第295話  南国エルフ


12月29日(火曜日)


今日はどうしても用事が有るのでコアさんとニウさんをセオドラに頼んだ。二人に人形劇と一人芝居を鑑賞させるためだ。


当の俺は、朝の5時に起きて顔を洗ったらすぐにワールス共和国のベガの店に跳んだ。行くの忘れてたけどもうコルタの剣術大会から6か月経ってるのよ。


ワールス共和国:南緯18度、東経135度。

https://www.pixiv.net/artworks/103781828


ナレス5時>ワールス15時。


鉄枠付きの重厚なドアを押してカランカラーンと呼鈴が鳴るとお茶を飲んでたベガが顔を上げる。


「お!来たな!」

「店開いてたー、良かった!」

「何かあるのか?」

「閉まってたら探さなきゃダメでしょ?」


「お前に売ったら4カ月は店閉めてるよ(笑)」

「またぁー、何言ってんですか(笑)」

「お前ほど太い客を俺は知らねぇからな」


「えー!ホントなの?」


「いいもんくれたじゃねぇか」魔法袋を見せる。


「あー!なるほど、行商?(笑)」

「行商だからそろえておいたぜ(笑)」

「え?」

「持ってる奴から奪って来てやった。わはは!」

「え!・・・」

「イヤ、奪ってねぇよ。とりあえず二階行くぞ」

「はい(笑)」


「今回入った新しいのはこれだな」


目の前に二つの腕輪が出された。


天稟てんびんの腕輪(+10)知力

絶速ぜっそくの腕輪(+15)敏捷


視てビックリ! マジかと眼が点。


天稟てんびんの腕輪持ってます。交換でお願いします!」


「おし!交換したの返すだけだ」

「え?」

「2位魔法士に貸してもらって来た」

「さっすがー!(笑)」バン!肩叩き!

「それほどでもねぇよ!(笑)」バシ!肩叩き!


「絶速の腕輪(+15)敏捷は魔法袋で」

「それでな?相談があるんだが、いいか?」


「なんです?」


「魔法袋が気に入らないんだよ。俺の在庫の」

「え?メチャしぶいのに?」

「男ならアレいいよなぁ?」


「あー!女の人?」

「おシャレじゃ無いって受け取らないんだよ」

「女の人って機能よりおシャレだよね?(笑)」

「そうなんだよ、おシャレなのあるか?」

「こんな感じの?」


女物のマジックバッグを出した。


フラウ姉さまもこの型の可愛い系のお洒落バッグを使ってるから気に入る筈だ。さすがクルムさんは亀の甲より年の功だ。(ちょwwwおまwwww殺されるぞ!)


「・・・」ベガの瞳孔どうこうが開いた。


視たら女物あるんかい!と驚いてる。


「ベガさん?」

「あ!あぁ」硬直が解けた。

「大丈夫?」

「ダンジョンにこれがあると思ったら・・・」

「違う違う!これ作り直してる!(笑)」

「だよな!あの深層の生存限界にこれが・・・」

笑わせないでよ!(笑)」

※1億2千年前からセットされる女物バッグ。



「ちょっと40分ぐらい待てるか?」

「大丈夫ですけど?」


「そろそろ来るって言ったから居ると思う」

「お願いします」

「1位の斥候だからな、その腕輪は命なんだよ」

「えー!そんな人の!」


「交渉で敏速の腕輪(+10)敏捷も付けた」

「ここに悪党がいますよー!」


「何言ってんだバカ!トータル敏捷びんしょう-5で魔法袋かっさらう方が悪党だろが!お前のマジックバッグな?オークションなら最初の値付けで白金貨15枚以上(1億8千万~)は行くぞ。そんなのをおシャレじゃねぇと言いやがる上に敏速の腕輪だぞ!たった敏捷-5でマジックバッグだぞ」


「そんな見た事無いです」


「だろ!俺は悪党の数に入れてもらえねぇよ」

「確かに、ベガさんが良い人に見えて来た」

「俺はお前が最初からバカにしか見えねぇよ」


ひどい!」


「いいんだよ!お前はすごく可愛いからバカでも」


この言われ様はなんだ。


「とにかく行って来る」

「え?ここに居たらいいです?」

「店番しときな」

「えー!」


一階に降りてベガの椅子に座って勝手にお茶を入れて飲む。何か良い物無いかと物色してから気が付いた。そういや今日は鍛錬してないな。まだ30分あるなら中庭でつかみかけの型だけやっとくか。


上段受けて一歩踏み込んでそのまま中段突き・・・


・・・足を変えて引きながら払って蹴り・・・


カランカラーン。あ!帰って来た。


「アルー!」

「はーい!中庭です」

「そっちか?上がって来ーい」

「はーい」


二階に行くと褐色の肌の綺麗な女の人がいた。視たらダークエルフだった。え!こんなんがダークなの?ダークって闇側とか悪側とかのダークと思い込んでた。単に暗色って感じで日焼けした健康的なエルフだった。


「この子は?」

「腕輪の欲しい子だよ」

「アルと言います」

「私はクレアよ」握手する。


「この子、アル君が腕輪欲しいの?」

「はい、凄く欲しいです」


「ベガらしくないじゃない?(笑)」


「そんな事ねぇ!こいつは国主の護衛だぞ」

「そうなの?可愛いのが凄いのは分かる(笑)」


ダンスパーティーで磨いた翌日だけど、可愛いのが凄いって初めて言われた。魅力94が仕事してんのか?


「アル!魔法袋見せてやってくれ」

「はい」


「クレアさん、ちょっとこっちに来て?」

ススッと部屋のすみに行く。


「え?何よ?」

「すごくいいのあるのよ(笑)」


クレアさんがソロソロと警戒してすみに来る。


「これでしょ?」


一択で見せてみる。


「え!何これ?マジックバッグなの?」

「そうだよ。これでしょ?」

「これよ!」


ですよねー(笑)


魔法袋を奪ってクレアさんが振り向く。


「え!」バッグを見たベガが固まる。


それはクルム印の極彩色だった。


「良かった、気に入った!(笑)」

「コレ私のために作られたバッグよ!」


ですよねー!(笑) 巾着タイプって強いな。


「そんじゃクレアさんの絶速の腕輪(+15)敏捷は魔法袋で交換でOK。ベガは知力:天稟てんびんの腕輪を交換して、クレアさんに敏速の腕輪(+10)敏捷を自腹で渡したベガさんにはコレ渡しておきます」


マジックバッグを出す。


「その代わり、下にあったこれ下さい」


店のショーケースで見つけた水属性指輪(水魔法の発動魔力10%減)のレア物を強請ねだった。


「おいおい、ホントかよ!そんなもんでいいのか?俺+10敏捷の指輪でマジックバッグって差額が凄い事に・・・」


「いいのいいの。持ち主との駆け引きや交渉があったから交換出来たし、その価値の充分詰まった取引です」


「本当にいいのか?」


「二人の冒険者を説得したベガさんの勝利!」

「空いた口がふさがんねぇわ」

「アル、ベガ、クレアの三人が喜ぶ商売!」


「最高の商売だわ!」


「そりゃ、お前ぇは最高だろよ!(笑)」

「ベガだって最高じゃない!(笑)」

「まぁ、そうだけど・・・」


なんかこの二人仲が良いんだけど、魔法腕輪の交渉で急接近したみたい。お互いに顔色うかがうのを楽しみながら何度も酒場で交渉してたみたい。


冒険者ギルドで皆が昇位してるしな、昨日PTを1位にしようかと迷った所だ。世話になってるし、ついでにベガもクレアさんと同じ位置に上げてやるか?二人が同格になればもっと仲良くなるかもな。


今思い付いた急な話だ。皆に1位を望むならギルドマスターに圧倒的な成果を見せる必要がある。


「ベガさん、ちょっと時間ある?」

「おぉ、商売して4か月あるぞ」笑うわ(笑)

「クレアさんは?」

「今お休み取ってるしあるわよ?」

「今からダンジョン付き合ってくれる?」

「お?ダンジョン?」

「どこよ?」

「二人共装備は?」

「ちょっと待て、装備整える」

「この剣だけ。家に帰らないと無いわよ?」

「そんじゃ行きましょ!」


シャドが巻いた瞬間に跳んだ。


「え!何?」

「クレアさんの家でしょ?」

「うん・・・」

「装備持って来て。その魔法巾着なら入るでしょ?」

「・・・うん!」


その間に左右の足は壮健と剛腕の腕輪が付いてるので右足に絶速の腕輪(+15)敏捷を付けた。今は指輪は身分証の指輪以外はシェルが持ってくれている。


アルベルト・ロスレーン 15歳 男

ロスレーン伯爵家 三男 健康


職業 聖騎士(選択ジョブ数値10UP) 


壮健の腕輪(+10)体力 剛力の指輪(+15) 剛腕の腕輪(+15) 瞬足の指輪敏捷 絶速の腕輪(+15)敏捷 アプカルルの涙(+10)魅力 幸運の指輪(+3)幸運 

 

体力:102(122) 魔力:- 力:81(121) 器用:411(421) 生命:82(92) 敏捷:77(117) 知力:714(729) 精神:742(757) 魅力:84(94) 幸運:87 (92)


現在選択ジョブ>(表①:聖騎士。体力+10、力+10、生命+10、敏捷+10、精神+10、幸運+2)

馬術、盾術、身体強化、格闘術、剣術、槍術、聖魔法効果UP。


(裏②:神の使徒。数値の向上無し)

(裏③:魔導士。魔力+15、精神+15、知力+15)

全攻撃、弱体魔法、魔術紋効果UP。

(裏④:治癒士。魔力、精神、知力)

全回復、補助、強化魔法効果UP。

(裏⑤:斥候。知力、器用+10、敏捷、幸運)

気配察知、気配遮断、投擲、罠解除、罠発見効果UP。


スキル表示分 

身体強化Lv6 格闘術Lv5 剣術Lv5 短剣術Lv5 槍術Lv5 盾術Lv4 二刀術Lv4 気配遮断Lv2 気配察知Lv2 危機感知Lv2 物理攻撃Lv5 物理防御Lv4 魔法攻撃Lv7 魔法防御Lv5 縮地Lv4 縮歩Lv4


鬼の敏捷40UPだ!キタキター!ひーらりひらひら~ひひらひら~♪燃えろ!俺の小宇宙コスモ


アルはノリノリになった。


真夏の国でバリバリ!コンボも全開バリバリ!

踊る様に型やってたら声が掛かった。


「いいわよ、行きましょ!」


ぐわ!なんだ。踊り子装備だろソレ!ミスリルで編んだ縄が腰ミノだ。さっき踊っちまった・・・チガウ!腰から伸びた縄が集まって一見ロングスカートの様に見える。準備の屈伸くっしんで太ももが丸見えだ。


でもそんな踊り子装備に極彩色の巾着魔法袋が映える。1位の斥候と言うよりエロカッコいいお姉さんだ。


夜露死苦よろしく!」


シャドが巻いた瞬間ベガの店に跳んだ。


「お!なんだそれ、魔法か?」

「準備は?」取り合わない。

「いいぜ(笑)」

「これ魔法なの?(笑)」

「店の戸締りも?」取り合わない。

「おう!閉店札下げた(笑)」

「行くよ!」


シャドが巻いた瞬間ハウスに跳んだ。


・・・・


ワールス16時半>メルデス6時半。


「なんだここは!?」

「・・・」

「僕の家です」導師の家だ。


「アロちゃん、イコアさん所のライムさんとヨードさん呼んでくんない?ダンジョンで狩りたいの」


「かしこまりました」と言うが動かない。


二人がすぐに二階からミスリル鎧で降りて来る。


「2位のライム・ノートさんとヨード・テリオスさんね」


「こっち2位のベガ、こっち1位のクレアさん」


ALL「よろしくお願いします」


「行くね?」

シャドが巻いた。


横堀の魔穴前の山道に跳んだ。5人PTで1位魔銀級1人、2位金級4人のPTだ、豪華やね。冒険者証見せた守備隊の人が驚いてる。


「横堀の魔穴?聞いたことねぇな」

「私も!」そりゃ星の裏側だもん。

「こっちが送迎門。飛んで来るから刺してね」


「飛んで来る?刺す?」理解不能だ。



送迎門へ行くと57F へPTを移送。


出先は遠くに岩山のあるジャングルの密林。


(シャド落してね)

(はい)


「なんだぁ?しょっぱな密林かよ!」

「行くよー」岩山に先頭切って走る、皆も走る。


密林を5人で風の様に掛け抜けて行くと早速岩山から飛んできた。俺達を岩山から見つけてるのか、観測してるのか分かんない(笑)


「な!飛竜?・・・ドラゴンじゃねぇか!」

「えー?本当だ!最初からなの?」


飛竜2匹がそのまま落ちて来る。


ひゅーん、ドサ。


「行けー!」突き刺し祭り。


「はぁ?」

「え?」


また走る・・・

飛竜が2匹落ちて来る。突き刺し祭り。


「何じゃこりゃ!(笑)」

「アル君の魔法なの?」取り合わない。


また走る・・・

飛竜が3匹落ちて来る。突き刺し祭り。


「なによこれ!(笑)」

「モンスターが落ちる階層かもな?」

「どんな階層なのよ!」バシ!


ドロップ出た1枚!拾う。


また走る・・・

飛竜が2匹落ちて来る。突き刺し祭り。

ドロップ出た1枚!拾う。


また走る・・・

飛竜が3匹落ちて来る。突き刺し祭り。


「3匹で出ないー!(笑)」

「何で落ちてくるんだよ!」取り合わない。

「聞いた事も無いわよ!」取り合わない。


また走る・・・

飛竜が2匹落ちて来る。突き刺し祭り。

ドロップ出ない!


「(笑)」現実を受け入れた様だ。

「(笑)」不思議ダンジョンと納得した。


また走る・・・

飛竜が2匹落ちて来る。突き刺し祭り。

ドロップ1枚!


また走る・・・

飛竜が3匹落ちて来る。突き刺し祭り。

ドロップ2枚!


また走る・・・

飛竜が2匹落ちて来る。突き刺し祭り。

ドロップ出ない!


また走る・・・

飛竜が2匹落ちて来る。突き刺し祭り。

ドロップ1枚!


また走る・・・

飛竜が2匹落ちて来る。突き刺し祭り。

ドロップ出ない!


岩山に着いた、階段を下りる。


「その石板に魔力通してね」

「あいよ。アル、慣れてるのか?」

「だいぶ慣れてるわよね?」

「一回来ましたからね(笑)」

「一回来ても落ちねぇだろ(笑)」

「そうよ!(笑)」


58Fへ出た。

朝を食べて無いと、ロールパンをかじってると俺も私もと二人がたかる、葡萄ジュースで流しこんで階段から進む。


超デカイ洞窟だ、すぐに猫バスも来るはずだ。


ズーンズーンと足音がする。

出た瞬間に2匹の地竜が縞々になって固まる。突き刺し祭り。


「なんだ!こんなのばっかか!」

「何考えてるのよ!」

「能書きいらない、突き刺して!(笑)」


走る・・・地竜が2匹固まる。突き刺し祭り。

ドロップ1枚。

走る・・・地竜が1匹固まる。突き刺し祭り。

走る・・・地竜が2匹固まる。突き刺し祭り。

ドロップ1枚。


走る・・・地竜が3匹固まる。突き刺し祭り。

走る・・・地竜が2匹固まる。突き刺し祭り。

ドロップ1枚。


「ここは止まる階層だな?」ソレチガウ。

「落ちて止まって次は何?」

「ひっくり返る?」笑うわ。

「真面目に答えなさい!」意外にキビシイ。


走る・・・地竜が2匹固まる。突き刺し祭り。

走る・・・地竜が1匹固まる。突き刺し祭り。

走る・・・地竜が3匹固まる。突き刺し祭り。

ドロップ1枚。


「突き刺すダンジョンかも?」エルフ脳?

「お!そうかもな?」お前もアルム脳か。バシ!


走る・・・地竜が2匹固まる。突き刺し祭り。

走る・・・地竜が1匹固まる。突き刺し祭り。


階段に着いた。


「認証してねー?」

「はーい」


もう一個ロールパンをかじる。


59F

あ!ここ火竜だ、まあいいや。


ズシンズシンの音。二本足で立つイグアノドンだ。葉脈の鱗どうしてやろうか?釘バットで鱗落すのが一番早いな。と思ったらライムさんとヨードさんが切れ目を入れてくれる。シャドが固めてる中、俺も隣の火竜に釘バットのミスリル剣で一直線に切れ目を入れて行く。


「鱗固いから切れた所へ剣突き刺してね?」

「はいよー!」

「突き刺すのは変わらないのね(笑)」

「突き刺すダンジョンだからな」確信持って言うな。

「そうそう!(笑)」つい肯定してしまう俺。


後は突き刺し祭り。


以後繰り返し。


ドロップ5枚で60F行った。


「ここ、何も出ないからね」

「そんなダンジョンも珍しいな」

「あ!斧が一丁出るかも?」

「斧?」

「斧」面倒臭いので取り合わない。

「一丁?」

「一丁」

「(笑)」どこにウケル要素がある?クレアさん。


2匹に続く4匹のヘカトンケイルを瞬殺。


やっぱり斧がまた出た。


斧はもらって、どんどん倒して行く。


倒して行ったら赤が出て来た。

青も出て来た。黒も出て来た。

ここは何も出ないから瞬殺の魔法でぶっ飛ばす。


「お前の魔法エゲツないな・・・」

「正統な魔法に何言ってくれんの!」

「そんな威力どうやったら出るのよ!」



60Fボス部屋:ミノタウロス。


ボス部屋の扉。

余りの大きさにベガとクレアさんが固まる。


「これって、凄いボスだよな?」

「大丈夫なの?」

「もしかして小さいかもよ?」俺は知っている。

「そんな訳あるか!デカイに決まってる」

「こんな大きな扉で小さいなんて無いわよ!」


扉を開ける。


ガンダムRX-78-2いた。


大きさ変わんねぇよ!まんまデカイじゃねぇか!心持ち大きくなった気がする(笑) これってライムさんとヨードさんのせいじゃないの?俺のせいじゃねぇぞ!


「・・・」ベガ固まる。

「・・・」クレア目を見開く。


見上げて首が疲れるミノタウロスを存分に目に焼き付けようと堪能している二人に言った。


「大きかったね(笑)」


話しかけても二人はまだ固まる。4mの両手斧と8mの両手剣に目が釘付けだ。


仕方ないな。


「ライムさん、ヨードさん。タゲをお願い」

「かしこまりました」タゲが分かる二人。


ミノの大剣と大斧は当りもせずにけてくれるだろ。こっち向いたらタゲ取ってくれる筈だ。


「行くよ!」

「行くのかよ?」

「行くのー?」


さっさと向かうライムさんとヨードさん(笑)


「はいはい!行くよー!」


扉の前で動かない二人を後ろから押す。


「おい!扉が閉まっちまったぞ」

「倒さないと出られないのよね?」

「倒さないと出られないね(笑)」


「・・・」

「・・・」


「ホラ、もう二人が戦ってますよ」


そこでミノタウロスがブモォォォォー!と叫んで空気が揺れる。


ギャー邪視(硬直)と咆哮(怯み)あるんだった!二人を見たら止まってる。イヤ、最初から止まってた。


「心臓キュッとした?」

「キュッとしたわよ!」

「おぉ!キュッと来るな(笑)」


邪視があるがタゲを取ってるライムさんとヨードさんしか見ていない。叫びで身体がピリピリッ!と来るのは怯み耐性が少しでもあるからだ。心臓がキュッとなって立ち止まってしまうが。精神系の怯みの叫び、この3人なら少しは耐性あるな。


PTなのに巨大なミノとバンバン戦う前衛二人。


「あの二人なんなの?PT関係なくない(笑)」

「騎士ですからね」宇宙の・・・騎士だ。


なんか俺達3人が眺めてる間にライムさんとヨードさんが切り裂きまくってる。その8mの大剣をどうして一寸法師が受けてんだ!片手剣が折れないのもおかしいだろ。自分と自分が戦うと言うか、コアが自分同士を動かしてると言うか、ダンジョン始まって以来の珍光景だ。 


どんな超科学使って、受けてんねん!


縮尺的におかしい!ガンダムと人間二人が互角に戦ってる感があるぞ。ツッコミ所満載だが、並列思考にツッコミは任せた。そんな俺はタゲが二人に行ってる隙に大地の斧で攻撃に移った。


以前よりダメが通るのを確認、ミスリル剣で新車に傷を付ける様な精神的に痛い攻撃のベガに大地の斧を渡した。横で仲良くチクチクしてるクレアさんがすごく可愛く見える。


まぁ牛の極悪人ズラ見てたらそうなるって話だ。


精霊剣はダメだった。そういや魔法攻撃効かないわ。さっきの斧は純粋に力が上がった分のダメだな。納得したら釘バット剣でジャンプしてサクッと手首を斬って武器を封じた。


暴れ回って踏みに来るミノを(PTみんなで倒した感が欲しくて)気長にチクチクした。その内にベガが右足にクリティカルヒットを出したらミノがガクッと右膝を折って右腕を床に着いて前のめりに踏ん張った。チャーンス!と背中のなだらかな坂を駆け上がり首を落して終わった。また両手剣が出た。


祭壇見ても何も出ない、当たり入ってんのか!


「お疲れ様でしたー!」

「お疲れ様ってお前(笑)」PTプレイの礼儀だ。

「このPTは何なのよ!(笑)」


「とりあえず帰りましょ」

「おぉ、これでダンジョン制覇なのか?」

「・・・ホント?」


「こっちです」取り合わない。


ハウスに帰って来た。


「アロちゃん、イコアさんPT こっちに呼んでアロちゃんクランでお留守番してくれる?」


「かしこまりました」

アロちゃんが二階に上がって行く。


「フィオちゃん、皆にパンケーキセット頂戴」

「お待ちください」


「夕食の時間でしょ?軽食食べましょ」

「そういやそうだな(笑)」

「お腹減ってる暇無かったわ(笑)」


フィオちゃんがミッチスそのままのパンケーキセットを持って来てくれた。


「何だこれ、メチャうまいぞ!」

「私、こんな美味しいの生まれて初めて」


ハイエルフの味は大抵の人が初めてだと思う。


食べてたらイコアさんPTの5人が降りて来た。


「ドロップ品分けよう」

「俺達ついてっただけだぞ(笑)」

「頑張ったから、嬉しいわ(笑)」

「頑張ったって・・・お前!(笑)」


・・・・



9時半に冒険者ギルドに行った。


ギルドマスターに10人で会いに行った。


「横堀の魔穴60Fクリアしてきました」

「はぁ?」


「ギルドの伝承の記録は間違い無かったです」

「?」


ギルド長が知らなくても仕方が無い。


57F飛竜 2本脚のドラゴン 火を噴く

58F地竜 4本足のドラゴン アースパイルのブレス

59F火竜 4本足のドラゴン 火を噴く

60Fヘカトンケイル 4つ手4つ目の巨人

60Fボス ミノタウロス カトブレパス上位種


確かに間違いないだけだ。


ギルドで以前見たが人をなめた伝承記録だ。初めて行くPTはこれ見てどうしろって言うんだ。モンスター紹介してどうする?対策書かないと意味無ぇよ、寄席のめくり台じゃねえんだ、紹介いらん。覚えてたら暗記問題だぞコレ(笑)


などと裏で考えながらもギルド長との話は進む。


57F の飛竜の皮が6枚。58Fの地竜の皮が4枚。59Fの火竜の皮が5枚。60Fのヘカトンケイルはドロップはこの成長の斧。60Fで成長の斧を200>400>600>800回ダメージを与えると成長>力>剛力>地震>大地の斧。大地の斧は1000/1000が威力の上限で60Fのボス、ミノタウロスに大ダメージを与えられる大地の斧になります。60Fのミノタウロスのドロップは両手剣です。


ここにいるイコアさんPTと僕とここにいるベガ、こちらの1位のクレアさんで討伐してきましたが1位になれますかね?


「・・・」まくし立てられ整理出来てない。


「皮の値段が下落するなら討伐証明みたいの出してもらえば他の国のギルドに持って行きますが・・・」


構わず先へ進んで行くアル品質の会話。


「ベガは自分のギルドで1位になりたい?」

「いや、そんなのは無ぇが・・・」

「そんじゃ、ここでなっとけばいいよ」

「なっとけばって、お前(笑)」

「僕だってこないだまで5位だったんだから」

「え!アル君5位だったの?」

「だって、実力は階位じゃ無いでしょ?(笑)」

「まぁ・・・目安よね?(笑)」


一言も発さないギルド長に気が付いた。


「ギルド長?」

「うむ・・・」

「買えないなら、討伐証明をお願いできますか?」

「買いたいが王都のオークションが・・・」

「あ!そういうのはいいです1位になれたら(笑)」

「分った、このPTでいいんじゃな?」


「あ!うちのPTのアルムとクルムとシズクとスフィアは私より強いんでそっちもついでに!」


「ついでに1位?・・・分かった(笑)」

「分かったの?いいの?」クレアさんが大笑い。

「どれだけ強いんだよそいつら(笑)」


「知ってるじゃないですか、エルフ姉妹ですよ」

「え!あの姉ちゃん達それ程かよ?」


「え!エルフ居るの?」

「二人居ますよ(笑)」


「お主たち冒険者証を出せ」

「アルベルト卿、60Fの詳細を教えてくれぬか?」

「暇があれば連れてって上げますよ」

「本当か?」

「クリアしてるからそのまま60F 行けます」

「そうじゃな!(笑)」

「あ!また情報誌に出るので内緒にして下さい」

「イコア卿は構わんか?」

「アル様のためなら構いません」

「そんじゃイコアさんPTが60Fクリアで(笑)」


「1位の証に2時間程時間をくれ」


「皮をオークションに流せばギルド長の立場も強くなったりします?」


「時間をくれたらの?コルアーノでも本当に竜を狩ってオークションに出す冒険者は早々おらん」


「これ、飛竜、地竜、火竜置いて行きます」


「同時に出すと値が崩れて次の値段の参考になるでの、来年のオークションから3年でも良いかな?」


「全然構いません」

「ありがたい、面目も立つわい」


「そんじゃ、他の大陸のギルドに同じ様に売ればどこのギルドでも嬉しいです?」


「そりゃそうじゃ。高く売ればギルドも冒険者も嬉しいが、頻繁に出て値崩れを起こすのも怖い。欲しい者がおらん限りそれ以上の値では売れんからな」


「そんじゃ、3枚お願いします」

「分った、2時間後には1位の証も出来る」



ギルドから出て来た。イコアさん達も一端クランに帰る。


「2時間でエルフ姉妹に会いに行く?」

「行く行く!」

「・・・行くよ(笑)」


「ベガ空気読むよねぇ?」ニヤニヤ。

「何言ってんだ!俺は商売してんだぞ!」


「そんじゃ行くね」


シャドが巻き付いた瞬間にアルムハウスに跳ぶ。


・・・・


メルデス10時>タナウス12時。


「ファーちゃん、アルムさん達は?」

「今!海に出かけられました」

「海の家で水着用意してくれる?」

「かしこまりました」


ドアを開けて外に出ると道を挟んで一面の砂浜、ベガもクレアさんも驚く。


「こっちです」海の家を目指す。


少し歩いたら二人が浜辺でビーチチェアーを運んでた。まだ水着に着替えて無い。


「アルムさーん、クルムさーん!」


「アル君、どうしたの?」

「シズクとスフィアは?」

「聖教国の年越しのイベント見に行ったよ」


それ、俺も知らねぇよ。マジ通い詰めてるな。


「それ揉みくちゃにされそう」

「アルノール卿が連れて行ったから大丈夫よ」

「アル、後ろの二人は?」


「このエルフのお姉さんが会いたいって(笑)」

「私の作ったバッグを使ってくれてるわね」

「こっちの人は知ってるよね(笑)」

「魔道具屋さん、お久しぶり!」

「おぅ、久しぶり!」


クレアさんが肌の焼けて無いエルフを見て固まってる。敵じゃ無いだろうな?と思って視たらダークエルフ以外のエルフを初めて見ていた。


「他の国のエルフだわね?」

「分るの?」

「昔話に出てくるのよ。伝承の通り南国の肌ね」

「当たった!南国ワールスのクレアさん」

「アルムだよ!」

「私はクルムね」

「クレアです」

「クレアは本能が外れておるのか?」


あ!街にいたな。忘れてた。

言い当てられクレアさんが驚く。イヤ同族でしょ(笑)


「私たちも外れてるから、気にしなくていいわ」

さすが年の功、空気を読む。


話してるだけで太陽がジリジリする。


「とりあえず着替えてエールでもやろう」

「そうだな(笑)」

「着替えるでしょ?クレアさんも一緒にお願い」

二人にクレアさんを任せた。


姉妹がクレアさんを海の家に引っ張って行く。エルフ仲間の方が楽しくて良いだろ。俺とベガはメイドさんから水着を受け取り更衣室に向かう。


・・・・


やっぱり俺は夏が好きだな。着替えたら炎天下の体を冷やしたくてエールも忘れて海に駆け込んでザボーンと飛び込んだ。水温も良い感じで火照った体の熱を奪われる。体が冷えて最高に気持ちがいい。


少し先の富士山型の甲羅干し舞台まで一気に泳ぐ。ベガも遅れず泳いで付いてくる。真夏の海は明るくて最高!舞台で身体が火照ったらベガを蹴り落してザブンとまた海に飛び込み逃げた。


ベガに見つからぬ様に岸まで潜水で充分に綺麗な海を堪能し、太陽見上げてプカリと浮かんだらベガに足首を掴まれてジャイアントスイングされて今泳いできた沖に向かって派手に宙を飛んだ。


ベガがデカイから俺が余計に子供に見える。


「海に入るなんて久しぶりだぜ!(笑)」

「偶にはいいでしょ?(笑)」

「おぉ、良いなぁ。冷たくて最高だ!」

「美味いもんありますよ」

「おー!行こう、行こう!」

「今、海に入ったばっかじゃない!(笑)」


遅れてきたクレアさんが後ろに居た。


マス席に入って真夏の太陽から逃げる。ピリ辛のセセリの出来合いとエールを飲むと最高!夏気分。


「たまんねぇなぁ、何処だよ?ここは」

「分かってる癖に(笑)」

「名前は分るよ、どこの大陸だ?」

「大陸じゃ無いのよ、島なの」


「え?建物はマジス王国とカムラン帝国と出るぞ」


あ!建物似てるから気にして無かった(笑)


「でしょうね、滅んだ国の建物です」

「え!国から持って来たのか?」

「そんな感じ。残すと周辺国が奪い合いになるので」

「え?・・・あぁ、そうか。そうなるわな」


「なんか、この国はゴミゴミしてないな?」

「ん?」


「なんか、何処にも歪な生活臭があるだろう?貧民から貴族まで寄り集まるとレンガの建物の前に板張りの小汚ぇ小屋とかよぅ。この食事場所や海の店には統一感があって平民も貴族も一緒に使ってるみたいだし。住み分ける様な変な歪みがない海と言うか・・・」


「統一感ありますかね?」


「あるだろ!獣人は分かるがドワーフやノームや人間とエルフがなんで同じ浜で遊んでんだよ。普通にくつろいで酒飲んで子供と遊んでるじゃねぇか(笑)」


「何話してるの?」クレアさんが上がってきた。

「みんなが楽しい良い海って言ってんだよ(笑)」

「アル君。私、置いて行ってくれていいから」


「え?」


「1位の証取りに行くでしょ?私関係無いし」

「あ!そう言う事?(笑)」


「ここに住むのかと思ったぜ(笑)」

「ここに住むわ!」

「え!」


「ここは最高よ!ワールスより断然こっちね」

「・・・」

「お前ダグのPTどうすんだ?」


「もういいわよ!あいつどれだけ稼げば満足すんのよ」


「そりゃお前・・・どれだけだろうな?(笑)」


「ベガさんはどれだけ稼ぐの?(笑)」

「俺が金だけの為に・・・」


ベガは魔眼の様に恩寵の鑑定を持って産まれてきた事を神に感謝していた。与えられた恩寵を使ってその冒険者の特性に合う魔道具を行き渡らせるために魔法道具屋をやっている。恩寵の恩恵を独り占めせず皆に配るためだ。


「分った分った、ごめんなさい(笑)」


「心配しなくて良いわよ、アルムさんの家に泊めてもらう事になったから(笑)」


「アルムさんと仲良くなった?」

「なったわよ!いつまでいても良いって」

「ふーん・・・良かったねぇ」取って付けた。


「ホントに旨いな、これ」

「すいませーん!ピリ辛セセリ2皿とエール2杯!」

「3皿の3杯ねー!」


「俺も4か月休むから、この国で休暇にするか!」

「ホントに4か月休んでるの?」

「まぁ。魔法袋で行商だな(笑)」

「人に会うなら移動する店だよね(笑)」

「そういうこった!たまには休暇だ(笑)」


「そうしなさいよ!知り合いがいる方が楽しいわ!」

「毎日、ここでエール飲むだけで生き返るな」


「・・・」


「お!来た来た!別嬪べっぴんさん!ありがとよ!」

「乾杯よ!1位昇位おめでとう!天国にかんぱーい!」

「俺の休暇にもかんぱーい!」

「かんぱーい!(笑)」


キーン!


ごきゅごきゅごきゅ!


「かー!うめぇ!最高に美味ぇー!」

「なんて冷え方してんのよ?店にエルフいるかも?」

「冷えて美味しいよね(笑)」


「こんなに美味いツマミとエールは金出しても無ぇぞ、このロケーション見ろよ!輝きまくった海でこのエールだ!これに気が付かない奴はアホだ!輝いてる俺の人生最高!」


二杯で酔っぱらってる?素で言ってんの?(笑)


「そうよ!来た瞬間気付いたわ!あたしも最高!」


キーン!


「最高の海にかんぱーい!」


~~~~


「そろそろ二時間ですよ、行きましょうか?」


「アル!いいんだよ!今日じゃ無くたって」

「そうよ、暇な時でいいのよ!」

「今、暇じゃないです?」

「何言ってんのよ!疲れた心に乾杯な時間よ!」


「・・・」


「クレア!輝く人生に乾杯だー!」


完璧に出来上がってやがる。何杯飲んだんだ。


「私の人生にもきゃんぱーい!キャハハ!」


褐色が赤に染まって頭に花が咲いている。


キーン!


「わはははは!」

「きゃはははは!」


二人とも赤ピクミンな顔しやがって。


個性がイロイロ生きているよ。




次回 296話  教義伝道師

--------------


この物語を読みに来てくれてありがとうございます。


読者様にお願い致します。


応援ポチ。☆も頂けたら嬉しいです。


ポチをしてくれる事。それはとても励みになるのです。


一期一会に感謝をこめて。よろしくお願い致します。



               思預しよ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る