第244話  襲われる御子



1月4日。


クランの食堂で夕食を食べながら、先程二人と話したことを反芻はんすうする。


人生の初見殺しに気が付いて頭で考える事と、二人としゃべってる事が並列思考でバラバラに同時進行していた。


「自分が解決するのは楽しいのは分るけど、人が解くのを見てるのも楽しいの?」


「そうだよ。クルムさんがムストリウ王国のエルフ村にエリクサーやシロップの秘伝を教えに行くと言った時は嬉しかった、あそこに世界樹置いて本当に良かったと思った」


シズクが貼り付いてきた(笑)


「だって世界樹が無いと作れないじゃない(笑)」


「そうなんだけどさ、元々あのレポートはハイランドからもらって来たんだけど、錬金術とか薬師とか料理とか興味無くて聖教国に持って行ったのよ。アルノール大司教や導師がハイランドの製法を確認してレポートにして僕の所に来たんだよ。興味無いからクルムさんに渡したら巡り巡ってそうなって行くの、自分が動くのも面白いし見てるのも面白いんだよ」


「ハイエルフの尊大な引用が無い訳よ!簡潔明瞭かんけつめいりょう、あの二人が書いてたの?(笑) アルのお師匠だからレポート読んで同じ薬を作ったと思ってた」


「そうだよ、お師匠様だから簡単に解いちゃう(笑)」

「面白いね(笑)」

「うん」


反芻はんすうして気が付く。


遅いけど・・・このプレート食ったら導師の所へ行くか!リズや使用人、ナレス王家まで見せてあの二人にタナウス見せないとかありえない。



・・・・


20時。


アルノール卿と導師が研究室で一杯やってた(笑)


「導師ー!」

「お!こんな時間にどうした?」

「新年のご挨拶に来ました」

「この時間にか!常識も覚えんと・・・」

「これ!」ドーンと大壺出して説教を打ち消す。


「おう!すまんの!アルのお陰で一度もパーヌに買いに行っておらんわ(笑)」


「それもどうなんですか!(笑) レンツ様が二度と持って来ぬと言ってましたよ」


「(笑)」


「酒を持って来る時間には遅すぎるのう?」

「前借で一月の俸給貰いに来ました」

勢いで言ってみた!(笑)


「お主!十日程前に来なかったか?」

アルノール卿がむせてゲフンゲフン言い出した(笑)


「とても忙しく、取りに来られないので(笑)」

「新年のこの時間に来たついでに前借か!(笑)」


師匠の分も一緒に前借で小金貨50枚くれた。


「お二人共、面白い物見ませんか?」

「何じゃ?」

「見るまで内緒(笑)」

「行こうでは無いか!面白いんじゃの?」

「御子様の面白いは別格ですからな」


・・・・


タナウスの王宮に跳んだ。


「む、夏。違う大陸か?」

「さすが導師!」

「何を言っとるか!(笑)」

「こちらのテラスで街が見えますよ」

「ここは暖かで風が涼しくて良いのう」


メイドがお茶を入れてくれる。


「御子様、ここは?」


「神教国タナウスです。僕が作ってる国です」

「は?神教国・・・」

「何じゃと!」


「神の啓示で、ネロ様も認めてくれました」

「「え!」」


「すでに国からうとまれ、王から付け狙われる忠臣と家族四百人を国民にしました。今月中には土地が凍る国の騎馬民族を連れて来ます、行き場を無くした者の楽園を目指してます」


「なんと!その様な」

「ふむ、啓示なら仕方ないの」


「そろそろ世界を見て知る時が来たと思います。今年から他の大陸に打って出ます(笑)」


「おほほ!(笑)」


「打って出るとは、大丈夫なのですかな?」

「苦しんでる民を救うだけです(笑)」

「救うだけで済むのか?帝国の様な国じゃろ(笑)」

「その時はしょうがないですね(笑)」


「当面の敵は宗教国とします」

「え!」


「他の大陸には色々な宗教国があるみたいです。聖教国の様な善良な宗教国ばかりではありません。民を扇動して武器を取り神敵を討てと攻め込む宗教国もあります」


「そのような・・・」


「神の名をかたる国は要りません」

「・・・」


「聖教国と同じくネロ様、デフローネ様、ネフロー様、ウルシュ様、アローシェ様、ユグ様をまつる国がそれをやっています」


「なんと!」


「麻薬の様に人を不幸にする宗教国は改心させて参ります。本来の神の教えを広め、人の生き方を体現する聖教国の代わりに神教国タナウスが天罰を下して参ります」


「ほう、よう言うた!(笑)」


「神教国が他の大陸の宗教国と交戦状態になると、以後聖教国と繋がっていると聖教国が危ないです、当然コルアーノのアルベルトが国主ではコルアーノや中央大陸が他の大陸から攻められる可能性があります」


「なるほどのう」


「それはですね、この神教国が知られていない島に有るからです。どこにあるのか分からないので攻められない国です。繋がりを知られたらここを攻められない宗教国が中央大陸に向かいます」


「ふむ、絶対に知られてはならんの」

「そうです。天罰で偽宗教国を亡ぼす国です(笑)」


「物騒な国じゃのう(笑)」


「物騒って!ベント卿!よろしいのですか?神をも恐れぬ所業に聞こえますぞ。大変な事ですぞ!」


「神をも恐れぬか、こ奴は神の御子じゃからの(笑)」


「そうですよ!聖教国の始祖セリム様と同じですよ」


「それは・・・確かに」


「うむ、分かった。儂もこっちに移ろう」

「え!導師。何言ってんですか!」

「儂がおらんでどうする!」


「導師はコルアーノや聖教国を守ってて下さいよ!守らないとご先祖が悲しみますよ!」


「何を言っておる!神の啓示に行動せずどうする」

ぎゃー!とんでもない事に・・・どうするよ・・・。


「アルノール卿、同席するとはお導きかも知れんぞ」

何誘っとんねん!反戦大司教が何すんだ、誘うな!


「イヤイヤイヤ!見せただけです、来なくて良いです!」

「来なくてどうする!」


「来なくてもあのダンジョンで知り合った先史時代の精霊も付いてますので大丈夫です」


「む!儂を関わらせぬつもりか?」

「そんな事無いです!そんな事言って無い!」


「考えが甘いわ!御子が危険に飛び込む時、使徒がそれを守らずどうとする?神のお導きに逆らうと申すか!戦争はそんな甘い物では無い。現場で使徒である儂が教えてやる」


勘弁して!なんかスイッチが入っちゃった。コルアーノ王が頼まなきゃ戦争行かなかった癖によく言うわ、どの口が言っとんねん。しょうがないなぁ・・・。


「御子様、教皇様に謁見えっけんを!」

「あ!あぁ、言わないと不味いですかね?」


「御子様は聖教国の次期教皇ですぞ!」

「は?」

「それはまことか!」


「イヤ、聖教国の皇太子に認めた話ですよ。違いますって!」


「いえ、それを認めるに当たり教皇様と7大司教、神聖国の7大司教の15名が署名し、聖教国次期教皇は御子様に決定してます。私も署名しております」


「イヤ!それは不味いです!これから戦うのに!」


「不味いと言われても決定事項です」

「そもそも初めて聞いたんですけど?」


「御子様の婚約で九月には決まりましたが」

「えー!」

教皇様に会った時はまだ決まって無いのか。


「あ!あの書簡はそれか!」

導師運んだんだ(笑) 視たら神聖国の教皇が直々に導師に渡してた。


「まだ教皇様はピンピンしてるから、白紙にしましょう」

「なりませんぞ!周辺国には打診しております」


「・・・」

「・・・」


「今、忙しいのでまた今度伺い・・・」

「アル!明日、教皇様の所に顔を出せ!良いな!」

「・・・」


明日騎馬民族の布教行くのに・・・クソめ!


「お主一人の問題では無い、分かったな?」

「・・・はい」



・・・・


ハウスに帰ると23時だ。


新たに生まれた聖教国へのめんどくさい挨拶に頭が痛いが、今日のチリウからの移民成功でハイテンションだ、眠くない(笑)


就寝前にベッドで作戦を考えた。


・取り合えず次期教皇に決まったならその方向で行く。教皇様はまだ30年は楽勝で生きるだろ。時間が有れば何とでもなるわ。


・導師とアルノール大司教は聖教国の守りに必要と教皇様に言わせる。引きこもりが二匹来てどうすんだ。研究してたら平和だろ。


・聖教国と皇太子の話はそのまま中央大陸で推移させる。秘密裏に神教国は動き出す。どうせ言うつもり無かったから神教国は教皇様だけに知らせたら良いだろ。


導師とアルノール大司教がギャーギャーうるさいので、明日は二人をシカトして教皇様に会う。二人が知った時には既成事実化して口を封じる。


明日は話を速攻で終わらせて、北方行くぞ!



・・・・


1月5日。


朝の五時に起きて冒険号へ跳び、モンスターと戦う。魔法抜きで戦うと拮抗して経験値が上がるのを実感する。ホントギリギリの攻防だからだ。三年前の模擬戦、暁のガルスさん並みに拮抗してる。


早いとは思ったが、自販機のモーニングセット(ロールパンにベーコンエッグにスープとサラダと紅茶)を食べて聖教国に跳ぶ。


未だに聖教会のトイレに跳んでいる。


教皇様まだ執務室には居なかった(笑) 7時は早すぎるわな。

検索すると中庭を皇妃様と散歩してる。行くか!


さも偶然の様に行く手にすれ違う。


「あ!教皇様!おはようございます」

「御子様こそお早いですな、仕事ですかな?」

「教皇様にお伝えしたいことがありまして」


深刻そうに言う。


「ほう、これから朝食だが一緒にどうかな?」

「お願いします」食って来るんじゃなかった。


「食事の席に着くなり話しかけた」

「ご内密に願います」

「む?大事かな?」

「聖教国の大事ではありません」

「ほう、それは何かな(笑)」


「神の啓示がおりました」

「「え!」」夫婦二人がユニゾンする(笑)


「他の大陸を救えと」真赤な嘘。

「???」


「他の大陸、この大陸は北の中央大陸と言われてます。この大陸以外の不遜な宗教国に天罰を与えに行って参ります」


「何!」


「教皇様、この世の大陸は乱れ兵器を開発し他国に侵略し、植民地の奴隷とする大国がございます。同じ様に宗教国を名乗り神の教えと民を扇動せんどうし、武力で他の国を侵略する宗教国がございます。その様な国はもっての外。神の使徒が天罰を与えに参ります」


「・・・」ポカーンとしてる。


「昨日その様な話をして私が国を作ってる事をアルノール大司教様に伝えると、教皇様に報告せよと言われました」


「国を?」


「はい、宗教国とは厄介なもので、この中央大陸で聖教国と言えば誰しもうなずく立派な国。他の大陸では宗教国の軍門に下った国は手先となって他の国を襲います。私がその様な国の宗教国と戦争を始めますと、手先の国も含めて敵対する事になります」


「だから誰も知らぬ海の上の島に国を作りました。軍船を持たぬ国は近付けません。しかし必ず攻めて来ます。聖教国と同じ平和を求める宗教国ではありません。従わぬ者は神敵と認定され、人の欲望のまま侵略をして大きくなる宗教国なのです」


「私が聖教国と繋がりが有ると分かれば、この中央大陸に攻め込んで来る可能性もあります。コルアーノの出身と分かればコルアーノも狙われるでしょう」


「神教国タナウスが建国するまでに、目に余る宗教国に天罰を与えて真っ当な聖教国の様な国に変えたいのです」


「神教国タナウスは最強の宗教国家をうたいます。神教国の教皇はアルベルト・ド・カミヤ・メラ・タナウスと名乗り。聖教国との関連を否定し武装宗教国と戦います」


「世を敵に回す間は、神教国と聖教国は無関係にして頂けないですか?皇太子としてのアルベルト・ド・ミラゴ・イ・クレンブルは聖教国にいる存在として、秘匿して頂けないでしょうか?」


「武装する宗教国を敵に回して・・・イヤ、止めよう。神の御子、使徒としての啓示なのだな?」


「はい、人の世の混沌を潰して参ります。始祖セリムが行った様に、その意思を継ぐ者として暴れて来ます。少なくとも宗教国が武器を取って他国を侵略する現状を変えて参ります」


「思えば最初に会った時もそうであったな(笑)」

「え?」


「奴隷証文で縛られた民を啓示で知り、助けておる最中に帝国の奴隷を知って聖教国に来たと言ったではないか」


「あ!そうでしたね(笑)」

「それが、御子の役目では何も言えぬ」

「ありがとうございます」


「それでは、御子が参った時には皇太子として扱えば良いな」

「神教国など野蛮な国は聞いたこともございません」


「「(笑)」」


「承知した。神の御子の啓示とは苦難が伴うものだな」


「どこから秘密が漏れるか分かりません、知ってしまったベント卿とアルノール卿は聖教国の守りに必要な方、口止めと共にしっかりと押さえておいて頂けますか?」


「ん?」


「神の啓示と聞いて戦う気満々だったので・・・」

「それは聖戦と言う事だからな、無理もない(笑)」


「お力が必要な時には聖教国では無く個人的にお願いに上がると申して頂ければ幸いです」


「儂も力になるぞ」


「ありがとうございます。何かあれば個人的にご相談に参ります。聖教国の教皇様としては危険な思想の神教国には関わらない方がよろしいかと思います。すでに宗教国ではございませんが国に追われた難民は迎え入れてます。今年より各大陸の宗教国に戦いを挑み、虐げられる者は難民として受け入れて参ります。難民の楽園、神教国タナウスには聖教国の教皇様は関わり合わぬ様に(笑)」


「御子様、御武運を」


「ありがとうございます。聖教国に何かございましたら相互通信機で連絡を下さい。皇太子が駆けつけますのでご心配なくお願いいたします」


「うむ、その様な事は想像もつかぬがよろしく頼む」


「それでは皇妃様も朝の時間に失礼いたしました」

「ご立派なお考えに賛同いたします」


「しばらく、俸給を受け取るだけの存在になります(笑)」


「(笑) 気を付けてな」

「はい」



・・・・


取り合えず話は付いた。

次期教皇の話に触れない意味も分かっただろう。早急な話じゃないんだ、10年先には笑って話せるさ。


(タイム:8時半)

「良い時間じゃないのよ!」

と言いながら俺はナレスの郊外に跳んだ。

「おほー!冷たい!」

ミスリル鎧にバラライカとマントで飛空艇に乗る。


北方行く前に王都から縦断する街と村に街灯を付けていく。10トンの宝石と40トンの金塊含有率96%の価値は、88%のコルアーノ金貨換算で320万枚超(1兆6千億円)だった。


これが1/3の財宝って途轍とてつもないな。どれだけしぼり取ったらこんな金が。あ!領の財政とかと比べたらダメだ、国レベルで戦争して国レベルで略奪りゃくだつしたらそうなるんだよ。あのネズミで滅んだ国も凄い量だった。


明らかにボッタクリすぎだった。目分量は怖いな。お陰で国中の街灯を作ってもボッタクリ罪は消えないことが分かった。冷や汗を流しながら高度を上げて見通し距離を上げるが曇天で暗く見通しは悪い。視えたら多重視点で作って行く。


一時間後にナレス北方に出た。真冬で南端に十人ぐらいで住む円型のテントや住居馬車が固まった移動村落が見える、遊牧民そのままだ。この集団はナレスの村で家畜と交換して食料を手に入れる真面目な部族だな。


しかし、真面目だとか不真面目だとかは関係ありません。こんな過酷な土地に住む必要ありません、大規模窃盗団まで編み出して送り込むほど冬に困窮こんきゅうしてるなら拉致らちします。


少数が大量に集まった部落が多いなぁ。建ってるテントと住居馬車の数で人数分りやすいわ。視て一瞬で隷属して布教していく。ピョンピョン跳んで隷属していく。三万から四万近くの騎馬民族と言うけど実際何人が北に暮らすのか分かんない(笑) 固まってくれたら簡単だけど、固まったら飢えるから点在してる。大集団にならないエルフや獣人と同じ方式だ


モンゴルと言うより気候的にスウェーデンかフィンランドに似てるかも?乳製品はバター系にしてカロリー増して摂取してるわ。土地と気候が農耕に適さないから全部牧畜になっちゃうんだよ。


多い部落は六百人だった。一軒八人の家族でヒツジ二百頭とか持ってんの。馬持ってる家族や、ヤギ持ってる家族、ロバ持ってる家族、ヤクっていう寒さに強い牛の三倍でかいの持ってる家族が点在して一部落になってる感じ。


ちとマテ!なんで羊の一頭一頭にコモラン(鳥)が乗ってんだ(笑)

検索したら・・・ここのコモラン北方の鳥だわ、寒い土地に順応してる。


凄い事が起こってた。北の大地は木が生えないからコモラン止まるところが無い。ヒツジの背に毛が一杯生えてるからコモランが暖を求めて喜んで止まる。飛ぶと寒いからふくら雀になって羊の背に引っ付く(笑)


この辺・・・冬は夜-20℃とかになるみたい。そして朝に凍死するコモランを食べるみたいな。襲うと逃げちゃうから極寒で死んだら食べるみたいね。コモランも襲われずに温かい羊の上にいられるからお互いに良いみたい。


羊の数=コモランの数だ(笑) サメとコバンザメみたいやな。


何て言ってたら、すでに四万人超えてるぞ!あの盗賊の情報とかなんだ(笑) 数がいい加減にも程がある。


馬は荷役の軍馬で使う北方馬の黒王号みたいのだ。荷物引かなきゃある程度走るのも早いんだな(笑) それが百騎、二百騎で来たら周辺国の村なんかこいつらの餌だわな。遊びに行く感覚で穀物を略奪に行ってるわ。周辺国も追撃隊出してもどこの部落か分かんない上に囲まれたら全滅するから手が出せない。凍傷が日常茶飯事の真冬で追撃隊など死にに行くようなもんだ。


まぁいいや!布教するし。大人しくなるわ。


高空から見通し距離で多重視点交えて現認したら眼の独壇場で千名だろうが一瞬で隷属して逃がさない。皆公平に布教して、お迎えが来るまで固まって待ってろと言って回るだけだ。


と言うか・・・北方民族絶倫か!年子が十二人とか作り過ぎだろ!冬は励む季節なのね。六歳以上の子は下のお守が仕事だよ。

そりゃ増えるわ!これ十万人以上いるぞ。


南側の国境付近に、集落では無いけれど、五、六百人の集団が山ほど集まって三千人規模の街を作ってる。10km四方がテント、馬車村の街というかこの時代のモータープール?イヤ違う。キャンピングカー村?各集団で物資を持ち寄って交換してる。


ナレス王国とチノ共和国の国境線と交わる近郊に五万人居た。見渡す限りが放牧用地でカウボーイみたいなのが点在して何千頭の家畜を束ねている。最大のコロニーだが集団が寄り添ってるだけ。組織で動いてる訳じゃない。地面から見たら地平線まで天幕に見えるだろうな。 


良く視ると、毛皮や肉と家畜を穀物や衣類やに交換してる村がある。ナレス王国もチノ共和国も村が北方民族に協力して物資を供給してる。騎馬民族もここの地方の村は襲わないって集団同士で約束してる。 それはね、村は騎馬民族から嫁を貰えば襲われないという知恵だな。アルアルだわ(笑)


北方の冬って十五時頃に日が落ちちゃうから、帰りもナレスを通って街灯作りながら帰って行く。ナレスに向かうと16時40分頃まで明るい。暗くなっても関係無しに街に街灯をパパパパパって灯すと感動するね。


翼よ! あれが巴里の灯だ! 翼無いけど。


ああだこうだ言いながら街灯を作って行く。こんな事を現場でやってる俺は教皇だの王様って柄じゃ無いよな。文句を言いながらも(未来の)母ちゃんリズが生まれた国だから頑張らないとなぁ(笑)



19時になってお腹が空いてきた。


寒いし鍋が食いたいなぁ・・・ちとマテ!居るんじゃないのか?半径100kmなら盗賊ぐらい居るだろ。


やっぱいた! 八組百二十人居るな。鍋を検索したらみんな鍋食ってる。肉のゴロゴロ入った奴は・・・あ!キジ鍋あった!仲間とつついてる。


突撃ナレスの晩御飯!(盗賊編)


二十六人の大所帯。

秘密基地の様になった山中深くの大きな自然の洞窟だ。明かりも漏れないように分厚い毛布で三重に覆ってる。

全員麻痺にしたいけど皆、鍋を囲んで上機嫌に飲んでるからいきなり麻痺だと鍋を転がすかもしんない。


1月5日の夜19時20分、見張りも何もいない。入り口の三枚も掛けてある毛布の裾が雪に埋もれてる。雪に埋もれた毛布をめくってモソモソと洞窟に入って行く。箱に入った蝋燭ろうそくが通路に無造作に置かれて、岩肌がくり抜かれた穴の中で燭台しょくだいの炎が揺れている。


途中二枚の幕をめくってほの暗い洞窟を入って行く。良く視ると上に抜ける逃走路と下に抜ける逃走路がある。三枚目の最後の幕を開ける前に全員隷属した。



三枚目の幕をまくって一声大きく洞窟に響かせる。


「全員出て来てくれるかなー?」


6m×40m程の長方形の洞窟を板や毛布で乱雑に仕切って部屋にしていた。奥には個室が6つほどあってそっちは掘って作ってある。六畳間から八畳間ほどの食事や共用部屋。頭目と副頭目の部屋は布で仕切った個室だ。


奥の部屋からも全員出て来たので布教する。


半裸みたいなお姉ちゃんも四、五人出て来た。服を着させる間に視ると隊商の護衛で襲われた冒険者PTの生き残りだった。木に縛った仲間を殺したら助けてやると言われて出来なかったら、盗賊が手にナイフ握らせて突き入れて、お前が殺したと盗賊の仲間にされていた。


初めての人殺しで、仲間を殺して放心状態のうちに仲間にされていた。どうしようもない奴らだな(笑)


ってか近寄るとこいつら臭い!今まで食べ物や酒の匂いで誤魔化されてたけどこいつら水でさえ体を拭いてない。臭過ぎる。あんまり臭いけど・・・お腹は空いている。


全員部屋の外に出してクリーン掛けて粉をはたかせる。

通路に立たせておいて食い物を検索して強奪する。洞窟中クリーン掛けたった、精霊さんに粉を持って行って貰った。

食い物を戻して火に掛ける。


「飯食っていいぞ!」


皆がめいめいに飯食ったり酒飲んだりする。おれもキジ鍋の周りで一緒に飯を食う、自分だけロールパンだ。盗賊になった気分だ。


お腹が膨れて洞窟の中も暖かく、外に出る気が失せていたが視えたものはしょうがない。@七組、寒い中嫌々行った。


何処に居るか分かってるので、晩飯の終わってる盗賊から襲った。隷属して布教し迎えに来るまで動かず生活して待てと言う。


七組全部布教して、最初の洞窟に帰って来た。


八畳の共用部屋を片付けてベッド出して寝た。

ここ温かくていいわ。起きたらすぐ街路灯と北方に行けるしな。



夜、変な夢を見た。


エロい夢だ、と思ったらお姉さんに押さえつけられていた。


え!え!何何何!怖い! 頭が回らず引く。


「止めて!」


と言うと止めてくれた。隷属は解けてない。

視たらショタコンだった。俺にムラムラしてた。ガーン!


凄いショックと俺自身が性被害者になりかけて驚いた。寝てる間に寝巻の上着のボタンが取られて胸を撫でられてる所に起きたのだ。危機感知も気配察知も感知しなかった。


(シェルー!)

(はい)

(何やってんのよ!襲われてるじゃない!)

(アル様を可愛がってましたよ)


(襲われてんだよ!ダメでしょ!)

(人の営みではないのです?)

(人の営みだけど、前助けるって言ったじゃん)

(魅了して無いですよ)

(同じだよ!そんなの!)


(違います。アル様が可愛くてしょうがないんですよ)

(・・・)

(しょうがなかったの?)

(アル様を可愛がりたくて来たのに)

(そうなの?)

(アル様を見た瞬間に燃え盛ってました)

(・・・)

(アル様が魅了したんですよ)

(えー。そんな!)

(アル様が可愛いだけなんです)

(えーと・・・そういうのもなんか困るな)


冒険者のお姉さんの目が怖い。


「僕を可愛がりたかったの?」

「とても可愛がりたいの」

「可愛がってくれる?」


にじり寄られて強く抱きしめられて押し倒された。お姉さんを視て行く。身体全体を俺に押し付けて来る。首筋を舐められた、耳たぶを舐められた。胸をスベスベされる。胸にチューしてくれる。柔らかくて気持ちいいけどなんか違った、俺をどうしようなく愛しい人形みたいに・・・可愛い少年に抱く幻想と愛情があふれたような感情だった。


可愛がる答えが出た。


幻想に溺れていた、少年はそんなにとおとい存在じゃない。少年だって立ちションするし悪態だって吐く!(冒険者の)お姉様が守らないと弱くて寂しくて死んでしまう存在じゃない。美のアローシェ様に魅入られたとか、そんな存在じゃない。


∴ あなたっちゃってるわ。


「分った分かった!帰れ!入ってくんな」


少年に拒絶されて驚くな!絶望すんな!(笑)


「違う!テクニックじゃ無い!」

俺もなになぐさめてんだ。


「お前は少年を可愛いと思うその熱い想いを忘れた!」


お姉さんは更生して帰って行った。

気配遮断Lv3のショタコン被害を食い止めた。


俺のファランクスはいつ完成するんだ。イヤ、それ以前に悪意も無く可愛がりに来た気配遮断上の奴は俺の眼も含めた防衛網がザルじゃねぇか!脱がされてたぞ!こんなんで可愛がりに来たエル様の使徒をどう防ぐんだ! 課題が増えた。

(ファランクス:気配察知と危機感知の複合恩寵で瞬時に攻撃する技)


エッチな菌が伝染しそうで浄化した。スベスベの男の子の肌が胸キュンとか性癖視せられて俺も引くわ。



ちょっとドキドキしてすぐ寝られなかった。




次回 245話  忠臣の底力

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