第257話  瞬速のツッコミ


1月16日朝。


読み書き教室に行くと、違う教室の生徒がいる。視ると昨日の北ギルドの騒動がメルデス中に知れ渡り、情報紙の号外まで出た様だ。


クエストナイトとクエストガードが冒険者の権利を守る戦いに叫びを上げたと書かれている。笑うわ!名前書かれてないのが傑作だ、秘密を作って興味をあおってるのか?(笑) (アルが貴族だからだった)


まぁ、権利を守る戦いと書かれるなら良いな。冒険者の大事な事を外して乱闘部分だけ取り上げられたら目も当てられない。(実際は暴漢にも程がある)


生徒があからさまに号外をアピールするが俺は勿論、知らないリズも当然無反応だ。一切無視して何も知らぬリズとのを見せてやった(笑)


不完全燃焼の生徒たちを置いて北ギルドへ向かう。

少し縫い目が広がる冒険服に着替えた。


また野次馬が違う経路で北へ走る(笑) 見たけりゃそうやって来たら良いんだよ。北は今 危ないと思って6位7位じゃ怖くて行けないか。


二位のジョニーPTは全員捕まえてるかな?楽しみで視なかった。


あのジョニーのPTは、二位PTの中ではギルドの序列は低いが一番骨のあるPTだった。上昇志向で磨いてる連中だったからクエストを頼んだのだ。


俺が北ギルドに向かう大通りに出ると二、三人先触れが走る。


「来たぞ!北東のアルベルトが来たぞー!」

名前だけが独り歩きしていた。


視ると北東で噂のクラン雷鳴のマスターだと調べて、まさかこんな子供がと驚いた奴もいた。見た目は成人前の子供だし、ギルドに顔出してないからクラン雷鳴の知名度は有っても俺の知名度は無い様なもんだ。


北ギルドの前の野次馬が凄い!


思わず視て唖然あぜんとした。昨日の騒ぎの張本人、クエストナイトが七時二十分に北ギルドに現れると聞いた見物人が一万人以上居た。北東や東から冒険者どころか領民も見に来てる(笑)


近付くと(クエストナイト)(クエストナイト)とあの子供?と皆がヒソヒソ口にする。中に(あんなに小さい)と言われ、手前ぇも小さいだろ!と子供泣かしそうになる。子供にメルデスの英雄が視えガッカリさせてゴメンと申し訳なく思ってしまう。


しかし、一目見ようと皆がアグレッシブ過ぎる。暇人め!


その内に北ギルドに入るとジョニーのPTメンバーが案内してくれる。


「こちらです」

「ありがとう」


途中で北のギルドマスターが居た。


「アルベルト卿」

「何です?」

「うちのギルドの者がすまなかった」

「いいですよ!勘違い野郎だけ反省したらいいです」

「その、お手柔らかに頼む」


「痛い目に合わせますが治すから大丈夫ですよ(笑)」

「すまんな(笑)」

「いえいえ(笑)」

「皆、演習場におる」

「分りました、ありがとうございます」


演習場に行くとずらっと並んでた・・・ギャラリーが。


北ギルドの横の道を入ると演習場に出る。なんで六十人が変な所に並んでるんだと視たらジョニーが余りに凄い大観衆にビビッて、柵から見やすい場所、端の方に整列させていた。柵にギャラリーが鈴なりでたかってる。広い演習場の隅だけ盛況だ。


綺麗に並んでる六十・・・六十一人?を視ると祭りに参加した時系列で並んでいる。聞き取り調査までして良い仕事だ(笑)


「ジョニー!ありがとう。面倒掛けたね?」

「いやいや、北のバカの起こした事だ」

「そう言ってもらえてうれしいよ、ありがとう」


大観衆の前で手を差し出して握手してハグして肩を叩く。まぁセレモニーの前の儀式だ。背が小さいからジョニーは中腰のハグだ。


俺が小さいから大観衆も見えないとつまらないだろうと土魔法の演壇を一瞬で作り拡声魔法で皆が聞こえる様に配慮する。大観衆過ぎてザワザワが凄いのよ。


そしてスイッチを切り替えた。


「お前らー!何で呼ばれたか分かってんなー?乱闘をお祭り騒ぎと喜んで参加した事も大体分かる!冒険者は力自慢だ、参加したくなる気持ちも分かる!しかしなぁ!この寒い冬に食えねえ六位七位が北まで仕事探しに来てなぁ、殴られて二度と来るなと叩き出されたらどうすりゃいいんだよ!」


一旦間を置く。


「まぁ、やった事はやった事だ、次には注意するこったな。しかしやった事は消えねえ、反省してもらわないとなぁ!水に流すために俺が今からボコボコにしてやる!おまえらが二度と同じ事言わなくなるようにな。こんなもんは殴って終わりが一番だ!お前たちも冒険者が言っちゃいけねぇ事を勉強したな?頭よくなって得したじゃねぇか!(笑)」


「まぁ、俺たちは力自慢の冒険者だ、能書きはいらねぇな?」


「そんじゃ始めるか!抵抗してもいいぞ、防御してもいいぞ、身体強化で俺を殴りに来ていいぞ。やれるもんならやってみろ!」


獰猛どうもうな笑みで子供が威圧する。


最初に並ぶ、最初に絡みに行った奴の前に立つ。

息を大きく吸う。


「お前ぇ何言ったー!」

「見ない面だが何処のもんだと言いました!」

「依頼票見るのはメルデスの冒険者だー!」


こいつが発端だ!タコ殴りにしてボコボコのバコバコだ!


ぶっ飛ばされて失神している。アルが近寄って行く。胸倉掴んで引き起こし、ヒールで治してほおを張って起こす。


「こんなもんで寝てんじゃねぇ!」皆が驚いた。息を飲んだ。


からむ暇あればオーク狩って来んかー!」

もう一回ぶっ飛ばした。容赦なかった。


ゆっくりと二番目の前に移る。震えている。

前に立って聞いた。


「お前ぇ何言ったー!」

「雑魚が北に何しに来たと言いました!」

「仕事探してんだろが!分からんかー!」


身体強化で防御しようが関係ない、ボコボコにぶっ飛ばす。その分強く殴ってぶっ飛ばす。


気絶したらヒールして起こす。


「お前らが原因だ、簡単に終わると思うな!」

「はぃ」


「良い根性だ!そんな根性あるならなぁ・・・」

「お前も森で狩って来ーい!」ジェットアッパーが炸裂した。


(俺の脳内で)枠からはみ出したJETだった。


三番目に移る・・・。

ゆっくり歩いて恐怖心をあおってやる。


「覚悟は出来てるな?」


「お前ぇ何言ったー!」

「七位の仕事拾って最低の奴らだ!」


「手前ぇに七位は無かったか!お前も拾っただろうがー!子供いじめて楽しいかー!」


本当は六位が七位の仕事を探すのをからかったのだが、ワザと思い違いをギャラリーに聞かす。そして口答えする前にぶっ飛ばす。


寝てる奴にヒールかまして、胸倉つかんでまた起こす。絶望に目が逝っているからチョット許した。少しだけだ。


「お前らが調子に乗り皆が巻き込まれた!責任は取れ!」


ボコボコにぶっ飛ばして寝かせてやった。


ゆっくりと四番目に移る、すでに諦めている。


「お前は楽しそうだから加わったんか?(笑)」


必死でウンウンうなずく。


「祭りは楽しいな、気持ちも分かる!(笑)」

「ですよねー(笑)」と同意を求めてもダメだよ。

「他の祭り行けー!」ギャラリーが大ウケ。 


ボコボコにぶっ飛ばす。


五番目に移る。なんか鬼軍曹がネチネチやってる気分だ。


「お前も祭りが好きなんだな?俺は知ってるぞ!」


「いや、そんなに好きという訳じゃないと言うか」


「元気が余っちゃったのかな?」

「はい、そうですね(笑)」


「元気有るなら、仕事行けー!」ギャラリーが沸く。


ボコボコにぶっ飛ばす。


一人一人にオチを付けるのが大変だった。せっかくギャラリーが集まってるから楽しんでもらおうと頑張った。


以下、最後まで続いた、倒れさせず屑折くずおれさせず俺に倒れ掛かる様に打ち抜いて行った。倒れてるのを蹴ってたら俺が悪人になる(笑) 最後の蹴りの時点で失神してる。



六十一人目。なんか一風変わったのが混じってた。


「なんでおっさんが居るんだよ?」

「北東の奴らを袋にしました!」


「何言ってんだ、みんな五位六位七位の若造だぞ!おっさんが混じって何やってんだ!(笑)」ギャラリーが興味深々きょうみしんしんでウケている。


「乱闘が面白くて!」

「な訳あるか!どんなけ子供やねん!」

ALL「(笑)」


「いや、私だけ殴られないのは不公平です!」

「不公平なのか!」

「そうです!」

ALL「(笑)」


「この若造の祭りにおっさんも加わった?」

「はい!」

「嘘吐くなー!帰れ!(笑)」

ALL「(笑)」


「嘘はいておりません!」


「おー!そうか?そんじゃ聞くぞ!」

「はい!」


「てめぇは何をやりやがったー!」

「私は何もやってません!」


#「やってねぇじゃねぇかー!(笑)」


瞬速のツッコミでおっさんの頭をはたく。


ギャラリーが〆の大笑いで沸く。


「おっさん。俺は忙しい!ケガ人治すからな!」


無視して最後尾からヒールしていく。


「簡単に乱闘に加わるな!」

「もうわかったな?」

「頭冷やしたか?」

「簡単に加わるなよ!」


~~~


「分かったら終わりだ」

「二度としねえな?」

「もう絡むんじゃねぇぞ!」


「おまえら!全員後ろのギャラリーの方を向け」


「囲んでる奴らぁ!見たな?こいつらは皆痛い目にって反省した!昨日のクエストボードの件は流してやってくれ!みんな分かったはずだ!俺たちは冒険者で依頼票受けて食っている。邪魔をされたら食って行けねぇ!この騒ぎだ、お前たちが北東や東に行っても安全になったんだ、そう思ってこいつらを許してやってくれ」


「以上だ!つまらんもん見てないで手前ぇら仕事しろ!」


・・・・


「ジョニー依頼票は?」

「こんな金は受け取れねぇ」

小金貨四枚を出す。(80万円)


「バカだな!お前!それじゃ金もポイントも稼げねぇじゃねぇか!PTも意地じゃ食えねえよ!」


「(笑)」


「まぁ、分かるよ。依頼票書くからカウンター付き合ってくれ。全員を取っ捕まえた正当な仕事の報酬だ。受け取って貰わなきゃ俺も困るわ!お前にPTの食いぶち掛かってんだぞ(笑)」


「わかった、すまんな」

はなんだ(笑)」

「乱闘に加わったとじ込んで来た(笑)」

「変だろ!あんな若い連中にじ込めねえよ!」


PTが大ウケする。


「自首して来たら入れるしか無かった(笑)」

「やってません!て自爆してたな(笑)」

「そうだなぁ?(笑)」

ALL「(笑)」


依頼票書いて小金貨三枚と銀貨六枚出す。(大ざっぱに66万円:容疑者一人銀貨一枚にギルド手数料10%)

ジョニーが受けて俺がサインして報酬を受け取った。(54万円:大ざっぱに報酬からギルド手数料5%と冒険者の所得税5%)


「コレPTで飲め(笑)」

大銀貨1枚(十万円)お姉ちゃんに渡す。

「何言ってんだ!おい、よこせ!」

「ジョニーがかすめるから渡すなよ(笑)」

「分ったわ!(笑)」


「行くわ。じゃな、ありがとう!」

「世話掛けたな!」

「こっちの話だ!」


北ギルド出たら、領民にまばらに拍手された(笑)

手を突きあげる冒険者も結構居た。


片手を上げてテッテテと逃げ出した。


薬が効き過ぎた。


・・・・


9時半か。


朝飯食って無いけど、今メルデスにいるのは嫌だ。アルベルト卿とか言われたから北東ギルドにも照会されてるだろうしギルド長に怒られそうだ。メルデスは当分教室だけにしてイコアさんに任そう。


昨日の贋金作ってたドワーフの爺ちゃん見に行くか。


路地から冒険号に跳んだ。

パンケーキセットのボタンを押して出るプレートを受け取る。食べながらコアを呼ぶ。


「はい、何でございましょう?」


「これお願い出来る?子羊のこれがメインなの、貴族が行くグレードのコルアーノ料理のレストラン」


レストランのサンプルをデザートまで八品目出す。


「かしこまりました」


「ドワーフと世話してた人はどうなった?」


「故郷に家族のある者と無い者に分けて宗教国タナウスに保護されたと説明し食事はメイドが食べさせています。一週間ほどで解放され自由になるだろうと伝えると皆安堵あんどしておりました」


「うん、それでいい。少し話して故郷へ連れて行ってあげる」


「かしこまりました」

「モニターに場所を映してくれる?」


「こちらが故郷があるもの、こちらが家族無しです」


「ありがとう、コア!バッチリだ!」

「いえいえ(笑)」


「本日の朝からメイドが村人を分け、種蒔きからの研修を始めます。聞いては居なかったのですが十二歳以上を成人として研修に参加させ、それ以下の子供はメイドが面倒を見る方式に致しました。親から離れない子供は小石拾い等の軽作業を作り帯同を許します」


「仕事早すぎ!コア(笑)」

「村でやる事が無いのは時に絶望を生みます」


いきなりタナウスから来た異星人を思い出した。


「うん、コアが言うなら間違いないさ、ありがとう」


「周辺の魔獣も追い払ってございますのでご安心ください」


「人手が要ってごめんね」

「理論上は無限に生み出せますのでご安心を」

「うん、わかった」


食べ終わってお茶にしながらシズク達を視たら嬉しそうにやってるやってる。


「シズクとスフィアは休憩してるの?」

「いえ、各階層で違う魔獣が出るのを楽しみに(笑)」


「楽しいなら良いか」


「十七階層のブラッドバットと十八階層のファイターウルフが特にお気に入りの様で三百以上の周回で戦ってます」


「は?」


「風魔法で翻弄ほんろうしてブラッドバットの目を回させてポテと落ちるのをお二人が大層お喜びになり、一晩中笑い転げておいででした(笑)」


なんか精霊のツボにはまったのか?


「バカ犬は?あれかじって来るでしょ?」

かじられても抱きしめておいででしたよ」

「え?」


「お二人で抱きしめに走っておいでです」


「・・・」それ冒険者の戦いじゃない(笑)


あ!そうだよ!元々精霊は存在意義を示して旅人のリアクションに大喜びして迷惑関係無しにもっと示すんだ、そりゃツボにはまればやるわ、コウモリも可哀想に(笑) 


「まぁ、楽しいならいいか。犬はモフモフだし」



・・・・


遅い朝食を食べたらドワーフを連れて来た衛星都市に行く。


家族が居る方のドワーフの街へ行くと爺いが多かった、視ると結構名の通った人もいる。狙い撃ちで隷属させられたんだな。


拡声魔法で噴水広場に集まる様に言う。

集まっても日陰から出てこない(笑) ドラキュラか!マジでドワーフってそうなのか。視ると夜目が発達して、こんな南国の強く眩しい日の光は苦手らしい。


近くの大きな店舗に案内した。


「大人しくしていて下さいね」暴れられても困る。

まずは長老ポイ人の隷属の首輪をはずした。


(暴れたらシャド縛ってね)

(はい)

(実体化出来たら皆と遊べるのにね)

(まだ中精霊になったばかりです)

(我慢出来る?)

(我慢して無いです(笑) シズク様とスフィア様と遊ぶなど怒りを買った瞬間に消えてしまいます)

(そんならいいけど)


言いながら爺ちゃんの隷属を解いても暴れなかった。


「おじいちゃん、ここ分かる?」


「タナウスという宗教国じゃな?儂らは助けられたんじゃろ?そうメイドさんに聞いたぞ」


「良かった、暴れるかと思った(笑)」

「怒りはあるがの、お主らにでは無い」


「お爺ちゃんが一番の長老なんでしょ?今から皆の隷属の首輪を外すから、暴れる人がいたら説得してね」


「分かった。人の子よすまぬの」

「人の悪人はタナウスが退治したからね」

「見ておったわい(笑)」

「あ!そうか!隷属されても分かるんだね(笑)」

「そりゃ、分かるわ。変わった坊主じゃ」


残りの三十六人の首輪を外した。


皆が外れた途端に安心してザワザワとしゃべり出す。


「すまぬの、代表して礼を言わせてもらうぞ」


「いえいえ、少し聞いてもいいです?」

「なんじゃ?」


「悪党共に聞いた話では(聞いて無い)ドワーフの街から名の通った鍛冶師を集めてきたと聞いたのですが、このミスリル鎧より進んだ技術を持つドワーフの鍛冶屋さんて居ます?」


鎧のセットを男女用、ニーソックスまで出す。


「なんじゃぁ~?」手にとって驚く。

「・・・」鎧を回し、見入っている。

「・・・」皆が黙り込んでしまった。


「これはベトじゃの、あそこの作りだろ」

「ギャロかもしれんぞ?」

「この折り返しはコームズ工房では?」

「あそこは繋ぎの織りを隠すぞ」

「おぉ、そうじゃの」

「儂もベトと思うな、織りにこだわっておる」


「これを見た後で越えられると思う方います?」


「バカにしとんのか!」


「知らんだろうがベトは鎧しか作らん工房ぞ(笑)」

あの店、剣も受けてたけど他の人がやってたんだな。俺はミスリル剣いらんし、騎士団の鎧に家紋入りのお揃いを作ろうと思っただけだ。


「皆さんは武器も?」

「そうじゃ!」みながエッヘンとなった。


「そもそも勘違いしとるぞ、ドワーフは物作りに囚われた種族じゃ。本能に縛られとる。木工だろうが、貴金属だろうが、工作機械や農業機械、武具もそうじゃ、人族は殺し合うための武具しか欲しがらんから武器はドワーフ製と思い込むが、蒸留器を発明したのもドワーフぞ!」


「あ!エール工場とかも作りますよね」

「お!分かっとるな、一番神聖な仕事じゃ」

「そうなんです?」


「子供に言っても詮無せんないが、豊穣の神が授けた地の恵みを芳醇ほうじゅんな香りと苦みに昇華させ・・・それこそ年月を掛けて熟成した火酒はまことに・・・その神聖な工程に立ち会う者は・・・そもそもドワーフのほまれとは・・・かの誇り高きドワーフ族を統べる・・・言い伝えではその琥珀のような輝きに・・・無垢の一滴を神のしずくと・・・」


なげえよ!いつまで続くんだ!

大人しく聞いてると思いやがって。


終わらないので黙って目の前に金属をずらりと並べた。魔銀、金、白金、銅、魔鉄、鉄、コバルト、クロム、バナジウム、チタン、ニッケル、パラジウム、アルミニウム・・・


皆が目を剥き、触って比重や固さを確かめる。


「見たことも無い金属ばかりじゃ」


「原料は好きなだけタナウスにはあります。みなさんを今から故郷に返しますので、鍛冶の進んだドワーフの街でそれぞれ何か作ってくれませんか? 大きな獣人サイズで作ってくれたらこちらで魔法付与してジャストサイズにします」


「助けた礼をせよという訳ではありません。恩に感じてくれたら作って下さい。快い返事をくれるなら祝杯を上げましょう」


「仕方が無いのう(笑)」視たら祝杯目当てだった。

「恩に報いるのがドワーフだ!」祝杯目当てだった。

「あそこから助け出されたらのう」祝杯目当・・・。

「恩を仇では返せんな」祝杯・・・。

「我らの技を見せようぞ」祝・・・。


三十七人全員受けてくれた。わーい。


「それじゃ祝杯を上げましょう」

全員にブランデーを一本ずつ配った。


渡したら終わった。あっという間に一気飲み、祝杯が足らんと言う。タナウスの酒は美味いが器量が狭いと言う。カチン!と来たので大壺と樽を出したらもう何言っても立ち上がらない。家族が待ってると言ったらそんなもんは後だと言う。・・・拉致被害者の言葉では無い。


そのまま跳ばしたろうかと思ったが、気難しくて人族の仕事をめったに受けないと言うタクサルさんの言葉がよぎった。あ!タクサルの野郎!一年音信不通じゃねーか!新年迎えて何やってんだ!親が泣いてるぞ。親知らんけど。


まぁ俺と一緒で夢中なんだろうな(笑)



だからドワーフ送還に失敗した。




次回 258話  ドワーフの気骨

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