第317話  大判焼き屋のベガ



ラムール会長と昼食に海の家へ跳んだ。


メイドさんに紹介する。


「ラムール商会会長さん、賓客待遇ひんきゃくたいぐうでアロハ用意して、着替えたらマス席へご案内して」

「かしこまりました」


マス席に座ると聞きなれた声。


「アルくーん!」

「あ!アルムさん。もうこっち?(笑)」


「ダンジョン終わったしクルム姉も2月まで動かないって。アルムもタナウスから出ないわよ!」


「念を押さなくても良いよ(笑)」

「アル君はお昼?」


「お昼なんだけど仕事中なのよ。お客さんの案内」

「王族の人?」


「ハムナイって国で美味しいカルパッチョ食べたでしょ?あそこの商会の会長さん」


「あ!お屋敷のお爺さんだよね?」

「そうそう!護衛で何度も行ったよね」

「うん、あの国好き!」

「ヨーグルトドリンクと料理(笑)」


「あ!出て来た」

「お爺さーん!」手を振っている

お爺さーんって言ってるよ、ハイジか!(笑)


メイドさんに五色アロハの会長が案内されてきた。


「おぉ、いつぞやの!護衛どの(笑)」

「お久しぶりー、お仕事です?」

「御子様のご相談に乗ってますな(笑)」

「ここ美味しい物あるわよ、食べてってね」


「アル君、あっちで遊んでるわ(笑)」

アロハをひるがえして走ってく。


「お仲間はこちらにおられるのですかな」

「仲間同士で海に遊びに来てますねぇ(笑)」


メイドさんがメニューを持って控えてる。


「エールを二杯、ピリ辛中心にツマミをお願い」

「かしこまりました、お待ちください」

俺は観測されてるから、頼む物は予測されている。


「ここは以前来た、神教国の土地ですな?」

「はい、そうです」

「これほど賑やかになっているとは(笑)」


「学校に上がってない子供と親が遊びに来てますね、光曜日はもっと凄いですよ」


「もう学校まで?」

「今までは小屋でしたが、やっと建物になりました」


エールと唐揚げ、ポテト、ピリ辛の焼肉が来た。


「取り合えず! かんぱーい!」

「かんぱーい!」


キン!とグラスを鳴らしてゴキュゴキュと飲む。


「あー美味しい!」

「冷えて旨いですな!」

「コレも、塩気と辛みがエールに合いますよ」

「お!確かに!スパイスが良く効いてますな」


「さる国の王族が大喜びでしたから(笑)」

「え?王族がエールを?」

「そうです、二国の王族が美味い美味いと!」

「確かに、これは飲まねば損ですな(笑)」


お代わりを持って来たメイドさんに言う。


「宮殿に座標点を指定して、冒険号の銀行試験と同じ配置で見てもらえるようにしてくれるかな?試験の時に言ってたABC点のデモ展示用の箱付きで。食事の後で行くからね」


「かしこまりました」


・・・・


「浜で座ったのは何十年ぶりか・・・」

「余り無かったです?」

「川や海も子供が小さい時だけですな(笑)」

「たまにはいいでしょ?(笑)」

「世を一時忘れられますなぁ、気持ちいい」


「今は神教国は人口はどの位ですかな?」

「二十万人程でしょうか?」

「なんと!あれから、そんなにも?」

「皆、行くところの無い難民ですよ(笑)」

「難民を?」


「はい、こないだバーツさんが言っていた東の大陸の西岸にあるチリウ王国って知ってます?」


「はぁ、バーツの船はあの辺まで行ってますな」

「神都はチリウから逃げた大臣と政務官が住んでます」

「それはまた・・・暴政ですかな?」

「さすが!今は神都の都督やってます(笑)」

「どこの国にもありますな」渋い顔だ。


「宮殿にデモの用意が出来ました」

「あ!ありがとう、うちの賢者は居るよね?」

「アルムハウスに、聖教国の司教様も四名見えます」

「ベガの店はもうやってるの?」

「売って大評判でございますよ(笑)」

「ホント!行って見よう」


「会長、賢者が居ますので寄りますね?」

アルムハウスを指差す。


「賢者と話には聞くが儂は初めて会う(笑)」

「聖教国の大司教でうちに来て賢者やってます(笑)」

「御子様の国ですか、それは賢者ですな」



「ファーちゃん!賢者いる?(笑)」

「応接で歓談中です」

応接に入ると三賢者が推論を交わして、司教が取り巻きメモを取っている。


「こんにちはー!」

「御子様!」「御子様!」「御子様!」「御子様!」


御子様うるさい。


「アルか?今日はなんじゃ?」

「御子様、何か御用ですかな?」

「教皇様、お邪魔しております」


「いい物見たくない?大魔法!」


「何!なんぞ仕入れて来たのか?」

「見ます見ます!」

「是非拝見させて下さい!」


「こちら、世界の豪商 ラムール会長ね」


紹介するなり、挨拶合戦が始まる。


「ファーちゃん、ベガの店混んでる?」

「お昼終わったら混んでませんね」

「大判焼き九個作ってと伝言を」

「かしこまりました」

「新しいおやつ食べに行きましょう」

「そう言えばお昼食べておりませんな(笑)」

「七人がお昼食べずに話してたの?」

「話が終わってからで充分じゃ(笑)」


「そんじゃ行きますよ!」

シャドが皆を巻く。ベガの店に跳んだ。


ベガの店に入るとベガとクレアさんが大判焼き焼いてた。頼んだから当たり前だけど一位冒険者が二人で大判焼きやっててウケた。


「ベガさーん!」

「お!来たな!これを見ろ!」


大判焼き器が改良されている!


二レーンで一度に二十個焼ける。その魔法コンロも特注だ。


「どうしたの?コレ?」

「数が焼けなくてドワーフの鍛冶屋に頼んだ」

「そんなに注文あったんだ?」


「クレアが練習で作った奴を近所に配ったら金出すからもっと作れと言われてな(笑)」


「練習いるしねぇ(笑)」

「四個しか焼けなかったしな」

「うん、魔法コンロの大きさもあるしね」

「コンロと一緒に持ち込んで作ったのさ」

「無駄にドワーフの職人使ってるし(笑)」


「この世にない菓子を焼くと言ったらコンロと専用焼き機を三日で作ったぞ」


「高くなかった?」

「銀貨6枚(6万円)って所だったな」

「それだけ?」

「小麦安いし、小豆と砂糖代がそんなもんだ」

「なにそれ?原料代?」

「代金代わりにガンズ地区の女子供に振舞った(笑)」

「え?」

「お陰で練習には最高だった(笑)」

「お金払わなかった?(笑)」


「ここは何でも安いらしいから、国で原料も俸給も酒も保証されてるから値段が付けられないって笑ってたぞ(笑)」


「建国まで統制価格なの、まだ国じゃ無いの(笑)」

「充分に国じゃねーか(笑)」

「国王が結婚してないの(笑)」


自分を指差す。


「あぁ、どっかの国の御子様って・・・」

「ベガ!聖教国セントフォールよ!失礼じゃない」


「いいのいいの、気にしないで!(笑)」

「でも!」

「冒険者で知り合ったから冒険者扱いで(笑)」

「な!こんな奴なんだよ!」

「何が、な!よ!」焼いてるベガに蹴りが入る。


「良かった!人口少ないからお客を心配してた」

「来ないなら来ないでのんびり出来るしな」

「あぁ、元からバンバン稼ぐ感じじゃ無かったねぇ(笑)」


「しかしなぁ、昼はお好み焼きの店になっちまった。おしゃれな海の見えるお茶屋の雰囲気じゃねぇ!(笑)」


「あはは!」


「アレなぁ!近所の人が取ってきたエビを入れると美味いぞ、貝も味を吸うからな。漁師の奥さんが教えてくれた、実際に美味いから入ったら今度作ってやるよ」


「あー!確かに」イカを何としても手に入れないと。


まさか異世界で粉もんの店が開業するとは・・・。



全員に大判焼き持たせて宮殿に跳んだ。



大判焼きを持った集団が宮殿に現れた。


近くのメイドがこちらでございますと先導してくれる。そして、大広間に作られた銀行の実証実験の場に案内された。


机が三つ横に並ぶ。A B Cのそれぞれの国だ。それぞれの机には60cmの正方形の箱が置いてある。机の後ろに大きな机にも箱Dが置いてある。


「用意は出来てるね?」

「はい」

「それでは、両替商預かり所の進化版、銀行の業務をお見せします」


箱を開けて中を見せる。何も入ってない。


「Aの国に金貨を預けます」

メイドが受け取ってAの箱に入れる。


「Cの国で受け取ります」

メイドがCの箱から金貨を出す。


「こんな使い方が出来ます」


「Aに神教国の小金貨を預けます」


「導師、Cにコルアーノの小金貨を預けて下さい」

導師が小金貨(20万円)をCに預ける。


「AとCにお金が入りました。箱を開けて」


AとCの箱にお金が無いので皆が驚く。


「箱に入れるとDの箱に入ります」


Dからお金が出て来る。手品のように驚いてくれる


「私がコルアーノのCでお金を下ろします」

Cの箱からコルアーノ小金貨(20万円)をもらう。


「導師は神教国のAでお金を下ろします」

Aの箱から導師が神教国小金貨(20万円)をもらう。


「次はBに卿が聖教国の金貨を預けて下さい」

アルノール卿が76%の金貨(10万円)を預ける。

「同じ様にCに導師が小金貨を預けて下さい」

導師が88%の小金貨(20万円)を預ける。


BとCの箱を開ける。


「同じくBもCもお金が無くなりました。先程と一緒ですね、今度は二人がA番から降ろして下さい」


導師がAで神教国1枚の小金貨(20万円)を受け取る。

卿がA番で神教国の貨幣(86000円)を受け取る。


「な!入れてない金まで出るのか!」

「まぁ、そんな感じです(笑)」


「今のは各国の通貨の88%通貨と76%通貨の両替です。銀行とは街と街、国と国で預けたお金を何処の国の通貨でも交換する仕事です。お金を持ち歩くことなく銀行があれば聖教国でお金を預けて、コルアーノでも神教国でもその土地のお金を下ろす事が出来ます。街と街なら道中はお金を持って帰る必要はありません、街を出る前に預けて、必要な時に必要な額だけ到着した街で下ろせばいいのです」


「如何でしょうか?」

「・・・」

「大魔法が発動しとらんでは無いか!(笑)」

「あ!賢者三人にはバレちゃうか(笑)」

「はぁ?」

「神の御業で作っちゃいました(笑)」

「神の御業!」


「国と国、街と街で荷馬車に貨幣を積んでの行き来は無くなります、護衛に掛かる費用も要らず荷馬車も馬も要りません。一つの街に銀行を一つ作ると、何万人の領民がお金を預けても魔力紋で識別されて自分の預けたお金は取られません」



「物は試しに聖教国大教会に作ってみますかな?」

「キャンディルの領都に試してもらえぬか?」


「まだ試験段階なので、使用料とか手数料も決まってません。ロスレーンの領都に手数料込みで作って運用の実績が出来たら作りますね」


「物も出来そうですな?」


「物はやりません、貨幣と換金用宝石、軍用魔石まででしょうか?物をやると既存の物流の交易システムが壊れます。物が動くのは海の無い大陸中央部に三、四年後を考えて今は拠点を作っています」


「ラムール会長が良く知る土地で作っている拠点は、南の中央大陸のロフトンとパリス、エスジウの三国の国境線に大陸間交易路の拠点を作っています。ワールス共和国のある土地ではシズン教国とモノカス王国の国境線に大陸間交易路拠点を作っています。船を使えない大陸内陸部の交易を容易にするためです」


「三賢者とそちらの司教様、運用の問題点やルールを考えて頂けませんか?ラムール会長も国家間の銀行のありようとルール作り、軍用魔石の相場、換金用宝石の取り扱いに付いて助言頂けたらありがたいです。とりあえず軍用魔石は国で相場も有りますから担保として世の平均価格で預かり、他国のお金を貸し出す事も考えております」


「あ!いい事考えた!」

「なんじゃ?」

「あ!銀行とは全然違う話ですみません」

「ん?」

「四人の司教様は光曜日に帰るんです?」

「その都度、送っておりますな」


「月末に神都大教会の司教様が赴任して来るのです、教義部の司教様にお願いして聖教国の最新の教義を教えて頂けませんかね?」


「え!教義を知らぬ司教様なのです?」

「元司祭ですが、最近の語録の教義は知りません」


「まぁ、そういう事ならば・・・」

「お主が行けば速かろうに(笑)」


「教義部の元締めがここにいるのに!(笑)」

アルノール卿を指差す


「元締めかも知らんが卿は魔法一辺倒じゃぞ(笑)」

「だから司教様をお願いしています(笑)」


「ここの司教も教義部じゃがいかんのか?」

「魔法研究部より出来たら司祭学校で先生を!」

「ほっほっほ。御子様、お任せ下さい」


「二、三週間で最新の教義をさらっと流してもらえたら充分です、実務も説法も出来る司教様です」


「御子様が呼んだなら間違いありませんな」

「司祭学校の先生は皆さんと並びの部屋に逗留しますね」


「お任せください」四人の司教様が言う。

「四人にも教育は任せますかな」

「アルノール卿!全然任せて下さいじゃないです、それは司教様に丸投げです(笑)」


ALL「(笑)」


・・・・


「お食事の準備が整っております」


「ありがとう。みなさん食べて行って下さい、私とラムール会長は食べました。これは対外的な話なので教会部の仕事とします。会長の方からはまた手数料の適正額をお聞きしておきます」


「会長、折角宮殿に来たので景色を眺めて行って下さい。こっちが胸がすくほど綺麗に見えるテラスです」


「あぁ、余りに衝撃が多くて考えが追いつかぬ(笑)」


テラスからの景色を見ながら会長が言った。


「衝撃が多かったですか?(笑)」

「うむ、使い方では世界の通貨が双竜に変わる」

「え!」

「輝く様な青い空と青い海じゃ(笑)」


・・・・


「御子様、一つ相談があるのだが」

「何でしょう?」

「ラムール商会の本店を神聖国に置かせて欲しい」

「え!急に何でです?」

「あの銀行が始まると世の中心はここになるからじゃ」

「それほど?」

「それほどじゃな(笑)」


「あ!それなら交換条件いいですか?」

「御子様の交換条件は怖いですな」


「この国、ギルドが無いんですよ!大きな街にある色んなギルド連れて来られないですか?」


「なんでまた、その様な?」


「ここ島国なので、連れて来ちゃうと中々帰れないでしょ?家族に会えないとか生まれ故郷に近い所とか考える人は誘えないんですよ」


「・・・」


「難しいですか?」


「わっはっはっは!そんな事なら簡単じゃ、新天地への移民を募集したらいい。収穫が伸び悩む農民、競争の激しさで泣きを入れておる商人、ギルドは人口の多い街を指折り数えて設立計画を立てておる。ましてや建国の首都が募集したら幾らでも来よう。来た者には安定するまでの土地や援助は必要じゃが山ほど集まろうよ」


「お願いしても良いです?」

「神教国への船便も用意しよう!(笑)」


「あの・・・海に囲まれてるので漁師さんや海の冒険者とか南国の魚をさばいて干物とか料理とか・・・」


「現役で生計を立てる者で募集しよう」

「粉ひき小屋とかも?」

「そうじゃ、街全部の生計を立てる者じゃ」


「どこに住みたいです?ハムナイに別荘あるならそれを持って来ても良いですよ」


「(笑)」


「あのシステムをサントのバーツ。ワールスのランジェロに見せた方が早いと思う。儂が説明しても見ねば信用せん気がする(笑)」


「あー!ちょっとそんな気もします」


なんか冒険者ギルドに金預けたら世界中どこでも為替レート関係無しで引き出せるロストテクノロジーシステムと同じだしな、オンライン端末も無い電子素粒子決済が可能だぞ(笑)


「バーツさーん! います?」

(少々お待ちください、お食事中でございます)

サントはそんな時間か。


「ランジェロさーん! いますか?」

(・・・御子様、何か大事ですかな?)

「大事な要件ですが、少し時間ありますか?」

(はい、構いませんが)

「迎えに行きますね」

(おね・)


「こんばんは、執事さんも一緒にいいですか?」

「構いません」

二人をシャドが巻く。そのまま宮殿に跳ぶ。


「ランジェロ、来たな(笑)」

「ここは?」

「御子様の国じゃな」

「ここが?・・・」


(御子様、バーツでございます)

「今、時間ありますよね?」

(大事ですかな?)

「大事な話なんです」

(わかりました)

「迎えに行きますね」

(はい、おねが・・)


「バーツさん、執事さんもいいです?」

「わかりました」

シャドが二人を巻いて、宮殿に跳ぶ。


「また三人そろいましたな(笑)」

「二人共、世界が変わるぞ」

「え!」

「なんです?」


「御子様、神教国の金蔵を二人に」

「分かりました、跳びますね」


執事さんも一緒に巻いて大倉庫へと跳ぶ。まだライト点いてた。


「おー!」

「遠近感が、くずれて来そうだ。」

「これが神教国の貨幣の裏付けだそうだ(笑)」

「なるほど!」

「よくぞこれだけの金を」

「そこの餅金の塊は四トンの純金だそうだぞ」

「・・・」


・・・・


宮殿に戻って同じ三点交換を二人に見せる。


神教国通貨

小銅貨4g(50円)、銅貨8g(100円)、大銅貨16g(1000円)、小銀貨4g(5000円)、銀貨8g(1万円)、大銀貨16g(10万円)、小金貨5.2g(20万)、半金貨13g(50万)、金貨26g(100万)、大金貨52g(200万円)、小白金貨15g(1000万)、白金貨30g(2000万)


銀行の実演を見た後に要点を説明する。


・座標Aと座標Bの入金を座標Cで取り出せる。

・各国通貨の金含有量で外貨両替可能

・神教国の88%金貨を基準にする。

・軍用魔石は世の担保価値変動制。

※軍用魔石の平均相場で外貨貸出し可能。

・宝石は現行の金貨交換基準で外貨両替可能。

・預金者の魔術証文の金額を渡せる(小切手)

・属性魔石は取り扱わない。


二人は放心状態になった。


「物は動かさないのですな?」

「お金や金品だけです」


世界地図を出す。


「大陸間交易路構想と言ってですね、こことここ、こことここに現在交易物流拠点を作ってますが、あくまで内陸の国だけです。海路は商業国家連合にお任せするので食い合いはありません」


「A,B,Cと海路で交易した利益は銀行に預けたら船が沈もうと海賊に遭おうと金品は神教国が預かってますから安全です。同じ様に陸路の場合もA,B,Cと売り上げがあるたびに銀行に預けたら盗賊に遭っても身一つで逃げ出せば品物だけの被害となります」


「支払う側も必要な分の小切手を魔術証文で商人に渡せば、商人は街の銀行で金に変えられます。小切手を相手の国の銀行で換金して、そのまま預けてしまう取引になりますね。非常に有効なシステムで、国や領が金蔵を守る必要もありません。品物がお金に変わったら持ち歩くのは危険なので入れておけばいいのです。持つ金は最低限で済みます」


「・・・」ランジェロさんがそろそろ寝る時間なので水の回復魔法を掛けてやる。


「御子様、済みません。疲れが抜けました」


「ショックを受けるのは分かる。この銀行における通貨運用の仕方をそれぞれ詰めて後日持ち寄っては如何だろうか?」


「アッサム(ランジェロ執事)一旦帰って二、三日予定をキャンセル。この話を詰めずに帰れないのは分かるな?」


「はい、そう致します」


「ロラン(バーツ執事)うちもだ、何よりも運用指針が最優先の案件だ、帰って番頭たちに伝えて置け」


「かしこまりました」


「あの、それでは送って来ますね?」

「お願いします」


「ラムールさんも連絡しておきます?」

相互通信機を机に出す。


「御子様、有りがたく使わせて頂きます」


メイドさんに伝える。


「僕は世の商人の常識を知らないから、この会議には加わらない。三人に部屋を用意してメイドと執事を一人ずつ筆記要員で付けてくれる?後は会議が終わり次第に着替えと食事の用意と風呂も案内してくれるかな?」


「そのように」


執事さん達を連れて帰った。


・・・・


三者会談には俺は加わらなかった。さしずめ有識者会議の様な気がしたのだ。銀行によって商取引が劇的に変わる話し合いだ。三人がどれ程の衝撃を受けたのか視た俺だけが知っている。


便利だから使わずにはおれない。しかし俺の指先一つで国が潰れる事態にもなる事を三人は気が付いていたのだ。安心させるために草案の策定に俺は加わらないスタンスだ。


それからは銀行について回る付帯的な問題についてカラム王国の宿でシスターとつぶして行った。


金貸しも行う。金を借りに来た者に交換会話を行って用途を探り根本の問題を解決してやる。家族を食わす事が出来ない親に旅費を渡してタナウス直行便に乗せてしまう。


ギャンブルでスッテンテンになったのや、借金で首が回らなくなったのが来たら借金分だけ貸してやって借金奴隷にして首輪をめて更生村で骨身に染みさせる。


薬物に金を吸い取られてる様なのは貸してやって薬が買えない様に大元を潰しに行く。



バーツ、ランジェロ、ラムールさんの三人の話しが煮詰まった時に面白い話があった。神教国を中心に経済は回るとの話をしていた時に、ラムールさんが神教国に移住すると言ったのだ。


それは汚い!ルール違反だ!と作ってもいないルールで口撃された時に、二人も住めば良いでは無いかとラムールさんが返した。二人は国主で、したくても出来ない立場上の問題があった。


俺は寝る前の交感会話でそれを聞き、ベガも使ってるしなぁ、と三人に転移装置を解禁すると会議の時に教えておいてと言っておいた。


転移装置の実演も面倒臭い。

がワールスに帰る転移装置持ってるから一回使えと三人に勧める様にシスターに言った。





次回 313話  タナウス信用金庫

------------------


この物語を読みに来てくれてありがとうございます。


読者様にお願い致します。


応援ポチ。☆も頂けたら嬉しいです。


ポチをしてくれる事。それはとても励みになるのです。


一期一会に感謝をこめて。よろしくお願い致します。


               思預しよ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る