第282話  武術大会決勝



タッカート師匠に最後に贈って頂いた言葉。


「柔らかな剣の極意をつかめばとしや力に頼らずとも生きて行けます。アル様のとしかんがみれば、柔らかな剣は毒となる。春の芽吹きの青々とした季節に、紅葉しこれから枯れていく剣は毒。季節に合った青々と天に伸びる剣を意識しなされ。勢いを持ち勢力を誇り青さが匂い立つほどの躍動の剣を学びなされ。多分それは師匠のリード・オーバン男爵も過ごして大きくなった季節でもある。今の己に似合う剣を探しなされ」


アルは幽玄流免許皆伝を認められている。


タッカート師匠は経験の宝庫だった。一日に一時間の鍛錬でポロッと出る一言が金言だった。経験に裏打ちされ昇華された本質がポロッと出るのだ。


最後に言われた言葉は剣に生き人生と向き合うと、どの様に人生と剣の風情が変遷して行くのかを教える言葉だった。今の己に相応しい季節の剣をと大きく伸ばせ、それが今の俺に必要な剣との教えだった。


リード師匠の若き剣を餓狼がろうの剣と言わしめた言葉。それは他者の剣を否定する剣とも言った。それは己のかわききと怒りを体現し、剣の力をもってって相手を押しつぶす剣だった。


剛の剣である。


それが変わったから伸びたと言った。人の剣を受け入れたから登ったとタッカート師匠は言った。


柔の剣に変わったのだ。


それはタッカート師匠だから分かる事だった、経験が思わず口に出る瞬間なのだ。アルは視ている。己の剣に酔い、思うがままに剛剣を振るうタッカート師匠の若き姿。強さに溺れる弱き者は絶えず己の力を誇示し続ける、自分に強さを証明し続けて止まれないのだ。そしてその挙句に早かれ遅かれ己が滅びを引き寄せる。


幽玄流のステラ婆ちゃんのお父さんに出会い、弱いがために力に溺れる心を徹底的に叩きのめされた。何回死んだ、何回死んだ、こんな弱い奴は見た事無い、ホレまた死んだ!自我が破壊される程打ちすえられて、強さとは何だと問われ、さとされた。破滅へ向かう若者は己の弱さに気が付きそこで変わった。



剛を知剛の剣柔を知柔の剣相手を知利の剣り継ぎ目なく流れる水の剣天衣無縫の剣に至る。


よわい200歳を越えたと言われる四峰開祖の言葉だ。


アルはリード師匠の季節に合った青々と天に伸び大きく茂った剣を教わった。それは剛でありながらも柔を使い自由自在に振るう40歳の実り切った大きな剣だった。タッカート師匠の剣は実りの季節が過ぎ去り全ての剣を柔らかく包み込み無効化する円熟な剣だった。


そして最後の師匠(調子に乗るので口が裂けても言わない)、アルムさんの剣にことわりは無かった。自由奔放、打ちたい様に打つ剣術。それは型など無い剣だった。こう打ったらどうすんの?受けずに突かれたらどうすんの?という相手と楽しむ好奇心の剣。有利、不利、定石、定型のない剣、自由自在そのままの型だった。超スピードの剣筋に型が無い事、それは剣士の天敵、形の無い水の剣だった。


どんなにぶっ飛ばされても鍛錬を止めないのは考察だ。実戦で研究しているのだ。それどころか敏捷+10の指輪までアルムに贈りもっとやれと思っている。腕力の腕輪(力+10)を取れと言う。剣筋に定型のないスピードのある剣の怖さをアルは分かって受けている。アルの考察では殺し合いなら4~5回はアルムに完璧に勝てる。が所詮は初見殺しの剣でしかない。凌駕りょうがしなければ意味は無いと思っている。


アルが普通に模擬戦で視る一つの剣筋から繰り出される変化は普通は4つぐらいだ。タッカート師匠でも6。アルムの場合は10もある。普通はモーションのモでそれは3つの変化にせばまり、モーで2つに、モーショで1つに確定されモーションが完成するまでにアルは対応する。アルムの場合は多彩過ぎてモーションが終わった時点で剣筋を確定出来ずにぶっ飛ばされる。


スピードと剣筋の変化はそれほど怖いのだ。


師匠はスピードが鬼なのでアルムさんも見切られる。そんなスピードでフェイントだ、崩しだ、受けだ、蹴りだ、空いた左手の拳だと駆け引きでやられたら勝てない(笑) 視えても勝てない訳は変化は少なくても対応する前に打たれるからだ。


今、アルは三者三様の剣技を知り、数値や恩寵ではなくクロメトの技を磨きながら独自で行う魔力線の矯正を行っている。


子供の身体という身体的限界の立ち位置を知った上で、先の一歩を進んでいる。魔力線が示唆しさする身体強化の本質の扉を開ける一歩だった。


・・・・


アルは予選を一期一会の鍛錬の場にした。

じりにじった下半身の力を腰に溜め、踏み込む動作と共に上半身に移し、腕のひねりと回転力を乗せ手首の返しから指に乗って放たれるボール。剣も同じ様に溜めるのだ、じってじって溜めていた。爆発する瞬間までじる受け。


それは一種の境地だった。


見定めるまで動かない、力量が視えるまで動かない、5分過ぎてもその時が来るまで動かない。動いた時には勝っている。予選の途中で騎士団倒して上がってきた老練な傭兵と当たり、余りに深く入り込み過ぎて本気で突いてしまい、気が付けば一発K.Oだった。


1つの予選ブロック32人で辺境伯騎士団が8人もいる。騎士団に勝てたら冒険者や傭兵的には御の字だ。どこのブロックも準決勝に騎士団しかいねぇよ(笑) 13人が騎士団、一人の傭兵と俺とアルムさんで3人。16人が予選準決勝だった。


いびつ過ぎる。これは変だろ!と視た。


この大会すごくローカルでコルタ辺境伯領しか募集掛けて無かった。領のイベントで傭兵ギルドと冒険者ギルド、武術道場などに1カ月前から張り出されたチラシで知るだけだ。たまに逗留して知った腕自慢が出て来る感じだ。そりゃ領民からは騎士団のエリートを探す登竜門とか言われるよ。


傭兵の人は騎士団序列1位の人にやられていた。最初からこの傭兵の人が一番強いと、第一予選会場で潰されるようにすべて騎士団員との戦いが組まれていた。


俺たちは目にも掛けてもらって無かった(笑) 所詮は冒険者と思われてたんだよチクショウ!というかアルムさんに当たらない様にしてくれてありがとう!


アルムさんは予選決勝で3位の辺境伯領近衛騎士団員を空気も読まずに1分で下した。


俺は空気を読んで4位の辺境伯領第二騎士団と(5分の時間じっくり視た後)サドンデスでキッチリと打ち合って一本勝ちした。


本来なら4会場ですべて騎士団が勝ち、騎士団4人の決勝トーナメントとの思惑が吹っ飛んだ。部外者が二人も決勝トーナメントに進んだのだ。


決勝トーナメント(準決勝)


第一試合:第一会場VS第二会場。

第二試合:第三会場VS第四会場。


第一会場 1位第一騎士団、ショーン・リバイス

第二会場 2位冒険者、アルム・ポポ。

第三会場 2位近衛騎士団、テネル・ロカウン

第四会場 3位冒険者、アルベルト・タナウス。


※騎士団内、大会出場選考会順位


13時30分から準決勝(2戦)>5位決定戦(3戦)>3位決定戦>決勝の7戦。


お昼にアルムさんと一緒に露店を巡ろうと話してたら、かがり火亭の大将に人ゴミから名前を呼ばれた。お呼ばれすると大将と女将さん、息子兄弟とお嫁さんと子供達が敷物の上で料理を並べている。手作り弁当を食ってくれと勧められた。コルタ城塞内の運送屋の息子さんの荷馬車が2台増やせる程稼いだという。


気になって視たら荷馬車は大銀貨8枚(60万円)するみたい。今の中古の荷馬車に新しい荷馬車を足して運送屋を大きくするって大喜び(笑)


最初に半銀貨1枚(4000円)ずつ二人の初戦に賭けて、勝った分を3戦目まで全額、オッズが3倍程に落ちてからは勝金の半分ずつ賭けて行ったという。そのまま俺とアルムさんの予選、10戦勝ったらそうなったらしい。途中で合流した息子さん達も一緒に賭けて馬を買うほど大儲けと言う。わーい。


もうオッズはアルムさんが1.8倍や俺が2倍まで落ちたから博打はしないと言う。普通は倍率が高ければ高いほど博打だよね?と言うと皆が笑って楽しそう。楽しんだお金で荷馬車が買えたら万々歳だ。


大将が作ったおせち料理を思わせる仕出し弁当を食べながら話に興じる。アルムさんはお弁当が綺麗でオカズを迷いながら食べている。


今回みたいに準決勝に冒険者が2人も残るのは見た事無いと言う。一人傭兵や冒険者が入るのはたまに有るらしい。周りに通り掛かる人が準決勝もまだなのにおめでとう、おめでとうと祝福してくれる。その祝福を聞いて女将さんから4位入賞圏内だから騎士団に誘われるとか、アルムさんはお嫁さんより先にお貴族様になっちゃうねと言われる。あ!そういう可能性もあるな。


アルムさんとコソコソと打ち合わせした。誰もが納得して家臣にならず商品を快く受け取れそうな物語。隠れて指輪を全部外し(身分の指輪、瞬足の指輪、剛力の指輪)シェルのチョーカーに預かってもらって胸元に隠した。


第一予選会場は騎士団が総出でスタンドの位置を修正してる。人力で100人ほど集まって身体強化でスタンドを運んでたの。13時になると用意の出来た決勝トーナメントのスタンドに観客を入れ始めた。


そんなのを見ながらもう時間。大将と女将さん家族にお礼を言って、卵のチーズ出汁巻きを最後に一本食べて20分前に決勝会場の天幕前に集まった。


スタンドで6角形に会場を囲み、スタンド3m下に露店が並んでそこから20m程の武舞台の会場までが立ち見席になっている。会場周りの4mは場外ゾーンで実質地べたに座って見る場所が立見席だ。俺たちは集合の天幕前の長椅子に仲良く座って待っていたら俺たちは兄弟じゃないのか?というヒソヒソ話が聞こえて来る。まぁ母違いの兄弟に扮してるので間違いは無い。



第一試合準決勝の二人の名が呼ばれた。

第一騎士団、ショーン・リバイスと2位冒険者、アルム・ポポ。


アルムさんには1分で勝つと騎士団が追ってくると釘を刺してある。頼むから勝ってもへへん!とやらないでとお願いした。覚えてるかどうかは知らん。


お互いに打っては離れ、打っては離れしながら白熱の剣技でギャラリーを沸かせたあとアルムさんが勝った。次の試合で天幕前で待つ俺にアル君ヤッター!と飛び跳ねて剣を上げたが喧噪けんそうで言葉は消えた。その喜び方は合格だった。


アルムさんが帰って来るなりすぐ俺の番。剣と盾を選んで執政官に見せるとオッズの紹介は終わっていた。



準決勝の二人の名前が呼ばれた。

近衛騎士団、テネル・ロカウンと3位冒険者、アルベルト・タナウス。


「両者準備はよいな?」 

お互いに視線で頷く。


「始めぇ!」


俺は何も変わらない、全く同じスタイルで亀のように固まる。そうしたらお互いに睨み合いになっちゃった。騎士団が一人もいない決勝戦など領主に見せられないと、とんでもない気合とプレッシャーで迂闊うかつに攻められなくなっていた。


クロメト流の攻守バランスってのは攻め、守れって事で攻守のバランスが良いという直接的な意味ではない。アル自身が剛剣でぶった斬る爽快感を望んでないから地味に守るだけだ。


俺は睨み合って動かない試合に一転攻めに出た。力の入らないいつでも逃げられる虚実の攻めだ。虚の攻めで相手の出方や狙いを知り、虚に紛れて実をうかがう。虚も本気で飛びのく程も相手のテネルさんは固い。浅く打ち合って腰を引き逃げる相手を追っていく。虚の打ち込みで逃げてくれるから楽だ。たちまち場外まで詰まる。


あとが無いからここで来る。精魂込めた気合の打ち込み。ホラ来た!(笑) そんなのは馬鹿正直で力任せに弾き飛ばす一か八かの剛剣なんだよ。待ち受けている者には通用しない、半身でさばいて柔らかく円盾の傾斜で受け流し、流され崩れる体制を確認しながらそのまま首筋を軽く打つ。1本目。


すぐに立ち上がってお互いに剣を合わせる。


「始めぇ!」

 

一本取られて吹っ切れたのか途端に持ち味の猛攻が来た。冷静に円盾と剣でさばいて行く、相手が驚く。その猛攻で下がる相手しか知らないからだ。アルは許す限り視ながら近付いた。近付かれたら剣を振るスペースが無くなるので自然に下がる。相手は猛攻を繰り出して俺を止めなければバッシュの距離になってしまう。下がりながらの突きの猛攻VS近付きながらのバッシュのプレッシャー。相手の上体が起きてバッシュで俺を跳ね飛ばそうと剣を引いた刹那せつなアルの剣がバッシュ放つために力を込めた盾をすり抜け胸に突きを入れた。 2本目。


2本目に相手は屑折くずおれた。うちの爺ちゃん並みの力とスピード、それを妖精の靴でブーストの身体強化Lv6だ、相手も身体強化で守っても食らえばとんでもない破壊力で驚くと思う。


勝者の俺の名前が呼ばれるとすぐに回復士がヒールに来た。


実は試合が終わるまで戦いに入り込んでいて大歓声が全く耳に入って来なかった。勝ち名乗りを受け振り向いてアルムさんを視た瞬間に耳がおかしくなる程の割れんばかりの大歓声が聞こえて来た(笑)



来たぞ!アルムさんとの決勝戦。



決勝までの間をアルムさん対策についやそうと思ったら、俺とアルムさんは辺境伯の執事長に呼ばれてしまった。やっぱビンゴだった。


特設に作られたひと際高い観戦席の辺境伯の席に呼ばれた。


不躾ぶしつけで済まぬな、儂はコルタの領主じゃ、少々聞きたいことがある」


「なんでございましょう?」


「我が騎士団を下す武術は真に見事だった、お主ら程の技量を持った者が何故この様な領の小さな大会に出た?」


「あの腕輪が欲しかったんだよ!」


それだけ言えと打ち合わせで念を押してある。後は俺の並列思考II Lv4と虚言Lv6が火を噴くぜ!


「お姉ちゃん!お貴族様にしゃべっちゃダメ!教皇様はお優しいから気にしないと許してくれただけだよ。お貴族様には敬語で喋るんだよ!」ポカポカとお姉ちゃんを叩く。


「おぉ!よいよい、気にせずとも良い!」

思わず仲裁に入ってくれるコルタ辺境伯。


「失礼しました、姉弟で剣しかやってないので・・・」


「それが普通じゃ、気にするでない。貴族の儀礼や作法が必要な者はわずかじゃ、皆そのわずかと関わって敬語を勉強する。村や街から出ぬ者には不要じゃ(笑)」


「ありがとうございます」

辺境伯ってやっぱ武官系?お爺様や大叔父様ミウム伯と同じ匂いだ。


「して、腕輪が欲しいと言ったな?」


「それはお姉ちゃんが体が小さく力のない僕のために腕力の腕輪を取るとギルドの募集を見て応募したのです」


「は?お主の為にか?」


「すごい腕輪なのでお姉ちゃんが僕に取ってあげると」


「・・・腕輪か・・・」


「はい、一昨日おととい、オークに襲われてた村人と大工さんを助けてコルタのギルドにオークを納めた時に募集の張り紙を見たのです」


「ほう、手間を掛けたの、ご苦労じゃ」

「ありがとうございます」


「騎士団を打ち負かすためでは無いのだの?相違ないな?」

「腕輪が欲しい一心でした」


「・・・」

理由が欲しいだろうなぁ・・・。


「あ!これをどうぞ、身分証です」


「お姉ちゃんも出してよ!」アルムさんをつつく。


四峰 ラナン流 二門 剣嶺 《けんりょう》 アルム・ポポ。


四峰 クロメト流 三門 剣戒けんかいアルベルト・タナウス。


「な!ムンの四峰では無いか!こんな所で何をやっておる?」


「四峰のお山で他国からスカウトされ、他の大陸に渡る旅の途中でたまたまオークを狩り、腕輪に魅せられ出場させて頂きました。これが今から行く国の身分証でございます」


「ホラ!お姉ちゃんも領主様に見せなきゃ!」


神教国 教皇護衛騎士

武官1位 アルム・ポポ


神教国 七星騎士団 第二騎士団 

武官8位 アルベルト・タナウス


二人で魔術認証紋を浮かび上がらせる。


「え!・・・あー!なんだこれは?」


「お姉ちゃんの武術を教皇様が非常に気に入られ、女のために騎士団には入れられないと、教皇様の側付きの護衛騎士に迎えられました。僕は三門の剣戒けんかいでしたが武官8位、第二騎士団に叙爵じょしゃくされ教皇様に名字を頂きました。姉弟揃きょうだいそろって首都の騎士団に向かってます」


「なるほど、良く分かった。エネイ王都の騎士団長に四峰の手の者が数人おるわ。ムンの四峰から他国の騎士団に引っ張られるとはレベルが違う訳じゃ!良く分かった。表彰の儀にお主らの身分を明かしても良いか?このままでは騎士団長の面子めんつも丸つぶれじゃ、そなたたちを召し抱えて収めようとも思ったが、本当の事を話せば皆納得するじゃろ」


自分のメンツじゃ無かった。部下を送り出した団長さんのメンツを守るためだった。領も民に不甲斐ない騎士団と思われたら大ダメージだ。


「よろしくお願いいたします」


「そうじゃ!決勝戦前に儂が語れば剣聖輩出はいしゅつの四峰の技を皆が目に焼き付けるであろう。大会決勝を締める良き趣向となる。四峰の武技、楽しみにしておるぞ」


「はい!」


「そろそろ、お時間が迫っております」

「それでは、儂も用意しようかの」


・・・・


拡声魔法を掛けてもらったコルタ辺境伯が護衛に付き添われ武舞台に上がった。普段見慣れぬ光景に辺りがザワザワと静かになっていった。


「本年の剣術大会に集まった者たちよ、今から始まる決勝は例年の大会とは少し違う。あの剣聖を輩出するムン国の四峰からたまたまコルタ領を訪れた剣士が決勝の二人じゃ。この二人は姉弟での、一昨日領民を救うためにオークを3匹倒してくれたそうじゃ。そのオークをギルドに納めに行き今日の剣術大会を知り、剣の達人が領の小さな大会とも知らず出てしまった。


剣の達人の姉弟が何故出てしまったか教えてやろう。


弟は小さい、そこにおるが14歳だそうじゃ。姉が小さく力のない弟の為に1位賞品の腕力の腕輪がどうしても欲しくてな。小さな領の大会とも知らずに大喜びで冒険者ギルドで申し込んだそうじゃ。


大会に剣の達人の二人を呼び込んだのは良い賞品を出した儂のせいじゃった。わっはっはっは(笑)」


領民も笑う。


「騎士団の者よ、剣の達人の二人に負けてもにも恥じる事はない、外には上がおることを知りこれからも励むが良い。後日例年通りの昇位と褒美ほうびを儂が約束する」


領民がまばらに拍手している。


「驚くでないぞ、この二人はムン国四峰から他の大陸の国にスカウトされ、なんとの護衛という側近を任される1位叙爵の護衛騎士の姉。そこな14歳の弟は第二騎士団の8位に叙爵され、他の大陸に赴任するためにムン国からエネイを通り旅をしておった。うちの騎士団もやられる訳よ。


皆が知るかは分からぬが、我が国の王宮騎士団にも数人の四峰の騎士団長がおる、四峰出身者は全て騎士団長だ。うちの騎士団の若手のホープが勝てる訳もない。つまりそれ程の武を誇る者なのじゃ。噂に聞く剣聖輩出の四峰の武技が目の前で見られるぞ。今日集まった者は果報者が揃っておるな、この決勝を目に焼き付けよ!」


「辺境伯様ー!」

「なんじゃー?」

「そのお二人にオークから救って頂いたニコの雑貨屋です!」

立見席から父娘が手を振る。


「おう!そなたらか(笑)」


「このコルタの大工も救って頂きました!」

スタンドで大工が二人手を振る。


「ほう!そなたらもか(笑)」


「聞いたな?そういう訳じゃ、決勝を始めるぞ!」


たちまちすごい歓声が響き渡った。



・・・・



俺は並列思考で聞きながら、アルムさんと打ち合わせだ。もう何年も朝から打ち合う二人だ、お互いの動きも早さも分かっている。4分間俺が対応できる打ち合いの後、お互いが本気でやることにした。


「手加減しないからね(笑)」

「望むところだ!(笑)」

「お姉ちゃんが勝たないとダメじゃない(笑)」

「僕が勝ってお姉ちゃんに腕輪あげるね(笑)」

「言ったわね?(笑)」


優しく笑うが俺は視ている。

4分も手加減で我慢するから大観衆の前で格好良く勝つらしい。具体的な勝ち方が俺にカッコよく勝つとか意味分らん所がこいつらしい(笑)


こいつ大観衆の前で一回ぶっ飛ばしたる!

俺もまぶしい笑顔で微笑ほほえむ。


辺境伯の前振りは終わった。


もの凄い歓声が響き渡る中、歓声を割って呼び出しが掛かる。


決勝戦に二人の名前が読み上げられた。


2位冒険者、アルム・ポポと3位冒険者、アルベルト・タナウス。


俺達はゆっくりと武舞台に上がった。




次回 283話  真剣勝負

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