第245話 忠臣の底力
1月6日。
朝アラームで起きたら、盗賊の洞窟だった。
0時近くに襲われて眠かったがアルは前向きだ。冒険者のお姉さんに授業料を払った気でいた。悪意なく可愛がりに来る気配遮断が上位の存在など想定外にも程がある。敵じゃない分始末に負えない。
カーテンをめくって大部屋に出る。
占拠した8畳間から出てきたら洞窟の大部屋が暖かい。人いきれで暖かかった。ここ普通に暮らせちゃうじゃん。
なんて思いながら洞窟を出ても真っ暗だ、星明りで浮かび上がる雪が妙に白い。取って返して昨日の残りのキジ鍋を温めてもう一つ鍋を出して大きなダチョウの卵をスクランブルエッグにした。
匂いで起きてきた奴にもスクランブルエッグとパンをやる。
キジ鍋から具を
洞窟を出る前に言った。
「新年だ!お迎えが来るまでのんびり暮せ!」
雪明かりの中、飛空艇をポコっと出すと脚が雪に埋まる(笑)
上空に上がると昨日作った街灯が明るくポツンポツンと集落や街を示す。夜空の星の様に冷気にまたたく光が北へ続く。700m上空に上がって地平線を視界の隅に入れ、光の境目の街を多重視点で検索して視る、そのまま見つけた街に街灯をポンポン生やして明るく照らしていく。ナレスの夜明けだ!
そのまま北方へ出てまた折り返す。ナレスの国を何度も折り返す。沢山の資金をもらってるので村も街も全部ポコポコ生やして灯していく。見る見る間に上空から望む地平線に、小さなアジサイの花が咲いた様に光が浮かび上がって行く。
ナレスを南北半分に分けた南側(コルアーノ側)に寄った地域に人口が集中して大きな町が多い。北に行くほど領地が大きくなって大きくなった領地にドカンと大きな領都がある感じ。北方との境界線は冬に凍ってしまう大河だ。
大河が100km圏内に視えたら折り返す。
北側だから暇、村がぽつぽつあるので20本30本立てて行くだけだ。ドカンと大きな街が出てもあっという間に1000本ほど立てるだけだ。
東が白んで来たので最後の折り返しにする。
空から見るとナレス国境線の近くに村は無い。大きな街の周りに寄り添うように村がある。こんな所まで北方騎馬民族は来襲して来るの?と驚くほど越境して来てる。冬が厳しい分だけ村は穀物を備蓄する。その備蓄倉庫を襲うみたいだ。逆らう者は殺すが、穀物を奪う時にじっとしていたら殺さない。
村が襲われるとナレスの討伐隊が出るがその時には大河を渡って逃げている。足跡を
今まで各国が討伐に進軍しても戦わずに逃げるだけなので補給路が伸びに伸びて兵站が続かず短い夏が終わる(笑)
どんな土地やねん!住んだ者勝ちだわ。
ここの騎馬民族は統治できんわ、良く分かった!
でも、宇宙人が全部連れて行くから俺は下準備するだけで大丈夫。コアもシャレを効かせて走り回る騎馬民族を馬に
うふふと笑いながら隷属して拡声魔法最大で叫ぶ。
もうね、朝から限界集落に来たちり紙交換だよ。人が居ない上に、居ても少しの人に叫ぶのが
時速300km位で飛んで見つけたら止まって多重視点で隷属して叫ぶ。700mも高空だと対地スピードはもの凄く遅く見える。そしてさすがの北方民族も凍りついた大地で針葉樹生える緯度58度近くには全くいない。地球ならアラスカの冬だな。エスキモーとかの場所なんだよ。冬に居る訳ねぇよ!そんなとこ騎馬民族も死ぬわ!暖房のきいたカプセルの中で一人突っ込む。
とにかく北方の南側の土地に60人~600人位の集落ばかり。一瞬止まって叫ぶ繰り返し。だんだん投げやりになってくる。北海道の人口知ってる?500万人居るんだよ。ここ北海道位で今、13万2千人ぐらいよ。人が居ねぇ!家畜が多い!鬼の様に多い。
こいつらアホにも程がある、すでに野生の家畜だよ。増やしたら良いってもんじゃねぇだろが(笑) 家畜の頭数が多いから毎年時期になると勝手に子供作っちゃって鬼の様に増えて行くみたい。ウケル。
家族13人で羊1000頭ってどうよ。多頭飼育の崩壊現場じゃないのか!羊毛とか売ったら普通の国じゃねぇのか。怖くなってきた。もの凄い資源だぞコレ。タナウスに持って来ちゃうの?ストックに乗らないと思うぞ・・・家畜が。
これどうなん? ロスレーンの開拓村は馬2頭でアウトとか言ってるのに馬500頭持ってる家族やヤク500頭とかヤギとヒツジは1000頭単位ばっかだ。
ヤギ200頭、ヤク60頭、馬100頭 羊200頭って貧しい家族なの?と視ると婚礼で両家が家畜を持たせた
草は有るかも知れんが塩はどうすんのよ?
検索したら、大地が塩の大地だ。イヤ、言い方が違う・・・土に塩が混じってる。塩入りの土だ。家畜が土を舐めるんだよ。そもそも海が無い大陸中央部で大気も乾燥して雨降らないから雪が無い。水気が凍るだけだ。水は氷から、土を舐めて塩を取ってる。騎馬民族は台地に深く穴掘って水入れてかき混ぜて泥水の上澄みを塩水として使ってる。
多分造山運動で岩塩層が地表に出て来て何万年も掛けて雨や雪解け水が溶かして下の土に染み込んだかも?表層は動物がそのまま舐めてる程薄い塩分になって草も生えてる。岩塩層じゃ無かったら塩湖が隆起して水が流れて行っちゃったとか?そんなだと思う。もっと北は針葉樹があるから真ん中から南の地域に塩が有るな。木が無い筈だよ!深く根を張る木は育たない、牧草地オンリーだ。
広大な土地を渡り歩く遊牧民族には神が与えた最高の土地だ。
この台地はナレスの一大放牧場になるぞ!わーい!お土産出来ちゃった!
何て言ってる間に終わった。隷属漏れで検索すると誰もいない。
14万人ぐらいのはずだ。布教漏れしてるならストックに乗せた時にコアに布教してもらおう。
「コア、今いいかな?」
(はい、何か?)
「騎馬民族の布教は終わったんだけど、人数は14万人ぐらいと思う。馬や羊、ヤク、ヤギ、ロバとか羊に乗ってる鳥合わせて1000万頭は居ると思うけど大丈夫かな?」
(現地で見て対応いたします)
「もしかしたら1人平均100匹は持ってるかも?」
(三番艦ストックで向かいます)
「ストックでも何往復もかかるかも?それと途中から叫んでゲッシュしかしてないから集めて布教してね」
(かしこまりました)
昼まで2時間半はナレスの街灯をポコポコ作って行く。さすがに村人に恩寵付与が出来なくなった。リノバールス帝国で溜めたSP(
以後は街灯だけだ。
昼になったのでヘクトの別荘に跳んだ。飛空艇を元に戻してヘクトの執政官事務所に跳ぶ。俺が顔を見せると1Fのカウンターの執政官がビク!ってするのはなんだよ(笑)
「オスモさん居ます?」
「は!只今、お待ち下さい」
すぐに代官の執務室に案内された。
「アル様!またですか?」
「またって。まぁ、そうなんですが(笑)」
「前回のアレは無いですよ!他領の罪人を
「あ!良いです良いです!ミウム伯に報告済みです、現地の代官は知りませんが領主さまが知ってますから、問題は何もないです」
「本当ですね?アル様が危ないのですよ!」疑ってる。
「本当です!嘘じゃないです」
「ミウムから問い合わせは来ないのですね?」
「何もかも僕のせいにしてくれたら大丈夫です」
「お願いしますよ!私にも家族が居るんです」
そんなにチョンボだったのか視たら、そんな前例は無く勝手に動いて良い案件では無かった。100%前例の法で動く上に、前例の無い物は領主の裁量を
「ミウム辺境伯は大叔父なので、色々と可愛がって貰ってますので大丈夫です。本当に大丈夫です!」
「え!・・・あ!ルシアナ様の?」
「そうですそうです」
「ミウム伯とも面識もあるのですね?」
「ありますあります」
「そうですかー!そうなんですかー!(笑)」
ホッとして、いかり肩がなで肩になった。
「もしかして、1Fでギクッとされたのはそれでしょうか?」
「そうですよ!他領の盗賊をうちが勝手に裁いて奴隷にしちゃったんですから
「えー!」
「えー!じゃないです!アル様!連れて来た罪人は即日裁判されてますよね?ロスレーン領では私が代官で権限をラルフ様から頂いてます。ミリス家やギシレン家の男爵領内の盗賊まで権限が無いのに私が裁いてます。本来は男爵家が討伐する盗賊をアル様が討伐してるんです。アル様がラルフ様のお孫だから男爵家は何も言えないだけです。アル様が他領の罪人と言って連れて来た盗賊はまだ盗賊じゃないんですよ!ミウム伯かその権限を持った文官が裁いて罪人になるのです。アル様はミウム伯の権限を勝手に使って盗賊だと裁きロスレーンの奴隷にしちゃってるんです。アル様が打ち首になりますよ!」
「いちいちミウムの文官に説明するのがめんどくさくて」
#「アル様ー!」
オスモさんの絶叫が執政官事務所に響き渡った。
「すみません・・・」ペコリ。
「イエ、私も興奮し過ぎました」ペコリ。
「それで今日は? 盗賊連れて無いですね?」
俺は盗賊連れてばっかみたいに。そうなんだけど。
「それでですね・・・ナレスの・・・」
オスモさんはマジギレした!
話を聞いて貰うのに隷属しようかと思ったほどキレた。1位の忠臣の底力を思い知った。シュミッツ以上だった。コルアーノとナレスの戦争を起こすつもりかー!とぶっ飛ばされた。
キレたオスモにヘクトの執政官の前に引きずり出されてミウム伯との関係と了承済みであることを直々に話をさせられた。
ナレスの件は王家の指輪を見せて念書を魔術証文で書かされ、一応引き取って貰える様になったが、
「盗賊め!めんどくさい奴らですよねー?」
またキレたオスモにぶっ飛ばされた。
黙ってぶっ飛ばされるしかない。視たら俺が近いうちに破滅すると本気で心配して怒ってる。怒られながらマジ泣ける。
・・・・
軽い気持ちでヘクトに行ったら二時間近くも説教食らって、飯どころじゃなかった。終いには領地同士や国同士の紛争の初期段階の講義にもなった。俺が如何に危ない事やってるかハラハラしてた。問題があり過ぎて、いつも受け取る大壺を拒否された。俺の仲間に見られたくないのが良く分かった(笑)
(負け惜しみだ)
「あーあ」おもわず溜息。
(アル様には関係ないです)
(え?)
(そんな人のルールはいいです)
(イヤ、人のルール大事でしょ)
(アル様だから盗賊が生きてるだけです)
(一応盗賊だって人だからね(笑))
(殺したら関係ないのに)
シェルが怖いこと言う。
(折角器に入った魂を簡単に輪廻へ返しちゃ可哀想でしょ?何年か知らないけどさ、ずっと並ぶんだよ)
(みんな並ぶからいいんです)
(いいんかい!(笑))
(まぁ、盗賊は僕と会って得したんだよ)
(会わない人は損です?)
(シェルは得した?)
(得しました!)
(そんでいいよ(笑))
(・・・)
(みんな得するといいな(笑))
(仕方無いですねぇ)
(最近シェルが偉そうに思わない?)
(えへへ)
(えへへじゃないわ!)
(まぁ、ありがとうね)
(いいえ)
14時過ぎた。さぁ!頑張るか!
ロールパンを
ナレスからヘクトへは感じなかったのにナレスに跳んだ途端にクソ寒い!やっぱ寒さの次元が違うわ。アルムさんが泣きごと言う訳だ(笑)
「ヒルスン兄様の為ならエーンヤコーラ!」
「も一つおまけにエーンヤコーラ」
何も考える事も無く、ポコポコ街灯を作って行く。恩寵付与も無く暇だからそのうちイタズラ心がムクムクと鎌首を上げて来る。
SP無いからナレスの盗賊たちから補充してオスモさんの顎が外れる位連れて行こう!念書書いたから少々増えても大丈夫だ!この三年間貯めて来たSPを他の大陸に行く前に使ってしまい(自分のブースト分は残してある)少し焦っていたので本気になった。目標を持ってしまった。
情熱の赤いバラに浮かれ、点在する村に街灯立てて占領して行く気分でノリノリで進んで行く。5万人都市でも街灯数はせいぜい1400程で物の数では無い。同時多発でタケノコの様にニョキニョキ生やしてガガガと街灯紋を刻んで行く。
機械的に街灯紋を刻みながらも並列思考で考えを巡らす。
・盗賊を見つけてはマーキング。
・タナウスの夏野菜を北半球で売り出す。
・北方の塩分を含んだ土地の放牧活用。
・神聖国発注分の岩塩の増産。
・お爺様の王都逗留は約十日。謁見に臨んで中立派パーティーで商談はしても個別に契約の時間は無い。お父様とグレンツお兄様が滞在の一か月で契約をする感じだと思う。
陽が落ちる少し前に街灯作りは終わった。
三時間ちょいで終わらせて山の丘陵地に下りた。飛空艇は脚どころか船体が雪に埋まって海に浮かんでる様だ。
人が少ないよなぁ・・・
日本の高速道路を走るとトンネルを抜けた平地には必ず家があった、自分の知らぬ土地で生まれてそこで物語を作りながら生きて行く人達の生活を想った。日本の山だらけの土地、少し走ると坂があった、なだらかな坂には家があった、坂を登りきると見下ろす眼下には必ず家が建っていた。
平和な日本。懐かしい日本。優しかった日本。
今、目の前には家が一つも無い氷原が続く。多重視点で三百六十度探せば街路灯を作った街が視える。獣人が住んでる村が視える。この雪山には狼の家族が六家族群れになって住んでいる。寒さに強い動物系の魔獣が多い。平地に住まず森や山にいる。何処の国も危険な生物を駆逐して無い、駆逐出来ないのだ。人が圧倒的に少ない。小さい国、大きい国さまざまの国があるが、全ての国に人が少ない。ロスレーン領が仮に20万人だとしても日本では市町村レベルだ。キャンディル領でも3年前に24万人居るって言ってたからなぁ。ハイランドは小さな国で60万人、日本で言う中規模の市が3つ分だ。
他の大陸は植民地があんなだったんだ、当然遅れてる所あるよなぁ。火薬と大砲持った魔動軍船を知ればバーツさんも危機感持つよな・・・文明は恐ろしいな。こんなに人が居なくても殺し合うのは一体全体どうなってんだ。仲良くしなきゃ自然や環境に殺されるわ。いや、コボルさんのタナウスもそうだったと言ってた。
やっぱ進化して精神的に一段上と言うか、一皮
飛空艇のコックピットでホットにした小壺を飲み、陽が落ちるのを最後まで眺めてマーキングした盗賊を捕まえに行った。
次回 246話 魔術士卒業
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