第242話  笑いの神



1月3日。 テルーの財宝を回収して来た。


昼過ぎに帰った一行は、王城の食堂で興奮して食事を取りながら話し合った。


俺に質問が集中したので神の啓示で知らされた事を説明すると皆が驚愕きょうがくした。視ると、確かに神が示さないとあんな場所は分からないと納得している。と言う言葉に皆がショックを受け過ぎてマズイと思い、教皇様は世界樹がムストリウ王国にもたらされる三か月前に啓示を受けたと生贄いけにえ祭壇さいだんささげ、あの歌を思い出して左に受け流した。



失礼が無い様に千五百年前の当時の状況を丁寧に説明して行く。小さな国も巨大化した豪族も互いが相手を呑みこもうとしていた時代。侵略した国の民は奴隷同然、略奪やむち打つ徴税ちょうぜい徴兵ちょうへい。それをしないとまた攻められる世の中。


当時のナレスは今のナレスの三分の一以下の規模でしかなかった事を伝えた。財宝で分かる通りに王族は富を溜め込み、民をかえりみる国など少数で、民を少しでも安んじた国は今のナレスの様に民心をつかんで統治が進み大きな国になっている事を伝える。


大事な事は、この凄まじい財宝は当時の民の叫びが詰まった物である事を大事に大事に伝えた。神がこの様な啓示を出した意味を考えると、王家にご褒美ほうびをくれた訳ではない事をデリケートに説明した。


王様、宰相、財務相、政務官は俺の話に耳を傾けて聞いた。今のナレスは当時の国の中でも民を良く治めた国で、周辺国の民が反乱を起こした機に乗じて国土を増やし、時には貴族として迎え豪族を併合へいごうする事で今の国になったからだ。



「どうか、折角の財宝を有意義に御使い下さい。この後何処どこに出すのか言って下されば、預かった財宝はそこにお出しします」


アルは話を締めくくった。



陛下から質問が出た。


「殿下、盗賊を捕まえた報奨金ほうしょうきんを受け取らず王都の街路灯の代金として受け取ったのはなぜか教えてくれぬか?」


「え、今ですか?」

「うむ、業の深い盗賊の褒賞金を受け取らぬ訳に似て無いか?」

「あぁ・・・そういう・・・」

「うむ」


「個人がそんな大金を持ってどうします?この世の全ては買えません、買っても幸せとは違います(笑) 貨幣にそんな価値は有りません。貨幣とはその日に取れなかった獲物の代わりに今日の食べ物を買う為のお金です、大昔は畑の作物と森の獲物や獲物の魚と麻でった服と交換していました。お金とは腐ってしまう食べ物の代わりに発達した便利な道具です」


「・・・」貴族階級が普段聞き慣れない話に耳を傾ける。


「それは交換する道具をたくさん持つだけの事です」


「そんな便利な道具なら私が持つより街路灯と交換しておけばお金の価値は明るく照らされた民に残り続けると思ったからです」


「そして街路灯はロスレーンの私の兄がやっているグレンツ商会の商品です。個人ではなく兄の商会に入ったお金は有効に世に回るでしょう」


「・・・」


「どんなにお金を持っていても幸せは買えません」


「道具を持つより、良い物に交換した方が良いのです」


「それは、神の御言葉か?」


「神はそんな事言いません。お金におぼれる人は好きなだけおぼれたら良いんです、それを手に入れる為に民をむち打った事、悪どい真似をして手に入れた事は神は見てますから大丈夫です(笑) 人は皆好きな事して生きる人生です。気が付く人は自制して磨く、気が付かない人は得をしようと悪事を磨く、そして神の天罰ではなく、王族の逃避行が示す通り自分で滅びを呼びこんでしまう。歴史という前例を知れば、道具にとらわれない方が幸せですよ」


皆はお金に対する幻想的な何かを打ち砕かれた。


会食の皆を見回して言った。


「食べきれないパンを腐らせる心配より、お腹の空いた人たちを呼ぶと心配も無く笑って美味しく食べられます。 なぜか腐らないお金に交換すると、お金に執着しゅうちゃくして心配を増やす人が多いですね」


「お金を盗られる心配したり、減る事を心配したり、増やす事を心配したり、隠す場所を心配したり、盗賊や詐欺師を呼び寄せる悩みにもなるでしょう。時には足枷あしかせとなって逃げるのが遅くなって死ぬかもしれない。今回の財宝はテルーが王族の足枷あしかせを外してます。とにかく逃げて生きなければならない時に金塊きんかいの荷馬車を捨てられずにあんな所まで持って来たんです」


一同がそれぞれにフー!っと深く溜息を吐いた。


「そんな財宝はナレスで良き使い方をお考え下さい(笑)」


「聞かせて頂きたい、殿下ならどう使うのだろうか」


「民が苦しんで、各地の領で一斉に蜂起ほうきするほど搾取さくしゅされたお金です。その時の民の願いは安住だった筈。領地で安住出来ないから血の涙を流し、為政者いせいしゃに力で訴えたのです。そんな富であれば民の安堵に使えば、変な付き物やのろいを引き寄せる事も無いと思います」


「安堵か、蜂起ほうきした民も浮かばれるであろうか?」


「私はまじないい師や占い師ではございませんので分かりません。但し、王家の私物として分ければ、王家で起こった事故や重大な病気に何度も何度も余計な心配をするのは損だと思います」


「なるほどな(笑)」


「私にも褒美を頂戴してもよろしいですか?」


「ほう!殿下は何が欲しいのかな(笑)」


変な事を言えば甘く見られそうだな(笑)


「今回出て来た、王族の身に付けていた貴金属は必ず王家のどなたかの物にして下さい。今の陛下の家族だけで構いません。逃避行の最後まで身に付けていた宝飾品です。当時の王族のみなさんは無事にナレスに辿り着いてます、幸運のお守りとなるでしょう。褒章でたまわっても構いません。たまわるなら王家のどなたかの物に一晩でも置いてから、その方の家臣にたまわって下さい。売ってお金にするよりよっぽど心に良い事と思います。


同じく、第三の財宝にあった業物の武具は功績のある武官にたまわって下さい。三銃士ゆかりの業物は必ずや王の剣となります。文官には第二の財宝から出た、素晴らしい蒔絵まきえや宝飾の入った手文庫の数々をたまわって下さい。褒章が足りなければ、陛下の執務に使われている相応の品をたまわって下さい。例え手文庫でも現陛下が直々にたまわれば家臣は打ち震えて喜びます。


家臣は末代までのほまれにするでしょう。王族を守ったあの三銃士の弓のテルーが隠した財宝です。三銃士ゆかりの品です、その価値はナレスに仕える者であればどんな財宝よりも価値があります」


「・・・」


「富はそうやって分け与えて、武官、文官共に手を取って良い国に導く物です・・・王妃様はすでになされているご様子ですが(笑)」


王妃様が目を見開き言った。


「口下手なので、気持ちを物でしか表せぬだけですわ(笑)」


「いえ、私が褒美を口にすると得も言われぬ喜びが王妃様から出ましたので、分かっちゃいました。すみません(笑)」


「殿下、その褒美ほうび、儂が約束しよう」

「はい、リズにも何か三銃士のお守りを下さい(笑)」

「アル様!(笑)」

「分った!(笑)」


「皆の者、異議は無いか?」


財宝に秘められた陰惨いんさんな意味を知り、暗い顔をしていた宰相、財相、騎士団長は明るい顔で頷いた。


「して、残る金銀の財宝についてだが、どのようにしたら良いか皆の意見を聞いてみたい」


「皇太子さまが言われる通り、民の為に使いましょう」

宰相が言った。視るとナレスで苦しい村で使おうと思っていた。


「盗賊や魔物被害の報奨金や弔問金、自警団の武具に当てましょう」


~~~~


色々意見が出たが決め切れないまま、王家のプライベート空間の宮殿中庭に財宝を出した。全てが出そろった時、それを目にした者は帯同した一行も含めてため息を吐いた。冬の弱い光をこれでもかと反射していたからである。年月が経ち鈍い輝きでもそれは大きく輝いていた。


・第一の財宝:金塊、銀塊。

・第二の財宝:宝石、宝飾品(王族の手回り品)

・第三の財宝:貴金属、武器。防具。


・朽ちた荷車、衣類、防具類。


貴金属・宝飾品(王家手回り品)・武器(ミスリル剣、弓、鎗)は宰相が管理して鑑定後に序列を付けて恩賜おんしとすることになった。



財宝を中庭に見下ろす会議室。


陛下が言った。


「皇太子殿下、神教国タナウスへの転移装置送迎門は幾らだろうか?この財宝で買えるなら譲って欲しい」


「え!あれは売り物ではありません」


「それは分っている、分かっているが思うのだ、リズが婚約者の今しかこの様な事を頼めない事が。神教国が建国の折には事実上世界最強の宗教国になると儂も思う。見た事の無い技術や家一つ取ってもこの大陸に無い工法で建てられている。あの装置があれば略取奴隷を逃がす事も帝国を滅ぼす事も可能だったと思う。建国する前だから言えるのだ、タナウスとナレスの同盟の証として転移装置を譲ってほしい。それがナレスの民を安堵する一番の使い道だと思うのだ」


帝国滅ぼしてないじゃん。イヤ、滅ぼしてるのか(笑)


「・・・」


アルの頭がフル回転していた、陛下の考えを視て具体的な言い逃れを考えていた。リズの親なのだ、当然守りたい。しかしナレスの民全体は違った。だから考えていた、凄く考えた、そんな正義の味方みたいなしがらみは背負いたくなかった。


しかし折れた。何代も先のナレスの事を想う心に打たれた。それはロスレーンだけは絶対守るというアルの想いと一緒だったからだ。


コルアーノ守る決意より先にナレスを守る決意しちまった(笑)


本当に俺はどうしようもねぇな。



アルは陛下に提案をした。陛下の考えを視て、具体的な答えを提示したのだ。何よりナレスの後に続く同盟国が出て来たらウザイ。ここで絶対に止める。


「よくお聞きください」


「勘違いなされぬ様に願います。タナウスは皆様が考える様な国ではありません。ナレスに戦争が起ころうが、神様と同じく聖教国と同じく不介入の国です。最強の国だから不介入です、介入したら相手の国が大変な事になります」


「・・・」え!とナレスを見放す言葉に驚く重臣たち。


俺は反論が出ぬ前に畳みかけた。


「ナレスが戦争になろうが一切関知しません。聖教国とまったく同じスタンスです。但し、相手を何日か止めてその間に巻き込まれる人たちの犠牲は無くしましょう。その為に転移装置はお使いください。


転移装置を起動出来る者は陛下、王妃様、王太子夫妻ですがよろしいですか?相互通信機はタナウスを呼び出せるように致します。呼び出せる者は陛下の一家と宰相とします。危急の連絡を受けた直後から神教国タナウスはナレスの敵を何日か止めます。


その間に国民をタナウスに避難誘導してください。それは、王と王太子は先に逃げられぬとご覚悟下さい。神教国タナウスは宗教国です、国を治める者を真っ先に逃がす訳には参りません、ご承知ください。


神教国タナウスはこの中央大陸以外の世に羽ばたく国。この大陸には教皇様の聖教国がある事をお忘れなく。聖教国の頭越しに願うなど以後はあってはならない事とご承知ください。


以後建国まで、建国後も同盟は元よりタナウスの名を軽々しく出すのはお止めください。名を出せば国が滅ぶ可能性が増します。この大陸は聖教国によってまとまっております。神教国タナウス建国後は聖教国とも縁もゆかりも無き国、それがタナウスです」


「それはどういう事なのだ?」


「タナウスとの同盟や繋がりを世に出すとナレスが滅ぶ可能性があります。それどころか聖教国も滅ぶ可能性があります」


皆が驚く。が気にせずたたみ込む。


「タナウスは世界九大陸の宗教国家を敵に回す可能性のある国です。タナウスとの同盟が世に広まりますとタナウスを攻められぬ敵対国がナレスに攻めて来る事を重々承知してください。聖教国がタナウスと縁があれば他の宗教国及びその教会を信ずる敵対国がこの中央大陸に攻め込んでまいります」


「タナウスとつながると九大陸に信者がいる宗教国を敵に回す事です。九大陸の宗教国は軍事化を進め、周辺国を侵略する強大な国です。小さな宗教国でも侵略した国を従えております。考えも及ばないと思いますが、中央大陸で例えれば聖教会のある聖教国の信徒国が全てタナウスを襲って来る様な物です。その様な危険をナレスに呼び込む必要はありません」


「陛下も宗教国の事情を知らずにタナウスの国力を見られたのでしょう。同盟など口が裂けても言わねば良いだけの事。ですから転移装置は貴金属と武具以外全ての財宝でお譲りします」


皆が驚いた、全部の財宝を貰うと言ったのだ。そんな事普通は言えるものじゃない。それを普通に言ったのだ。


「それでもよろしいですか?」

「陛下、お譲り下さりありがとうございます」

「ナレス王のその覚悟、お受けしました」


ナレス王が俺を陛下と呼び頭を下げた。


皆が唖然あぜんとする。聖教国の皇太子はどの様な存在なのか知らない者も知った。無理もない、聖教国の教皇代理であり皇太子であり第三王女の婚約者であり、建国の後には神教国タナウスの教皇なのだ。


「分りました、陛下のその覚悟をお聞きしたまでです。神教国に財宝は必要ありませんが、陛下のお気持ちを汲み、受け取ります。しかし この事は口外無用にしてください、ナレスが滅んでは夢見が悪く思います。タナウスなど名も知らぬと言う方が賢明でしょう」


「財宝の三分の一を宰相にお預けします。ナレスを盤石にするためにお使いください。領地経営の苦しい領に貸し出すのも良いですし。苦しい領は民も苦しいので、他国から食料を買っても良いでしょう、井戸や用水路、粉ひき小屋の拡充、農具の補助、種籾を多く配るのも良いでしょうね、盗賊の摘発も良いかもしれませんね。ナレスの為になるならお好きにお使いください」


「三分の一をナレスの民の現在に使います。ナレスの国に街路灯を付けましょう。大陸で一番明るい国になると思います。三銃士が残した財宝の使い道にはよろしいかと思います」


「三分の一をナレスの未来に投資いたしましょう。その三分の一を北方騎馬民族の平定に向かう貴族家の出費に回して下さい、それは未来の民の国土が増え、以後は襲来も無くなる投資です。出兵の出費は兵だけに留まりません、兵站隊の物資、食料、飼葉、従士隊など物資や人が働いた対価として貴族家の領地に広く行き渡ります。領地が栄える事は国が富む事、財宝の使い道には良いでしょう。


今回の出兵案は謁見えっけんでお決めになるそうですね?急な出兵案に大層な出費になると領主は頭を悩ますでしょう、半額の戦費を先にたまわり。見事周辺国が領土を認めてから勲功をたたえて残りの戦費をたまわれば各領地は喜ぶのでは無いですか?領が出費した分は領が潤い、出費分の戦費が王家負担と分かれば平伏しましょう。財宝が余ればまた家臣に苦労を掛ける時のために取って置けば良いのです」


「宰相閣下、三分の一を部下に数えるよう指示し、この場に置いてください。その分でナレスの領地を街灯で明るく照らします」


皆の眼下にある財宝は、見えていながら全て消えた。一瞬で見事に消え失せた。



二十両の含有量96%の金塊。三両の銀塊。

五両の換金用宝石。


総数150トン弱、その三分の一がグレンツ商会に入った。


中庭で忙しく立ち働く使用人。

それを会議室から見ながら皆でお茶を頂く。中庭とは言え少しは寒風吹く中での財宝の確認作業は進んで行く。


そんな中、騎士団長に使いが来た。

少し席を外した騎士団長が剣を持って来た。


「皇太子殿下、この剣を一瞬で斬られたのは本当ですか?」


視るまでもない、劇場前で斬ったチンピラの魔鉄剣だ、刃先は無い。


「あぁ、それですね。本当ですよ(笑)」

「なんと!」


「皇太子殿下、百七十八名にも及ぶ盗賊の討伐がありました。三十三名にも渡る昨夜の捕縛者の件といい、この剣といい真に信じられぬ武勇です。殿下に大変失礼な事とは重々に承知しておりますが、是非見せて頂けないでしょうか?」


「え!まぁ良いですが、ええと、その剣を斬りましょうか」

「見せて頂けるのですか!」


「はい、構いませんよ(笑)」


「両手で二本構えて持っていてくださいね」

「これでよろしいですか?」


団長が両手で剣を中段に構えて持つ。


「はい、それで結構です!」


「それでは、失礼して帯剣しますね」


釘バットをミスリル剣にして構える。


「行きますよ?・・・フッ!」

左から右へ剣をぐ。


剣が交わる音もなく騎士団長が構える剣が撫でられると、構えた剣の刃が床にポトリと落ちた。


「え!」団長自身が目が点で信じられない。

「・・・」その場の皆も驚いて目を剥く。


「やだなぁ、単なる魔法ですよ(笑)」


皆が笑うと思って言ったが、まったく笑ってもらえなかった。


それもそのはず、防御不能の剣だった。防ぐ手が無い、当たる前に斬り込むか、逃げ回るしかない事を皆が知った。


「聖教国とは・・・」陛下がつぶやいた。

「お褒めの言葉、ありがとうございます」


「・・・」

ケージス第二王子が落ちた刃先を拾って注視する。


「ナレスに大事があればお知らせ下さい」


「ん?」


「義理の息子が帯剣で参ります」


「・・・」俺の顔を見つめる陛下。


にこやかに笑い返す俺。


「同盟など要らぬか!わっはっはっは!」

「家族を助けに行くのに要りませんね」


皆の顔が明るくなった。



・・・・



十五時半から部屋に帰り、リズと着替えて街に跳んだ。昨日の劇団を見に行ったのだ。


今日のは純愛物語。


アレだ!

婚約の時にリズが王家を脅した恋物語だ。


温かい飲み物を持って席に座る、慣れたもんだ(笑)


貴族の娘は光曜日に侍女と教会にお祈りに行って買い物とお茶をするのは休日の楽しみだった。実は一年前の光曜日にお祈りに行って以来、出会ってしまった若き司祭が好きになっていたのだ。光曜日に会う度にお互いかれ合う二人。


一年の月日はいつしか手を握り合う間柄になっていた。


そんな中、貴族の娘に縁談が持ち上がる。皆が説得する中、姫はかたくなにこばみ続ける。家も家名も捨て、家族の思い出さえ捨てると娘は言う。司祭と二人で逃がしてくれと両親に懇願した。両親は憎々しげには思ったが仮にも教会の司祭を害そうとは思わなかった。それからの光曜日は教会におもむき司祭と共に苦悩する貴族の娘。


そんな中、強行される縁談前に娘が姿を消したのは司祭との逃避行だった。貴族は家臣を放って二人を追った。


追手から逃げる二人の苦難に泣けた、勿論リズも泣いている。


そりゃ親も反対するけど、そういう物は反対される程に二人の苦難として恋が盛り上がってしまう。誰も止められない暴走特急だ。俺も好きで好きでどうしようもなかったら奪って逃げようとするもん。若き二人の気持ちは痛いほど分かるが、この劇では場当たり過ぎだ。


三カ月にも及ぶ苦難の逃避行。


(三カ月も逃げたんかい!やるなお主ら、純愛だけある)


しっかし、悲恋に決まってるじゃん。司祭と娘が逃げた先に家臣が迫る。姫を連れ戻しに来る家臣団。隠れ家の前で二人共大人しく出て来いと追手に囲まれ、窓から娘の侍女が押し問答していると、聖教国の聖教騎士団が追手に雪崩れ込む。


味方キター!


悲恋じゃねぇのかよ!視てた恋物語と違うじゃん(笑) 騎士団の色は違うし、駐屯したり遠征するのは聖法騎士団だ、そもそも雪崩れ込むほど聖騎士いねぇよ。ラストがツッコミどころ満載だ。


などと思っていたら、司祭は聖教国の皇太子だった。身分を隠して司祭の修行に来ていたのだ。


え?・・・何ぃー! (やっちまったなぁ!)


演者のイメージがいきなり聖教国の皇太子に塗り替えられてた。娘も女性演者のイメージがいきなり第三王女になる。


そして二人の恋は認められて婚約が発表された。



俺とリズの恋物語だった(笑)



エンディングは王様と教皇が並んで紙吹雪が舞う、姫と皇太子は祝福されながらキスをする恋物語。


俺もリズも自分たちのキスを見て赤くなってプルプルしている。貴族の娘じゃないじゃん、ナレス王家の娘じゃん。ナレスと言って無いからセーフなのか? なに純愛物語を改変しとんねん!今年は時事ネタにしたんかい!(笑)


俺もリズも途中まで感情移入してだまされた。第三者視点で見て、こういうシチュなら熱くなるよなぁ、若い二人に周りは見えないよなぁ、とか思っちゃった。まぁ、中身は全然違うけど想像したらそんな感じになりそうな起承転結きしょうてんけつがハッキリした物語で、何も知らない人なら充分王女と皇太子の馴れ初めを納得する出来だった。


それはそれで映画館から出て来た感がすごかった。


「まぁ、あれはあれで・・・」

「出来は良かったですわね・・・」


「リズはああやって婚約したんだって!(笑)」

「アル様もああやって婚約したんですよ?(笑)」


笑いの神が降りて来た。ご降臨なさった!


二人で腹がよじれるほど笑った。

ツボに入ってしまい泣くほどにヒーヒー笑った。



そんなに単純な話でない事は二人は良く知っている。


それは凄い角度でえぐり込む様ななれめだったのだ。




次回 243話  人生の初見殺し

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