第253話 ラストサムライ
北西の街の台風は18時前には過ぎ去っていた。
今タナウス首都の上空かも知れない。
手を繋いだ小さなかまくらの中。シズクに石化のアンカーは要らないか聞くともう結構ですと言う。それならと、かまくら消そうと思って思い
終わった気になって北西岸の衛星都市まで歩いて帰ると言ったが、かまくらの入り口の向こうはまだ大嵐の最中だ。60m/s級は終わってねぇよ!
来るときは爆風な北風、過ぎたら猛烈な南風。かまくら無くなったら子供3人飛んで行くわ!
「スフィア。僕達の周り100mを無風に出来る?」
一度俺を覗いて。シズクを覗く。
俺とシズクに肯定されるスフィアは目を輝かせた。
「スフィアは出来ます!」
途端に風が止む。
「行こうか!」
「はい、アル様」元気なシズク。
「はい、アル様」シズクの真似をするスフィア。
「シズクがお姉ちゃんになったのかな?色々教えてやってね、スフィアは人間の世界に具現化するのは初めてみたいだよ。冒険者登録もしよう」
「はい、シズクが教えます」
「シズク様に教わります」
暴風が荒れ狂う中の無風を手を繋ぎ、街の方向を視て気付いた。衛星都市スカイまで50km以上ある(笑)
仕方なく反射壁近くまで跳んで歩いて帰る。
反射壁でシズクが突進した。ポヨーン!そのまま帰って来て俺と手を繋ぐ。スフィアも突進した。ポヨーン!とそのまま帰って来て俺と手を繋ぐ。そのまま180度ベクトルが変わるだけなのに人の頭は納得せずにポヨーンと跳ね返ってる様に見える。
実体化して物理現象を体験したスフィアが超驚いている。なんか・・・具現化した実体を作り出して台風を操ってたのに変(笑)
二人で何度かポヨーンして俺の所に帰って来てから、シズクが反射壁の中に現れた。真似をしてスフィアも反射壁の中に現れた。俺が二人を追って、そのまま反射壁を潜り抜けるとスフィアが驚く。
「この中に入る時には実体化を解かないと入れないからね」
「はい!」俺を覗いて意味を確認して返事する。良く分かった、シズクも最初こうだった。俺の考えを視て納得してから返答するからすこし遅れてたどたどしいのだ。そして段々口数が減って気持ちのやり取りでお互いが分かり合う様になると喋らなくなっていく。良く分かる、言葉は不完全だからだ。
人の世界で暮らしたシズクが先生ならすぐ慣れるな。
・・・・
衛星都市スカイの宮殿に着いた。
皆に紹介する。
「スフィアだからね、PTメンバーになるからよろしくね」
「私、アルム!よろしくね!」
「私はクルムよ、仲良くしましょう」
「儂はベントじゃ、よろしくの」
「私はアルノールです」
「私はコアです」こっち来たんやね。
「私はニウです」
コアとニウでスフィアが後ずさりして
「コアとニウは古代の精霊だからね」
スフィアが俺を視てコアとニウを納得した。
自分から寄って行って抱き付いた。
「して、何を知ったんじゃ」
「いや、今は。・・・神がこの子が居ると」
「そうか」視たら大体正解だよ(笑)
「このお酒どうでした?」
「おぉ!深い酒じゃの、ワインの比じゃ無いの(笑)」
「美味しいお酒ですな御子様」
「それじゃ、お土産に!」
瓶で2本ずつ二人に出した。
「これは特別な祝いで飲む酒じゃの」
「普段は飲めませんな」
「高いじゃろ(笑)」
「導師とアルノール卿ならお小遣いですよ!」
「華美な飲食は控えなければなりませんのでな」
「そんじゃ、首都の方に行きますか?」
「お!そうか。行くか!」
「首都が今一番強い風と思います」
皆で首都王宮に跳んだ。
応接のテラスに首脳陣が集まっていた。めいめいが机に座りメイドに接待を受けている。
「アル様!コア様に案内され接待を受けております」
「いいのいいの!見てくれた?」
「見ました!」
「紹介するね。僕の師匠のベント導師とこちらは聖教国のアルノール大司教様で魔法学の専門家です。この二人がジェシカさんの反射魔法陣をこの様な反射魔法壁に作り変えてくれました」
それぞれがお互いに紹介しあう。
「この大嵐が来たんで予定が狂ってます、チリウで王宮を去った方々の勧誘はもうちょっと伸ばしてもらって良いです?」
「それは、全然構いません、何年も経ってるんです。急がなくても大丈夫です」
「済みません、また決まり次第に伝えます」
「よろしくお願いします」
机と椅子が用意されてうちらの七人も隣に座る。
ブランデーを机に出すとメイドがグラスを用意してくれた。
「それでは、皆で祝杯を上げましょう。反射壁の完成と成功にカンパーイ!」
普通の酒と思った執政官達が
「これは豊潤で深い酒ですな!(笑)」
「まさしく祝いの酒ですな」
しばらく歓談しながら、外の防風に
「しかし、外があれだけ嵐で荒れても物音ひとつしないとは驚きました!反射壁は音も反射しておる様ですな?ベント卿」
「アルノール卿、それは儂も驚いておった」
「音も打撃と同じ力ですからね」
「え!」
ざら紙で書きながら説明する。音は振動だと。だから振動の圧は全て反射され外の音は入って来ない事。空気の密度、水の密度も踏まえて音の伝導を解説し、密度の高い水中で音波が一点に収束すれば物体が振動し一瞬で何百度にも温度が上がる超音波理論まで説明して行った。横の机で聞いていたジェシカさんもいつしか加わり、大討論会が終わる頃には嵐は遠く過ぎ去って行った。
俺のPTはスフィアを餌付けするがごとくお菓子を食わせた。
・・・・
寄って来たコアに気が付くと19時半だった。
「食事の用意が出来ました」
「みんなの分?」
「ご用意しております」
全員で夕食を取った・・・先日のナレスの宮廷料理だった。
「アル君!何これ!見た事もない料理」
「凄いの!中々ここまでの料理はお目に掛かれん」
「私の生涯で見た事もない料理ですな」
「僕のせいで質素が美徳になって済みません」
「いえいえ、神に仕える者はそうでなくては!」
皆が笑う。
「しかし、この豪華な食事は・・・」
「これはまさしく宮廷の
「まさしく、チリウの王宮料理に匹敵します」
メイド達が大皿のメインを切り分けてくれる。
「こ!これは!肉が舌の上で溶けていく」
「もてなしの心くばりが・・・」
帝都新聞のグルメ対決か!
どうしましょうと心配そうに山岡さんを見る栗田さんを視てしまう。
王の側近たちや導師や卿がこんなに驚く。ナレスやスラブのあの人たちは眉も動かさずに普通に楽しんで会話してたよな、料理の話が一切出て無かったし(笑)
王族って凄い。
・・・・
男爵家の部屋に導師とアルノール卿を案内した。二人共部屋を気に入って、ここから研究室に通うと言うので当分はこのタナウスでアルノール卿に付与した恩寵の特訓をアルムさんとクルムさん含めてやってくれと導師に頼んでおいた。タナウスは導師型の特訓に丁度いい。
※導師は発動時間を早めるために山中で何点間の場所を決め、イメージを固めて跳ぶ訓練を繰り返した。(
コアに言って男爵屋敷にメイドを四人付けて貰った。導師と卿の耳にチクっと痛くない奴してもらった。これで何処に居ても連絡が取れる。
反射壁は解除すると湿度が高く不快になるので天候が戻るか切れるまで放置するとの事。
シズクは鉢植え無いし木に帰らなかった。二人共いつまでも居るし、帰れとも言えない。客間に部屋を決めてやったらスフィアと一緒にベッドを決めていた。
「シズクがお姉さんになったみたい(笑)」
「そうみたいね」
アルムさんとクルムさんが二人の様子を見て納得してる。
「スフィアの分のマジックバッグ作るわね、アルは腕輪用意しときなさいよ(笑)」
「あ!そっか!」
クルムさんに空いてるマジックバッグを渡した。
明日朝が早いので二人はクルムさんに任せてアルムさんとメルデスのハウスに帰る。部屋に帰ってベッドに入って目を瞑ると、ふと思い出し笑いでシェルに話しかける。
(あそこで嘘泣きは
(アル様が慌て過ぎてるから(笑))
(慌てるわ!なんだ、あの戦いは!)
(そういうものです)
(そういうものって!精霊ってそうなの?(笑))
(そういうものです)
(北風と太陽みたい。戦ってんのアレ?(笑))
(ですね(笑) 戦ってましたよ、凄く!)
(大精霊同士の戦いが棒倒しとは思わんわ!)
(シズク頑張ってましたね)
(うん、頑張ってた、棒じゃ無いけど木を押さえてた)
(凄い数の精霊が戦ってましたね)
(相手攻撃しないのね(笑))
(実体化してないから攻撃できません(笑))
あ!そうだわ!俺は精霊眼で視えてるだけで、本来何もいないのと一緒だ。具現化した暴風雨がビュウビュウ言ってるのは気にせず流してた、あ!俺も攻撃されてたんだよ。魔法防御が上がってるもん、かまくらに魔法攻撃されて上がるって・・・(笑)
(アル様、それは
(だってさ、両軍が淡く光って飛び回るとか、妙に柔らかい可愛い戦いだな~と見とれて攻撃されてるの気が付かなかった)
(お互いに魔素を実体化させて戦ってましたよ)
(棒倒しで(笑))
(アル様(笑))
(ん?)
(それ玉入れの棒押さえてるだけです)
(え!・・・あ!そうだった(笑))
頭とイメージが違ってた。
(棒倒しやったの中三だけだもん!)
((笑))
訳の解らん反論だった。
・・・・
1月14日。
メルデスの導師ハウス。
5時に起きて、外に出ると同時位に原始人も出て来る。
「タナウスの男爵家アルムさん選んだからアルム家ね」
「あれアルム家なの?(笑)」
「分りやすいでしょ?アルム家集合!」
「ハウス集合と管理棟集合とアルム家集合(笑)」
「今日、僕が教室行ったら、タナウスで導師と一緒に転移の練習ね、導師に頼んでおいた」
「えー!アルム早くなったのに!」
「あんた、跳んでるだけでしょ(笑)」
「そうだけど・・・」
「ちゃんと練習方法があるの!」
「はーい」
「クルムさんもアルノール卿も3人一緒ね?」
「うん」
しかしなぁ・・・俺も何とかしないとなぁ。
身体強化とか全然上がらんなぁ。シズクの時みたいに剣で勝負しないと上がらんだろうなぁ。しかし魔法と武術の
ロスレーン伯爵家 三男 健康
職業 聖騎士(騎士10UP、精神+10、幸運+2)剛力の指輪(+15)瞬足の指輪(+15)幸運の指輪(+3)アプカルルの涙(魅力+10)
体力:86(96) 魔力:- 力:62(87) 器用:403(413) 生命:67(77) 敏捷:61(86) 知力:713(723) 精神:735(750) 魅力:84(94) 幸運:87 (92)
恩寵上昇値。
土魔法ⅣLv9(3UP) 並列思考ⅢLv9(9UP) 多重視点ⅢLv9(9up) 精霊魔法ⅢLv9(9UP) ※妖精眼Lv1→精霊眼Lv4(14UP) 魔法防御Lv5(3UP)
※スフィアを迎え撃って上がった恩寵。他は防波堤作って上がった。
スキル表示分
身体強化Lv5 格闘術Lv4 剣術Lv4 短剣術Lv4 槍術Lv4 盾術Lv3 二刀術Lv4 気配遮断Lv2 気配察知Lv2 危機感知Lv2 物理攻撃Lv3 物理防御Lv2 魔法攻撃Lv7
魔法と武術の恩寵が
マズイよな~。テミス様の魔力で7時間あのミニ万里の長城作るとガンガン上がったもんな。恩寵Ⅱ~ⅢなんてSPメチャクチャ要るから振って無いのに莫大な魔力消費でどんどん上がっちゃう。火魔法Lv3なのに・・・。
精霊眼になってから気持ちが分かる様になった気がする。妖精眼の時は精霊の形を見て異物に対する恐怖感があった。正直、スフィアがメチャメチャ怖かった。視るのは眼だったから内面の敵意が分った。精霊眼になったら眼で視なくても何やってるか分かった。
「アル君、疲れてる?」
「あ!ごめんなさい、考え事しちゃった」
「アルム相手に考え事とはいい身分ね!(笑)」
「イヤ、そんな事無いから!大丈夫だから!」
#「大丈夫ですって~!」
「イヤ、違う!そういう意味じゃ!」
いつもより余計にぶっ飛ばされた。
「アル君。そろそろ時間よ!」
「うん、ありがとう!」
5時半に教室行くと誰も居なかった。
・・・? あ!今日光曜日だ!ガーン。
ハウスに跳んだらアルムさん居なかった(笑)
すぐにタナウスに戻ったらアルムさんが浜にいた。7時半だ。アルムハウスでご飯食べたい。
「あはは!(笑)」指差して笑う。
「あ!知っててやりやがったな!」
「ボケっとしてるから!(笑)」
「僕の素直なありがとう!を返せ!」
「そろそろ時間よ!って言っただけよ!(笑)」
「何の時間を教えてくれたの?」
「アル君が勘違いして教室に行く時間(笑)」
「てめぇ!ぶった切ってやる!」
「きゃー!(笑)」
8時に警報解除の鐘が鳴った。
アナウンスも聞こえて来たが、追っかける事に夢中で終わった話の警報解除などどうでも良かった。そのままほぼ1時間半暴れ回った。アルムさんがハイエルフ装備で逃げ回ったので俺も相当キレキレだったと思う。脂が乗って来てるのかも知れないな(笑)
俺に回想のカットインが流れた。
コアとこないだ話した時に一日に積み重ねた練習はその晩寝て身に付く話の全容を話してくれた。俺がその時、監督から聞いて忘れてる部分を補足してくれたのだ。
人が反復練習した動作が身に付く期間の極大値は個人差もあるが小学校4年生の9歳から10歳になる齢から小学校6年生で11歳から12歳を迎える年に一番脳内のシナプスが結びつき、その時に動かした練習動作が寝ている間に身に着くと監督が言ったらしい。
要するに練習して寝ている間に上手くなるという話は本当で、私学の野球部に入って来るような奴は間違いなくその小学生の期間は野球を刷り込みまくっているので神経が繋がって上手くなり易い。野球部員にはそれを教えて反復練習させまくっていたというのだ。
覚えとるか!そんなもん(笑)
俺は10歳で目覚めて3年成長が止まったとすると当時7歳、本当にその位の背だったから間違いないと思う。俺はもう14歳になる。という事は3年遅れなら11歳の年だ、一番体に染み込みやすい時期を鍛錬一色で過ごしているのは明の野球と一緒だとコアに言われたのだ。
それは脳内の指令でスムーズに手足が動く命令系統の話だった。俗にいう運動神経である。どれだけ体を鍛えても反応出来なければ意味がない。反応出来ても体が付いて行かないと言うのもそうだ。
コアは俺を観測してその
えー?と言うたびに納得させられるから言わない(笑)
実はアルが一番最初に目指したのは明の運動感覚を手に入れる事だったのだから。
ふっふっふ!キレキレの俺にこれからは手こずるぞ!俺は成長中だ!今から脂が乗るんだよ!
俺が追っかけて来ないのでアルムさんが詰まらなそうに木の茂みから
・・・・
9時の朝食が済むなり3人の転移の練習を導師にお願いして来た。
アルノール卿が何かあれば相互通信機で連絡くれと聖教国の教義部に連絡して転移の練習に思いを
簡単に書けば上記で間違いはない。しかしニュアンスがだいぶ違う様に伝わるので補足しておく。
この人7大司教なの。教皇の次に偉い役職なの。
7大司教のアルノール卿は聖教国に7つある部会:教義部のトップだ。その下には6人の大司教が居て、それぞれが司祭学校のトップだったり、御子と聖女の道徳教育のトップだったり、魔眼鍛錬含む魔法教育のトップだったり、教義解釈研究のトップだったりする。
その中の一つ、魔法研究部門のトップにマドリク大司教がいる。
その下にも研究員の司教が6名いる。
アルノール卿は教義部全体を統べる7大司教の一人なのに、教義部を統べていない(笑) 各部の大司教に丸投げだった。月一の7大司教の報告会(定例会)にアルノール卿は出ない。教義部から出席するのは今は聖教国で教皇やってる御子と聖女担当のステレン大司教だった。教義部のTOPが魔法研究部門で好き放題してるからだ。
言わばマドリク大司教の魔法研究部門を上司が占拠して居座り、好き勝手に友人(導師)に部屋を与えている存在だ。研究室で寝るわ、酒飲むわ、役職だわ、実力あるわで7大司教の定例会出なくても許されてるアンタッチャブルが言い放った。
魔法研究部門の責任者、マドリク大司教に言い放った。
「反射防壁魔法が完成し、聖教国の儂の務めも終わった!以後の
俺には「非常勤に儂はなる!」と聞こえた(笑)
通信を聞いていてマドリク大司教に同情した。
マドリク大司教は頼ってない。勝手に押しかけて居座ってる押し売りか居直り強盗みたいな存在だ。めんどくさい材料発注やもっと資金を調達せよと占拠した上司に捻じ込まれ執務に追われてる。頼ってるのはどっちだと言う状態だ。
うちらのPTがドロップさせた竜の皮を一目散に取りに行く人だぞ!勝てんわ!この人には勝てん。
そんなアグレッシブな我を
聖教国は清く正しい人の集団ではない。
ラストサムライみたいなのも居ると言う話だ。
・・・・
転移初心者の3人を導師にお願いしてロスレーンのお爺様に会いに行った。今日は警報明けで家畜を避難壕から出すだろうから野菜の売り込みはまたの機会にしようと思ったのだ。
1月7日の時点で大嵐の話を聞いてからバタバタだったので、ロスレーンで報告する暇が無かった事を報告に行った。
お父様とお兄様は執政官事務所で打ち合わせだとシュミッツに聞いたので、お爺様の耳に入れておく。
「ナレスで街灯の注文が入りまして付けて参りました」
「新年で頼まれたのか(笑)」
「まぁそんな所です(笑)」
「代金をお渡ししたいので見てもらえますか?」
「構わんぞ」
「ここでは出せないのです」
「何で貰って来た?ナレスの鉄鋼か(笑)」
「惜しい!(笑)」
「ナレスの・・・うーん」
「取り合えず中庭に来てもらえますか?」
「なんじゃろな? シュミッツ来い!」
「は!」
中庭にキューブハウスを作る。
「物々しいの」
中で出した。
約40トンの団子金貨、アーモンド状~餅形状~棒形状の丸くした金塊。
約6トンの団子銀貨。
「純度96%みたいです」
「・・・」
二人の目が点だ。
ここでおさらい。
水は1c㎥=1cc=1g 金なら1c㎥=約20g
1㎥の水が40個で40トン。金だと2個で40トンになる。
崩れた荷馬車の仕様は分らないが6トン積みの岩塩用の荷馬車なら嵩が無く重心が安定して運びやすいと思う。6トンで金1m×1m×0.3m=0.3㎥日本の二人用風呂桶一杯だ。
6トンの銀塊は金の半分の重さなので貴金属を乗せた馬車に宝石で軽い分乗せられていた銀だ。銀なら1c㎥=約10g
6トン積みなら0.6㎥の容積になる、風呂桶二杯だ。
全て木箱か壺に入っていた団子状の金貨、銀貨だ。アーモンドチョコレートのような形や金太郎あめ形状になっている。
「代金が現物とはのう、驚いたわ(笑)」
「一応当時の貨幣なんですけどね(笑)」
「当時とは?」
「1500年前のナレス王家です」
「はぁ?」
「ナレスの親戚の国が滅んだ時の財産です」
「すごいのう」
「これで三分の一なんですよ」
「ナレスで何か買いますか?」
「それだと王家が潰してナレス金貨で流通できるな(笑)」
「取り合えず国外の街路灯引き合いなので考えて下さい、サントの議長さんでもいいし、96%の砂金由来なので何処の国でも買えると思います」
「良いわ、好きに使え」
「え!」
「お主、外遊と言っとったな、外に持って行け」
「えー!これ、国家予算並みと思いますよ」
「そうじゃろ!儂もふと思ったわい(笑)」
「こんな現物などロスレーンが恨まれるわ!」
「恨まれはしないでしょ?」
「大領主が金の力で成り上がりと言われるわ!」
「シュミッツ!何か言ってよ!」負けそうで援軍を頼む。
「伯爵家には過ぎます、まさしく王家が持つ物です」
「えー!街路灯(ぼったくりの)代金ですよ!」
「これに見合う対価がコルアーノには無い」
「え!」
「今の物資とコルアーノ貨幣はつり合いが取れておる、1500年前の砂金かしらんが、そんな亡霊が現れて物資を買ってみよ、国家予算並みならどうなる?モノの値段が供給不足で倍とは言わねど跳ね上がるぞ。何も無かった所に現れた金には対価が存在せん。金鉱にて労働の対価なら緩やかに民が富む。コルアーノでは何処の領もしかるべき対価を払って自領に足らぬものを
「その通りです・・・安易に受け取り過ぎました」
「しょうがないわえ。王家は国を動かしとる、ロスレーンのような領主家ではない。使う金も桁が違うのう(笑)」
「及ぶ所ではございませんな」シュミッツも言う。
「しかしの、コルアーノ国内の街路灯については、あれは良いぞ!全ての領が栄える。領主が持っておる金が雪崩を打って民に行き渡る。領の規模では無い、国の規模でじゃ。城を作る、城壁を作るでも良い。敵から民を守るために使うのじゃ、今回は己の出した税が100%民のために使われて、金も民に回る。非常に分かりやすい税の使われ方じゃ。何処の領民も領主を讃えるじゃろうの」
「分りました、一旦仕舞って考えます」
「寒いぞ、茶をやるか!」
「は!その様に」
「あ!その前に!これを一滴足らすと格別に」
「ほう!」
「部屋に行くぞ!」
・・・・
執務室脇の応接。
「うむ!これはよい!」
「美味しくなりますよね」
「これは、下級の茶でも美味しくなりますね」
「香り高く豊潤で体が温まりますな」
お爺様2本とシュミッツとジャネットに1本あげた。
「寒いから使用人達も一滴ずつ入れたらいいよ」
2本出したらジャネットに言われた。
「アル様、この品はコルアーノでは手に入りませぬ、無くなるとあの油と同じになります。他国の高価な少量の物と価値が分らねば意味がありません、唯一の一杯として使用人には振舞います」
「1本は料理長、一本は使用人、余ったら料理長に(笑)」
「かしこまりました」
「これから来客が多いでのう、振舞うか(笑)」
「ナレスの銘酒と(笑)」
「今度行ったらまた仕入れて来い」
「分りました」
「所での、アルよ」
「先程の
「なにか?」
「偽金貨の話じゃ」
「え?」
「昔、建国間もない国が悪党に狙われてな、偽金貨を使うと本物の金が釣りで失われて行く、釣りをまとめたら本物の金貨が出ていく、その国の信用が無くなってのう、ついには滅びてしもうた」
「実はの、金貨は銀の混ぜ物をしても見分けがつかん、今は流石に皆分かってどの領の財務官も騙されにくい。しかし混ぜ物をした途端に金貨の価値が落ちる、国がやったら国が傾くぞ。コルアーノにその兆しが見えたら啓示を受けるじゃろ?そう思い教えておく」
「ありがとうございます」
すでに視えていた。
悪貨は良貨を駆逐するか。
次回 254話 脳筋の挨拶
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