第256話 優しさの一族連座制
1月15日。
大暴れした北ギルドの帰り。
イコアさんにクランをお願いして冒険号に跳んだ。
「コアー、ニウー!」
「はい、何でございましょう?」
「イコアさんはあれ戦闘ナノロボットなの?」
「そうでございます」
「凄かったねぇ(笑)」
「ありがとうございます」
「今日の悪人狩りにコアとニウ来てくんない?」
「「かしこまりました」」
昨日見た贋金のシンジケートを潰しに行く。
「アルムさん達今日も鍛錬なの。忙しいからグレゴリ村は野菜売るならロスレーンに売りに行けって伝えてくれる? 毎日お買い物じゃ畑も出来ないから行商も一週間に一日、二日だと思う」
「かしこまりました」
「ご飯食べるから待っててくれる?それとマジックバッグを二人共貸してくれる?」
アルの目の前に二つのマジックバッグが置かれたので、大中小の魔石と軍用魔石、換金用の宝石とミスリル剣を目の前でマジックバッグの前に置いてやる。
「これは?」
「僕とはぐれた時に宿でも泊まれる用。イコアさんと同じなら必要無いだろうけど、悪人退治はコアとニウの判断で良いからクソ悪い奴らならぶった斬っていいからね(笑)」
「かしこまりました」
自分のバッグに入れるコアとニウ。
※そんな事はありえないが、アルはコアとニウを忘れて自分だけが帰ってしまう事を凄く恐れている。自分にはその可能性が凄く高いと予測演算してるのだ。はぐれるのではない、忘れて転移して置き去りにするのを恐れている(笑)
※2:何も言わなくても、当然アルの思考論理でそう思っている事を予測するコアとニウ。アルの心配は優しさだと知っていたので何も言わない。あくまでコアとニウの本体は冒険号に有るのだ。端末のセンサーが世界の何処に置かれても何か月も掛かって戻れるし、その位置情報は冒険号に送られていつでもショートジャンプで瞬時に帰って来られる。
モーニングセットを食べながらシズクとスフィアを呼ぶ。
「「アル様!」」
スフィアは色とりどりのマジックバッグを肩に掛けていた。
「クルムさんに貰ったんだね?」
「はい、頂きました」
「僕からはコレ!使い方をシズクに教えてもらってね」
お着替えの腕輪を出す。
「はい!ありがとうございます」
「シズク、今日は冒険号のトレーニングルームでシズクが使う剣や魔法でスフィアに実体化しながらの戦い方を見せて練習してくれる?スフィアが実体化でモンスターを普通の冒険者のように倒せるようにしてもらいたいの」
二人が俺を読んで瞬時に納得する。魔法でエアカッターや竜巻もイメージしてやる。
「コアに言えば横掘りの魔穴の一階から六十階まで自由自在に魔獣を出してくれるから危なかったら魔法でぶっ飛ばせ・・・そうだな、一階からやって行くのがスフィアには良いかもな。シズクもそうやって覚えたしな」
「分りましたアル様」
「はい、アル様」
「アル様」話が止まったのを見てコアが言う。
「なに?」
「先程、グレゴリ村のメイドより行商にみえた四名の方に思考観測を伝えました。王宮に着き次第に冒険号へ跳び、農業技術を含めた思考観測を致します」
「あ!いいね、収容所の整備は今日もやってくれてる?」
「昨日アル様が置かれたキューブハウスにメイド一万人を送り込んで開拓を進めております、捕らえた者を種蒔きから講習出来るように整備致します」
「ありがとう! そんじゃ行こうか?」
飛空艇から制圧するので冒険服に変えた。
「はい!」
コアとニウはメイド服と執事服のままだ(笑)
「シズクとスフィアも楽しんで頑張ってね」
「「はい、アル様」」
・・・・
コアとニウと格納庫で飛空艇を出して乗り込む。ホバリングさせながらシリング共和国に跳んだのは10時半だ。
コルアーノの金貨(金含有量88%)を74%にして作ってる贋金シンジケートの工場が山中にあった。コルアーノだけでは無い、周辺国も軒並み含有量が少ない金貨を作って各国へ流してる。
日本でも何十年に一回偽造防止をするからなぁ。この時代は技術が有ればやり放題だよ。空から眺めるとドワーフが68人、贋金作りを支える関係者が32人。隷属の首輪で飼われてるわ。どうしようもねぇな、悪党共は。
(シェルもシャドも頼むね?)
(はいです)
(お任せください)
首輪は後でいいやと総勢250人のシンジケートの贋金工場にドミニオンの隷属紋を撒き散らす。防衛人員の方が圧倒的に多い、空から布教して全員ゲッシュ!原料も出来上がった偽物もプレスの金型も全部没収。
目印になるから隷属の首輪はそのまま、悪党は手を繋がせて収容所に連れて行った。コアとニウが現地で見てるから、そのままメイドに何も言わずとも通じてる。隷属の首輪組はタナウスの衛星都市マリンへ連れて行くとナノさんにバトンタッチで渡す。お任せで十分だな、鉱山奴隷より楽だわ。
そして贋金シンジケートの多角経営部門を潰しに行く。陰で操る領主もだ。
領主も含めて関係者も家族も全部隷属、屋敷で贋金を知らぬ者は全員見逃した。隠し店舗、マネーロンダリング用の商会、ナイトクラブに風俗店。ボスが何やってるか知ってたら全員ゲッシュで店ごと強奪していく。使用人は知らずに入っても働くうちに贋金に浸かって真っ黒になっていた。知っていても儲かるのでそこに在籍するのだ、
シンジケートを検索しても出て来なくなったので
ムストリウ王国も国内の贋金シンジケートにやられていた。守備隊に鼻薬をかがせて贋金工場の周りには巡回しない。一発死罪を分かった上で子爵領都のスラムで作ってた。鍛冶屋や材木屋が集まる職工の街裏のスラムだ。
何処でやってても関係なーい!と隷属して収容所へ連行する。守備隊は贋金作りと知らないのでそっとしておく。原料も金型も全て没収する。手先となる店舗、出入りの商人、贋金流通網を全部追っかけて捕まえて収容所に送る。家族を盾に脅されていた鍛冶師は忘れさせて家に返した。
そして何も関係ないその家族も妾も子供も全部連れて来た。お父さんが収容所行きで居なくなると以後の家族の生活が立ち行かない家族は連れて来た。俺の優しさで連座制を取った(笑)
※連座制:家族や集団の中で犯罪者が一人出ると全員責任を取って同じ罪となる。
恩寵持ちは危険もクソも関係なかった。
ドミニオンの隷属紋を使い始めた頃のアルでは無い。すでにあれから三年も経って並列思考ⅢLv9と多重視点ⅢLv9なのだ。相手の恩寵の有効範囲外から苦も無く検索で探し出し一瞬で隷属する。
危機感知持ちが居る場合。面白い事に視た瞬間に逃げた奴を多重視点で360度から見るとどちらに逃げても危機感知が鳴り響き脂汗流して座り込む(笑)
視界の中に
・・・・
昼過ぎに一回冒険号に帰って来た。
視るとシズクとスフィアが二人でPTして戦ってる。ちゃんとマジックバッグを腕輪に仕舞ってる。二人で剣振って可愛いんだけど!ご飯要らないから夕方まで遊ばせてたらいいや。シズクの良い友達と言うか妹分が出来て良かったなぁ。
「コア、贋金作りを知ってる家族連れとか妾持ちとかは一緒の家にしてるんだよね?」
「はい、その様にしております」
「よく働く両親見て立派に育つといいなぁ」
布教した後付け加えたのだ。
・悪事をしてたけど親が亡くなったのを切っ掛けに足を洗って親の農業を継ぎに来た自分の育った村。
・過去を封印して幸せな家庭を作り子供を育て上げ、悪い事をした
当然、生まれ育って無いし、土地勘はないわ親どころか親類縁者も居ない、足も洗った・・・と言えない事も無いが、街どころか店屋も何もない農民しかいない村。収穫してもハイブリッド種子として流通に回るので、給料をもらって働くサラリーマン農民だ。メイドが荷馬車で移動商店として村を回り生活物資、食料一切を統制価格で購入できる村。
全部の村人がそう思い込んで頑張って働く。自分の親と暮らしても親は死んだと思い込む、視ると夫婦がお互いの親と思い込んでいる。シナリオもクソもない、そんな無茶を普通に信じ込むのだ。マジ恐ろしいドミニオンの隷属紋。
一人だけ
>俺、ここで育ってねえよ!
>親の住んでた家ってなによ!
>親、農民じゃねぇよ!代々領主だよ!
>何で俺は家族と農民やってんだ!
一人だけ領主が
「ふふっ!」
アルが笑った意味をシャドとシェルだけが知っている。
丁度、相互通信でクルムさんから連絡があった。皆の転移が六秒程になったので機嫌を良くした導師が、宮廷魔法使いの時代に利用していた王都のレストランに予約したと言う。俺の分もお願いしておいた。18時半にアルムハウスに集合との事。
「今どこにいるの?」
「タナウスの北の大地よ」
「そこから導師がコルアノーブルに跳んだんだよね?」
「お弁当食べてる時にね?」
「そして19時に予約したんだね?」
「そうよ」
「19時に予約なら20時半に集合で21時に行かないとダメ」
「あ!あっちと二時間違うのね、分かったわ」
「そんじゃ20時半までに集合するね」
「そうするわ」
・・・・
遅い昼の食事を取った後。
「さて!やってみるか」
各国の金貨金型が置かれている。原料もある。含有量は視たら分かる。原料を混ぜ合わせて本来の金貨の%に調整する。見本を視ながら精緻に金貨を作っていく。最初は色んな種類一個を並べていく。
出来上がったら、一気に生成する。レンガと一緒でザーと原料が金貨に変わっていく。それは何百枚ずつだ。
金貨を持って周辺国に跳んだ。
贋金を強奪して、強奪した皮袋に返して行く。金庫に返して行く。贋金のある所、王宮にも入り込んだ。三十分程経った時、気が付いた。これ大変な労力だぞ!偽金貨の額面関係なく一枚でも有れば交換って・・・俺が悲しすぎる。
恩寵の強奪と付与が出来るのに・・・!
恩寵強奪と金品強奪有って、恩寵付与有ったら金品付与有るんじゃねぇのか?思った瞬間に金品付与が付いた(笑)
あんま持ってる恩寵をタブー視してもダメだなぁ。
もうこの四つの恩寵はセットだわ。
贋金と本物の交換は何千倍も早くなった。多重視点と並列思考で眼を使って検索するから文句なく早い。
大掛かりな贋金シンジケートは中央大陸に三つあった。後は趣味で十枚作って差額で遊ぶような鍛冶屋上がりの二、三人の仲間の
贋金シンジケートの首領から末端まで入れて関係者一同を連れて来たら5700人も居た。犯人グループ自体は900人程しか居なくても暮らす家の家族や関係先に勤める使用人の家族まで入れたらそうなった。
まるっと女子供まで普通に居る農村になってしまった。イヤ村で間違って無いけど。これはこれで皆が農民として恋愛して子供が出来ていくんだろうなと複雑な気分。区分を区切って領主やシンジケートの首領を村長にした。
20時半にアルムハウスに跳ぶ。
もう皆が集まっていた。
「あ!アル君がいるー!」
「うん、どうだった?」
「ベント様が合格だって!」
「嘘おっしゃい!(笑) 後は自主鍛錬よ、慣れたら自由になるからって、そうなったのよ」
「おー!おめでとう!」
クルムさんが皆にお茶を入れてくれる。
(シズクとスフィアはまだ遊んでる?)
(遊んでます!)
(遊んでます!)
(良かったらお茶に来てもいいよ)
(行きます!)
(行きます!)
二人がミスリル鎧で現れた。
「あ!来たわね!スフィア、似合うじゃないの」
「ありがとう!」
二人もお茶を用意してもらう。
「シズク、普通の冒険服も教えてくれた?」
「前衛用と後衛用も教えました」
「ありがとう!はい、今月分!」
四人に小金貨を渡す。
「ありがとう!」
「シズクはお茶飲んだらまた二人で遊んでて。お菓子や飲み物やお店の買い物をスフィアに教えてくれる?ミウムのギルドなら二十四時間開いてるからスフィアと二人で遊びに行ってもいいよ」
「分りました」
「教えて貰います」
「アルは何してたのよ?」
「これ!」
「金貨じゃないの」
「それ贋金なのよ(笑)」
「え!」手に取ってクルムさんが眺める。
「む、知ったのか?」
「はい、もう中央大陸は壊滅させました」
「壊滅か!(笑)」
「壊滅です(笑)」
「早いのう!」
「はい、聖教金貨(笑)」大司教に渡す。
「御子様、これも?」
「金の含有量が少ないです」
「財務部の金庫に偽が二百枚ほど(笑)」
「入ったのか?」
「もう本物に交換しときました」
「教皇様に言って立て替えましょう」
「良いです良いです」
「しかし!」
「原資は
「こ奴の事じゃ、上手くやりおるわい」
上手くやるのはバレていた。
「そろそろ時間よ。食事に行きましょう!」
(シズクとスフィアは遊んできな)
((はい、アル様))
・・・・
王都コルアノーブルの導師の行きつけの店はまさに隠れ家のお洒落なお店だった。(料理のお土産は忘れない)
王都の散策も含めて二十三時にアルムハウスに帰りクルムさんにお願いする。
「スフィアに基本的な人の生活教えてくれる?」
「え?」
「今シズクが一緒に遊びながら教えてるんだけど、色んな人に教えて貰った方が良いと思うの、お風呂とかも入った事無いしクルムさんと同じ事させるだけで全然違うと思う」
「そういう事ね、分ったわ」
「詰め込みじゃ無くて、クルムさんと一緒にいたら静かでよく出来た女の子になると思うの」
「裁縫とかお料理とか?(笑)」
「そうそう、人の世界初めてなの」
「シズクは最初自分で動かなかったもんね(笑)」
「うん、シズクは御子としてずっと人の世界に居ても、最初はそうだったの。でも三か月で普通に動くようになったでしょ?クルムさんといればスフィアも三カ月とは言わないけどそのうち人の生活が普通に出来るようになると思うの」
「アルくーん、空いたわよー!」
(アルムさんに内緒で)
(当然(笑))
「今行くー!」
俺はクリーンを掛けて風呂に向かった。
導師ハウスは最近、寝に帰るだけになっている。
次回 257話 瞬速のツッコミ
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