと思った。
これ、タナウスってメイドさんや町人に扮した演者がそこらじゅうにいるから某国の秘密警察みたいだ(笑)
そう言えば銀行の貸し出しに交感会話で借り入れ理由を探るなら、移民募集には募集センターを作って交感会話で質問したら
・犯罪歴はありますか?
これでイメージ出たらコアさんが読む。変な職業の現役まで連れて来られても困るし、来たら更生村で農民職に決定だ。
サントとワールスでも移民の募集をお願いしよう。もうあの三人は財務相でいいんじゃね?タナウスに交易船が来るならあの三人に交易相手を選ばせたら鉄板じゃん。神都の岸壁に船を着けられるのは何々商会とか序列が出来そうで面白い。
27日の夕方に三人をそれぞれの国に帰した。以下の話はしっかり伝える事が出来た。急な話で聞いてもらっただけで決まってはいない。
・銀行業務、大陸、海上交易の財相をお願いする。
・移民の移住の話と転移装置の話、別荘移転の話。
・三国に移民募集センターの設立希望。
銀行案の方は素案が三者で合意が取れ、大筋の骨子を元に銀行は運営される。銀行業務のご意見番は以後もしてくれるとの事。
上記の三案を飲んだ場合に転移装置を貸与することを伝えたら顔色的には感触が良かった。
・・・・
その夜、ナレスのコアさんより相互通信。
・御料農園の農吏員が農業技術指導で三人来訪。
・クラウスさんと家族が四人移住。
ナレスのタナウス避難施設から12時にタナウスに跳び、宮殿にて会食(タナウス時間14時)。
当日のカラム王国では朝のハーヴェス砲撃後に街が騒然として大混乱なはずだ。出席出来たら17時にタナウスに跳んで一緒に昼食。(時差-3時間)
昼食後、メイドがクラウスさんを教会に案内して。俺が夕方に農吏員をナレス村に連れて行く。指示を受けて畑に作物を植えて種子を保管する。
農吏員が持って来る荷馬車十台の
御料農園の農吏員三人はナレスに準ずる肩書と身分証を用意。クラウスさんには建国まで5位の神都教会の司教の身分証を頼んだ。
寝る前にはシスターから今日のトピックの様に交感会話で各地の情報が報告されて行く。
北西都市マリンではナノが説得を試みたそうなのだが、助けた370人の獣人の群れが聞き分けが悪いという。
見るも無残な皮膚病に侵されて毛が抜けて死にかけていた獣人や軽症ながら感染者が多数いた。原因菌を殺し、再生の光回復魔法で毛根が元に戻ったという。その死にかけていた中に、義に厚く誇り高い灰色狼の獣人がいた。そいつが命を救ってくれた恩義の返し方を講釈し皆が感化されタナウスに命まで捧げる事になったと言う。
全ての獣人が『アバの奴隷は死んでも島を出られない』と奴隷監督から嫌と言うほど聞かされたらしい。助けてくれた俺に命を捧げると誓ってタナウスに居座ると言う。俺に仕えると公言し忠誠度100%らしい。
アホか!独身の獣人・・・だけではないけどさ、野郎ばっか移り住んでも繁栄しないんだよ!種族の混血とかあるのか知んないけどバラバラの種族が女性八十人、男性二百九十人みたいな構成だった(笑)
あの犬兄弟の両親を助ける為にやっちまったが、とにかく無体な理由を付けて送り返す。
助けておいて
何にしてもヘロヘロで金掘ってた連中だ。不潔な環境で毎日水に浸って金を選別する過程で皮膚の油を無くしてたら真菌類も繁殖するわ。誰もが口が達者なだけで体は肉が削げて痩せてるしょぼくれた獣人だ。何を言おうがまずは食わせて安静にしないとダメだ。
とりあえず、ナノの言う事を聞く様に商人とか船乗りとか冒険者とか奴隷前の経歴で割り振る様に言った。後日俺が面談と称して実力測って、入国審査で全員叩き落とす(笑)
・・・・
1月28日。12時、カラム王国。
今日も辻説法は、その辺のお店にお茶を飲んで行きなと誘われたり、ちゃんと食べているかと心配されたり平和なもんだ。昼になったので出仕前のお兄様に会いにロスレーンに行く。
・・・・
ルージュ12時>ロスレーン7時。
預かりサービスはこんな感じとグレンツお兄様に伝えた。
預かりサービスは正式名称:神教国タナウス信用金庫(以後長いので銀行)と言う。シュミッツの話に基づいて、欲しい土地は幅20m奥行12mの更地。お爺様が帰って来る3月末に許しが出る銀行の土地を確保してもらう。
土地に建てる銀行図面を見せながら説明する。
店舗は3分割された左側の入り口から荷馬車で入り、中央の計量室のカウンターで金箱を渡し、その場で金額を確定して預かり証を発行してもらう。
預かり証は領への覚書だ。現在運用されているサルーテの預かりサービスは覚書も通帳すらも無い。残高照会はいつでも可能。9時から21時まで12時間営業。
払い出しは右側の入り口に馬車を入れて魔力認証された者が引き出せる。真ん中の計量室から右側のカウンターに金箱が引き渡される。
中央の部屋には左右に窓口が各四口。徒歩なら金を置いて魔力認証で終わるからすぐ終わる。
ロスレーンの銀行で預けて、サルーテの銀行で払い出し可能。認証登録した者が必要な硬貨の数を申告して払い出しが可能。払い出しが登録者でない場合は、登録者の魔術証文(小切手)を窓口に出せば払い出し可能。
各街(ミリス・ギシレン男爵領除く)に銀行を置けば各街の収益をロスレーンに集約する事も各街で払い出しも可能。
ロスレーン領の銀行は領都の全ての領民の財産を預かる事が可能。サルーテの銀行は全ての領民の財産を預かる事が可能。お爺様、お父様、お兄様が街で買い物をして小切手を商人に渡せば、商人は銀行で金を受け取る事が可能。
銀行はロスレーンとサルーテ二行で月白金貨一枚(2000万円)とした。
グレンツお兄様と留守を預かる副執事長モースのクドイ確認。
身振り手振りで確認された。
金貨でロスレーンに預ける、と目の前でやられた。領都の銀行は金が溜まり、移送もしないでサルーテはどこから金が出るとクドイほど聞かれた。
アルの答え。
銀行に預けた瞬間に硬貨は神教国に跳び、銀行から降ろす瞬間に神教国から硬貨が跳んで来る。
お兄様と横で聞いていた副執事長のモースが説明を理解するまでブツブツ言いながら固まった。※モースは叙爵され貴族になっている。
聖教国の大魔法(転移)発祥の地が神教国で、神教国こそ聖教国始祖様のホーリーブライト(宣誓の儀)のルーツと言ったら納得した。あながち嘘ではない(笑)
グレンツお兄様は、銀行の判断はお爺様に任せ、ロスレーンとサルーテ以外の街にも用地だけは確保すると言った。お茶を済ませたらモースの用意した馬車で執政官事務所に向かった。
モース・アコート(36)副執事長(初任5位)は慣れた手つきで銀行草案書をカバンに持ち、お兄様の対角に座っていた。御者はアンドロ(30)だ。
俺は農吏員の指導する村を作りにタナウスに跳んだ。タナウスは11時、開拓されてる村に家をポコポコ置いて、開拓した農地を守る強固な壁を作って行った。
次回 319話 砲撃の現実
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