第283話  真剣勝負



大歓声の中、俺とアルムさんは決勝戦の舞台に上がった。


「準備はいいですね?」


二人が審判に向かってうなずく。


「始めぇ!」


しょっぱなは模擬戦いつもの通りの打ち合い。お互いに攻守を変えて次第にスピードを上げていく。上下上上下右下左と攻守を変えて激しく打ち合う。


カカンキンキンカンキンカカン!


最高速まで上がった剣撃になると一旦後ろに飛びのく。大観衆はそのスピードに目を見張った。俺とアルムさんも心地よい攻防が出来ている。


一拍置いて俺が一気に飛び掛かる。

↑↑↓↓<><>BA!


キキキキン!カ!キン!カン!キン!キーンキーン!


攻撃と防御が目まぐるしく動き、その剣戟けんげきのスピードに大観衆が息を飲んで歓声が静かになって行く。


また最高速まで上がると一旦飛びのく。なんか急にアルムさんが鶴のポーズ(笑) そんなのラナンにねぇだろが! でも大喜びで鶴を斬りに行ってやる。キキンキンキンキンキン!なんか鶴は受けみたいだ、思いっきり挑発して受けとかおかしいだろ!相変わらずアルムさんのIMEには定石じょうせきとか脈絡みゃくらくの文字が無い。俺の盾に剣が当たらないからカン!がなくて太鼓のリズムゲー的にしっくりこない。


俺のリズムを崩す型か、鶴の剣!な訳ねーだろが!ツッコミ込めてバシバシ突きを入れる。


なんかそういう鶴の技があるみたいに見えるから面白い。とにかく4分攻撃しまくる。受けるの飽きて攻撃に移るタイミングまで分るってどうよ(笑)


避ける、打つ、受ける、突く、流す!


カンキンキキンカンカンキンキンカン!


剣術には受けから攻めに転ずるセオリーがある。例えば片手剣上段の攻防であれば、上段の攻撃を出した相手には、体が一歩半身に伸びた(隙が出来る利き手側の最短の)胴に返すのがセオリーだ。そして上段の攻撃を出した相手もそれを予測して利き手の胴を守ろうと受けられた剣を内巻きに構えて胴への攻撃に備える注意をする。受けた相手が胴へ来るなら内巻の剣が外に弾き出す。胴に来ず変化し上段に来るのもあるからセオリーからの変化という意味で変化という。


アルムさんの幻影剣はこの打ち込みからの変化、受けからの変化がハンパ無い。変化に次ぐ変化の先にセオリーが繋がって来る。変化する形の無い受けと攻め、それがラナンの縦横無尽に変化する水の剣。それが相手との技量差で幻影剣げんえいけんとなる。


アルムさんから超スピードで繰り出される変化する剣戟けんげきを攻守の変化で冷静にさばいて行く。確実に眼で追ってさばいて行く。


俺は剣戟けんげきひたり観衆の声も聞こえない世界に没入ぼつにゅうした。己の全てを出し尽くす、4分越えたらアルムさんがスピードを上げて来るのを全力で迎え撃つ。そろそろかと思うと目のはしで4つ目の赤旗が上がった。


来る!


途端にアルムさんが幻影剣げんえいけんを出して来た。それでも耐える、潰されない様に耐える。左手の盾と右手の剣で亀のように防ぎまくる。さらにスピードが上がる。まだ上がるんかい!せめて下して来た騎士団に耐える見本を見せなくては・・・右手も左手も変化する剣に合わせて縦横無尽じゅうおうむじんに動き回る。


そこまでだった。

右の肩口の剣筋を受けたはずがすり抜ける。肩口から下段に変化して右腹に来た剣を全力回避しながら、盾を滑り込ませる動きでも間に合わない。右わき腹から逆袈裟で切り上げられて吹っ飛んだ。まぁ朝の模擬戦と同じく斬られる力のを逃がして跳んだ。



1本!


瞬時に歓声と悲鳴が耳に入った。


いつもは吹っ飛ばされた瞬間にヒールでそのまま起き上がるが、今回は吹っ飛ばされたついでと派手にコロコロ転がって一瞬静止で気絶きぜつのフリ。1秒後にヨロヨロとゆっくり起き上がってから、やっぱりダメとウッ!と片膝をつく。


剣を肩にどうよ!と平たい胸を張るアルムさん。


あんたも演技が上手いねぇ?と思ってから、本来の地の様な気もしないでもないと思い返した。俺の吹っ飛び方が上手くて気に入ったみたいだ。


脇腹をさすりながら無詠唱の癒しのヒールをしておく。ヨロヨロしながらアルムさんの前に立つ、もうすでに二人共本気モードだ。時間は白旗上がって無いけどあと30秒ぐらいか、大喜びで時間内二本勝ちを決めに来る筈。鼻の伸びた大威張りのクソエルフを大観衆の前で一発転がさなきゃ気が済まねぇ。


「始めぇ!」


途端にぶっ跳んで来るアルムさん!

カカンキンキンカンキンキンカカン!


幻影剣げんえいけんきたー!またスリ抜けやがった!斬られるー!多重視点でドヤ顔で笑うアルムさん・・・このクソエルフ!


盾だって有るんだよとしゃがみガード!のレバーを斜め後ろ下に入れた。


すかさず幻影剣が軌道を変えて盾をすり抜ける。やっぱな、見越して変化しやがるクソッタレが!オラー勝ち誇れやー!


バッシュと同時の縮歩ぉー! 

→↓↘+P 神速のコマンド。


昇竜盾ー! などと叫んでる間も無い刹那せつな


ドカーン! (当てた瞬間、盾術Lv3→Lv4に上がった)


チュン・リーアルム・ポポがぶっ飛んだ!

そのまま縦にぶっ飛んでくアルムさんを追撃の逆袈裟でぶった斬って横ベクトルにぶっ飛ばす!武舞台に落ちてコロコロ転がって行った。


「一本!」


やったったぜ!ざまぁみさらせ!わーい。



昇龍盾を破らぬ限り、お前に勝ち目はない!とは言わない。こいつはもう二度と引っ掛からねぇ。


身体強化でダメージは減らせても、上へのバッシュはモロ体重分しか踏ん張れないんだよー!食らって思い知るが良いわ。


ここで心地よい大歓声がまた耳に入る。わーい!


6面スタンドの大観衆に応え剣を振って、チョー気持ちいい!


起き上がったアルムさんが顔が真っ赤だ、耳まで真赤だ。エルフの変異種、赤が誕生した。その顔は上位種とは似ても似つかぬ醜悪しゅうあくな赤い大魔神!


視たら、イメージが赤に染められてまったく視えない。赤一色のエルフの警戒色じゃ、怒りに我を忘れておる!めっちゃ怒ってる!マジ怒プンプン丸のエルフ可愛くなーい!怒っちゃダメでしょ!やられちゃったー、テヘ!になれよ。なんでそんなに怒るのよ!お姉ちゃんの頭を冷やさないと・・・。


「お姉ちゃん!怒らないで!」たまらず叫ぶ。

「アル君!やったわね?」

「真剣だっていったじゃんか!」

「あれは剣術な訳?」なんか言いだした。


「お姉ちゃん!試合中だよ!怒らないで!」

「よくもやってくれたわね?」

「・・・」


「卑怯者のアル君、覚悟しなさい!」

怒りに我を忘れ、俺が卑怯者になっている。


なんかどうしようもないから審判に助けを求める。


「すみません、何か怒っちゃってるんですけど」

指を差しアピールしても怒りの大魔神に審判もチビる。


「・・・」ガン見で口が痙攣けいれんしてる。


「お姉ちゃん!まだ開始されて無いよ!」

お姉ちゃんが剣持って俺を追い回す。


審判を盾にクルクル逃げ回る。


「アル君、待ちなさい!」

「待てって言っても怒って怖いもん!」

「卑怯者ー!」赤鬼が審判周りで剣を振り回す。


武舞台の姉弟の追いかけ合いに観衆が唖然あぜん・・・。


これ何とかしないと!赤耳がピクピクだしな。


「分ったよ!そっちに立ったらちゃんとする」


赤鬼がふーふーと荒い息で怒りながらあっちに歩いてノロノロ立った。剣がガクガク震えてるんだけど、それ力入り過ぎて無い?メチャ怖いんですけど・・・。もう縮歩は警戒されてる?不意打ちじゃないと通用しない、こんな大魔神どうすんの?コイツ地虫の縮地をスカしやがるからな。


これ初撃に凄いのが来そうだ。精神集中、良く視ろよ!見逃すな!受けきるぞ、怒って剣筋もブレる筈だ。力が入って遅くなる筈だ、隙を逃すなよ。理不尽に怒りやがって、逆にカウンター叩き込んでぶっ殺してやる!一回ぶっ飛ばされたからってあんなに怒りやがって、俺が毎日何度ぶっ飛ばされてると思ってんだ、許さん!


すでに5分過ぎてサドンデスになってる。もらったら終わりだぞ、返しの一撃必殺あるのみだ。クソエルフ思い知れ!


「始めぇ!」


途端に全速前進!のモリ娘。


リミッター外れてた。環状仕様やがな!ただの環状族違う!こいつはトリーズンのゼンちゃんや、ティラノやないけ!


リミッターカットの赤いピクピクMS-06Sは3倍速!


最初から受けが空ぶった。防げない、迫る刃筋が視えるだけだ。

受けをすり抜けて腰上から深く剣ですくい上げが迫る。俺は剣筋のベクトルと同じ方向に跳び全力回避。回避を追って模擬剣が伸び、そのまま芯に乗せられてアバラが何本も凄い音で折れて行く。真剣なら胴が離れてる。環状族だけにキッチリ真芯マシンでかっ飛ばしやがった。飛んでる間に3回斬られて空中でカクカクしたあと場外まで飛ばされた。俺は三連撃で意識を失った。


変異種、赤の勝ち名乗りを聞けなかった。


目覚めて膝に抱かれたお姉さんを視たら・・・。

場外飛ばされて二回バウンドした直後に待機してた3人のお姉さんが必死で魔力も尽きる大ヒールされて揺り起こされてた。


お姉ちゃんはどこ?と探すと赤い大魔神が武舞台で両手を突き上げウオー!と叫んでた。右手の剣を何度も突き上げる。


お前それ赤城のゴリさんぽいぞ!イヤ、感動のシーンは皆ゴリさんになるのかもしれん・・・。カッコ良く勝つんだもんな。



まったく俺見ねぇ、どんだけ逆上しとんじゃい!(笑)


スタンドが大歓声で地鳴りの様に鳴っている、6面スタンドの観衆と立ち見の全員が立ってスタンディングオベーションだ。貴賓席の辺境伯も立って興奮しながら拍手してくれてる。視たら大体の人が俺が飛ばされた後に斬られるところを眼で追えたみたいだ、飛ばされる俺の角度が凄い速度で変わってる。震えるわ、恐ろしい神速の三連撃・・・地獄絵図だ。


これは見ごたえある決勝戦だわ。


笑うしかねぇな。


少し歓声が止むまで回復士のお姉さんの膝に乗ってた。


・・・・


表彰式。


コルタ辺境伯の大会閉会の挨拶があった。


「今大会は卓越した武術を見せてもらった、この大会を毎年見に来る目の肥えた者も驚いたと思う。武術はこの様に練磨出来るとの見本であった。儂だけではなく騎士団も気合が入ったと思う。元は腕力の腕輪が縁で足を運んでくれた四峰の二人には感謝のあまりに言葉もない。あの戦いをどう賞賛しょうさんすればよいのだ、言葉にすれば陳腐ちんぷなものとなろう。この場で見た者のみが知る戦いだった。そして今一度、大会を盛り上げてくれた数多あまたの剣士に賞賛しょうさんを送ってやって欲しい」


もの凄い大歓声が起こった。



「大会結果を発表する。冒険者ギルドで申し込んだ二人の名は、冒険者の身分では表せぬ。ムン国の貴族名を持つ身分でたたえようぞ!」


「1位 四峰二門 剣嶺けんりょうアルム・ポポ」


「その武勇を讃えて腕力の腕輪(力+10)を与える」


凄い大歓声に包まれ辺境伯から一位のメダルを掛けてもらいアルムさんが輝いた。横の騎士団長が商品の腕輪を高々と上げて観衆に見せてから化粧箱を閉じて辺境伯から渡された。


「2位 四峰三門 剣戒けんかいアルベルト・タナウス」


「その武勇を讃えて精力の腕輪(生命+10)を与える」


俺も凄い歓声に包まれ二位のメダルを首から掛けてもらった。同じく腕輪ももらえたよ。わーい。


「3位以下は待て、後日騎士に相応しい賞品を渡す」


3位 第一騎士団 ショーン・リバイン。


4位 近衛騎士団 テネル・ロカウン。


5位 第三騎士団 エス・リウム。


名が呼ばれる度に大歓声に包まれ、剣術大会は閉幕した。


帰りに参加賞の銀貨5枚(4万円)もらって帰って来た。


帰りの門に殺到する余りに凄い人で大工さんもかがり火亭の家族もモリスさんの家族もどこに居るかは分かるけどもみくちゃで応援のお礼や挨拶どころではなかった(笑)



・・・・



その晩。


大工さん達が訪ねて来てモリスさん達が置いて行った大銀貨1枚とニコ村の青いミカンと伝言を届けてくれた。大会後にかがり火亭に寄ったら閉まっていたので大工さんの店に寄ったそうだ。


大儲けさせてもらったので馬と荷馬車を買うそうで、二頭立ての荷馬車を大工さんの所に注文して行ったそうだ。伝言はオークに追いつかれない荷馬車を注文して修理代を返さなかったらニコ村の人間は人でなしと思われる。だから修理代は受け取れないから返すだって(笑) 


大工さんは大工さんで、応援する俺達が勝つたびに奥さんがチューしてくれたと笑わせてくれた。配当金は奥さんに全部取られたそうだ。ホント笑える。


かがり火亭で宿泊客の大宴会が始まった。俺たちは宿泊費も宴会代も要らないそうだ。一緒の宿に泊まる人達が我が事の様に喜んでくれる。何度も何度も乾杯した。気分が良くて、本当に気分が良くて、ずっとチョレスを持って陽気な歌を皆に届けた。1位になったお姉ちゃんがずっと歌ってくれた。


その晩、隣のベッドでアルムさんが聞かせてくれた。

40年近く前、コルアーノの武術大会の決勝で負けたんだって、相手は王宮第一騎士団の団長(名誉伯爵4位)だった事。騎士の円熟した盾術に攻撃を封じ込まれ剣技が跳ね返された事。剣術に負けたんじゃないと言い聞かせる心が視えた。アルムさんは前衛軽戦職、盾など持ってない。


俺はその晩アルムさんの負けた話を初めて聞いた。

それが今って事は、今日やっと乗り越えたんだと思った。


アルムさん強いのに。

今はあんなに強くなってるのに。

忘れられない過去を乗り越えるのは難しいね。


盾術を凌駕りょうがする剣術を持っていれば40年前に勝っていた事をアルムさんは理解した。実力で負けていたと納得して未熟だった昔の自分と向き合ったから俺に話せたんだよ。



俺はベッドで寝ながら考え、何の気なしにアルムさんのステータスボードを注視した。俺の目の前で武術の神、ネフロー様の加護が浮き上がった。


大きな壁を乗り越えたアルムさんを祝福したのだろう。


人はそうやって強くなる。



・・・・



8月26日(風曜日)


翌朝。


加護が増えてるのに気が付いて機嫌の良いアルムさんと冒険号に行ってからキャンディルに跳んだ。


6日後に行われる結婚式の前後2日間は、サルーテの各領から来た執政官や祝いに駆けつけた貴族を招いて屋内での立食パーティー、晴れたら屋外のパーティーを開く。


今回は平民がいない。ロスレーンとキャンディルのメイドが全席付き添って一緒に焼いたり好きな飲み物を持って来たりするらしい。俺は結婚式に出席出来ないからさ、パーティー用の食材を持って行くと言ってあるのよ。


そんな訳でアルムさんとキラーバイソン、オーク、ヨージ鳥を多めに取って来た。7月2日の光曜日はお兄様の結婚祝賀でクランの焼肉大会を同日開催で企画している。うちのクランはもう外部PT込みで2900人を突破してる。イコアさんが肉に困るといけないので沢山取ってきた。例によってクランの分はギルドで解体してもらう。ロスレーン家の成婚パーティー分はそこまで要らないので一日掛けて二人で解体した。



実はお兄様、お姉様の祝いの品はだいぶ前から用意してた。剣術大会の賞品という形で+10の腕輪を見て欲を出した。自力で買ったり、自力で取った物なら胸を張って身近な人に魔法指輪や腕輪を渡せることに気が付いた。そこが出発点で静かに眠る遺品を世に出すなら、こういう方法ならアリ?と色々な言い訳を考えて心に踏ん切りを付ける事が出来た。


それは、持ち主が愛でた魔法指輪が形見という使われぬ置き物から解き放たれる言い訳だった。あなたの指輪が世に渡り、相応しい人の元で新たな歴史を作りますから見守って下さいね。と言う言い訳だ。


そんな誤魔化ごまかしでも、俺の心は軽くなった。どう考えても暗い倉庫の中で使われずに眠るよりマシなのだから。


晩にロスレーンに行くと婚礼1週間前の6月25日の光曜日には着くとレンツ様が言っていた通り、キャンディル家が総出(騎士団、執事とメイド込みで90名)で24日に着いていた。馬車12台、荷馬車9台(休憩時の馬用兵站1台含む)、騎士団40名の大名行列を視てあごが外れた。


キャンディルから交易路に出るまでは山間の道が多く、がけ崩れや、道の崩落(平地でも豪雨で橋が流される)などを考慮し婚礼前10日間の余裕を見て来たと言うが、こんな大名行列なら予定より2日遅れで着いただけで上出来だよ。


俺はロスレーン家に逗留とうりゅうするキャンディル家の人達にも顔を見せないよう、お爺様にお兄様とお姉様を呼んでもらって、お祝いの品を渡した。お父様、お母様にも見せたかったのだが母方の親族が逗留中で接客だった。


・力:強力きょうりきの指輪(+10)

グレンツお兄様の武官系恩寵Lv3から考えると+10は無茶苦茶ぶっ壊れ性能の指輪だ。仮に恩寵レベルが上がるまでに基礎数値の総量が25上がるとすれば力に振り分けられるのは平均値で+5だ。二回り以上の力の基礎数値は身体強化で乗算されて発揮される。その仕組みは冬の間に家族には教えてある。


※武力鍛錬によって上がる基礎数値は体力、力、器用、生命、敏捷の5つに振り分けられるとアルは考察している。


・知力:天才の指輪(+10)

同じ様にフラウお姉様の魔法系恩寵Lv3でも同じことだ、二回り上の魔法士の強力な魔法に変わると思う。


※魔法士の場合の基礎数値は魔力、器用、生命、知力、精神の5つに振り分けられるとアルは考察している。


二人とも凄く驚いた。3%や5%の魔力削減の属性指輪は自身の修めた属性を数多く具現化させる意味で実益とファッションを兼ねて貴族が作るのはあるが任意の基礎数値を+10伸ばすなんて魔法指輪は早々売って無いからだ。


指輪を見る爺ちゃんを視た。元は子爵家の長男で若い頃から質実剛健でやってきた人だ。戦場で+3や+5の指輪の値段自慢は聞いても、そんな物に頼ってたまるかと剣を振り、気持ちと技を修めて来た。今、伯爵家になり魔法袋や魔法指輪が手に入る地位に上がったのかと感慨無量かんがいむりょうに孫の手にある指輪を見てくれていた。


冒険者の伝手で大規模クランが深層ダンジョンから持って帰った希少な指輪を譲ってもらえたと三人に素直に言えた。こんな事で嘘なんか絶対にきたくないのだ。兄夫婦は一生成婚の思い出と共に家宝にしてくれると思う。


シュミッツとジャネットも基礎数値を上げる魔法の指輪は初めて見ると言うのでお兄様とお姉様がステータスを確認した後、皆で回して感嘆の言葉のオンパレードとなった(笑)


微笑んじゃったのはね、うちは魔法袋も持たない良くも悪くも子爵家の領主だったんだよ。そこまで贅沢な余裕や着飾る余裕が無かったのが良く分かったんだよ。


料理長のバルトンに食材を渡して帰った。

成婚のお祝いに来てくれた人には当然返礼品が返される。その中にナレスのブランデーを追加してもらった。地球の様に移動スピードが早い星では無い。戦後物が無かった日本の様にアメリカ製の何々と言うだけで皆が有り難がった時代と同じだ。隣国ナレスの高級ブランデー(飲めば貴族は察知する)を返礼に付けたらロスレーン家の株が上がるのだ(笑)


食材を渡すと言ったが肉以外は冒険号の自販機製だ。

ピリ辛香辛料と新しく仕入れた豆板醤。お土産でお客に渡すブランデーの瓶、パーティーのデザートに出すパンケーキセットのボタンを壊れるほど押しまくって来たのは言うまでも無い。


ボタン押す俺と自販機の口から取りだす係のアルムさん。ニウとコアが呆れて見守る中、大ウケで笑い転げて二人で出した。


それはボタン押す俺と、口から取りだしインベントリに仕舞うアルムさんの激闘。予備を入れて800人分にも及ぶ調味料やお客さんにお土産で渡すブランデーのボタンを連打して自販機の口に詰まらせたら負け、アルムさんの手が止まったら負けの真剣勝負だった。


ボタンを押すと2~3秒後に自販機の口から出るのを待っていたら空き時間が出来る。俺は並列思考と算術スキルを使って色んな種類のボタンを計算しながら連打する。流れる様に1秒以内で違う種類の生成物が違う自販機の口から出て来るのを両手で捌くアルムさんの激闘だ。


1秒に満たず出て来るそれを流れる様に両手で取りだせる者は、コルアーノでアルムさんしかいないと俺がたたえ、コルアーノ1位の称号を与えて俺が負けを認めた。




次回 284話  祝賀の焼肉大会

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