第297話  おやつは露店の芋


12月29日(曜日)


クラウスさんのを視送って20時に王城の部屋に帰って来た。部屋でコスチュームチェンジしたコアさん、ニウさんを横目で見ながらリズに通信。


「リズ、夕食欠席してごめんね?」

(いいえ!お部屋にお越しください)

「うん、そんじゃ行きます」


「コアさん、ニウさん、ゆっくりしてて」

「かしこまりました」

「明日も見に行こう」

「劇のお人形はすでに作成に入ってます」

「早い!沢山お話を集めに行こう」

「はい」


・・・・


「リズ、今日は無理言ってごめんね」

「構いません、ダンスで我儘わがままを申しましたし(笑)」


確信犯。王女蜂の毒針ブスッ!を思い出した。


「何ですかその顔は?(笑)」


へにょり眉の正しい使い方だ!


「ううん、うちの二人にお小遣いありがとう」

「楽しんで頂けたでしょうか?」


栓は抜いといた。


「とっても!滞在中はずっと行かせる(笑)」


「あらあら、良いのです?」

「いいよ(笑) タナウス来る日は決まった?」

「3日朝から5日の晩までの3日間です」

「本気で遊びに来るね(笑)」

「お兄様たちは何もかも忘れたいと(笑)」

「皆様のいやしの御指名、光栄です(笑)」


「あの海は忘れられないと思います」

「喜んでくれるなら何より(笑)」


「今、友達も来てる、海で呼ばれたらゴメンね」

何処どこのお友達です?」


「冒険者の友達、二人来てる」

「あ!今日の用事です?」


「そうそう、お迎えに行って神教国案内してたの、王家の泊る家の横の家にいる(笑)」


「また紹介してください」


「ダメダメ、今日酔いつぶれて寝た平民のおっさんだから王女のリズが会うような人じゃないの(笑)」


「おっさんなのですか?(笑)」

「ごめん、見た目は若いです、お兄さん?(笑)」

「見た目では齢は分かりませんよね」

「僕とリズは特にね(笑)」


「成人と言う貴族風の吟遊詩人!(笑)」


セオドラとナタリーがプーと噴き出した。


「えー!まだ覚えてるの?」

「まだ今年の話ですよ(笑)」


「僕が捕まえてギルドに連れて行ったし(笑)」


リズとセオドラとナタリーがプーと噴き出した。


「まぁ冗談抜きで二人共深層ダンジョンに潜る1位冒険者。魔法道具屋さんで、リズの指輪も深層ダンジョンから手に入れてくれたの」


リズが思い出して赤くなる。


「会えたらお礼を言います」

「うん、それでいいよ(笑)」

「明日人形劇行かない?セオドラもナタリーも」

「行きます!」

「姫様、なりません!」


「ダメなの?」

「「ダメです!」」二重奏。


「二人は置いて行こうか?」

「はい(笑)」

「・・・かしこまりました」


「明日の朝食で陛下に言うからいいよ(笑)」


二人は真っ青だ。


「何怖がってるの?大丈夫だよ(笑)」

「王都の外出は事前に騎士団に日程と経路を」

「そんなゾロゾロと民に迷惑な!(笑)」


「アル様!」

「陛下に言えばいいでしょ?言うから!」


二人が顔を見合わせる。


「午前中演劇で食事。午後から人形劇ね」

「食事もなされるのですか!」

「二人は食べないの?」


セオドラもナタリーも蒼白そうはくになってきた。


「うちのお付きは食べるよ?」

「・・・」


「大丈夫!おやつに露店の芋も食べるし」


二人が固まる。


「騎士団も露店の麦雑炊むぎぞうすい食べよう」


二人が泣きそうだ。


「分かったよ!セオドラ、ナタリー!泣くな」

「それでは!」

麦雑炊むぎぞうすいが嫌なら串焼きにしてあげる」

「あはは、アル様!(笑)」


「「アル様!」」


「泣きそうだからやめておくよ」

「本当でございますか?」

「二人には世話になってるからな(笑)」


「ありがとうございます!」涙目だ。


「串焼きはやめてあげる」


ぷー!リズが噴き出す。


「「アル様ー!」」



※それは子爵家当時のアル付きの16歳のメイド、アニーでさえ固まる立ち食いだ。以前王都コルアノーブルでアルが側付きを連れた貴族の立ち食いやったら王都の都市伝説となり、貴族子女にあるまじき行為と貴族家の子供達が綱紀粛正こうきしゅくせいされたほどのガチモンの礼節だ。


・・・・


どうも陛下と王妃がリズの話を聞きたがるみたい。


「メルデスの話を楽しみにされてます」


「25日から来てるのに?何を聞きたがるの!」

「陛下はスラブの婚礼から外出がないかも?」


「え!本当?」


「スラブで婚礼祝賀に来た各国の使者に北方討伐以後の領土認定を根回しする場でもありましたから」


「陛下、夏にキレてたな。それでか(笑)」


「王妃様にはお茶会や夏の湖畔こはんがありましたが陛下にはお時間がございませんでした」


「食事の時の姫様の笑顔が見たいのです」

「・・・」癒しになってるのか。


「ナレスの王女は20歳位まで親元ですから」

「・・・マリア姉様は?あ!20歳か」

「マリア姉さまは特別早かったです」


「あれは、周辺国の王太子様が皆適齢期で早めに決めないと嫁ぎ先に困るので仕方なかったのです。マリアンヌ様は年齢が離れても年下でも嫌と言われて縁談は全部ダメにされてましたし(笑)」


「私も見ましたが、話と実物が違いすぎです(笑)」

「縁談多かったの?」

「6つぐらいは(笑)」

「第二王子様もいらっしゃいましたし」

「ナレス第一王女の看板は凄いねぇ(笑)」


「第三王女の看板も凄いですよ」

「え?」


「13歳で王太子に求婚されてますから(笑)」

「セオドラ!やめなさい!」

「それ看板関係ないよね?(笑)」


ALL「(笑)」


「アル様は廃嫡はいちゃくでも求婚されました(笑)」

「セオドラ!お前、成敗せいばいしてやる!(笑)」

「姫様、アル様が御無体ごむたいを。お助け下さい!」


リズが俺の前にセオドラを差し出す。


「スラブの守備隊とやった癖にナレスで弱いな?」

セオドラの頭をコツンとしてやる。


リズがメルデスに逃げた時セオドラが頑張ったから俺たちがいる。セオドラに何を言われてもしゃくさわらないリズと俺がいる。



・・・・


12月30日(みず曜日)


翌朝5時に起きると顔を洗い着替えてタナウスに跳ぶ。


ナレス5時>タナウス7時。


シズクとスフィアが俺に気付いて引っ付きに来る。


「今日の予定は何かあるの?」

「今日は海で遊びます!」

「そうなのね(笑)」

「人形劇でもいいかも?」すかさず読まれた。

「アルムさんと約束ならそっち優先ね(笑)」

「「はい!」」


「ホーちゃん!アルムさん達は?」

「新年のごちそうを取りに夜明けから大森林に」

「そっかー。あ!お客さん用かな?」

「そうだと思います」


ベガとクレアさんを昏睡こんすいから睡眠すいみんに変えておく。


「ファーちゃん、二人とも朝食で起してあげて」

「かしこまりました」

「あ!換金も提案してあげてね」

「はい」

「僕は一旦出かけるよ」

「行ってらっしゃいませ」



タナウス7時20分>ナレス5時20分


わざわざ貴族服から寝巻に着替えるアル。だってまだこっちは真っ暗の早朝なんだもん。


寝巻に裸足で、勝手に付けた暖炉の暖房紋の温風の前で殊更に遅くした型を練習する。波動螺旋掌、波動螺旋拳、螺旋掌。カッコいい名前を付けようと思っている。


ラプカ寺院拳とかラプカ拳闘術とか名乗ってもナニソレ?は必至。ミンの寺院が伝える由緒ゆいしょ正しい拳法で凄い威力だと説明してから戦うなど悪夢だ。相手がちゃんと言い終わるまで待っていてくれるなら良いが、あいにく俺はそんな悪人に会った事が無い。俺だって相手にそんな説明聞かされるならツッコミがてら一発殴る。


そんなの最後までしっかり聞く礼儀は古来日本の一騎打ち戦法だけだ。当時は家系まで名乗って自分が如何いか由緒ゆいしょ正しい血統の末裔まつえいかを語ったそうだ。それやってたら元寇げんこうで名乗ってる最中に攻撃されて、何と礼儀知らずの蛮族ばんぞくかと怒ったそうだ。魔法少女が変身から名乗るまでの間は攻撃しないのも全ての人が知る礼儀だ。戦隊が最初からロボで行かないのも礼儀だ。今も続いてるじゃん、日本の礼儀だった。


異世界だって開戦前の口上の作法はある。お互いに大義を言い合って今帰るなら慈悲じひで許してやるとか言う、ぶっちゃけ開戦前の口喧嘩くちげんかだ。


魔法士と騎士のユニットで動く集団戦法の世にそんな礼儀は無い。俺の前で語ったら容赦ようしゃなく叩く。


何の話だ!バシ!俺が卑怯者ひきょうものみたいになっているがこの世の人はそうだって話だ。


並列思考で色々考えながら型やってんのよ。


それっぽい名前で波動で螺旋らせんの拳法と聞いた人が納得しそうな名前を考えてる所だ。


アルはラプカ寺院の教えはある意味真理だと思っている。というのがラプカ寺院の教義の根底だ。


ミン国の悪人が教えを守って心に聞いているのか知らないが、心の渇望かつぼうのままに悪事を行っているなら人に転生間も無い混沌こんとんに引き寄せられる魂のり方そのものだし、人に何度も転生をしている魂は磨かれ、心のままに秩序に流れるのも真理だ。それを神に聞いているからアルだけが分かる真理だ。


アルはことわりを知っている。だから少々勘違いしていても、何教だろうが好きにやれと目くじら立てない。アルは人が考えた職業である宗教など論じる必要無しと思っている。


どの宗教も本質はとアルは思っている。その教義で信者は背に光をまとえと宗主は言ってるはずなのだ。本当にさとりを開いてるならそう言う。そう言わない宗主は悟っていない。魂の教義に形式など無い、どの様な道でも磨けるのだから。


教義を通じ磨けと言うのに手前勝手に理解して異教徒は排除。宗教戦争で虐殺ぎゃくさつして神に祈る。アホか。


アルはシズンもシーズもパリスもラプカ寺院の教えも人々に浸透してるなら否定しない。そんな表面の名前などどうでもいい。厳しい親は、、優しい親はと親を分けて反目する様なもんだ。どっちの親も愛で子供を包み込む。子はいつか親を理解し感謝する。子を愛し育て成長させる根本を間違って無ければそれは人に寄り添う教えだ。OKだ。


人である以上、王も偉人も宗主も流民も乞食だってお母さんから生まれて来た人間だ。それはあがめられるために生まれて来てない。磨くために生まれて来た。誰もが一緒だ、アルと一緒だ。


宇宙を統べる様な存在は人と言う一種族からは生まれない。生まれたらその時点で神では無い、ただの器だ。あがめられるどころか魂を磨くために生まれて来た人間だ。宗教の生き神様が大陸ごとにいる。でもアルが知り、視たくないと討伐とうばつされて奴隷になる生き神様だ。


皮肉じゃないが、そんな人が世で神をかたるから神をダシに語りたくない。クラウスの様な分かるものだけが分かり帰依きえする教えだけがあればいい。神のことわりで商売する気が無いのだ。分からない者や知らない者は知らぬまま磨けばいい。その秩序の世を整えてやれば人は勝手に磨く。


宗教に傾倒けいとうしてない守田、秋本、瀬尾、波多野、神谷みんな磨いた事を知っている。教義にとらわれて神様神様と拝んで規則通りに念仏言うよりよっぽど健康的だ。冠婚葬祭かんこんそうさいの節目で活躍する宗教で十分だ。


は神を否定していない。人の作った宗教を選ばないから無宗教なだけだ。


そんなアルが使徒として裁く。我田引水がでんいんすいに神敵を宣言し異教徒を排除してたら裁く。神に教えられた現世のことわりと違う事を教え民を惑わし布施ふせを集めてたら、そりゃおかしいだろ?とツッコミ入れて裁く。


アルは神でも何でもない人間だ。

創造神に一番近い神から好きに生きろと言われても、努力しないと磨けないから頑張って鍛錬をおこたらずむことを忘れない。思う未来を追って磨くだけだ。


アルは特別な存在じゃ無い。

怒るし、意地悪だし、優しいし、皮肉言うし、泣くし、落ち込むし、お爺様にも食ってかかるどうしようもない奴だ。しかし、ことわりは知っている。そう生きたいと思っている。視たくない世に加護で介入しながら。


ゆっくり動きながら型を遣うアルは汗をかいている。


・・・・


コアさんが部屋から出て来た。


「あ!起しちゃった?」

「アル様、7時半に朝食では?」

「ん?そうだよ」

「お風呂の用意をしておきました」

「あ!ありがとう」


風呂は洋式バスタブだ。客室の風呂は元々はクリーンして粉を落す用で日本人の様に肩まで浸かって温まる用じゃない。光沢のあるガラス成分(珪砂けいしゃ)の多い焼物だ。横にドライフラワーの入浴剤が深皿で置いてあるので一つかみ湯船に浮かべて入る。


浴室でクリーンしてソロソロと風呂に浸かる。

さっぱりして貴族服に着替え、部屋に帰るとコアさんがお茶の用意をしていた。


ニウさんがめてくれた。

「アル様、だいぶ力が乗ってましたね」

「え、やっぱり乗ってる?」


「足の蹴り、脚の流れ、腰の入り方、じり方、肩の回し方、肘の送り方。全身で生まれた力と移動の体重を合わせて拳打に乗せてます」


「自然のことわりも乗せろって言うんだけど(笑)」

「アル様が地を蹴る力を利用せよかと」

「そう思う、格納庫だと踏みしめた音が違うの」


「バンバン、ダンダン響くからゆっくりなの、考え事してて無意識に音出したと思った(笑)」


「この王宮は石造りなので大丈夫かと」

「僕もそう思うけど裸足で注意はしてる(笑)」


「朝食後に僕も何かご馳走ちそうを狩って来る」

「クラウス様との話は何時にしますか?」

「どうしよっか?新年の予定を聞かなきゃね」


「アル様が観劇用に王宮馬車を使える様に言って下されば、クラウス様にうかがって参りますが如何いかがでしょう?」


「わかった、そうする」


ノックがしてメイドさん。朝食に呼ばれた。


「劇場で好きなだけ観測して来てね」

「かしこまりました」


・・・・


7時半は陛下夫妻とリズと俺の朝食の時間だ。大公様夫婦はもっと早いし、他の人達は8時過ぎに来る。


「アルよ、相変わらず忙しそうだな?」

「なかなか建国の仕事もありまして」

「出来た国でも仕事は無くならんぞ(笑)」

「昨日の晩もすみません」

「構わんよ、顔を見れるだけでも嬉しい」

「ありがとうございます」

「お陰で今年は躍進やくしんの年になった」

「三銃士のお陰かと(笑)」

「そうだな(笑) 神教国の方は順調かな?」

「今、20万人程の人口になりました」

「1年でか?」14万は騎馬民族だ。

「はい、ボチボチです(笑)」

「順調なら良いな(笑)」

「人を増やす方はのんびりやってます」


奉加参拝ほうがさんぱいで陛下も一旦休みとか?」

「それよ、来年は働かんぞ(笑)」

「(笑)」

「新年早々に神教国の世話になる、よろしく頼む」


「お互い様です(笑) 転移装置の具合を確かめるのに避難施設の方からいらして下さい」


「おぉ!そうしよう」

「転移先に馬車を用意しておきます」

「よろしく頼む」

「そうだ!陛下、今日馬車を貸して頂けますか?」

何処どこか行くのか?(笑)」


「王都の劇場へ。側付そばつきにナレスの劇を学ばせてます。ナレスは寒いからでしょうが、屋内の文化が発達してます。人形劇、一人芝居、少人数の舞台上の公演などです」


「ほう!当たり前で気が付かなかった。言われて見るとおさなき頃に聞く物語は街で劇になっておるな(笑)」


「南国は暑いので陽が落ちた後にかがり火をく屋外の大掛かりな公演が多いのです。タナウスで小さな村祭りの娯楽として人形劇や裏方を含めても10人程で出来るナレスの屋内劇を学ばせたいのです」


「アル様!だから時間が有ると劇団に?」


「ナレスの建国物語や三銃士、恋物語は面白かったしね。今光曜日に楽隊と人形劇と歌謡をやるだけでメルデスだって街の人が足を運ぶ。歴史と文化の深いナレスで勉強して損は無いよ(笑)」


「お父様、アル様の使用人が敷地で人形劇や楽団をやると、それはたくさんの人達が見に来るのです」


「我が国の文化が役に立つなら嬉しい事だ。ナレスを知るのに自由に使ってくれ。ジョルノー、マリリン聞いておったな?計らってくれ」


「以後は自由になるよう家中かちゅうの者に伝えます」


「それでよい」

「ありがとうございます」


・・・・


8時半。


「以後はメイドさんに何時と言えば馬車は用意してくれるから、9日にリズを迎えに来るまで毎日観測して。クラウスさんは仕事の予定次第で用意出来次第に連れて行くからお願いね(笑)」


「かしこまりました」


伝えたらメルデスに跳んだ。


・・・・


エルフ姉妹の狩り。新年のご馳走ちそうと聞いてアルも取りに行く。手持ちのオーク肉を針子やロセの村に配ったので補充に跳んだ。



9時。


メルデスの大森林に跳んだら雪で滑って尻からコケた。ズボッと尻が10cm程の新雪に埋まった。


「ぐわっ!」


昨日、ナレスでもだいぶ降ってたわ。あっちは粉雪だけどこっちは重い雪が積もったな。


しかし、ぐわっ!とか驚くにも他の声があるだろ!と思いながら恰好かっこう悪い姿を誰かに見られてないかキョロキョロ見回す。タナウスの狩りの事だけ頭にあって、メルデス冬とか雪とか忘れてた。転移アルアルだ。


オークを3匹マーキング。

大森林の奥の方に跳んだら親子連れだった。


お父さんが仕留めた400kg程の小さな豚を引きずって雪の中母子と一緒に歩いてる。40匹程の小さな村に住んでるな。オークの家族を見逃す代わりに豚をもらおうと考えた自分の汚さを反省した。それはまるでオーク相手の年末強盗だ(笑)


お母さんのお腹も大きい。お腹の中に子供がいる。


・・・むむむ・・・。


やめた。


尻からコケたのはオークの神様のせいに思えた。

(神様はそんな事しません)


俺だって、オーク親子の年末の災厄さいやくになりたくない。


年末の狩りはやめた。そのまま冒険号に行って色々仕入れてムン国の四峰へ跳んだ。お山のふもとでリン様が執務室にいる事を確認して跳ぶ。


「リン様!お久しぶりです」

「教皇様!」

「新年用の酒を持ってご挨拶にうかがいました(笑)」

「それはそれはご丁寧に」

「こちらをリン様に、こちらをラズさんに」

「私めも?」

ブランデーのびんを2本と1本渡す。


「お願いがあるのですが、側付そばつきがお世話になったので他のお山にも分けて頂けますか?」


「構いませんが?」

「他の総裁様の部屋を知らず跳べないのです」嘘だ。


「あぁ、なるほど!」

「それでは、これを」


ブランデーを3本ずつ総裁と執事長にと9本出す。


「ラズ、門弟に届けさせよ」

「は!」


「折角です。少し見ましょうかな?」


リン様が壁の剣を持って庭に出る。


「え?」


「他国の国主様には相手を務めますのでな(笑)」


「え!」


「アル様。他国の国主様は四峰の総裁と稽古をしたと帰郷の土産話にしておりますぞ」


「いや。それ、僕もです?(笑)」


「今も鍛錬されておるのか、確かめるまで(笑)」


「手加減しませんよ(笑)」


颯爽さっそうと平民冒険服に変わる。


「誰に言っておるか!(笑)」


ボッコボコのコテンパンにやられた。何も出来んわ、受ける事すら出来ん!俺はこんなもんだ。二門のアルムさんに勝てないのに師匠より強い人なんて無理だ!


「三門の40位程か?」

「いえ、三門の80位かと」

「ラズさんが厳しい!」


「私は現場を見ておりますからな(笑)」


「4月に上がった時、三門69位だったのに!」


「得意の粘り勝ちですかな?(笑)」


ばれて~ら!その通り、初見じゃ負ける(笑)


「儂も国主をこれ程斬ったのは初めてだ(笑)」

「まだ子供なので手加減してください!」

「クロメトに子供はおらん」

「十門の門徒はまだ子供がおりますぞ(笑)」


「三門で子供を名乗るなどけしからん。以後は子供を名乗らぬ様に打ちえておこう」


剣を持ったらリンさんが変わった。


「えー!」


年越しの挨拶に来たのに。30日にこれだ(笑)


「えー!では無い!来い!」


「何を止まっておる、打ち込まんかー!」


「脇はどうしたー!」バコッ!ぐはっ!

「左を気にしすぎだー!」ボコッ!いっ!


「剣など要らぬ」

打ち込みの小手つかまれて投げられる。


「釣っておるのか?小賢こざかしいわ(笑)」


釣りに乗ってくれるが甘くない。肩を打ち据えられる。肩を防ぐ剣が遅れて上がると同時に、脇が甘いと腹を打たれる。ドボッ!うぎゃー!


打ち込みに行くとマジでボコボコのもぐら叩き。俺の鍛錬を全然確かめてねぇよ!元剣聖は鬼だ!


ここ脳筋の巣だった・・・




次回 298話  根を張った深さ

----------------


この物語を読みに来てくれてありがとうございます。


読者様にお願い致します。


応援ポチ。☆も頂けたら嬉しいです。


ポチをしてくれる事。それはとても励みになるのです。


一期一会に感謝をこめて。よろしくお願い致します。



               思預しよ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る