第247話  腐る領主


1月7日の夜。


アルムさんとクルムさんとシズクは俺と冒険号で夕食を食べてメルデスに帰った。


俺は冒険号に残ってコアと明日のクラン仕事始めの打ち合わせ。雷鳴の副クランマスターPT、イコア・シャロットと六名のメンバーを見せてもらっていた。


「よくもまぁ、色とりどりの頭に(笑)」

「アル様が髪色にこだわるとお喜びになるかと(笑)」


「そのテカテカの銀はやめてあげて、映画でしか見た事無い。この世でもまだ見た事無いよ。多分クランでみんなに見られちゃう」


「赤毛の明るいのでは?」

「リズを気にしなくていいよ。最近しっとりとした甘栗っぽくなってきたし(笑)」半年で濃い赤から茶に変態して来た。


「紫っていいの?聞いた話だと豹獣人の相手探しの色って聞いたよ、見る度に大阪のおばちゃん思い出すからやめて」


「金髪の暗めは?」

「それ僕を気にしてるよね?気にしなくて良いって!」


結局、クランメンバーで良く見る髪の色に落ち着いた。



「全員神教国の貴族で名前を付ける。コルアーノの貴族と揉めても他国の貴族なら何とかなる。答える必要がある場合は神教国タナウス、七星騎士団を名乗ろう」


普通の国軍は第七騎士団位はあるしな。


・イコア・シャロット 第三騎士団 団長 1位

・ライム・ノート   同副団長 4位      

・ヨード・テリオス   団員 5位  

・ファイナ・スコイ   団員 5位

・アンジュ・オーブリー 団員 6位

・エバ・リース     団員 6位

・クリステル・バルビエ 団員 7位 管理棟、駐在員。


※七人はナノ(戦闘艦マリンの予測演算コンピュター)生成の戦闘メイドだが、中身は全部コアだ。


「そんじゃ七人分クラン職員のプレート作って明日は管理棟の名簿板に付けておくよ。」


一緒にマスターのPTプレートも作らなきゃ。


「台風への防御壁はどういたしましょう?」

「どれぐらいから風が強くなって来るかな?」

「12時間前位かと」


「それじゃ24時間前にコアの指定場所に作るね?」


「今の時点では正確な時間は測れませんが、当日の上陸が夜になったら如何いかがいたしますか?」


「そっかー!夜だったら事前の朝から作るから教えてね」


「予定は王宮から半径10kmで防御壁を作り、範囲外の村は撤去願います」


「飛空艇から見下ろしながら作るから、一緒に仕舞うね」


「よろしくお願いします」

「住民の避難は?」

「直撃の場合は抜かりなく二十四時間前に行います」


「僕は台風の事分からないからよろしく頼むよ」


「かしこまりました」


・・・・


1月8日。


五時起き。クランの仕事始めだ、張り切って行こう。


アルムさんと久々に模擬戦すると向かい合って照れる。しばし睨み合うが、どうという事もなくぶっ飛ばされて教室に走る。こんな日々もいつかは懐かしくなるんだろうか。


クランに着くとさっさと名札のプレートを土魔法で生成。管理棟の職員ボードに俺のPTとイコアさんのPTの名前札を付けておいた。


読み書き教室の入り口に色々な植物を組み合わせたリースの様なまじないがしてあった。視るとけがけ、キツネ獣人のマルとインダ(夫婦教官)が獣人のまじないを各施設にしてくれてた。獣人は新年にこれが有るだけで気分が違うみたいだな。事務員のヘルプの先生は各受け持ちの教室に四人揃ってたので、予定通りと九日までヘルプを頼む。


読み書きの単語を教えて、各自が書き取り練習に入った頃を見計らってリナスが入って来た。十二月平均の収入を持って来たって事は休み潰してくれた?視たら休日当番の日にやってくれていた。集会の話の種に持って来てくれてた。一日一人平均の10%収入は外部PT銅貨8.9枚(890円)、宿舎組が銅貨5.9枚(590円)だった。


宿舎組の中間層で月に小金貨一枚弱(20万円)の稼ぎだ、充分!


七時からの集会で恩寵取得の褒章を皆に渡してから近況報告。今年は俺が忙しくなって読み書き教室もままならなくなってくる事を伝えて副クランマスターを呼んだことを伝える。副クランマスターを紹介する。


「ここはロスレーン家とミウム家のお墨付きのクラン雷鳴だ。対外的にも副クランマスターには、貴族を招聘しょうへいした。実力は俺と変わらない、俺がいない時はこのイコア・シャロットになんでも言え。大森林や大山脈で危急を知らせたら、このイコアのPTがお前らを助けに行くからな、普段から顔を覚えて貰えよ」


「イコア、なんか喋っておくか?」


「アル様の命を受け、このクラン雷鳴の運営に関わらせて頂きます、イコア・シャロットです。騎士団の部下を連れて参りました。みなさんのお役に立つように管理棟に控えます、何かあれば管理棟の部下か私に申して下さい。アル様がご不在の際には私、イコアが八位教室の読み書きをリズ様とお教え致しますのでよろしく願います」


「それでは紹介する。イコアPTの七人だ」


・イコア・シャロット(32)

・ライム・ノート(30)

・ヨード・テリオス(29)

・ファイナ・スコイ(29)

・アンジュ・オーブリー(26)

・エバ・リース(26)

・クリステル・バルビエ(24) 管理棟、駐在員。


「名前で分かる通り皆貴族だ。メルデスで貴族から因縁付けられる事は無いと思うが、貴族の事は貴族に任せろ。とにかくその場は逃げて管理棟に駆け込め。イコアを頼れ、分かったな!イコアがいない場合はクリステルが管理棟に駐在する」


「それと、新年十日まで雷鳴商店で武具の半額セールだ、知っての通り中古の武具は半値が相場だ、今回は更にその半額で買える。新品なら小金貨一枚(20万)する筒丸どうまる(胴を囲む鎧)が中古で銀貨五枚で買える、新品も中古も手入れしたら防御力に差は無い。手甲、脛当ては四肢で一番怪我しやすい場所だ、稼いだ金が有るなら少しずつでもそろえて行け」


「今日の新年初日に合わせてリナスがクラン収入を集計してくれた。12月の宿舎組の10%は一日銅貨5.9枚(590円)だ。去年の銅貨4.3枚(430円)とは三割も収入が上がった。中にはペーパー級の依頼で稼いだPTも居ると思う。クラン雷鳴の中間層は一日平均大銅貨5.9枚(5900円)の上がりをギルドで得ているって事だ。それ以上だった奴はおめでとう。それ以下だった奴は周りをもっと良く見て稼げ」


「教官もよくやった、本日でちょうど一年となる職員がいる。一年を迎えた職員は大銅貨六枚を俸給に加える。ラーナ婆ちゃんも、リネもマルス(子ぎつね兄弟)もだな。 各職員は一年を過ぎるごとに毎年大銅貨六枚の俸給が上がる、職員もはげめ」


「教官から知恵を教われ!技術を盗め!足りない物は何だ?自分を磨け!己を磨け!誰も助けてくれない大森林や大山脈で己の力で輝けるよう努力せよ!自分にて。中途半端な鍛錬で時間を潰す事、それは自分に負けると言う事だ。剣の一振りに集中せよ。努力してモノになる頃には金の心配など要らん。眼をそらさず進め。以上、新年も稼げ!解散!」



雷鳴食堂に行くと、ベルがカギをフリフリする。


「お!扉が出来たのか?(笑)」

「昨日出来ました、合鍵はリナスさんに渡しました」

「うん、そんでいい」

「ありがとうございました」

「野郎の尻の出来物は食堂の机で治せばいいぞ(笑)」

「(笑)」

「朝プレート!」銅貨四枚渡す。


食べてから診療所に行って、雷鳴診療所の看板を作っておく。管理棟に行ってボードのベルの名札の前に雷鳴診療所と入れておく。数えたらクラン雷鳴の運営スタッフは101名になっていた。

(アルム、クルム、シズク、イコアPT七名、診療所ベル)


・・・・


7時半にヘクトに跳び、先にやる事だけやっておく。


オスモさんにいきなり囚人が増えたことを伝えると大混乱になる。奴隷鉱山の中心地に収容所を設けて、保存可能なドンゴロスの袋のパンと野菜を100袋(5トン)と塩を支給して守備隊と鉱山担当の執政官が来るのを待つスタイルにする。


移送する囚人は1600人。モルドへ600人、ヘクトへ1000人だ。坑道が整備されるまで、抗夫ばかり増えても効率が悪い。



鉱山の近くの平地に100坪のキューブハウスを10棟建てる、公衆トイレとクリーン施設も作って、かまども作っておく。収容所は入り口が狭く、直接寒風が吹き込まない様に公衆トイレの衝立みたいな風避けを作る。街灯紋で中を照らすようになっている。



そのままモルドの執政官事務所で手続きして銅鉱山に奴隷の収容所を作って暖房紋を付けておいた。モルドは100坪のキューブハウスを6棟建てて同じ様に公衆トイレとクリーン施設に食料を置いてかまどを建てておく。一人二畳で雑魚寝の体育館だ。


代官の書類の通り、後で600人の鉱山奴隷を銅鉱山に連れて行くと言ったらモルドの守備隊が大騒動になった。


隊商や冒険者でさらわれて盗賊に囲われてたお姉ちゃん達は囚われた時期の記憶を記憶喪失だったと改変してゆかりの場所に連れて行った。盗賊の世話しかしてないから無罪だ。



十時から囚人の移送を開始した。


洞窟を空にして皆で手を繋がせてヘクトの収容所へ連れて行く。連れて行くごとに寝床や私物の衣類をドサッと置いて行くが暖房紋有りでナレス程寒く無いので大丈夫だろ。


鉱山労働の指示があるまで仲良く暮らす筈だ。


昼はナレスの王都ギルドで盗賊の賞金首のリストを見る。


俺が捕まえた奴を突き出すと死刑になるので、討伐済みで死んだとギルド長に二位のタグとナレス王家の指輪を見せて申し出た。王都を襲う謎の凶賊を突き出した俺だから納得してもらえた。首実検は出来ないので討伐報酬も要らない代わりに賞金首リストを廃棄してもらった。


昼を過ぎたら、また盗賊を連れて行く。連れて行ったら私物の衣類をドサリと置く。馬やロバやヤギが居たらタナウスの村に連れて行く。


目の回るような往復でいい加減イヤになった。街中や村で待ってる盗賊達もお迎えに行くんだよ。何でこんなに腐ったのが多いのよ。ナレス全土の盗賊だから小粒の盗賊でも固まると大きい。ロスレーンが以前300人弱だったから全国ならそんなもんか?


22時にハウスに帰るとクルムさんが裁縫してた。


「遅かったわね?」

「盗賊や人さらいが一杯いて遅れちゃった」

「鉱山に送ったの?」


「うん、鉱山がパンクするから収容所に入れて来た」


「パンク?」


「うん、いきなり1000人とか連れて行っても鉱山で養えないの」


「1000人!」


「全部で1600人だけど」

「は?」

「明日はもっと増えると思う、4~500人」


「・・・」

「もう寝るね、おやすみー!」


・・・・


1月9日。


朝の鍛錬でアルムさんに振ってみた。


「大暴れしない?」

「え?何それ(笑)」


「人さらいや、麻薬や悪人の溜まる街があるの。4、500人居るから殺さなかったら好き放題に暴れて良いよ」


「えー!大丈夫なの?守備隊や騎士団来ない?」


「来て止めるなら、そいつらもぶっ飛ばせばいいんだよ」


「えー!」


「そんなアホに今まで何もしないのが悪い、大丈夫だって!そいつら盗賊よりひどい事してるから」


「そうなの?」

「そうそう!」

「そんじゃ行く!」


「街の中で、民衆に見せ付けてぶっ飛ばすからね」


「わかったー!」

「そんじゃ、教室行って来るね」


教室終えて帰って来るとクルムさんが何か言いたげ。


「アルムさんから聞いたよね?」

「どれほど悪い奴らなの?」

「そこら中から人をさらって売ってる奴ら」


「危ないんじゃないの?」


「そりゃ、危ないかも?でも恩寵を神様に返すから冒険者より弱いかもよ(笑)」


「・・・」


「大掃除だよ。悪徳の街だってさ(笑)」

「悪徳の街?私も行くわ!」


「そう言われる程にワルが逃げ込む街だから殺さなかったら何しても良いからね!守備隊が止めに来ても僕が止めるから気にせずやって」


シズクがムフー!とやる気満々だ。あんた一番安全だろ。全員ミスリルの鎧だ。フードも被って怪しい風体。皆には身代わりの珠装着。恩寵ブーストOK!


「跳ぶよ!」

人攫ひとさらいを追ってチノ共和国へ跳んだ。


すぐに街中の身代わりの珠を奪う。


さらいのシンジケートを辿たどって次々と恩寵を奪う。多重視点に5kmの距離など関係ない。大概たいがいの恩寵の効果範囲外と思う。


手始めに一帯を〆る元締めの事務所、ここもそうだな。


「こっから行くよー!」

「はーい!」


事務所に入って「こんにちわー」と言いながらぶっ飛ばす。窓ガラスを突き破って事務員が飛んで行く。


「何だお前たちは!」

「お前たちが何だー!人攫ひとさらい共がー!」


お礼参りとすぐに分かってインテリが悪人面になる。


「誰の所に来たか分かって来たんだな?」


「知らなきゃ来ねーよ!」


ドコッ!と蹴ったら窓から通りをコロコロと転がって行く。


「全部?」聞きながら投げ飛ばすアルムさん。


「全部全部!」飛んで行く悪党の容態を見るクルムさん。俺の考えを読んでボーリングのピンの様に三人をつるで拘束するシズク。


ぶっ飛んで行く奴らの悪行を視たら、また怒りが沸々ふつふつと煮えたぎって来たので腹いせに徹底的にボコボコにした。


典型的なマフィアの集団だった。気に入らない奴は殺す。文句言った奴は殺す。逆らう奴は殺す。ムカついたら殺す。もうね、好き放題にやってる奴らね。


もうすでに相手に恩寵が有ろうが無かろうが関係ない部類の無茶苦茶な剥奪をやっていた。視えた瞬間、恩寵も何も確認せず相手の恩寵の有効範囲外から奪って隷属。


5kmも手前から恩寵を剥奪 はくだつしていく。


ボスは貴族のクラブにいた。街の領主や貴族や裏の名士の集まる社交場だ。ボスを取り巻く煌びやかな老若男女が楽団の奏でる音楽の中で贅沢な朝食を取っている。


子供が入って来て、ボスの食べてる朝食を横から手づかみでムシャムシャ食べる。同席の領主がボスと俺の関係を探る。


「領主様が何の悪だくみしてんの?」子供が聞く。


領主が目をいて固まる。

余りの無礼に店中の者が動きを止める。


隣りの席の護衛が俺を店の外に連れ出そうと手をつかみに来たので、そのまま腹パンでくの字にしてから、よっこらしょとボスのお客の領主に投げてやる。


領主様が椅子ごとひっくり返って転がった。


!と思ってる奴もぶっ飛ばす。


その名士の集まる高級クラブのオーナーは人攫いシンジケートのボスだ。その権力に何も出来ずに従うだけの人々が集う。きらびやかなボスを盛り立てる舞台に冒険者の子供が現れて、あつまってる小悪党をボコボコにする。


ボスまで放心状態だ。

クラブを守る護衛達が店に雪崩なだれ込んだ瞬間にアルムさんにぶっ飛ばされて外に飛んで行く。優雅な庭園に貴族も給仕もウエイターも護衛もぶっ飛ばされて伸びている。隷属済み!


誰も居なくなったので店に残るボスを店ごとボコボコにする。ボスを投げて店を破壊する。飛ばされたボスにヒールを掛けてクルムさんが死なない様にしてくれる。領地だろうが街のドンだろうが容赦しない。


店が崩れ出したので、庭の奴らを道まで蹴りだす。


余りの破壊の凄さに道には黒山の人だかり。


財産をハイエナする奴や後を継ぐ者が現れてはいけないので、街の者に組織の最後を見せ付けて行く。強奪掛けて全てを奪い店に火を付ける。

ボスを抱え上げてそれを良く見せてやる。


「こんな事してタダで済むと・・・」

「済まさねぇから来てんだよ!」

往復ビンタだ。店を一気に高温で焼いて消しておく。


「ほら、お前の店無くなったぞ」


ヒール掛けて街中引きずって次の事務所に行く。


余りに酷い奴らなのでタナウスでむちでシバいてピラミッド作らせたろうかと思ったほどムカついていた。それは人の為にならないと最後の自制心が却下した。


守備隊が来たら有無を言わさず隷属して汚染されてたらぶっ飛ばして鉱山だ。まともなのは悪を見逃せない様に隷属した。街の領主を抱き込むマフィアをさばく者など誰も居ない。ボスを取り巻く腐った領主や貴族ごと俺が隷属して連れて行く。


ボロボロのボスを連れて、事務所巡りで潰して強奪していく。ぺしゃんこに潰して行く。経営する真っ当な店は手数料にもらっておいた。


お陰で人攫い検索に引っ掛かる者は居なくなった。この街の男爵家に連なる者を潰して行った。盗賊と繋がる武官、文官も全部隷属した。


ナレスとチノの国境線。悪徳の街と揶揄やゆされる土地。最下層の手間取りのチンピラまで悪に絡む者はその日に全て街から消えた。



・・・・



隷属したシンジケートを連れて全体の領地を持つ子爵領主の所へ行った。共和制の国って領主が自治権を持っていて盗賊が脱げ込むと他領はどうしようもないらしいな。


領主をぶっ飛ばした、近衛も守備隊もぶっ飛ばした。他の国や領地から逃げ込んだ悪人の取り締まりを「善処する」と言葉だけで全部無視してやがった。男爵領から献上される利益で自領が富めば何でも目をつむる奴だった。為政者の皮を被った悪党は全部隷属して連れて行く。責任取ってもらうだけだ。悪党の子供だけが知らないので見逃した。執事長も領主の命で悪人と連絡取ってるので全部同罪にした。


~~~~


途中で三十分程、PTを休憩させて、リズと使用人を迎えに行った。


「ちょっと忙しいの」

と言いながら別れを惜しむ王様以下の家族に伝える。


「街路灯はナレス全ての領地の街や村に付きました。三銃士の宝は国に行き届きましたよ。明日からの謁見えっけんでは王家の威光で全ての領地の街や村に街路灯をたまわったとお伝えください」


「え!」


「後、ナレスに街路灯を作って回っておりましたら、盗賊が襲って来ましたので討伐とうばつしました。盗賊も減った筈です」


「それも不徳ふとくの致すところで済まぬな」


人攫ひとさらいもいたので討伐とうばつしました、ご安心ください」


「重ね重ね済まぬ」


「それでは、失礼いたします」

「うむ、アルベルト殿下。リズを頼む」


リズには明日の教室で会おうと声を掛け、チノに跳ぶ。



・・・・



夜まで掛かって奴隷を解放してやった。チノ共和国は主人の名前入りの焼き印が首に押されて奴隷にされていた。奴隷紋も無く単純に暴力での奴隷支配だ。焼き印を消してさらわれた場所まで連れて行った。ボスの財産を山ほど持たせた。


余りの酷さに呆れて、チノ共和国の国主をぶっ飛ばしに行こうと思ったが、田舎の領主や、ましてや盗賊や人攫ひとさらいの街なんか絶対知らんよな?と思って我に返った。


さらわれて泣き叫ぶ女の子や手枷てかせめられて売られて行く男の子。大体40歳程の者まで暴力と恐怖で脅して売り払う。騒ぐ者には目の前で殺して見せる。牛や馬の様に焼き印を押して奴隷を飼う、そんな事を平然とやる連中だった。


人の母から生まれて来た事を疑う連中だった。



・・・・



ヘクトの収容所に約五百人が増えて、収容所を建てる。こんな奴らは反省する様に、一般の奴隷紋刻んで罪を償う苦役と知らせて鉱山に送り込む。ここまで怒れたのは久しぶりだ。


「たくさん捕まえて来ました」

とオスモさんに意気揚々と報告する。


「どのぐらいの数です?」

「ちょっと多かったのでモルドにも連れて・・・」

「モルドにも?」

「少し連れて行きました」


「モルドは受け入れを?」

「はい、ちゃんと坑道の近くに自活させてます」

「ヘクトは何人です?お話では600人でしたよね?」

「ちょっと多いの、その・・・1500人?」


「・・・」


そして俺はオスモの石頭にぶっ飛ばされた。


俺も頭に来たのでオスモさんを連れて収容所に行き、何員殺したと、その時の悲鳴がどうだったと大喜びで自慢する証言を十人程聞かせて回った。オスモさんは耳を塞ぎたくなる極悪非道の悪事に頭がしびれて、余りの怒りに全て極刑を言い渡し、一番古くて地下に潜る過酷な岩塩坑に送り込んだ。


オスモさんは以後、話を良く聞いてくれるようになった。


罪人の苦役の割り振り任務を与えられた守備隊と執政官は岩塩坑口近くの囚人収容所に着いて驚いた。全て凶悪犯と聞いていたが盗賊1500人とは盛り過ぎと本気にしてなかったが収容所には本当に1500人生活してた。新たな坑道が三つ回る程の囚人だった。



コルアーノの悪人は狩れない。領地の管轄が違うらしい。だから他国の奴らを内緒で狩って連れて来る。


世の中は矛盾が多い。




次回 248話  春の夜の夢

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