第260話 ネズミが奪った物
1月17日。
ドワーフ送った17時頃クランハウスに行く。
今回のクエストナイト事件が沈静化するまでは読み書き教室しか顔を出さないとリナスに話す。
ついでに半年後に実家のお兄様が結婚したら、貴族の仕事で教室にも出られなくなる事。メンバーの面接も1ヶ月に1回の集会の日と徐々に運営から離れる事を同席する事務員にも聞かせる。俺が居ないクランを上手く回すための副クランマスターなので、問題やクランの連絡は以後全てイコアさんに回せと言い含めた。
そのまま読み書き教室の連絡をキャプターに、と思ったら6位と7位PT連れて採取依頼に大森林へ行ったとリナスが言う。もう暗くなったからPTをギルドにやって、もうすぐ帰って来る頃では?と聞いた。
疲れて寒い中帰って来る教官にしょうもない俺の都合など聞かせらんない。明日でいいや。
・・・・
19時タナウス。
アルムハウスに帰ると導師とアルノール卿以外は全員集合してた。クルムさんが夕食の準備をしていた。精霊二人が帰って来てるので聞いたらシズクとスフィアが見当たらないのでお昼に呼んだら来たそうだ。
俺じゃ無くても呼んだら来るの?と聞いたらクルムさんが木に祈ったと言う。外のひょろ長い木を指して「そこの木?」と聞いたら窓辺に置いた花だった。
「すでに木じゃないじゃん!(笑)」
「この地に根を張る世界樹があれば大丈夫よ(笑)」
「あ!そっか」祈祷おばばの言葉に納得。
世界樹の事は色々な思いが交錯する。
あの時点ではあそこしか無かった。
実はドワーフ用の鉱山兼用の山肌に寄り添う様な土地やムストリウ王国のエルフ村の様な植生の大森林をわざわざドワーフやエルフの難民の移住用に選んでタナウスに作ってたのよ。実際に暮らす人たちの村や街を参考に作ってたんだよ。
どうせ世界樹作るならエルフ村の近くがシズクも良かったろう。作ってたエルフ村と全然関係のない密林の上に、気候が全然違う亜熱帯みたいな原生林のジャングルみたいな高台の土地。一度踏み込めば、カカカカ・キエーキエー・ピョロロロロと訳も分からない生物が
これ見よがしと言われて、全て考えが飛んだのは
エルフと村と世界樹はテンプレなのに・・・。しゅん。
ドワーフはもっと山深い所に用地を用意してたが、普通に街で良かった(笑)
俺の知っている先入観に振り回されてしまう。
神聖国のカルベール郡。
発見されたミスリル鉱の街に群れるドワーフ達は元の街が鉱山に向けて増設され、鉱山とドッキングしたような特異な街を自分たちで進化させていた。俺はそこでミスリル鎧を作ったのだ。当然似たような場所を用意してドワーフ難民の移住に備えていた。
全然違っていた。
ドワーフの長老が移住を決めたタナウス。大山脈のトンネル脇に衛星都市があるから切り開かれた山肌は嫌でも目に入る、この首都でも同じような風景だ。そんな感じで心理的抵抗感が無いのかな?
要するに住みたい所に住むみたいだ(笑)
物思いに沈んだ時シズクとスフィアが両手に引っ付いてきた。
「よく遊んだ?」
「よく鍛錬しました」そういや鍛錬だった!
「楽しかったです」
「うん、好きなだけ鍛錬してね」
「「はい(笑)」」
「導師とアルノール卿はいるの?」
「お昼食べて部屋に行ったよ」
「15時にセカちゃん(メイドさん)がお茶持って行ったわよ」
「あ!お昼もメイドさん作ってる?」
「私が作ったわよ?」
夕食を並べるクルムさんが言う。
「それならいいね。メイドさんのは自販機だからメニューが足らなくなるからさ」
「うん、前の海の家から四人で運んで来るの(笑)」
「(笑)」
「クルムさんがお料理教えたら、すぐ作ってくれるよ」
「それもいいわね!これからは作る時に横に居てもらうわ」
「メイドさんは気を遣ってお茶とか食事用意しちゃうから色々と予定を教えてあげてね」
「朝の用意とか、お昼とか、晩の用意はファーちゃんやセカちゃん(メイドさん)が聞いて来るわよ、お茶とか気が付くと出してくれるけど」
「そんじゃいいや」コアだから
「急な時だけお願いして。普段は作るわね」
「アルムがいっぱい料理を集めて来る!」
「僕も頑張って集めるね(笑)」
「それで、練習は進んだの?」
何も言わずに鹿が出る。クルムさんの方を向いて。
何も言わずにリスが出る。アルムさんの方を向いて。
「お!凄い!次は棒の上だね(笑)」
「今日は疲れたから終わりにしたの」
「そんじゃ、二人はそれ使えるようにしててね」
「何かあるの?」
「チリウ王国で迫害されてる人連れて来る」
「あ!国に散らばってる人ね?」
「そうそう、誘うだけ誘ってみる」
「行きたいなぁ・・・」
「インベントリ使えなきゃダメよ(笑)」
「うん、頑張るけど、明日は用事があるの」
「ん?」
「ミッチスの世界樹の粉末とかアルムが作り置きしておいたアイスクリームも心配なのよ、他の大陸に遊びに行く前に沢山作ったけどもう1か月なのよ(笑)」
「アンリ、リリス、ルルが作ってない?」
「作ってるけど光曜日には追い付かないの」
「
「
「そっかー!ごめんね、忙しいのに」
「お給金もらってますからね(笑)」
「そんじゃ、お願いね」
「うん、1か月でどのぐらい減るか分かるしね」
「ついでに食べて来るし(笑)」
「あ!ペパーミントティーもそろそろかも?」
ミント成分や香りが抜けるので1月分ずつ出して在庫も少ない。
「在庫見とくわ」
「お願い!」
近くにいるホーちゃん(メイドさん)に頼む。
「明日政務官の皆とコアさんとニウさんもお願いね」
「かしこまりました」
「うーんと7時とか資料持って集まれるかな?」
「伝えておきます」
「ファーちゃん、夕食だとベント卿とアルノール卿を呼んで来て」
「かしこまりました」
明日からも食事はクルムさんが作ると言うのでダチョウの卵を出しておいた。
・・・・
「やはり娘の手料理は美味いのう」
「このような家庭の味が一番ですな」
クルムさんがご機嫌になる。
シズクがスフィアの世話を焼く。イヤ、実体化してるとこの子ら何でも美味しそうに食べるのよ。だから人間と勘違いする。人が美味しそうに食べてると欲しいと言ってくるのよ(笑)
いつの間にやら7人家族みたいになってる図だ。
食後にお茶をしながらアルムハウスのメイドを交えて色々な思い付きや考えを出し合って打ち合わせする。
ちなみにメイドさん4人の名前はファー、セカン、サード、ホームだ。すでにお知りの通り、アルムハウスではファーちゃん、セカちゃん、サーちゃん、ホーちゃんと親しみを込めてメイドを呼ぶ。俺が一番馴染んでる最高の名前だと自負している。それを一日中叫んでた日々が懐かしい。
食後の打ち合わせはしょーもないこと。アルムさんとクルムさんと、楽しい事を想像し合ってメイド達と話すだけ。聞いているファーちゃん達を通じてコアが予定してくれる(笑)
打ち合わせは何をしたらタナウスの皆が喜ぶか。
・思考観測が済み次第、職能を与え自給を目指す。
・各村を回る行商隊は子供が来たら飴をあげる。
・騎馬民族の交易村も子供に飴を上げる。
・要望の品は次回に仕入れて統制相場で売る。
・新緑祭、感謝祭、収穫祭は寒くない時期に行う。
・村人でやぐらを組んでメイドの楽団演奏を行う。
・楽団演奏や教会のお祭りを各地でコアに見せる。
・紙芝居や人形劇団を村祭りに送る。
・村祭りの露店に銅貨で買える砂糖菓子を置く。
ファーちゃんと楽しく喋って色々考えるだけで楽しい。
寝るためだけに俺は導師ハウスに帰る。俺は朝が辛いからメルデスの教室時間に合わせないとダメなのよ。クルムさん達は明日来てミッチスで原材料の補充をするという。
・・・・
1月18日。
教室に着くとざら紙の情報誌を沢山持ったリズが待ち構えてた。視ると早起き子供連合に質問を任されてる様だ(笑)
「おはよー!」
「おはようございまーす!」
「アル様、おはようございます!」
「アル様、皆が聞きたがっております」
そうきたか!気合の入った良いストレートだ。
「何かな?」
「怖くなかったのですか?」そっから?
視たらペンネーム魔女宅さんからの質問だ。
「怖かったんじゃないかなぁ?怖くて泣きそうだったけど熱い心を燃やしてクエストナイトはみんなの夢を守るために微笑みながら行ったんだよ思うよ」他人事だ。
「これアル様ですよね?」聞くまでも無い。
「・・・」
「アル様!」
「はい?」
「ア~ル~様~!」
「知らないよ!イコアさんは正義の騎士団だから話を聞いて凄く怒ったの!クランマスターの俺がやらなきゃダメだって引きずられて、しかたなく暴れたんだよ!僕よりイコアさんの方が冒険者殴ったんだからね!700人近くイコアさんがやっつけた」
言う事を聞かない口がペラペラ
「700人!」
うんうん頷く。
「昨日情報誌の取材が来て、クランマスターが30人じゃ格好悪いからイコアさんのやっつけた分を僕に回して良いかって聞いて来たからいいよって言った」
すでに面白可笑しく
「アル様が340人やっつけたって書いてありますよ」
「イコアさんは?」
「380人と書いてあります」
「それそれ!全部イコアさんだから(笑)」
「・・・」
「その余りの20人位が僕かな?」
「・・・」そう上手くは騙されないか・・・
「今日からイコアさんの事が書かれてる筈だよ。取材の記者さんもイコアさん綺麗で強いからメルデスのヒーローをこれから追っかけるって言ってたもの」
「・・・」
「本当だよ!イコアさんばかりの記事になると思うよ」
ふふふ、お子ちゃま達には充分な情報だ。とても満足している。ジト眼のリズだけ
「あ!時間だ!」
さっさとチョレス弾いてリセットボタンを押した。
そのまま8位教室に帰ると蒸し返されるので、キャプターの1位教室に避難。手っ取り早くこの騒動が治まるまでの雲隠れと、兄の結婚式後のクランと読み書き教室の事を伝えてお願いして雲隠れした。
・・・・
タナウス8時。
今日は迫害されていると聞く、元チリウ王国の政務官たちを救出に行く予定で元チリウの政務官が全員集合だ。
挨拶するなり開口一番、首都の代官ベルンさんが言う。
「アル様、公称「神都」と決定致しました」
「しんとぉ~?」素っ頓狂な声で叫ぶ。
「はい、神教国タナウスの首都は神都です」
「コアさんは?」
「コア様もそれは良いですねと!」
「あ!そうなんだ・・・」
「
「それマズくない?神の国って意味にならない?」
「何を
ベルンさん、顔が近いよ!
なんか俺の概念が・・・イヤ!考えの小さいのが打ち砕かれた。神教国は知る人ぞ知る国で、凄い魔法の国で、とっても強い僕の箱庭の大事な国!なイメージだったタナウスが粉々になった。これはあれだ!子供が秘密基地にあこがれる
僕だけの秘密基地わーい!が吹っ飛んだ。
そうだよな。現実だもんな。そういう夢や憧れが実現しないから自分が支配する秘密基地的な思想に行っちゃうんだろうなと自分をワロタ。子供が大人の作った枠に息が詰まって憧れる訳だ。大人だってストレスに詰まって静かに飲める隠れ家的な飲み屋さんを探すんだ。俺が囚われても仕方が無い。
しかし・・・
神都だ!神都だぞ!
うちは宗教国だ!と言うぐらいの根性はあった。教義も解釈も他の宗教国に負けぬ自信があった。まさか・・・
世に神の都と公言する神経は無かったわ!
(一般人にそんな神経無いわ!安心しろ)
兵が勢ぞろいする他国の演習場の真ん中で秘密基地を宣言するぐらい俺には衝撃的だった。幻想が粉々に砕け散った。
神都!神都!神都!神都!シンのミヤコ。
Your Shock! 俺の胸に落ちてくる。
Your Shock! 俺の胸に落ちてくる。
Your Shock! 俺の胸に落ちてくる。
サザンクロス。南半球の輝く将星。
妙に俺の胸に落ちた。(それ違う星の納得!)
コアが一瞬で予測演算した答えにアルは行きついた。
「分かった!タナウスの首都は神都だ!」
近くのメイドにタナウスの身分証を渡す。
神教国タナウス 首都タナウス領民
領民3位 アルベルト
「これ首都の所を神都に直してもらえるかな?」
「かしこまりました」
聞いてから3分で神都が決定した後。
今、出て来たお茶を飲みながら集まった執政官と情報を交わす。
代官のベルンさん、オットマンさんマールさんジェシカさんから勧誘リストを受け取る。リスト31名は記憶を辿って皆で書き出した。地下に隠れ部下と一緒の可能性もあると言う。
取り合えず、勧誘リストを視て行く。
各人の人柄と役職、噂を聞いた場所、迫害の村の噂、隠れ里まで支援して導いてくれた村の人達への挨拶。
村の挨拶はどうでも良いが、ちゃんと追視で追っかけて現状をサラッと把握しておく。
視て大体の状況を掴んでからポーズを取る。
目を
「みなさんはここの会議室でリストの人を勧誘して下さい」
「え!」20人程の政務官が一斉に驚く。
「啓示が降りました。皆さんがチリウに行くと、王の勅命を受けた武官の兵に拘束されタナウスの地を踏めなくなります」
「!」
警戒や見張りが多いの知ってる癖に!一般人連れてゾロゾロ行ける所じゃねぇよ(笑)
「どうも、当時の離職した高位の政務官を釣る餌にされてますね」
代官のベルンさんを見て言う。
「迫害もされてないですね。皆さんを釣る餌です(笑)」
「本当ですか?」
「あなた方の耳にいずれ入るであろうと
「あぁ、そうですか!」ホッとしてる。
「一体、あなた方はどんな事をしてそこまで追われ・・・イエ、やめましょう。胸を張って生きてるのが間違ってない証ですね(笑)」
視て知ってるから、演技はしておく。
「みなさん。リストの人を連れて来ますから。この場で出来る仕事を持ってきて待ってて下さい、お茶や食事もここで取って下さい。リストの方を法術で連れてまいります」
「よろしくお願い致します」
「コアさん、ニウさん参りましょう」
「はい、アル様」
・・・・
ポヨーン村に跳んでリストを検索する。
一瞬で31人の情報を拾った。
6人王城に投獄か!移住決定だな(笑)
コレ見て政務官をチリウに連れて行くのをやめた。
リストの人だけ連れて行って、タナウスで政務官に面会させ、説得させる。移住希望があればリストを書き出して家族を救う手順に変更した。
しかし4年も前の情報と今の情報が違い過ぎて、俺が困惑するわ。やっぱ片っぽだけ視て
新王はそこまでアホタレな王じゃ無かった。
王を引き継いでばかりでイラついてる所に、
要するにキレた勢いだ。
キレた人間は
王の側近でどれ程良い暮らしをしていたか全て
酒も女も奴隷剣闘士の戦いなども好み、褒美も取らす王だが、先王から受け継いだ王の座に就いた当時の様には荒れていない。
ただ後が問題だった。根本を解決しないとダメだった。
「コアさん、ニウさんこんな感じ」交感会話で情報開示。
「邪魔する者はぶっ飛ばしてね」
「アル様を守ります」
(あ!シェルの仕事が!)
(シェルは最後に守るですよ)
(あ!そうね、お願い)
(無罪で牢に入った者は全員助ける。本当の罪人や牢番が来たらシャドが
(はい)
え!
アルの頭に3.6V/20mAの高輝度LEDが
青だ!(使徒だけに)
「ちょっと実験していい?」
「なにか?」
「シャド、コアとニウを捕まえて」
「黒い帯が2人の腰を巻く」
「跳ぶよ!」10m先に跳んだ。
「成功!やっぱシャドが具現化したら跳べる」
「手を繋いだり、跳ぶと言わずにすぐ脱出出来る!」
「その様な方法が!」
(シャドは僕の考え見といてね)
(はい!)
「罪人以外は全員助ける」
「かしこまりました」
俺が手を繋ごうと思った瞬間、シャドの黒い帯が2人の腰に巻きつく。こりゃいいや。身内にはこれが楽だ。
9時42分。チリウ王国 王城地下牢へ跳んだ。
入った瞬間に臭いと思ったが魔法は使えない。使えても3度目の大惨事が待ってるから使えない(笑)
王城内の広大な敷地、近衛騎士団管轄の4m×4m×3mの地下牢。高さ3mの格子窓が地面の高さで雨が降ると牢に水が流れ込む。トイレの穴と石のベッドに布があるだけの牢屋。重厚な鉄の枠の付いた木の扉。扉の下部に食事用の穴蓋があってそこから器にお玉でお粥を一杯朝と晩に入れてもらえる。こんなジメジメと苔むした石牢に入りたくない。
地下牢の廊下に跳んだ一瞬で視終わった。
地下牢の入口前の扉に2名の牢番が居る。俺はチリウに関わりたくないので手早く行く。
「悪い事して無い牢に居る人」ファジー検索だ。
検索し、脳内にプロットした瞬間、シャドの帯が牢の四方八方に伸びる。捕まえた瞬間にポヨーン村の近くの村が見える場所に跳ぶ。
連れてきた人は16人居た。
跳んだ瞬間にコアとニウが全員にクリーンを掛けてくれた。
連れて来られた人達は牢の中で石のベッドにあぐらで座ってたり寝てた恰好のまま草原にいるから立ってる者は一人もいない。夢と思っているから動かない。俺も揺り起こしたりしない。一人一人に事情があるので付き合うほど暇じゃ無い。
無一文でこの人たち放り出せないな。うーん、チリウのお金持って無い。魔石か?ゴブリンとか小さいの持って無いぞ、冒険者ギルドも無い村で使えるのか?宝石って訳にもいかんだろ、お釣りが無い以前に鑑定も出来ないんじゃ?
どうしようと思った瞬間。
ピキューン!と
かなちゃんランプが点灯だ!
ドキドキしま
いつも扱いに困ってる賎貨!
チラホラと高原の風に吹かれて外に居る事に気付きだした人々。静かに立ち上がって陽の光に満ちた美しい風景を見る人たち。服のポケット一杯に幸せを詰め込んで村を指差し背中を押した。何も言葉は掛けなかった。
目当ての6人全員シャドが
神教国タナウスとチリウ王国は赤道挟んで向かいにある、経度的に変わらず時差は無い。タナウス時間でそのまま動ける。
すぐに会議室に跳んでリストの人を解放したら、牢にいた6人と執政官たちのハグの挨拶も終わって無い位の早さだ。
11時までに31人の勧誘リストは全部連れてきた。
後は執政官と話をさせて意思を聞き、移住者と送還者を連れて意志の通りに跳ぶだけだ。移住するなら家族を連れて来るだけ。家族の元に帰りたければ戻すだけ。何もしない。メイドが昼食もお茶も運ぶだろう。15時に帰る人は戻す。移住する人は名簿のリストを出す様に言って会議室を出た。
昼まで1時間もあるので冒険号の分別された鹵獲品を大山脈の超巨大倉庫に納める。大空洞の各フロアに分別された品を納めていく。単純作業をしながら物思いに
連れて来た人たちの事だ。
人が生まれた
創造主から生まれた子供達の営みだからだ。
生まれ育った地が捨てられない。
嫁と嫁の親が嫌がる、子供もいる。
今の仕事で普通に食えている。
皆が言うように生活に危険を感じない。
そんなのが視えたんだよ。
そりゃそうだよ。里の人みたいに追われて逃げたり、投獄されて身の危険を知らないと自分は大丈夫と思うんだよ。牢に入った人が説得してもダメならそれまでだ。その人の自由を奪っちゃダメだ。そういう理由に
隠れ里の忠臣みたいな、義に厚く一直線に
チリウの王を
この王は根には持つけど根気は続かない。報告受けたら思い出して>そうか!と喜ぶタイプだ。恨みを忘れず朝から晩まで呪うなんてのはメンヘラで逝っちゃってる。逝って無かったらどんな
ただし問題がある。
その勅命は王が忘れても、
見せしめが牢から居なくなったら帰れば危ない気もする。単なる
まぁ、なる様にしかならないさ。俺が無理に恐怖を
イヤ!マテ!それは俺が退治される側になるわ!
でも・・・
俺は好きだな、義に厚い忠臣。厳しく
ベルンさんは完全にタナウスの臣になってるよ。ヘクトのオスモさんも一緒だな。俺に取ったらそれこそが忠臣だ。
などと考えながら分別品を並べていく。断捨離しないとダメかなぁ、でも普通の国では宝だよな。要らない物はコアがエネルギーに変えると言うけど流石にそれは出来ない。
あ!もう昼だな。
アルは大山脈の巨大倉庫から消えた。
民のいなくなった二国の遺産。
二国の王家の宝飾品、二国の金銀宝石、二国の通貨、二国の武具、二国の服飾、二国の建築物、二国の埋蔵鉱石、二国の魔道具、二国の工作物。
アルの前に分別された富の大山脈があった。転移と巨大なインベントリを使えるアルが休まず運んで二週間掛かる程の富だ。覇権国の武具、兵器、建物、軍船を一日で取り上げ即座に仕分けしたアル。
ネズミ退治に二日半、遺品整理に七日半掛かりきりになったそれは人族に災いをもたらす大き過ぎる負の遺産だった。
それは人のみが囚われ、栄華を誇る物だった。
アルは見る度に心に問う。暮らせたらいいじゃん、家族で笑えるだけでいいじゃん、なんでこんなに集めちゃうのよ、人の欲を刺激して幸せが壊れちゃうじゃん。必要ないじゃん。
アルが思ってもしょうがない。秩序ある所に混沌の種もある。それを集める過程に魂の磨きもあるのだ。アルは栄華の極み、ピラミッドの頂点の権力をまだ知らない。単なる大学生だったのだ、否定的になるのも仕方がない。
無味無臭に残された
だから本来この様に国の残骸で後に残される物では無い。
二国にはたまたま違う混沌が襲っただけだ。
ネズミは食べ物だけ奪った。他の物は置いて行った。
昼になったのでアルは食べ物を求めて冒険号に消えた。
次回 261話 憑依した先王
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一期一会に感謝をこめて。よろしくお願い致します。
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