第236話 宇宙人の襲来
12月30日。
ナレスに帰り次第に転移装置は回収した。そのまま置いて欲しいと言われても困るからだ。昨日の晩はコア、ニウ、俺で一室。アルム、クルム、シズクの一室でナレス王宮に宿泊した。
リズと王都を歩けると思ったら、あら大変。王女が街を歩くなど許されない暴挙と側付きのセオドラに言われた。聞くと王族の外出とは、予定に合わせた時間通りの動きと経路で、まるで護送された現金輸送車みたいな経路の外出だった。(リズが言ってたのを思いだした)
ナレス来た意味あったのか?コレ(笑)
まぁ、王女はダメだろうが、俺は関係ない。
王城にいても暇だ、PTで王都見物に行った。馬車を出してくれるとは言ったが断わって、王宮の門から四人でテクテク歩いて外に出た。風が冷たくて道に氷が張っている・・・。
街並みが年末年始をお祝いするムードで露店も準備されてるが少ない感じがする。ナレスの王都を歩くなんて初めてだから皆がワクワクしてる。
メインストリートには流石に農民は居なかった。年越す準備で王都に来るのは明日以降だろうな。探すのめんどくさいから明日の朝に周辺を飛び回って恩寵付与することにした。
バラライカをしてても通り抜ける風が冷たい。
聖教会に行った。
半年前に王宮で会った司教様に面会して、今年赴任した司祭様に教会と孤児院を案内して貰った。ナレス王都の教会なので規模は超大きい。孤児院も七十人ぐらいの大所帯だった。視ると王都教会は西と東に二つある。西の方が普通の司祭が運営する小さい規模の教会だ。祈りに来る利便性を取って二カ所あるとは驚いた。
まぁ喜捨は変わらず
ロスレーンと違ってお年玉に慣れてないのが新鮮だった。少し考え、数を数えたら足りるのでコンペイトウの小さいのを三つずつ手に乗せてやった。司祭とシスター、最後に司教様に一回り大きいのを二個渡したら執務室の小さな祭壇に「御子様から頂きました」とコンペイトウ乗せて祈った(笑) 見た目があんまりなので一緒の祭壇に葡萄酒の小壺も追加した。
導師と師匠にお酒のお土産と思って街で検索すると有った!葡萄酒の濃い奴!ブランデーだ。お茶に入れると香りが良いんだよ(宗彦さんは酒飲まないけど外地で買って来たブランデーを紅茶に入れていた)寒い土地だからアルコール分が濃い方が温まるのかもしれないな。
美味しいと評判の高級ブランデーを瓶と樽で大人買い。観測してもらってブランデーの小分けバージョンとかボタンを増やす。
露店の準備を視ると、射幸心を
点数の高い的に当てる。くじを引いて当たる。当たりで良い物がもらえる仕組みの露店だ、夜店の輪投げで輪の入った人形が貰える遊びの
明は射幸心を野球部の監督から教えられた。超特大のホームランを打って調子を崩した時だ(笑)
打席に立った試合中、最良の軌道でヘッドスピードが乗った時にそれは起こった。スイングは大振りの真逆、肘を畳んで最短の軌道で球にバットをガン!と当てたらフォロースルーで飛んで行った。信じられない程も打球が飛んだ。気持ちよかった。脳内のドーパミン(脳内麻薬物質)が出た。
それを忘れられなくなった。もう一度打ちたかった。
バッティングフォームが崩れた。宝くじを追う様なスイングだった。射幸心とは偶然手に入れた物に囚われ、それを必然としようと追いかける事。あくまでそれは偶然飛び出た物であり、確率的に必然とはならない物だった。明は偶然手に入れたホームランに囚われて根本を見失った。
懐かしかった。
唯一の一点を捉えようとするスイング。それは打ち損ないは多いが当たれば長打となり打率は急低下する。監督に怒られ、面で
思わずコアに通信。
「ダンジョンの祭壇で宝箱は出るの?」
(ボス
抽選だった!(笑)
「それって、基礎数値の幸運とか関係ないの?」
(関係ありません、ダンジョンの抽選です)
関係なかった!(笑)
「ドロップも?」
(抽選です)
「そうだと思った!なんか
(抽選は確率です。
露店の親父が言いそうな言葉だった。
なんかダンジョンドロップの中身を知ってしまったら、自分の物を抽選で当てて大喜びで換金してる気がして
知らない方が幸せな事もあるのだ。
俺は冬ならダンジョンに潜ってもいいが抽選は嫌だ。夏には絶対大森林派だ。
テキヤの射幸心から明後日の方向の
11時で早いが、
来た料理を見て驚いた。
まんまオークの豚骨スープだった(笑)
塩の効いた豚骨スープに野菜と肉がゴロゴロ入った油が浮いたアツアツのスープだった。寒い地方の人はコレ喜ぶよ!
空いた小壺にこっそりスープを取ってサンプル確保(笑) 他のお客を見るとシチューバージョンも有るみたいで小麦粉でトロミを付けたシチューにお客が美味い美味いとバゲットをなすり付けて食べる。
食堂から出ると道に並ぶ露店も風よけの付いた店だけ出して、商品も並んでないので帰ろうか?と歩くと冒険者ギルドがあった。違う国の冒険者ギルドも見たいと後学の為に入って依頼票を探した。
依頼票の貼ってあるクエストボードを見上げると暖かい物を食べたので蒸気機関車の様に白い息が出る、寒さがパナイ(笑)
依頼票に最近王都付近に出没する盗賊団のアジトを見つける、討伐するという物があった。六十から七十人の盗賊団で、凄い懸賞金の出所は執政官事務所だ。
お尋ね者を検索したら、GPSに出て来たよ(笑)
「この依頼票だけど啓示があった。行く?」
「寒いけど行くー!」アルムさんは元気良かった。
「凄い金額じゃない!」クルムさんも頷いた。
「数は多そうだよ(笑)」
「啓示なら大丈夫よ」クルムさんが笑う。
「良かった!」とミスリル鎧に着替えた。途端に体が寒くなくなる。皆も着替えてホッと一息ついた。ギルドのカウンターでクエストに参加を伝えたら三PTがもう森や山を探索してるそう、うちらで四PT目だ。
森や山、そんな所を探しても居ない。
村にぬくぬくとした盗賊団の斥候家族がいるのよ(笑)
酒場と宿屋に盗賊が普通の家族で入り込んでる。
PTが盗賊探索で村の酒場に寄ったり宿に泊めて貰うと、情報を抜かれて盗賊の本体にやられる図式だ。隊商の護衛どころかPTの戦力ごと値踏みされて襲われる。こりゃ捕まらねぇよ(笑)
まず
危機感知持ちが三人も村に居た、捕まらない訳だ(笑)
斥候役がいる周囲の村から潰して行った。
麻痺した斥候を視たらマジ
>馬に乗った奴らが山に向かったのを見た。と言う情報でPTは山に向かう。山に向かったら盗賊団本体が山狩りだ。
シズクとシャドを視た。
やっぱり俺の視てる光景を見て怒っている。俺が怒れば共感して怒る感じだ、自分で怒ってない。主人の怒りは文句なく自分の怒りになる感じだ。
盗賊団の本体を追って視て行くと根が深かった。
北のまだ国になっていない北方騎馬民族から生まれた新しい部族戦略だった。頭の切れる奴も居るのね。
ナレスの北の未開地に土着の騎馬民族がいる。冬の間食料が無くて越せないので周りの国の村を襲って生き永らえる。
四から六万人ぐらい居るって情報だから、討伐には痛みが伴う。土地も山と草原しかない。冬は極寒の土地でうまみが無いから周辺国にも放置された土地。極寒過ぎて針葉樹しか生えない亜寒帯から寒帯の地域だ。
隷属して何処かに集まらせたら楽だが、こいつらの略奪生活を封ずると冬の厳しさで死ぬ。短い夏の間に女子供が収穫する食べられる干し芋や干し魚や草や苔しかない。
うーん。根が深いぞ。元々馬や牛や羊、ヤギの放牧に特化した部族が移動していくから元々畑なんぞ持たない。冬になると南下して国境の集落を襲って食い物奪う。奪い方も殺し優先じゃないんだよな。村や街の冬の備蓄倉庫狙いだからな・・・うーん。
イヤ、これって三国志時代の未開の奴らじゃないのか(笑) 諸葛亮様が討伐に行った類の・・・あれは象やヤク(水牛みたいの)に乗ってたんだっけ。
もう!しょうがねぇなぁ。この民族嫌われてるから捕まえたら、どの国行っても全部殺されるじゃねぇか。
取り合えずリズの国来て悪さ考えた奴はとっ捕まえる。斬首でもなんでもなれ、悪知恵で
盗賊団本体百三十六名、村に入り込んでた盗賊家族四十二名。六、七十名の盗賊団なんてまったく当てにならん情報だった(笑)
王都郊外の林に連れ込んで武装解除。シャドに数珠繋ぎに縛ってもらい北門から王都を行進した。
ギルドの演習場は余り大きくなかったが百八十人なら入った。ギルド職員の前で俺が自白させていく。盗賊の序列順に並べてやると番号札と罪状自白の罪を書かれた板が首に掛けられる。
罪状自白させてると王都入り口の門で
斥候家族の女と子供は、獲物は殺してないが分かってやっていたと自白させた。
盗賊団の頭目以下主だった幹部に隷属の首輪が掛けられた。ギルドも守備隊も隷属の首輪を三十位しか持って無かったが、視たら死刑囚は執行まで首輪みたいだ。
これで終了。
賞金が結構あったので、執政官に王家の指輪を見せ、賞金分で街路灯をメインストリートのそこら中に建ててやった。リズの実家だから名目をでっち上げて沢山作った。盗賊探索の三PTには、まとまった金額をご祝儀に進呈するとギルド長に渡しておいた。
だって鹵獲品の物資が凄かったんだもん。
単なる盗賊じゃ無かった。新方式のシステム的な盗賊団は効率的に奪う事に特化していたのだ。奪った金は物資に変えられ、それは北方に送る為の大量の物資だった。
・・・・
俺の北方騎馬民族狩りが1月5日から始まった。何の事は無い、隷属して布教して、コアが宇宙船で取りに来るだけだ。四から六万人の騎馬種族なんて大嘘だった。国ですらないから国勢調査もクソもない、民など数えないから十四万人ぐらい住んでた。家畜は千六百万頭いたけどな。
コアが率いる戦闘メイドが三万人、二番艦ストックに乗って
戦闘メイドの役割は家畜を包囲してコンテナに追い込む為だ。
人はそんなに凄い数じゃない。冬は寒いので騎馬民族の集団が千名、二千名単位でナレス国境南端に集まっていた。集団で固まる騎馬民族は国境の街に家畜や毛皮を持ち込んで交易して穀物を得ていた。
ジプシーの様に移動する騎馬民族はタチ悪い。少数の家族から六百人ほどの部族で北の大地を動き回る。冬には食えないから国境超えて村から略奪を繰り返す。点在してるから布教するのも飛空艇で追っていくだけだった。
俺が布教した全ての騎馬民族が、同じ魔力紋を生成したコアの命令により二番艦ストックのコンテナに寿司詰めになって積まれて行く。馬や牛や羊、ヤギ、ヤク、ロバも全部取っ捕まって連れて行かれる。一千六百万頭だ、一日何往復したのか知らないが五、六日掛かったみたいだ。他の仕事で忙しくて運ぶストックを遠目に一回見ただけだ。丸投げ過ぎて笑う(笑)
放牧に特化した部族なのでタナウスの同じような気候の南端に距離を取って降ろして行った。畜産に特化していても部族は全て騎馬民族だ。
タナウスの豊かな草原で暮らして生まれた家畜と羊毛製品とタナウスの合成食料を交換するだけだ。以後俺の魔力紋を生成したメイドの言う事をよく聞いてハッピーに暮らして行く。神聖国と同じく人や獣人、エルフやドワーフに人懐っこく寄って行く北方騎馬民族だ。
亜寒帯に暮らしていた者達が、だいぶ寒さの緩いタナウスの土地で走り回ってる姿を見ると俺も何か嬉しい。当時のインディアンが生き生きと暮らしてる感が凄いのだ。
何処の国も手を出さなかった不可侵だった土地にナレスが兵を送り、その後平定を宣言した。
各国への平定の宣言は秋だった。
・・・・
街路灯をナレス王都に設置して帰る頃には粉雪が視界を覆う程も降って来た。皆ミスリル鎧の暖房付きだが肌が出てる部分が冷たくて死ぬ。王城まで逃げ帰って来た。
その日の
昨日の晩、世界最強の宗教国の話をした後なので、その場に居た者は凍り付いたが、神の教えに帰依して一月中に融和すると言ったら、聖騎士が連れて行くと勝手に納得してくれた。
宇宙船が現れて家畜と一緒にコンテナに詰められロボットが連れて行くとは言えない。言える訳がない(笑)
盗賊の件と街灯の件が陛下に知らされた様で感謝され、明日の新年奉賀の民衆に伝えると言う。新年奉賀ってそういう事もやるのね。
俺もリズと一緒にテラスから民衆に手を振るらしい。スラブの陛下とアキーム兄様も民衆に手を振る。もう来年から来たくない。俺に王族は向いてないと思う。
俺はここの人達を統治して食わせて
俺の変な納得の仕方だ。
夕食後クランの診療所の件をクルムさんに相談した。
女性の診療の問題を色々教えてもらった。子供を産める身体になると体質が変わって、人それぞれの体質に合わせて色んな症状が出るらしいのだ。生理不順とかお腹の痛み以前に、この世はまだ衛生的じゃ無いから男も女も体調による免疫の低下で局部に菌が繁殖したり色々あると言う。
そんな相談、あっちの世でも専門医にしか話せんわなぁ。
うちのクランは風呂が有って清潔な部類でも根絶は出来ない。
その点においてクルムさんは専門医だった。
クランの診療所の顧問になってもらおうと、一旦クランに跳んで診療所を見せた。
「この青布でのれんを作ろうと思ったの」
「それで、ここに棒があるのね(笑)」
「そうそう。掛けたら見られないでしょ」
「ベッドのここにも衝立があると良いわよ」
「あ!そっか」
「ベルって子は水魔法の回復士なの。そういう薬師みたいなことを教えて貰えないかな?」
「薬師は開業したお師に付かないとダメよ。色々な症状や状態を見て病気や薬を判別して加減しないとダメ。街で患者が来る師に付かないとダメ」
「そっかー、ありがとう。クルムさんに相談するだけでそっち方面の消毒薬とか対症薬でなんとかなるならいいや。元々メンバーの診療所だからね」
「うん、薬師は治癒士になってからと思う」
回復士が調薬、錬金術を得て初級治癒士となって行く。
「僕も女性特有ってそんなのだと思ったから、マスターがメンバーの局部診て治療は不味いと思って(笑)」
「治せるからって、アルが診ちゃ相手も困るわよ(笑)」
「またベルが何か困ったら相談に乗ってあげて」
「はいはい」
そう言いながら、クルムさんは綺麗な青の反物を手に取った。
診療所の外に出るとナレスと少し違う重めの雪だった。
「ナレスと同じ雪雲かなぁ?」
「そんなに離れて無いからそうかもね」
「ちょっと寄って行こうか?」
雷鳴食堂でベルをクルムさんに引き合わせる。
「僕の薬師の師匠だからベルは孫弟子になる。同じ女性だし、僕より病気に詳しいから手に余るようならリナスかルミナスに言って僕を呼び出す様にね、僕がクルムさんを連れて来る」
ベルに言い含めてツマミの食券を買う。
クルムさんと小壺を乾杯した。
「今年もお世話になりました」
「こちらこそ!(笑)」
次回 237話 ナレスの休日
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