第264話  子供道場破り


1月25日。


教室でリズを視る。

魔力量については何も考えや悩みは無い。初歩の魔法では魔力関係無いわな(笑) 魔力充填の指輪は今渡さなくても良い。


リズが日刊情報誌をメイドに頼むようになっていた。聞くとイコアさんの人気が上がってるらしい(笑) まぁ、この人もセレブだし、街の気になる話題は好きだろうしな。


教室やって一年か。練習したら字も綺麗になるもんだよな。流れるような字をスラスラと書ける様になっていた。


昨日はお爺様達が王都コルアノーブルに出発した。今年は変則的な王都行きでお爺様夫婦は早く帰り、次にお兄様、お父様とお母様と帰って来る。ロスレーン家は副執事長のモースが仕切り、建設準備の進むサルーテ領の指揮者にもなる。今回は相互通信機を持って家族が出てるから、重要な決定はお爺様に聞けるから気も楽だろう。


お爺様が早く帰るのはグレンツお兄様の契約内容をロスレーンで聞き、資材の量や人足の人数予測をサルーテに差配するためだ。サルーテまでは馬で一日の距離となる。



・・・・



シュウ様の一族は剣で身を立てる国の有名な剣の一族だ。ムン国は貧しいから子供から大人まで最初は剣で身を立てようとする。夢破れた者が村に引っ込み農民やったり、商売をやるから国中の者が剣を使う者ばかりだ。


実は行って視て来たの。

砂埃すなぼこりと岩の国だ。高地に有るから大きな樹が生えない。街の朝はラジオ体操代わりに集団で剣舞を広場でやっている。ムン国は剣の国なのだ。


ただ、民の剣に掛ける情熱が凄すぎて、俺は引いて帰って来た。この剣聖様の剣術道場に入ったら片手間で行うメルデス、タナウス、ロスレーンの用事を許してもらえないのが分かった。剣の教えを乞うなら全力で行かないとダメだ、剣に己を賭ける者が修行するそれ程の場所。


そうなると身体が空くのがお兄様の結婚式以後、6か月以上も先になるからそれで悩むのだ。シュウ様の遺品を俺が預かっている、早く返してあげたい。イヤ、返すべきなのだ。


ただ、返しちゃうと6か月後に手ぶらで行って、剣を教えてくれと言ってもダメな気がする。弟子入りするならシュウ様の遺品と交換条件なら入れてくれそうと打算がある。ホント俺って汚い。交換条件を出さなくてもいいが、遺品を持って来た俺に感謝して機嫌が良い時なら弟子にしてくれそうじゃない?(笑)


だって、全寮制みたいな房と呼ばれる宿舎に寄宿して剣を磨く登竜門の様な施設なんだよ。通いとか用事で道場を抜けさせてくれる程甘くない。


余りにも打算が過ぎる自分に自己嫌悪でもだえる。神の御子が汚すぎ。でも折角シュウ様が自分の宝剣持って行って剣を修めよって言ってくれたんだよ。宝剣の渡し方間違えて修められなかったらどうすんのよ。


そんな感じでウゴウゴと悩んで過ごしている。


(アル様?)

(ん?)

(6か月悩みますよ、ソレ)

(うん、そうだよ。分かってるよ!)

(宝剣返すと楽ですよ)

(返すとなぁ、剣聖の剣術がさぁ)

(だから、終わらないです(笑))


(6か月悩むの嫌だなぁ。良心が耐えられない(笑))


(返しましょう、荒神の事が解っただけ得です)


(・・・)

(得じゃ無かったです?)

(そりゃ得だったよ(笑))

(それじゃ・・・)

(分った、返す!でも正直に交換条件付ける!)

(え?)


(そのうちに剣術教えてね?ってお願いする)

(アル様!(笑))


(僕の性格的にチャンスは逃せないし、悩むなら隠し事無しに正直に言う!返した時に言ってダメなら縁が無かったと諦める)


(それなら悩みませんね)

(悩まないけどダメだったら後悔しそう(笑))


(アル様!(笑))


(だって目に見える所に落ちてたら拾いたいじゃん(笑))

(・・・)


(ゴメン!そういうの全力で拾いたいの(笑))

(・・・)


(分かったよ!そういう事言わないよ)

(良かったですねぇ、6か月悩まずに済んで)

(悩む代わりに後悔するのよ)

(アル様!(笑))


(もういいや、僕の小ささ自慢みたいに思えて来た)


(アル様は大きいですよ)

(ありがとう、行くか!)

(はい)


でも、黙って転んでなるものかと足掻あがく、俺だって黙って悩んでた訳じゃない。交渉は落としどころをわきまえてお互いに押し合った後にお互いに一歩引いたところに落とすのよ。パンケーキ喫茶とおにぎりと一緒だ、やることやらずに簡単に諦められるか。どうせダメ元だクソッタレ、床を転げ回って泣き叫んでヤダヤダ言って駄々捏だだこねてやる!


アルは簡単に言っている。

中身は24歳になった若者が簡単に言う。


明の簡単に諦めない粘り強さは毎日小さく積み上げる事でつちかわれていた。


一夕一朝でモノにならないからダメだと諦めない。ダメだと思うと見て点検する、一旦距離を置いて眺めるのだ。そして人が出来る事なら出来るはずともう一度結論を出して小さな一歩でも前進する。明が野球をやって行く上で一つ一つ積んで行く努力はとても大事な事だった。


周りには簡単にキレる奴がいた。我慢できずに怒りや不満を爆発させる。沸点が低く耐えることが出来ないのだ。見ていると積むのが苦手な結果を追う奴ばかりだった。積んでないから我慢できない。結果が出ないとキレる、それは本能のままの子供と同じだった。


自分の心にグサッと来るからキレる。思うようにいかない。失敗する。人に見られてバカにするなと荒れ狂う。そんな時にキレると周囲から反発されて居場所が無くなる。自分の思い通りに行かないから居直って怒りを放出するのだ。当然人は避けるようになる。


明は小学校、中学校、リトルやシニアで鼻の高い野球の上手い奴らを嫌と言う程見て来た。鼻を折られ耐えられない奴も見て来た、負けるとキレるやつも見てきた。監督でさえキレて試合先から自分達のグランドまでランニングと言う。明は負けても、失敗してもキレない。失敗をする事で勉強になった、次は二度としないと今一度誓う、我慢して一個積むのだ。


アルも明100%なのでそのままだ、本気でキレたのは自分のお腹に穴が開いた時ではない、自分がハイランドに連れてきたおばばが虫の息になって逆上した。女の子シズクの腕が千切れそうになるのを見た、近くに倒れる無防備なハイエルフに同胞の攻撃が当たり魂の光が消えて行くのを目の当たりにして頭に血が上った。


賢介が言っていた>色々と怒っていたぞと言う明は違う。怒るフリをするのだ。正当な事している者が理不尽になじられ後ろ指を指される事に気にすんな、知っていて誤魔化すレベルの奴に俺たちの真剣さが分かる訳ないと主将の立場から皆を鼓舞する為に怒ったフリをしているのだ。指導者でもなんでもない明が自分の思う事を怒ったフリして皆に聞かせるのだ。怒ってキレた者は理路整然と説明しない、言って聞かせない。つまり明はそれほど周りが見えている。


アルがわざわざ口に出す怒ったフリ。周りに聞かせて納得させるための怒り。その場にいる者の認識をひっくり返すために自分に注目させ、強い言葉を聞かせるためのキレたフリ。


それは困難に立ち向かう忍耐力という。


耐える事で伸びる事もあるのだ。辛い下積みを目標に向けて積んだ明は忍耐力を持っていた。押してダメなら引いてみる粘り強さ、理想を実現する最短コースを工夫して見つける知恵を備える諦めない忍耐力。


今までの経験と成功に裏打ちされた自信がある。だからアルは簡単に言っている。


それは己が手に入れてきた認識を当てめて解く難解な問題。己の昇った場所を確かめるために用意された問題。


アルは初見殺しに挑む。



・・・・



コアさんとニウさんを剣聖の国ムン国へ連れて来た。

貴人として訪れはくを付けるためだ。


シュウ様の一門は由緒正しい家系で一見さんがいきなり行っても会えない感じの格式の高い剣の聖地にある。


「ムンに四峰よんほうあり、剣の頂きを極めよ」


ムン国スカブの街を四方陣に取り囲む四峰よんほう。パリス教の勢力圏だが元々が剣士の聖地だ、神頼みをする者など居ない。スカブの街は南の中央大陸赤道近くの2600m程にある。赤道近くでも正直風が寒い。南の中央大陸はムン国が西の果て、ハムナイ国は東の果てだ。


そのうちの四峰の一画クロメト山。

山と言っても岩山、チラホラと藪は生えてる。岩山は金毘羅宮の様に階段が刻まれて十の門と門の内側には広大な広場。門徒衆は約1万人、己の序列の十の登竜門で暮らして研鑽する。

(※登竜門:突破する度に出世する難しい関門)


一門衆 総裁 1名

一門(帥門すいもん)10人 一門1位は剣聖位。

二門(嶺門りょうもん)50人

三門(戒門かいもん)100人

四門(鎖門さもん)200人

五門(悟門ごもん)300人

↑ここより家名が与えられムン国の一代貴族。

六門(漣門れんもん)500人

七門(陀門だもん)1000人

八門(暁門ぎょうもん)1500人

九門(敬門けいもん)2000人

十門(虞門ぐもん)3000人


世話人2000人も出身者の門徒衆で占められる。


事前に宝剣持って偵察に来たのよ。こんな所に冒険者の恰好で訪れたら総裁様にガキが何の用だと脳筋に門前払いか喧嘩売られて終わりそう。そして剣聖様の遺品持って来たのにその態度は何だ!と分からず屋に天誅てんちゅうを下す騒動起こしそう。テンプレと言うかフラグ過ぎて俺はいつもの様に回避した(笑)


だから国賓風こくひんふうに訪ねた。


コアさんに作ってもらったタナウスの教皇の指輪と教皇セットで総裁様に面会希望とやった。


効果てきめん。入り口の門の待合でお茶の接待を受けて返答を待つと、お昼に登竜門の中腹にある庭園で総裁様と会談出来る事になった。


待ってる間に十門の待合所に紹介状を持って来た冒険者がいた。十門の門番の小僧さんはそれを見るなり豹変ひょうへんした。冒険者は叩き伏せられ紹介状を破られていた。どうやら紹介状を偽造してくる奴がいるらしい。


十門で鍛錬する弟子たちの歴史を視て驚いた。

ステータスボード発現前から剣術を修めると異常な程の基礎数値を持ち、ステータス発現直後に剣術付いちゃった奴ばかりだ。早い奴は7歳で剣術Lv1が発現してる。16歳近辺の弟子なら剣術Lv3~4でその辺の騎士団程度は実力ありそう。


完璧なピラミッド序列で大相撲の番付の様になっている。門の向こう側とこちら側の立ち合いに皆が掛けている。確かにランク制度で強さの変わらぬ者との立ち合いは経験値も高く、基礎数値にも反映する。最高の環境だ!ここで揉まれるだけで半端無い剣士になる。まぁ点滴岩をも通すジャッキーチェンの田舎村の修行みたいな脳筋一直線だ。


そりゃ、剣術自慢ぐらいじゃ越えられない壁だわ(笑)


総裁様を見たら、普通の分別持ってる人だ。学校で仕入れるような学は無いが剣を通じて人間修行し出来上がってる。


1時間ほど十門(入口の門)から広場の鍛錬を見ていると家宰のラズと名乗る人が呼びに来た。俺が余りにも子供で驚いている。子供すぎて国がまとまらないので総裁様に相談に来たのかと凄い想像された。他国の国主が来訪すると国難を救って欲しいとの願いが多いみたいだ。


一般人なら昇るのが一時間位掛かると説明され登竜門の階段を一緒に登って行く。俺を気遣ってゆっくり歩くこの人の恩寵はラルフ爺ちゃんクラスの家宰だ。半端ねぇぞ、なんせ天辺てっぺんの一門はリード師匠みたいのが10人居る。ここ四峰よんほうの一画だぞ。他にも三峰があるって事だぞ(笑)


俺とコアさんとニウさんが涼しい顔でテクテク登るのでペースは上がり40分程で中腹に上がって来た。5m、10mの自然石がゴロゴロしてる岩山の凄い庭園を横目に見て応接でお茶の接待を受ける。


時間は11時半。

昼には早く着いたので食事前に先に要件を伺うと、家宰のラズさんが総裁様を連れて来た。


「国主様、お初にお目に掛かります」


子供に丁重に挨拶くれて握手を交わす。


「神教国タナウス教皇、アルベルト・ド・カミヤ・メラ・タナウスと申します、突然の来訪をお許しください」


「四峰 クロメト山 総裁 リン・ガング・クロメトと申します」


「本日は快く面会をお受け下さりありがとうございます。付きましては今日突然こちらにうかがいました仔細しさいを話させて頂きます」


リン様が頷く。


「うちの国は宗教国でネロ様以下の六神をまつっております。教義はこの様な物(冊子を出す)で、各地に未だに残る生贄の習慣を止めさせようと宗旨しゅうし替えをしタナウス教を布教していました」


「ほう!いまむすめを泉に投げ込むと聞きますな」


「そうです、その様な風習は悲しみを生むので止めなさいと布教で回っておりましたところ、こちらの剣聖様が現れました」


「は?それはどういう事ですかな?」


「もう亡くなったクロメトの剣聖様が顕現けんげんなされました」


「それは!・・・」


「剣聖様が申すには、古より荒神との盟約が残る儀式も有るので直ちに生贄に近付くのを止めよとおっしゃいました。続ければ荒神を呼ぶ事となり今の私の法力や武力ではかなわず身を滅ぼすとおっしゃったのです」


「その様な事をお伝えしたと・・・」


「剣聖様はおっしゃいました、荒神を呼ぶにはまだ早いと。儂の宝剣を一族に届けよと。剣を修めれば荒神にも負けぬ様になるだろうと」


「これが剣聖様の遺品と宝剣でございます」

ボロ布に包まれた剣は誰が見ても分かる。


その場の全ての使用人の目が釘付けだ。


「失礼する」刀を手に取った。


リン様が刀を抜いたその瞬間、風がビュウと吹いて庭に出て行った。皆が風を目で追うと庭で砂を巻き上げ天に消えて行った。


「・・・」皆が顔を見合わせる。


「ラズ!このつばの紋を書き写して文献を当たれ」


「は!」


「教皇様、失礼しました。この流派ならずとも剣聖とうたわれた者は四峰に文献が残っております。宝剣のつばで持ち主も必ず判明します」


「お名前はシュウ様です。シュウ・リュウギ様です」

「そこまで分っておるのですか?」

「私がお話ししました。1800年ほど前の剣聖様です」

「それなら話が早い!、おい!ラズに伝えよ」


メイドさんが向かった。


「剣聖様は我が一族と申されましたが御一族は?」

「この名はクロメト山の総裁が名乗る名です」

「・・・?」


「クロメト山の一族ですな(笑)」

「あ!そういう!(笑)」


「この国の四峰は血の濃さより技の濃さと言いましてな。総裁の子は総裁を継いだ前例がございません。総裁が亡くなった時に最上位にいる剣聖と呼ばれる者が総裁を継ぎます(笑) あそこに見える金色の門が見えますかな?」


「はい」


「あれが悟門五門。あれを超える事、それが武を讃えられ、この国で貴族名を与えられる剣を目指す平民の道でございます」


「凄い!国民すべてにチャンスがある」

「そうですな。一族は平民出の貴族しかおりませぬ(笑)」


メイドさんが食事の用意を知らせてくれた。


「平民出の貴族の料理がお口に合うかどうか(笑)」

「私も平民みたいなもんです(笑)」

「え?」


答えを用意してなかった。わはは。


「神の加護と法力で教皇が決まります」


スラスラ出る虚言恩寵Lv6。


「なるほど!それもまた宗教国の真理ですな」


ドアを開けて家宰のラズさんが報告に来た。


「クロメト27代剣聖、シュウ・リュウギ様で間違いございません!当時の一門序列1位の剣聖様です。ロフトンの魔物討伐に参られ消息不明。ですが魔物は以後現れないのでロフトンから討伐報酬が支払われております」


「虎の荒神様と戦って見事討伐されておりました」

「なんと!」


「何千年も生きて来た精霊獣のような魔物でしたから精霊獣が逃げられぬ様に結界を張った中で、己も一緒に滅せられる覚悟で戦われておりました」


「私に危急を伝えた代わりに、亡骸なきがらとむらえとおっしゃいました」


とむらわれたのか?」


「はい、一族が亡骸なきがらあがめぬよう」


「かたじけない。教皇様、感謝する」


「いえ、その様な剣聖様だから、荒神を呼び寄せそうな私に教えて下さったと思うのです」


「総裁様、お願いがあります」

「ん?」


「剣聖様に一族の剣を収めよと言われましたが、教皇の仕事もあるのです。房に住み皆様の様な集団で剣に邁進まいしんする事が出来ません。通いで指南して頂けないでしょうか?」


「むむむ・・・前例のない事」


何がむむむだ。


「そ、それは流石に」ラズさんも。そんなにダメ?


「国主をしながらどんな方法なら教えてくれます?」


「・・・」何それ美味しいの? になっちゃった。


「ラズ、四峰の総帥に手紙を書く。他国の国主が四峰の門をくぐろうとしておる。儂の一存では決められぬ、無理だ!」


「それがよろしいかと。経緯を説明するのに今回の宝剣や剣聖様の資料は揃えておきます」


「頼む!民に仇為あだなす災いに剣を持ち向かう四峰。その一画であった剣聖が顕現けんげんし我が一門を頼れと言ったのだ。やることをやらねば恥ともなる」


なかなか難しい。剣を極めるために門を叩くので一回入れば当番の買い出しぐらいしか外に出られない。夢破れて去れば二度と修行は許されず、皆が全身全霊で身を立てるために修行するのだ。


通いと言っただけで軟弱扱い、片手間の修行とあなどられる。アルは何とかして、いつ来ても鍛錬できますよ!にしたかった。剣技を視終えるまでは通いたいのだ、何と言ってもシュウ様が修めよと言った。それはかじる事ではない、己の物にせよと言ったのだ。システムを見た時から突破口を考えていた。


リン様との食事後、連絡用にコアさんをお願いして、総裁の前で法力ですと断ってニウさんと転移で消えた。


この総裁の評定を待つ間に俺を取り巻く環境も変わって来た。イコアさんがメルデスで大ブレイクしていたのだ。さすがポッティ・ミウム様、イコアさんに二つ名「雷光」が付いたと情報誌で報じられていた(笑) 


三日後、四峰の総裁が集まる評定に呼ばれた。


結論はもう出ていたが最後に教皇様の話を聞く様にリン総裁が計らってくれたのだ。そうだ、三峰の総裁が否定だった。


ウンザリした。人が人のために作ったルールやしきたりで縛られて自由に磨けない事が分かった。


だから抗う。最初から勝負はここからなのだ。はいそうですかと引くつもりも無い。前例がないなら作ればいいのだ。取り合えず押して条件を提示する。


何より、口が滑った総裁の言葉が助け船になった。


「なんだ!子供では無いか(笑)」

「子供でも神教国の教皇様ですぞ!」

「この様な子供に、四峰の伝統を破らせるのか?」

「まかりならん。バカにしてもらっては困る」


コアさん、ニウさんが俺の前に出る。


視たら固定観念に囚われてる。総裁が他の人の時なら別に構わないが、自分が総裁の時に歴史ある四峰の伝統を変えるのは流石にまずいと思ってた。それを肯定したいがための無意識の子供扱い(笑)


リン様みたいに一族の繋がりが無いから本音で良い感じ。


「クロメト山の剣聖様に一門で武を磨けと言われたのですが、ダメでしょうか?」


「教皇様が磨かずとも我らが討伐する」


「・・・」よくわかったぜ!


「よろしいですかな?」

「・・・」教えなきゃいけないのが良く分かった。


「よろしい様なので・・・」


「おまえら!荒神の凄さ知ってんのか?」

静かに怒りを込めて威圧でにらんだ。勿論もちろんブラフだ。


言葉を投げかけて、それに対して生成されるイメージに対処して軟着陸する方向を目指す。


総裁に余りの暴言、皆が驚く。お前らも元平民だろうが(笑)


「神教国タナウス知らないなら教えてやる。教皇の法力でもかなわねぇから来たんだ。最強の宗教国をめ過ぎだ」


国主を子供とバカにして戦争かと総裁が固まる。


「ラズさん、ここから見て。今ね一門から十門、四峰のお山の全員こうだから」


ラズさんがソロソロと窓から外を見る。


御屋形様おやかたさま!外が。」総裁だろうが!(笑)


「何だ!何が有る?」

「どうした」

「え?なんだ?」

「なんだ?・・・・え!」


鍛錬をする一門衆が全員倒れていた。


「教皇は神の代弁者だ。シュウ剣聖様も神になってんだよ。お前ら神の言葉をないがしろにしてんよなぁ?」


眼光鋭く睨みつけて威圧し返答を待つ。


余りの子供の豹変ひょうへんぶりに驚くが流石の総裁。折れない。


「ほう!四峰を相手にしなさるかな?」

お付きの護衛も身構える。コアさんとニウさんも身構える。


「俺は剣の修行に来るんだよ。敵になってどうする(笑)」


「こうするだけだ」

四人の総裁と護衛が全員ぶっ倒れる。メイドが飛びのく。


一度力を見せて今度は懐柔に掛かる。


「分った?神の使いをめたら大変な事になるよ。宗教国って伊達じゃないの。宗教もめられたら終わりなのよ。剣も宗教も実力無いとやってられないよね?」


「荒神様討伐するんなら、僕に負けてちゃダメよ。分かってるよね?一回死んだの」


リン総裁だけ解除した。


「リン総裁様、済みませんでした。教皇が子供とあなどられ、うちの護衛が殺気立ちましたので少し身の程を弁えて頂きました。ご無礼するつもりはありませんでした。もう倒れた一門衆は立ち上がっておりますのでお許し下さい」


「こちらこそ失礼な言動を申して済みません。四峰を代表しておびいたします」


「気持ちよく謝罪を受け入れます」

サッと麻痺を解除する。


立ち上がった総裁たちに言う。


「神教国タナウスの法力は如何でしたか?教義はこれになります」冊子を配る。


「これを守る者には神の力を以て庇護ひごを与え安寧あんねいな暮らしを約束します。パリス教の地は分りますが本当に信じられるのはタナウス教ですね」シレっと現世利益をブッコミそしてディスる。


「神敵をほうむる剣技を授けて頂きたいのですがねぇ」


未練たっぷりに上目遣い。


「すみません。皆が房で生活して一族となる決まりです」


ダメだった。


「分ってない様ですね、まだ伝統を守られる」


「そこの護衛の方。そう、あなたです」

「私に剣を向けて頂けませんか?」

「国首様にその様な事は・・・」

「総裁様にどの様な敵なのか知ってもらうだけです」


「私の打ち込みを防げますか」

「防げばよろしいので?」

「行きますよ?」

「はい!」


身体強化の魔力をまとったミスリル剣がスッと斬れて落ちた。


「な!」


「あなた方は実体を持たぬ空気の様な異形の者をどうやって斬るのです?」


「・・・」


これ視てダメなら、シャドを見せて斬って貰おうと思っている。アルは視ながら詰将棋の様に総裁たちを追い込んでいく。


違う方向からも攻める。


「四峰に加護を持つ方が在籍されてますね?」

「・・・」目を剥いて驚いている。


「あなた方の様に神の寵愛を受けて、その意味が分からないと言うのはなげかわしい事ですよ」


「そ、それは・・・」


「構いません、神は教えてくれませんからね(笑)」


「そうですか・・・剣聖認定の儀にて総裁様は祝福されたと。ネフロー様のお言葉は無かった様ですが、間違いなく祝福されてますね。一門衆にもちらほら祝福されてる方がおられますね?」


総裁達に言葉は無い。言われるがまま聞いている。


それは総裁達が誰にも伝えて無い秘密だった。それを誇って軽はずみに伝えたら失ってしまう神の寵愛だと大事に秘匿している事だった。


「タナウス教、教皇とはこういう者です」


加護を開示する。


創造主、ネロ。

 豊穣の神、デフローネ。

 戦いの神、ネフロー。

 審判の神、ウルシュ。 

 慈愛の神、アローシェ。

 学芸の神、ユグ。 


「皆さんが見慣れたネフロー様の加護もございますよ」


一人の総裁が完全に落ちた。相手が荒神という神様ならこんな教皇が出て来ても仕方がない。と前向きになった。賛否がイーブンになった!他の総裁は頭が止まってる、もう一押し!


「剣技と法力を持たねば無理と言われました」言ってない。


「・・・」


「剣を修めるのに房に入れとか!私、国主だから国どうすんですか!平民ならそうしますよ。房に泊まらなきゃダメなら、仕事してる本物の貴族はどうやって貴重な剣技を学べば良いのです?どうしても伝統でダメなら毎日四峰の門番からぶっ飛ばして登竜門を登るしかないですかね?(笑)」


ALL「・・・」


「それ位しか考え付かないです。亡きクロメトの剣聖様のお言葉を聞いたのは私なので、神のお言葉をたがえる訳には行きません」


「わかった!ラナンは皆に言い含める」

「クロメトもそうする(笑)」

「伝統は破れんな。エルブルもそうしよう(笑)」

「カグアの門を突破してみなされ(笑)」


「一人で四峰は四日に一日しか行けないので、私の部下達も門番に身分証見せて登ってもいいです?」


「登れるなら登ってみるがよろしい!(笑)」

総裁皆がウンウン頷いてくれた!


「ありがとうございます、部下の技量を見る良い機会ととらえ、皆さまの四峰のお山に登らせて頂きます(笑)」


「そうとらえるのがよろしいでしょうな」


「アル様、私もご一緒に」ニウさんがいう。観測か!



ソフトランディング完了。ふう!手こずった(笑)



まぁ、手合わせして剣筋と足捌きを視せてもらえば自分の実力までは上がれるだろ。そこからが修行だな。


以後、子供道場破りは有名になる。



アルはミスしていたが誰も気が付いていなかった。


>毎日四峰の門番からぶっ飛ばして・・・


>毎日来れるなら房に入りなされ。


>あ! (うんうん、そうなるね)


その方向に行かず、ギリギリセーフだった。



アルは3月頃に発注される筈の街路灯を建てて歩かねばならない。それは闇に乗じて行うのでやっぱ房は無理なのだ。




次回 265話  剣神様がくれた時間

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