第314話  暴れる子には勝てぬ


1月20日。


テズ教の御子服に着替えたアルはきもわっていた。何も考えることなど無い。これ以上のシナリオなど無い、充分考えて来た。ネロ様が教えてくれた1月20日。奇しくも同じ日にアルが動く。


この日に動いてもカラムの周辺国は2月1日までの10日では何も動けない。動いてもコアが見張ってる、誰にも邪魔はさせない。


(シャド行くよ、お願いね!)

(はい!お任せ下さい)

(シェルは僕を見守っててね)

(はいです!)


カラム王城。王族と関係者を視に来た時の場所に跳んだ。王城の人気が無い部屋を検索して二段跳び。


(タイム:8:58)やるか!


貴重品強奪:ハーヴェス滅亡計画の密書。

テズ教との盟約の密書がインベントリに集まった。


テズ教のシナリオ知ってる人だーれだ?


検索で出たプロットをシャドが巻く。巻いた瞬間にハーヴェス王城A地点に跳ぶ。


第一騎士団が剣に手を掛ける包囲陣の中にカラム王、王妃、第二王子、宰相、外相、財相以下政務官10名が集まった。恩寵を奪うまでもなかった。特殊な恩寵持って無い。


ドミニオンの隷属紋を刻み大声でゲッシュする。


「質問には真実で答えよ。神の誓約である!」


ハーヴェスと神教国の審問官と並んでいる騎士団長。3人に向かって後は頼みますと言い、シュン!と消える御子服の皇太子。


テズ教総本山の地下発掘現場に跳んだ。


強奪:シナリオ計画書と教皇以下の血判状、関係国との密書。


2年にも及ぶ計画書と密書がどっさりインベントリに集まった。


はい!みんな集まってー!カラム王太子もね!


シャドが巻いた瞬間にハーヴェス王城B地点に跳ぶ。


第二騎士団の包囲の輪にテズ教の教皇、カラム王国王太子、三卿(枢機卿)、七卿(枢機卿)、七人の十二大司教が団子になって現れる。恩寵を奪うまでも無い、政務官が騎士団に囲まれてかなう訳もない。


戦国シミュレーションみたいなアレよ、内政向きの武将に戦闘向き武将を当てるゲームとかあるでしょ?


そのままドミニオンの隷属紋を刻む。


「質問には真実で答えよ。神の誓約である!」


第二騎士団長に後を頼んでアルは目の前で消える。


ラウム教総本山に跳んだアル。教皇を視に来て以来だ。


強奪:今回の計画書と黒幕の血判誓約書、関係国との密書。テズ教の計画書と領主とのやり取りを記す密書がインベントリに集まった。


はい!みんな集まってー!


ラウム教国教皇と皇妃以下12人の大司教をシャドが巻いた。


シャドが巻いた瞬間にハーヴェス王城C地点に跳ぶ。


第三騎士団が抜剣(笑)で構える輪状包囲の中にラウム教国の関係者が現れた。恩寵もそのまま、怖い魔眼を持ってるのは御子達でこの人たち持ってない。


すかさずドミニオンの隷属紋を刻む。


「質問には真実で答えよ。神の誓約である!」


もう跳ぶ所は無い。

第三騎士団が手枷てかせをはめて縄を打つのをながめていた。


三往復した俺をハーヴェスの宮廷魔導師が見ていた。物見遊山では無い、神教国の古代魔法を盗もうと見ていた。


俺の使う魔法を魔力感知や魔力眼で見破ろうとしたり、看破しようとしたり、ステータスを鑑定しようとした者がいた。お世辞にも助けてやった神教国に対する態度じゃない。それどころか無礼な考えの持ち主だったので全員恩寵Lv1にしたった。もう役立たずだ。


皇帝に泣き付け、恥をかいた揚句あげく罷免ひめんされるわ。


そもそもむ魔法はドミニオンの隷属紋ぐらいだ。瞬時に刻む発動は高速度カメラでも見えないと思う。刻むと言うけど、俺は神聖国で二年間嫌と言うほど布教した。俺の中では瞬時にシャチハタを何千個ポンと押す感覚だ。


今日の俺の仕事は終わった。


カラム王城にエルダー大司教が行き、きたるべき神託の日にそなえよと言う。王は神託にそなえ王妃と側近を連れお隠れになったと言うだけだ。王城で何が起こっても大丈夫、大司教以下お供は全員剣聖だ。何か起こったら王城の全員鎮圧しちゃうよ。


そのまま何も無かったようにテズ教会でグテッとしてたらタクサルさんが来た。


「御子様、船着いたぞ!積み荷降ろしてくれ」

「ホントに20日に着いてるし」

「昨日の晩に着いてるよ。沖で錨泊して日が昇ってから入港だ。積み荷降ろしたら、積み荷積むんだぞ」

「・・・」


俺はため息をいて腰を上げた。


・・・・


その日の晩、シスターとの交感会話で三団体(テズ教国、カラム王国、ラウム王国)の活動が自白により明るみに出た事を聞いた。


・ハーヴェス帝国への詫び状及び王権移譲書。

カラム王国の統治者がハーヴェス帝国皇帝と変わる。全てのカラム王国の職務はそのまま継続し俸給が支払われる。


・海賊行為加担国のリスト。


・ハーヴェス包囲網に協力する国のリスト。



神教国タナウスの神託は証明された。


カラム王宮、テズ教総本山、ラウム教国大教会内を自由に歩けるそれぞれの国首の勅命も作成済みだった。余りにも仕事が早いので聞いてみるとサインして魔力を込めるだけの勅命書ちょくめいしょを作成してあったとの事。


俺は教皇と皇妃以下、枢機卿、大司教の連判状の勅命ちょくめいを持って訪れるのだ。勅命ちょくめいを教皇の間で宣言し次のテズ教、ラウム教を導く善良な指導者を指名する。そして次期指導者層と面談を行い教皇以下の上層部の陰謀を暴露。ビデオレターと共に教団の大改革を行わなければ教団は無くなると言い聞かせタナウスの教義を導入する。


カラム王国の王宮及び街の代官には、今まで通りに職務に励みハーヴェスの皇帝に仕えよとの勅命ちょくめいを届ける。


・・・・


1月21日。


ルージュ9時>ハーヴェス9時


朝にハーヴェス海軍、作戦参謀のフリップさんに、テズ教、カラム王、ラウム教の密書と血判誓約書を出した。昨日騎士団に引き渡した主犯たちの調書と整合性を取ってもらう。確認が出来次第に海賊行為によって得た鹵獲品や人質がどうなったか足取りを追って行く。


陰謀に乗った国と領主に補償金を請求するためだ。


ハーヴェスは海賊寄港地殲滅せんめつで得た鹵獲利益ろかくりえきの他に、海賊に加担した国にも補償金をキッチリ取って失った信頼と国際的な発言力の回復を願っている。ハーヴェスのプライドを取り戻す戦いはそこまでしないと終わらない。


星の半分も恐れさせた覇権国なのだ。アルには気持ちが分かる。


アルに取っては、海上覇権を握る者が世界を握ると聞いたことのある話。地球であったイギリス、スペイン、ポルトガルの植民地拡大戦争だ。この世界ではハーヴェスとミランダとリンダウだっただけだ。


それを止めた。現地でやっと王国のまとまりを見せた未開部族など人と思って無いからだ。


今回は宗教がらみなので、さながら十字軍とも言えるかもしれないが、要するにハーヴェス帝国の尻馬に乗ってサンテ教が勢力を伸ばすのがけしからん!という意思が発端だ。サンテ教の馬をつぶす思惑からハーヴェス包囲網のシナリオが出来ている。


テズ教圏を犯して奪った異教徒のサンテ教憎しで大陸の戦乱を招く筋書きだ。アルに取っては徒党を組んだ侵略か、モンゴル帝国一国の侵略かの違いで大陸に戦乱が起こるのは一緒だ。


だから止めた。戦争の意味も知らぬ民が略奪を受けるからだ。大義の無い戦争でそうなるのだ。


ハーヴェス派になった訳ではない。覇権国から叩き落したのはアルだ。そもそも、それを言えば、この難局になったのはアルのせいだ。


アルはブレていない。

覇権を失っても頑張って国を回してた事をアルは知っている。一年前にハーヴェスを訪れた時に民は腐っていなかった、生き生きとしていた。ハーヴェスは溜め込んだ富と信用を磨り潰して民に還元し民をあざむいたのだ。どんなに苦しくても子に辛い顔を見せなかったハーヴェスをアルは好きになったのだ。


ハムナイで放った『こんな子供が!』という技官の発言に対して謝罪した時のバスティーさんの態度にそれは出ていた。武器の調達がはかどらぬ時に見えた一筋の光明にすがったのだ。己の為ではない、国の為、民の為に頭を下げたのだ。アルに取ってそれは貴族のあるべき態度だった。民を安んじ守るのが貴族なら、膝をつき頭を下げるバスティーさんの態度は貴族の態度だった。


アルが訪ねて行ったのは、そんな人なら信用出来ると思ったのだ。母国の危急を聞けば動いてくれると思ったのだ。


2月1日以後、略取された交易船の乗組員の人々、船、換金先、指示した者を俺は追う。追って元の状態に戻す。


・・・ついでに逃げ出したい奴隷を逃がす。



・・・・



2月22日。カラム王国、ルージュ16時。


サルーテのメイド部隊から連絡が入った。

現地10時半頃、サルーテ流民サービスの横に建つ貴族家についての質問だ。俺の屋敷とは皆が薄々知っていたが、今回は直々にアル様のお屋敷ですか?と執政官が確認に来たと相互通信で連絡が入った。


当然アル様のお屋敷で、流民サービス並びに流民用のキューブハウスも全てアル様の指示で運営しているので何かあればお屋敷へどうぞと茶の接待をしたそうだ。


その時に運営内容、流民サービスの関係、四部会との関係を聞かれたそうだ。全てアル様の指示で動いていると重ねて言い、何か問題があればアル様が全て対応すると言うと執政官は焦りながら帰ったと言う。


聞いて時間を視るとサルーテでは11時だ。

訪ねて来た執政官を視に行った。


ルージュ16時>サルーテ11時


事務所で執政官を視て驚いた。


ベークス侯爵領都の元締めが訪ねて来ていた。


「人手に困っているサルーテを手伝って来なさい」


とベークス侯爵家の委任状を見せて執政官にアピールしてた。と言うか四部会やキューブハウスを侯爵家の委任状を持った元締めが下部組織にすると執政官に宣言してるよ。執政官関係ねぇだろうがクソバカが!うちの執政官困らせやがって!


ベークス侯爵領都から来た筋金入りの元締め芸人だ。侯爵家(孫の三男)の委任状を執政官事務所でチラつかせ俺への当てこすりも芸が細かい、お前の狙い通りウケたわ!サルーテで面白い冗談ネタしやがって。こりゃが必要だな、裏街道の筋金入りを見せてもらおうじゃねーか!


ふざけやがって!

元祖三男で売り出そうってか。俺が本家の三男なのに!笑いの聖地のサルーテをパチモンが荒そうってっか!クソバカが調子に乗りやがって!


三男に本家も元祖も無いが、笑わされてしまったせいで(体育会系の)本能に突き動かされて何故かネタを考えているアル。


侯爵家がに来ていた。今は流民サービスを脅してる。俺に聖地サルーテに来たバカ野郎どもがぁ、笑いに行ってやるから待ってろ!


※根性試しやウケようと来たわけではない。


アルの良心回路蒼炎そうえんに燃え上がった!


※使徒に備わるそれがONになると神に恩返しやら、人の磨き易い世界を作るやらの崇高すうこうな目的が飛んでしまう。アル自らの意志で善悪を判別し最短の行動をとるジオフロントを目指す事を可能とする思考回路。


要するに自分が良かれと苦労して作った四部会やキューブハウスに手を出されてキレている!キレッキレでテカるほどキレている!こうなったアルは誰にも止められない。


バックネットにしがみ付く一年セミ撃墜げきついする磨き抜かれた罵詈雑言ばりぞうごんが今この時、異世界で解放される。



・・・・



ベークス領都の元締めが訪ねて来た流民サービス。


ワイスピ、ウエイ的なラッパーWAYにたむろするHIPHOP系の強面こわもてが流民サービスの建物を囲む。良心回路がONパターン青になったアルの耳にはHIPHOPは聞こえず『 ANGEL使徒 ATTACK襲来』がドルビーアトモスリアルな体感音場で流れていた。


ウケ狙いの元締めが居座る建物の中にアルは能面のうめんの顔でズカズカと入って行く。


サルーテ流民サービス事務所の応接。今は四部会のソルマン、ユッコ、ユージイ、ニノが侯爵家の委任状で脅されて真っ青。悪人顔の元締めはアル様より上の委任状でキューブハウスも流民サービスも今作っている歓楽街も全部仕切ると大見得切ってる。


委任状を強奪した。金目の物も全部強奪した。


「おぉ!なんか縮こまってやがるなぁ!(笑)」


流民サービスの事務所にズカズカ進んで応接に入りながら言ってやった。四部会の頭目が俺を見て尾を千切れんばかりに振る。逆に入って来た子供を穴の開くほど見るお客様。


舐める様に護衛の傭兵上がりの先生様が入って来た子供を値踏みする。


#「何だこいつら?態度デカいな」めるような目を平然と見返してこれ見よがしに言う。


「お、もしかして!アル様でございますか?」

「おぉ、そうだが?」

「そうだと思いました!」


#「思ったならが高いだろ!」


優雅にしゃべってるのを襟首掴えりくびつかんで立たせるなり腹パンで派手に吹っ飛ばす。


#「主人やられてんのに、何やってんだ!」護衛をねめつける。


ボスがぶっ飛ばされて目をいて驚き、助けるのか貴族の俺に攻撃するのか迷って固まってる護衛五人を事務所で引きずり倒してボコボコにノシて外に放り投げた。


そのまま外に出て行って、事務所の外にいたラッパーにとび蹴りから全員漏れなくパンチとキックの雨あられ。コマの様に小型台風がクルクル回る。足払いから崩して服さえ触らせずに泣きが入るまでボコボコに〆る。外にいた強面をWAYに護衛共々正座で並ばせてるとヨロヨロ立つボスが事務所の入り口から見えた。


事務所にドカドカと入って行く。


#「あの弱いの連れて何しに来た?」

#「坊ちゃん、何をやってくれんです!」


#「やったがどうした?面白いなお前!」


歯が折れる程も余計にボコボコにしてやる。


「俺たちが誰だか・・・」

顔をビビビとはた


#「知らねぇよ!何しに来たと聞いている」

「ほれふぁちは!」


#「何言ってるか分かんねえよ!」


顔を蹴ってぶっ飛ばす。


喋れなくなったのを外に引きずり出して、正座してる子分に腰投げ、大外刈り、立たせては子分に投げて遊び倒す。子分のまとにボスをボールにして投げ当てる。


「これ肩車柔道って言うけど知らねぇよな?」


能書き言いながらボスを引き立たせる。


「お前がコルアーノで一番最初に食らえ!」


ソリャー! 大きな弧を描いてボスが舞う。


子分たちに折り重なって突っ込んで行く。


「ついでに脳天杭打ちもお前が最初だー!」


子分の山から引きずり出してパイルドライバー!


オリャー! 綺麗に決まってシンニチイズム新日本プロレス主義に火が付いた


「腐れヤクザがお貴族様にアル様だぁ?」


正座の子分をつかみ立たせて飛び火する。


「誰にもの言ってんだー?」(こいつは言ってない)


立たせた髪の毛を引きずって小脇に抱えて垂直式ブレーンバスター!


タリャー! 猛虎が異世界で暴れ回る。


「俺のお兄様の街でゴミ共が何やってんだー?」


威圧しながらのポージングを決めるが誰も分からない。とか誰も言ってくれない。それどころか子供が変な格好してると思われる。


分かってもらえなかったので目の前に座る子分三人に超速のダイビングボディアタック。体を預けた空中殺法からのストンピングの嵐!使徒襲来に掟破おきてやぶりもクソもない、それはサードインパクト三男による災害。上から蹴られて膝や肘が変な方向に曲がる。静かに正座していても飛び火する。


「貴族の前で肩で風切ってんじゃねぇ!」

(こいつは外でボス待ってただけだ)


横の奴を転がして逆エビ固め。初めて食らう訳の分からぬ技にギャー!と叫びながら『すみませんすみません』と謝る子分。


「おい、誰でも良いから何しに来たか言ってみな。暇潰ひまつぶしに聞いてやるよ! あぁ?何だってー?」


頭の毛をつかんで聞くフリでココナッツクラッシュ!


「俺の流民サービスに文句あるのか?」


目が合った手下を転がしスコーピオンデスロック!両足をキメ、胸をこれでもかと反り返す。呼吸困難になりながらも『ありません、文句ありません!』と泣き叫ぶ子分。


「お前文句ありそうだな?大技で殺すかぁ?」


目覚めたボスに後ろから抱き付き超高速のジャーマンスープレックスホールド!


『ソイヤァー!』 猛虎の美しい曲線が描かれた。


遠巻きに野次馬が居ようが関係ない。通報されて執政官や治安維持で各ブロックに二、三人駐在する騎士団まで駆け付けていた。誰も止められない、物凄い体術の嵐に驚いて見てるだけだ。


手下が二十七名、護衛が五名、元締め一名の三十三名だ。技を食らっても単発でノビるが、一巡するとまた技を食らう。子分もボスも一緒くたにズタボロの雑巾ぞうきんの様に投げられ蹴られて冬枯ふゆがれの草の上を飛んで行く。


「流民を守る流民サービスだ!お前らみたいなゴミは守ってやらねぇよ。街が汚くなるから去れ!」


河川敷のを蹴り落して皆が石の河原賽の河原に落ちて行く。


去れ!と蹴り落したのに、追って河原に降りて行くアル。


「寝てんじゃねぇよ!起きな!」


川の浅瀬に投げ飛ばす。当然真冬の川だ。


「ヒエー!ヒ!ア!ア!ア!ア!アー!」


火照った体を冷やして川で大喜びしている。


「後ずさってんじゃねぇ!」


逃げる奴を捕まえて川に漬けてやる。


「アー!アヒョヒョヒョ!ヒョエー!」


皆が大喜びの声を上げてアピールしている。


「遠慮してんじゃねぇ!一緒に遊んでこーい!」


ドッボーン!


「ギャー!ハ!ハ!ハ!ヒャー!」


全員公平に入れてやった。当然心が折れている。手や足も曲がって動かない、こんな所で死ぬのかとあきらめている。


先に投げた奴から80cmぐらいの水深で溺れそう。水を吸った外套や服の重さに痺れる冷たさの川。手や足も利かずバチャバチャしながら少しずつ流れて行く。


「溺れて死ぬからメイド、執事、助けてやれ」

「かしこまりました」


「治さなくていいぞ、泥で汚いからクリーン掛けて温かい流民サービスに入れてやって」


メイドと執事が両手にチンピラ掴んでのり面をズルズル引きずって登って行く。鬱蒼うっそうと茂る冬枯れの雑草を両手の人間引きずってラッセルしている。(身体強化持ちなら不思議ではない、騎士団の者は護衛メイドのレノアと鍛錬している)



俺と一緒に野次馬がゾロゾロと河原から移動する。騒動そうどうで呼ばれた執政官達も飯も食わずに移動する。


わざわざ、皆に聞こえるように言う。


「おぃ!貴族への無礼は許してやる。さっき小さく聞こえた話ではこの流民サービスの活動に痛く感動したそうだなぁ?」


※そんな事一言も言ってない。


「俺が思うに、サルーテで働きに来たんだろう?」


「・・・」


「返事がねぇなぁ!」またボスを殴り飛ばす。


ボスがボロボロなの見て泣いてる部下までいるよ。


「よし!望みを叶えてやる。人手不足と聞いてベークス侯爵領からわざわざ助けに来てくれたそうだからな!(笑)」


バックが侯爵家と分かった上でやってる事に四部会が気付いて唖然あぜんとしている。


「まぁいいか、ボロボロ過ぎて言葉でもたたくのが可哀想かわいそうになってきたわ。こいつらの面倒は四部会が見てやれ。四の五の言うならぶっ飛ばせ。逃げだしたら草の根分けても探し出せ。こいつらの部下が来たら〆て傘下に入れて手間取りに回してやれ、面倒臭かったらボスを人質に言う事聞かせ。うちのメイドや執事達も手伝ってやる」


「どうせこいつらは平民だ、平民同士のめ事はお前ら得意だろ?特技は生かせよ、もったいない(笑)」


「・・・」


皆が唖然あぜんとするが、それは違う。ボスと子分に言い聞かせているのだ。こいつらは人質が何されるか知っている。言うこと聞かないとボスを痛め付けろと暗に言っている、言葉で反抗心を折っている。


「ベークス侯爵領から面倒臭いのが来たら俺が〆てやるからメイドに言え、ここに集まってる流民は俺が保護してんだ。俺の手先の四部会なら責任もって守れよ!忙しいロスレーンの執政官様に手間を掛けさせるなよ?」


「分かったな?」

「はい!」


「このままじゃ、腫れ上がった顔を怖がって仕事どころか街歩けないからな。怪我けがの高熱で死ぬかも知んないしヒールを頼むよ。足や手が曲がってる奴も治してやって、明日働けないからな」


「かしこまりました」


「逃げない様に監視しといてくれる?」

「はい、その様に」


「逃げたらボコボコにしてハウスの奥にくさりつないでさぁ、言うこと聞くまでトイレも食事も抜きで怪我も治さなくていいから」


それは奴隷扱いだ。徹底的に言葉攻めで追い詰めるアル。


「お任せください、アル様」


それを肯定こうていするメイドと執事たちも恐ろしい。


「おぃ!こいつらの金だ。弱い奴が持つと物騒だから預かっておいた。ハウスに入れて横の店で毛布を買ってやれ。飯もちゃんと呼んでやって、良いもの食わせて働かせろ。働けば少しは役に立つ(笑)」


四部会の前に強奪した金をドンと置く。


ユッコ、ユージイ、ニノが最初より真っ青だった。ソルマンは初めて見る美しい技の数々に興奮していた。



ロスレーン領を心穏やかに見守る大魔神は侯爵領の元締めをシバいて怒りをしずめ帰って行った。この大魔人は人の事でも怒るが自分の事だと見境なしに暴れ回る凶暴な守り神だ。



執政官はアルが廃嫡はいちゃくになった通達に一枚ピロッと付いていた注意書の意味を思い出した。


継承順位けいしょうじゅんいが外れようとも決してあなどらぬように』



暴れる子には勝てぬ:とは、道理で争っても勝ち目はない。


異世界に新しいトリビアが生まれた。




次回 315話  やったか!やったのか?

-------------------


この物語を読みに来てくれてありがとうございます。


読者様にお願い致します。


応援ポチ。☆も頂けたら嬉しいです。


ポチをしてくれる事。それはとても励みになるのです。


一期一会に感謝をこめて。よろしくお願い致します。


               思預しよ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る