第279話  オークと冒険者と十四歳



エネイ-エスジウ周辺地図。

https://www.pixiv.net/artworks/103243990


コルタの街はエネイ王国とエスジウ王国の国境線にある。コルタの街から南(右)に行くとロフトン王国、北(左)に行くとエスジウ王国、共にパリス教国と国境を接する国となる。


山から半分程顔を出したコルタの街は見事な城塞都市だった。


二重に囲んだ高い城壁は最上部が回廊となった上等な要塞だ。ここより国境線を越えた東の国は正直言って武力国家でマジ危ない国ばっかなの。


その名前は俺にゆかりの深い国なんだよ。


先住民も密林の部族も何もかも兵力にする人口最高峰ハムナイ国。勝つなら何でもやる危ないアドワ王国。泣く子も黙る富国強兵ダイロン公国。そしてこれから向かうプライド高く超強気外交で二面戦争もやるエスジウ王国。この四国は古くからの因縁らしく頻繁ひんぱんに戦争やる怖い国。南の中央大陸はこの四国が切磋琢磨リーグ戦して群を抜いた兵力を持つ。


国境で接するエネイだってそんなヒャッハーな国に攻められたら困るからこんな城塞持ってるんだよ。


まぁ、ハムナイで誘拐を画策した侯爵様や死兵操って襲って来たアドワ。タクサルさんがチビったダイロン公国。そんな俺にもなんかしら因縁あるのよ。タクサルめ!1年半も音沙汰無しでなにやってんだ。(半年ぶりに思い出して何言ってる!)


あと5km程になって、少し見上げる程の丘を越えて大きな尖塔がニョキニョキ立つコルタが全景に見えて来た。丘に向かって坂だから旅人も道で休憩してたり、馬を休ませたりする姿がチラホラと過ぎて行く。色々検索するとコルタの街より、コルタ城塞って呼ばれてた。


エスジウも国境にこんな山にそびえる要塞が有ったら攻めるの嫌になるだろうな。まぁ、そう思わせるためにコルタ辺境伯がいるんだろうけど。


コルタに向かう馬車をやりすごし、雑木林に隠れて幌馬車を仕舞いアルムさんと残り5kmを歩き出した。300m程歩くと通り掛かった荷馬車が乗せてくれた。コルタの大工さん二人で村の風車を直して来たって。最近エネイの特産で仕入れたパインジュースばかり飲んでいるのを皆に出す。風車で連想したを出して大工さんと一緒に食べながら進む。コルタまでの運賃だよ。


「二人共冒険者なんだろ?」

「そうですよ」


「最近オークやゴブリンが良く出るんだよ」

「まぁ、森と山があればねぇ(笑)」

「そうじゃねぇ、最近増えたのか良く出るんだよ」


検索したら普通に道沿いの森にいた(笑)


「あそこにコルタ城塞あるのに?」

「丘で近くに見えるだけだ、まだ相当あるぞ(笑)」


坂のアップダウンでスピード落ちるしな。


「へー!出たらやっつけますから(笑)」

「頼むぜ!行きもチラッと見たんだよ」

「それで乗せてくれたの?(笑)」


「オークが出たらたまらねぇし(笑)」

「そうだよ、立派な剣を下げてるしな(笑)」


二人共すごく正直だった。


「分った!任せてね!」

「綺麗なお姉ちゃんは男に気を付けなよ(笑)」


アルムさんの鼻が高くなった。


「お姉ちゃん、分かった?」

「はーい、気を付けるー!」


フラグっぽいので先に言っておく。

(領主に追われるとか嫌だからね!)

(分かってるわよ!)


言ってる間に荷馬車が三匹のオークに襲われながらこっちに猛スピードで走って来る。マジか!見るなり荷馬車から飛び降りて対向する荷馬車をやり過ごしすれ違いざまに・・・あ!手前でやられた。


荷馬車に追い付いた棍棒持ったオークに車輪壊された!後ろで追って来る二匹目、三匹目が剣持ってる。10m間隔だな。


俺の目と鼻の先で荷馬車の車輪が破壊されて傾いた。すれ違えなかった、カッコ悪い! 傾いて止まった荷馬車でおっちゃんとお姉ちゃんの顔が絶望に歪んでる。馬が荷馬車に引っ張られてヒヒーンと驚いて棹立さおだちだ。


襲われる寸前、縮地で一閃!御者席のおっちゃんに棍棒持って飛び掛かるオークの首をね飛ばしたら御者のおっちゃんの肩に当たって、お姉さんの膝の上に血を噴き出しながら転がった。二匹目のオークはアルムさんが首を飛ばし、三匹目の首は俺が斬り飛ばした。


後ろを振り返ったら、アルムさんがお姉ちゃんにクリーンを掛けている。飛んだ首から噴き出す血を浴びてお姉ちゃんは御者席に倒れてノビている。


お姉ちゃんに首が当たった?大丈夫?怪我したらヒール掛けるよな?と気にしながらオークを拾った。


大工さん二人は、自分の方に向かって来る荷馬車とオーク見て固まって止まってた。今のは怖いわな、荷馬車がすれ違ってたらオーク三匹のMPKなすり付けになってたもん。


おっちゃんも揺り起こされたお姉さんも間一髪助かってアウアウと震えて言葉にならない(笑)


どうよ?と微笑んで大工さんの所に帰る。


「二人共すごいな!」

「どんだけ強いんだよ(笑)」

「任してって言ったでしょ(笑)」


「あの荷馬車の車輪って大工さん治せます?」

「そりゃ直せるが、ここじゃ無理だぞ」


「おっちゃーん!この人たち大工さんなんだけどコルタなら荷馬車直せるって。今晩泊るお金持ってる?」

少し離れた荷馬車のおっちゃんに叫ぶ。


おっちゃんが傾いてる荷馬車の御者席からソロソロとゆっくり降りて、こちらに歩きながら言う。


「荷馬車の修理代までは持ってないですー」


「高いの?車輪?」

「大銀貨一枚位かなぁ?(8万円)」

「新品の丸ごと交換だぞ、それで済むか?」

「あれから助かったと思ったら大銀貨一枚だろ(笑)」


「まぁな。キリもいいしな(笑)」

視たら大銀貨1.3枚かなと思ってた。(10万円)


「そんじゃ、直しちゃおうよ。オーク売れば出るよ」

「え?」

「直せるって言ったじゃない(笑)」

「俺達が言っちゃ悪いが、いいのかい?」


「おじさんとお姉ちゃん、馬車直るみたいだからコルタに行こうよ、泊まるお金は持ってるよね?」


「助けて頂いたばかりか、馬車の修理までして下さるとは何とお礼を言って良いやら、まだ生きているのが不思議なくらいで・・・」


「いいのいいの、オーク三匹もあるし(笑)」

「大工さん、お客さんだから二人も乗せてあげて」

「あぁ、構わねぇ。お前さん達も乗りな」

「お願いします」


荷馬車に荷物も沢山積んでるしインベントリに仕舞ってやった。


「お!」

「なんだ?」

「マジックバッグですよ(笑)」嘘である。

「え!俺初めて見た!」


「私たち四峰出身なんです、四峰分かります?」

「四峰!剣聖を出すところだろ?」

「話に聞くが凄かったな(笑)」


六人になった荷馬車と馬一匹がコルタ城塞に向かう。


「本当にありがとうございました。私がモリス、娘がマーリンと言います、ニコ村で農業と日用品の店をしております」


「お!ニコかい!隣じゃねーか(笑)」

「ご縁ですねぇ」


兼業農家初めて見た。視たら家族七人で回してた。


「ギリギリで間に合いましたけどね(笑)」


「仕入れでお金を使って来た所で。修繕代まで貸して頂き感謝します、明日無事帰れるのが嘘みたいです」


「襲ってきたオーク売るだけですよ、オークに壊されたんだからオークに体で払ってもらうだけです(笑)」


「本当に申し訳ない。ありがとうございます」


「いえいえ、それより爆走ばくそうしてましたね(笑)」


「一匹目を見た瞬間にスピード上げました」

「それで一匹目はギリギリだったの?」

「そうです、一匹目は横をすり抜けたんです」

「すごい!(笑)」


「オークが走って来るのも怖ぇなぁ(笑)」

「俺、頭が真っ白になって動けなかった」

「俺もだよ!目が釘付けで固まった(笑)」


「熊が二足で走って来ても怖いですよ(笑)」

「熊は四足でもっと速ぇよ!(笑)」

「そりゃ、熊獣人だろ!(笑)」


「あ!分かってもらえた(笑)」


ALL「(笑)」


・・・・


コルタ城塞に付いたのは日の入りギリギリ。日が沈む前に並べば門番が最後尾まで入れてくれる。俺たちのあとに三組並んだが少し遅れて着いた四組目はアウトだった。


俺達は四峰の身分証で入領税無し、大工さん達はコルタの住民なので無し、おっちゃんと娘さんは朝にコルタの入領税払った証明書持ってて五日間の滞在ならやっぱ無し。


そのまま日の暮れた城塞都市を大工さんの工房まで行く。工房に荷馬車を預けて、四人でコルタの冒険者ギルドに行き、討伐依頼と解体依頼を申請した。解体場所で預けると明日の朝にはカウンターで買い取り額が出るとの事で丁度良い。


そのまま評判のいい宿の赤旗亭を聞いて向かうと四人は無理と言われて、検索した。ビンゴ!四人空いてる所あった


「こっちに見たなぁ・・・」

(お前そっち行ってないだろ)


看板に大きく冒険者の宿と書いてある。そのままかい!と心で突っ込んだら検索した通りのと看板の隅に小さく書いてた。なぜに大きく冒険者の宿と書かれているか視たら、飯にボリュームがあって服が汚くても泊まれて安いよ!という意味を表してた。


正直冒険者とはその通りだ。

冒険者って毎日水浴びするんだけど、水では毛穴が開かないからどうしても毛穴が汚れて黒っぽいの。山や大森林歩くでしょ?布は毛羽立って毛玉が出来て、皮素材の防具も雨でゴワゴワ。見た目が悪いのは山賊風か手斧下げたバイキングに見える。


女の人は辻クリーンやってる魔法士にお金払って水浴びして綺麗にしてる分、稼げるPTにしか入らない。うちのクランも女性PTが多いのは堅実な依頼で稼ぐのが多い。男性PTがよくやる、大物狙いでその日暮らし的な空振りが嫌なんじゃないかと思ってる。


もう二十時過ぎなのでそのまま宿に入った。

一階が食堂になってるのは何処の宿も同じ、ランチもやる大衆食堂だからだ。


アルムさんとマーリンお姉ちゃん見て、エールの入ったアホが口笛鳴らす。こっち来ねぇかーと大声で叫ばれる(笑) ガラの悪い冒険者が集う宿・・・テンプレだ。国境の城塞都市だしな、メルデスも一緒だわ。よくアルムさんがギルドでぶっ飛ばしてた(笑)


キッチリ二人ずつで部屋が取れて、三十分したら食事が出来てると言うので桶に水を汲みに行った。例によってハウスに帰ってクリーン掛けてザパーンと入れば終了の風呂。アルムさんにタッチして先に帰ると部屋で身体強化の鍛錬。


「アル君!ご飯だよー。行こう!」

「あ!来た?、うん行こう!」


夕食の出来上がりを測ったような時間だった。


「モリスさーん、夕食行こう!」

「はーい」マーリンさんが中で答える。

視たらモリスさんが慌てて服を着てた。行水だった。


「ホラ四人降りて来たよ。さっさと机空けな!」

「姉ちゃんは俺の膝で食うんだよ(笑)」

「俺の横で食うんだよ!おめえの膝じゃねぇ」


ヨッパの喧騒がすごい(笑)


「何言ってんだよ!ずんだれが!」

※だらしない野郎


女将さんが長い菜箸さいばしで冒険者の頭を叩きまわって席を空けてくれた(笑)


「あんた達!ここが空いたからね、ここで食べな!」


机を追い出された冒険者が悪態をく。


「俺達だって客じゃねぇのか!(笑)」

「あんたらはを食い終わった客さ(笑)」


席に向かうと近くの酔っ払いがチョッカイ掛ける。


アルムさんが尻を触られバシーンとはたく。

マーリンさんが後ろからヨッパに抱き付かれる。


俺の頭に血が上った。


「何やってくれてんだ!クソ冒険者」

「おー!オチビが怒ったぞー!」


「おー!オチビー!やったれ!(笑)」

「オチビは怖ぇぞ!今のうちに逃げろ!(笑)」


オチビの大合唱になってしまった。


「あんた達、うるさいねぇ!」

女将さんが菜箸でアホ共を叩き回る。


「ほれ、バカは相手にしちゃダメだよ、早くお食べ」


女将さんが俺を守ってくれた。菜箸で酔っ払いをまだ叩き回っている。酔っ払いが痛い痛いと大笑いで逃げ回る。


クソッタレ。プルプルしながら席に座る。


「何だよ!面白くねぇ、口だけのオチビだな」

「オチビは姉ちゃんのオマケだからな」

「オチビは俺の女を取るなって怒ってんだぞ(笑)」


お前は既に死んでいる。いっちゃいけねぇ事言ったな。誰が口だけのオチビだ。アルムさんがどうすんの?と俺を見る。見なくていいよ。やるに決まってんだろ、俺だってそこまで言われたらあんたと一緒でキレるんだよ!


席を立って言った奴の前に行った。


「おー!オチビが来やがったぞ!(笑)」

「誰が口だけだ?」威圧で凄む。

「お前のこったよ、オチビ!」

「お前の事だろ!」


左手で掴み上げてボディーに一発!

ドボッ!


から、ドアを開けて外に蹴り飛ばした。


「おめえも言ってたな?誰がオマケだ!」

今の肉体言語に驚いて口が聞けない。


有無を言わさず外に引きずり出して一発KOしておいた。


「女将さん、ゴメンね?バカがうるさくて。僕のお姉ちゃん綺麗だからさ、何処どこでもこうなんだよ。調子こいてたら誰でもぶっ飛ばすから言ってね」


女将さんを見ずに食堂を見渡して言った。


ALL「・・・」シーン。


とても静かになった中、四人で食事してる間に酔っ払いたちは部屋に帰って行った。アルムさんが思い出し笑いでプと噴く。


「やめてよ!お姉ちゃん、悪かったよゴメン」

「いいのよ!嬉しかったわ(笑)」


「今日のオークも冒険者も凄いですね?」

「十四歳におチビちゃんはダメだよね?」


ALL「え?」モリスさんもマーリンさんも固まる。


女将さんと机を片付ける大将までギョッと俺を見た。


「・・・」何歳と思ってたのか視て俺が凍りついた。


気にしてる背でオチビと言われて無かった。その齢に見られていた俺はまさしくオチビちゃんだった。ガーン!


外から帰って来ないノビた冒険者を大将と女将さんが揺り起こしてる、宿泊客だし悪い事した。地面にはレインボーだ。夕飯食い終わったのでクリーン掛けてヒールしてパンパン頬をはたいたら起きた。


起きた二人に言った。


「おっちゃん達あんま飲まない方がいいよ。酔った口で破滅を呼び寄せるよ。今まで運が良かっただけで変なのに絡むと死ぬよ。勉強出来て良かったねぇ(笑)」


その場の者は宿に入る子供を見送った。


(おぃ、十四歳って言ってたぞ)



聞こえてんだよ!大将!




次回 280話 お姉ちゃんを取らないで

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               思預しよ

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