第233話  ダンスダンスダンス



12月28日。


今日はナレス王城でダンスパーティーだ。

なかなかシンデレラみたいなダンスパーティーなんか見た事無いし、さぞきらびやかな舞台なのだろうと期待する。


読み書き教室も明日で冬休みだ。忘れないうちに教室が終わった後、先生やってくれている事務員4人に(12月26日~29日、1月8日~9日)6日分のミッチスの優待券を6枚づつ渡した。時給換算大銅貨3枚(3000円)だぞ(笑)


雷鳴食堂でモーニングプレートの食券買って待っていると昨日の魔鉄6位の小坊主がお礼に来た。視たら金は持ってる様なので、ベルに小指の傷の話で治ったら大銅貨3枚の約束を払っておけと言った。ベルでは治せなかったから師匠の俺が治したと言ったら大笑いして食券売ってるベルにお金を払いに行った。戸惑うベルに頷いておいた。


小坊主と言っても小柄なだけ、16歳で俺より2歳も上だ。戻って来た小坊主に何処どこが小指の傷だ!腐ってたじゃねぇか!ともう一回頭をはたく。少し話をして、明日正式発表するタッカート師範の幽玄流道場で朝鍛錬して剣を磨けと言っておいた。


リズに連絡すると昼食にスラブ国王夫妻とアキーム王太子(21)も王城で会食するそうなのでご一緒しますか?と誘われた。なかなかそんな機会も無いので会っておく。海の話が進んでいたら明日タナウスに来る人たちなのだ。


スラブ王国は聖教国から一つ国を飛んだナレスの左横の西北に有る国だ。炭鉱と鉄鉱を始め鉱石の埋蔵量が多い国でお金持ちらしい。


11時半にナレス王城に行けば良い。三時間近くあったのでポヨーン村(隠れ里)に移住の準備を見に行った。


チリウ王国元宰相のベルンさん(村長)の所に行ったら綺麗に片付いている。年末年始のご馳走に使ってとダチョウの肉とドンゴロスに沢山詰まった食材を置いた。(ダチョウの肉とかナレスに持って行くと献立決まってて迷惑だったの(笑) 年末年始の献立がビッシリと決まっていた)お茶を出してもらってる間にポヨーン村の重鎮が集まって来た。


元宰相ベルン・リュードス 元外相のニール・オットマン 元財相のマール・ニクラス。元宮廷魔導士 ジェシカ・アントム、元王宮勤めの政務官15人。


・動物の移住を聞いて無かった事。

・街に住みたい人と今の村の生活がしたい人の事。

・馬、ロバ、豚、羊、ヤギ、鳥がいる。

・村には家畜用の池が欲しい事。

(軍鶏、うずら、アヒル、そんなに飛ばないキジも池の周りに放し飼いで馬やヤギたち家畜も勝手に小屋に戻る)


1月4日の九時から移住を行う、村と街に移住希望で家の前に荷物と共に待つ。全員連れて行くが街に希望の人から移住するので、村希望の人は鳥を小屋に集め、ヤギ、ロバ、馬などは紐を付けて家畜と一緒に待つように告げた。


家畜の扱いに皆がホッとしていた。


以後新年四日まで、村の外に出ない事、村の中に人を入れない事を約束させた。面倒事のフラグ臭いからだ(笑) 近くの村の知り合いに別れの挨拶に行ってトラブルを連れて来ても困る。

有りがちだろ?友達に別れの挨拶したら、その親が点数稼ぎに密告するとか・・・。


移住前の最後の打ち合わせは終わった。

後はコアとニウに対処して貰う。


政務官はともかく、この四人の重鎮は俺が視た限り、苦楽を先王と積み上げて歩んできたその道のプロだった。現王を怒りでいさめるのではなく愛でいさめていた。王のす行為、それを行う事でどの様な波紋が起こりどの様に波及し己に帰って来るかをすじことわりを持っていさめる事が出来る人物たちだった。


俺が一番欲しい知恵と経験の宝庫の人材だったのだ。


惜しむらくは現王は見る目が無かった。卑屈ひくつだった、何を言われても先王と比べられ笑われているとしか思わなかった。そして皮肉な事に自ら笑われる道を選んだ。


俺は敬意を持ってこの人材を受け入れる。だから何度も街の景観を考えて頑張った、この人達にふさわしい街を用意したかった。だから真っ先に伝えたかった。タナウス島はもう受け入れ準備が出来ている事。王宮の執務が出来る様に王宮近くの一画に皆に住んでもらう事を伝えて安心させた。


隠れ里の皆を移住させ落ち着いたら、この場の者はもう一度ここに戻り在野の者を救いに動く事を示し合わせた。ジェシカさんにはポヨーンの魔法陣の魔法と結界に入る為の認証の魔術紋を見せてもらって覚えた。


以後は俺がポヨーン魔法を張って敵を寄せ付けないのでジェシカさんには移住後の村民を安堵してもらう。村民と言ってもその家族のうち一人は重鎮たちの部下であり、国から排斥される危険から家族を連れて逃げているので言わば村民も現役の文官家族だ。


タナウスに連れて行くと時間も掛かるので映写機で見せてやった。


皆が初夏の観光誘致な映像を見て大喜びした。この動画ええわ!タナウスのプロモーションビデオだわ(笑) 明日もコアに撮って貰おう。



・・・・



11時。


風呂から上がり貴族服に着替えて、リズに今からナレス王城に行くと伝えて跳んだ。一人で行って王城入れてくれるか心配だったが、無事に入れた所にリズのお付きのセオドラが来てくれた。知らない使用人の中で知った顔を見るだけで嬉しい。


そのままリズの部屋に通された。


「アル様、いらっしゃいませ」

「リズ、今日はよろしく」

「アル様の部屋は婚約で逗留された時の客間が用意されています、打ち合わせの執事長ニウとメイド長コアもそちらに控えております」


「それで海は行けそう?」


「問題無く。最初は夏服をナレスで用意するか考えたそうですが冬のナレスで急遽きゅうきょ用意するより、夏のタナウスで用意して貰う方が良いという話になったみたいです」


「それなら良かった」

昼餉ひるげは八人の会食ですのでよろしくお願いします」

「8人?」


「ナレス王夫妻、スラブ王夫妻、第一王女と王太子、第三王女と皇太子の会食となります」


「なるほど、わかったよ」


「スラブ王夫妻もアキーム様も海は初めてだそうです。話がはずみそうなのでアル様が昼餉におられて助かります」


「それは良いけど、来春の結婚でお兄様になる方だから、早く知っておくに越したこと無いと思って、明日タナウスに遊びに来るし仲良くならないとね」


11時45分に昼餉ひるげに呼ばれた。


昼餉ひるげの入場門に皆が並んでいた。

偉い人が一番最後に入場するみたいだ。皆が皆、呼ばれる順番に並んで笑ってる。皆がと言う顔だ。


カーンカンカンと小さく甲高い鐘が品よく鳴った。


俺とリズが最初に呼ばれた。


「聖教国皇太子、アルベルト・ド・ミラゴ・イ・クレンブル様並びにナレス第三王女、リズベット・アナ・ヴォイク・デ・ナレス様のお越~し~」 


みんなお越しじゃねぇか、そこに居るぞ(笑)


円卓のテーブルに付いていたナレス王夫妻が席を立ち拍手と共ににこやかに迎えてくれる。俺とリズは王様の左手側の席。お招きありがとうございますと握手と着席。


一息つくとまた甲高い鐘の呼び出しだ。


「スラブ王国王太子、アキーム・スバル・ド・デム・スラブ様並びにナレス第一王女、マリアンヌ・アナ・ヴォイク・デ・ナレス様のお越~し~」


リズのお父さんお母さんに合わせて席を立ちにこやかに笑って拍手で迎える。王夫妻と握手と挨拶の後、執事長が王夫妻の右手の席に誘導する。


一息つくと最後の呼び出しだ。


「スラブ王国国王:ファディル・スバル・ド・デム・スラブ8世様並びにスラブ王国王妃:セザリア・スバル・ア・デム・スラブ様のお越~し~」


皆が席を立ってスラブ王夫妻に拍手する。


茶番で笑うが、その考えられた歓待かんたいのルールには舌を巻いた。舞台のそでで招かれた客はお互いに顔を見合わせて笑っているのだ。


だからしょうがないよね(笑)


誰も言わなくても、入場門の前で呼び出しがあるまで笑いながら待っている時間もお客同士が親密になる時間になっている。一見面倒臭く見える慣習の裏にはお客を楽しくもてなすための心遣いがあった。


とても勉強になった。


皆が席に付くとすぐに会食となった。


ナレスの陛下が、今年の総括そうかつで二王女の婚約がどれ程他国に誇らしく思うか述べて会食が始まった。


最初の一声は予想もせずスラブの王太子だった。


「アルベルト殿下、ナレス王国第三王女殿下とのご婚約おめでとう、僕も聖教国の皇太子が弟になるとは思ってもいなかった。父上も母上もスラブの民全てが聖教国とのよしみを喜んでくれている。マリアンヌ王女との婚約は他国からもうらやまれる婚約で非常に喜んでいる。ありがとう!」


テーブル越しに対面から手を差し出されヨイヨイした。


「儂からもお礼を言おう、アルベルト殿下。アキームの後に婚約してくれたおかげで余計な邪推じゃすいを他国から受けずに済んだ。今では間接的にでも聖教国とよしみを結べる我が国に他国から好意的な祝辞が届いている、本当に感謝する」


「ファディル陛下、アキーム殿下、お言葉を頂き感謝致します。スラブ王国はお兄様の国になりますので、こちらこそ末長くよろしくお願い致します」


俺も国王に手を差し出しヨイヨイする。


「聖教国のにそう言って頂けたらスラブ王国も安泰ですな、アキームをよろしくお願いいたしますぞ」


思わず驚いて視た、途端に全ての情報がフラッシュして驚いた。

聖教国は婚約の知らせで、皇太子に付いて問い合わせてきた周辺各国に対して俺が皇太子である事を公式に認めて回答していたのだ。


「こちらこそよろしくお願いします、今の教皇様は壮健そうけんでございます。4~5年後に新たに出来る宗教国の国首となりますのでこちらこそよしみを新たによろしくお願い致します」


「おぉ!その事よ、聖教国として秘密にしていた建国前の国に招待して貰えるとは光栄な事だ。アキームも第一王女殿下に話を聞き胸をおどらせておる、何分なにぶんにもよしなにお願い申す」


国王が話してる最中にも視て先読みして、真意に沿った会話を心がける。婚約後の王女と王子はダンスパーティーや王女側の国のお祭りなどに積極的に参加して輿入れ後に国が変わる王女に配慮し、結婚までの期間を過ごすらしい。その中で今まで見た事の無い海を見るというイベントが一つ増えて喜んでいる。輿入れしてお披露目して終わりじゃ無かった。


「喜んで頂けて光栄でございます。まだそれほど整ってはいない国ではございますが、今は初夏の陽を見て快適な一日を過ごせると思います。冬の寒さを忘れて明日は海でお楽しみください」


「アルベルト殿下、食事が終わった後、あの幻灯機にて新教国タナウス国の様子を見て頂いてはどうか、陛下も殿下も驚かれると思うのだが」


「承知しました陛下、会食が終わりましたら用意致しましょう」


幻灯機いいな、映写機とか投影機よりずっと良い。


食事後Yourtube風の新教国タナウス解説動画を見て、海に想いをせてもらった。


「楽園では無いか・・・」スラブ陛下が思わず口に出す。


タナウス作ってホント良かった。

その言葉で俺は満腹になった。



・・・・



ダンスパーティーだがリズに聞いて視ていた光景とは全く違った。パーティーホールが二部屋ぶち抜きで、一部屋は立食用ホール兼ダンスパートナーを誘う部屋となってメインのダンスホールは2Fの回り廊下も含めて40組のカップル。立食用ホールには決まった相手の居ない14歳以上の貴族家の子女が沢山いた。


リズの記憶とまったく違っていたのは、毎年40組程の結婚を控えたカップル参加者が中心のダンスパーティーの記憶だ。例年であれば貴族の跡取り達のお披露目がメインのパーティー。


それが今年は違った。第一王女だけではなく、第三王女が13歳で婚約したお披露目のダンスパーティーと言う事で、スラブの王太子と聖教国の皇太子が出席する。四か月も前から年末のダンスパーティーの話題が先行し、ナレスの貴族家子女たちの話題を独占していた。


皆、王宮のダンスパーティーに行きたがるのと同じくして貴族家も成人となった子女たちの婚活を速め、デビュー&お見合いに大挙して参加者を送り込んで来たのだ。


一貴族家で多ければ四人、長男や長女が14、15歳であれば一人、大体四、五十もある貴族家が子女を送ればどうなるか分かる(笑)


立食フロアが凄い事になっていた。百人ほども成人以後の相手が決まっていない男女であふれかえっていた。


ダンスフロアを一望する二段ほど高い壇上に椅子が並ぶ、中央はナレス王夫妻とスラブ王夫妻、その横にナレス王家の王太子、スラブ王国の王太子、第三王女と俺、第二王子夫妻と王の椅子を対称に賓客の椅子が並ぶ。


ダンスフロアから一段高い壇上には宮廷雅楽団がダンスパーティーの開幕を待って控える。


最初は開会の宣言と共に両国の王様夫妻が左右に分かれてとても広いダンスホールを縦横無人に踊りだす。ダンスパーティーって王様から踊るんだよ!初めて知ったわ。次にお披露目の第一王女と第三王女が婚約者と一緒に左右に分かれて踊る。相手もさる者、あっちの二人は生まれた瞬間から第一王女と王太子だ、ダンスの気品が凄過ぎる、リズとアル、たまにムックじゃ負けそうだ(笑)


そんな俺を聖教国の皇太子と熱く見てくれる婦女子のギャラリーがとても恥ずかしく、また嬉しかった。間違いなく俺は今、王子様なのだ(笑) まさかの王子様キャラなのだ!鼻汁出るわ!


これは・・・貴族のお祭りだった。


庶民は春と夏と秋にお祭りがある。普段朝から晩まで働いて。そんな者達が開放されて村中が参加するお祭り。村中、街中がその日のために飾り付け、ごちそうを用意して酒と歌と音楽で踊り明かすお祭り。


普段は家の生活をになう、泥と汗にまみれた若き息子や娘が歌と踊りで夜を明かす。気の合った者どうしで手をつなぎ暗がりの茂みに消えて行く・・・そんなお祭り。


貴族にはそんな開放される場所が無いのだ。


普段は貴族らしく振舞って(食うのに困っていても楊枝を高く上げてさも食い終わった体を取る事)の貴族が平民と同じくその様な祭りには参加出来ない。


だから、こんな会が有るのだとアルは気が付いた。貴族がパーティーと言うだけでと思っていたアルは反省した。これは若い貴族の出会いの場として絶対に必要な会だった。


教室で振舞う日常とこの様な夜会で振舞う非日常だから、男女が舞う事も出来るのだ、羽を伸ばして手を取り踊る事も出来るのだ。


学校の後夜祭のダンスじゃない。

生活が、自分の未来が、家の繋がりが掛かってるダンスだ、磨き立てるに決まってる。アルはそれを肌で感じた。視線の中心に居るリズの踊る姿。それはどれほど皆がうらやむ存在なのかよくわかった。


リズと楽しく踊り終わったアルは椅子に戻って、ナレスの王太子夫妻と第二王子夫妻の踊りを眺めた。


二組の夫妻が踊り終わると、貴族家の序列順に10組程づつ踊って行く、4回踊った所でペアの決まった貴族家のダンスは一巡した。


以後のダンスフロアは自由だ。すぐに踊りだす者、手を取り合って立食スペースに行くカップル。


アル達の椅子の近くにはワゴンが置かれて、食べたい物を侍女に言えば皿に取ってくれる。


立食スペースの方からもダンスに誘われた貴族家のお嬢様が手を取られて踊り始めていた。


アルの悪い癖が出て来ていた、折角の貴族の祭りなんだから楽しまなきゃ損だよと教えてあげたい気持ちになっていたのだ。


そして前代未聞の事が起きてしまった。


アルが席を立ち立食スペースに居た男爵家の娘をダンスに誘ったのだ。もううたげ無礼講ぶれいこうになり誰が誰を誘っても良いのだが、婚約者を持った者がそれをやったらアウトだった。ビデオ判定など不要のアウトだ!(笑)


回りの者は余りの事に驚いて動けなかった。己の婚約のお披露目のパーティーで男爵家の子女を誘う行為。めかけを誘う様な破廉恥はれんちな行為と取られても仕方がなかった。聖教国はそうなのかしらん?と皆も唖然あぜんと見守ったら、そのまま踊りだしてしまった。


立食フロアの男女も余りの事に皆ダンスホールまで移動して茫然ぼうぜん優雅ゆうがに踊る二人に注目した。


リズは余りにひどいい仕打ちに青くなり手が震え、席を立とうと思った時に第二王子に手をつかまれた。お兄様!と言おうとして王子に目でホールを見ろとうながされた。


ホールの中心で男爵子女のスカートが花開く様に回した後に、踊りながら端に寄って行き子爵家の長男に子女を渡して二人の肩を抱いてダンスホールの中心に連れて行ったのだ。


二人が踊り出したのを見届けて、今度は子爵家の長女(15)のお嬢様をダンスに誘う。少し踊ってまた子爵家の長男(15)の所に連れて行きダンスせよとホールに送りだす。


それが三人目から四人目となった時、皆がその意味を知った。みな成人になり立てで会に不慣れな一人で参加している子女ばかりを選んでカップリングしてたのだ。


聖教国の皇太子に声を掛けられ、カップリングされた子女は感謝した。一回も誘われず踊れないならどうしようと思っていたのだ。親が期待を込めて着せてくれたドレスが無駄にならなかった。それどころか聖教国の皇太子に声を掛けられ踊ってもらえたのは初めての舞踏会の最高の思い出にもなった。


当然アルである。


アルと踊ってる最中に>あの子いいなぁ。と思った(一人で参加した家格の釣り合う)男子を選んでいた。お互いにパートナーがいなかった相手である。


アルのやっている事が分かったリズは安堵して、そして鼻が高くなった。かって自分だって不安だったダンスパーティーで不安な子を助けてあげてるのが分かったからだ。


六、七人、初参加の子女をカップリングしたアルはリズを誘った。少し踊るとリズをアキーム王太子の所へ連れて行った。リズとアキーム王太子が踊りだすとアルはマリアンヌ第一王女と踊った。身長差があるので離れて踊る女性をターンさせたり回したりする派手な踊りをアキーム王太子と繰り広げる。


踊りながらも周りのカップリングを視て行く。


大笑いしながら第一王女を席まで帰す。派手な踊りで息を切らしているがアルはそのまま侯爵家のお嬢様を誘いに行った。聖教国の皇太子さまだ、断られる訳が無いのだ、踊ってしまえばアルの物。そのまま子爵家の長男の所に連れて行く。皆もその家格は無いと目をむくが二人は本当に嬉しそうに踊り、以後離れない。立食ホールへ手を繋いで食べに行く。手を繋ぐ、それは次のダンスの決まった相手であるという事だ。


二人は学校でお互いに気になっていたが家格の違いで声も掛けられなかった。後の時間はそういう気になる相手ばかりをカップリングして行った。上手く行くかどうかは本人次第だ。


アルは個人主義的ではあったが集団競技の野球をやった上に主将の目で部員を乗せて集団の力を引き出すのが上手かった。そうして学んだ事で文化祭やあのプールの企画に結びついているのだ。ノリ良く企画に乗ったやつは全員楽しませてやるぞ!になる。


これほど健全な真実の眼の使い様は無いと思われる。


例年なら陛下夫妻は一時間ほどで退席し、若いカップルがダンスを楽しむ場にするが、今年は最後まで見ていた。見ているどころか夫妻で若いダンスカップルの中に乱入もした。席に帰ると側に控える執事長にあの相手は?あのむすめは?と貴族家を聞いていた。アルに誘われて踊る二人がまことに楽しそうに踊るからだ。楽しく踊るカップルを視て誘っているからそうなっていた。陛下は楽しそうに踊るカップルに若き頃を思い出し、自らも踊ってしまっていた。


結果十八時半から二十二時半までの四時間のダンスパーティーでアルは最初から最後まで踊っていた。


アルは最後の曲にリズとゆっくり踊った。


初めての舞踏会を夢の様な時間で過ごした子女は次の機会を待ち望んだ、また同じ相手と踊りたいと願った。学校で見かけると顔が赤くなった。あの人ともう一度踊りたい。



そして物語の様な奇跡が起きる。




次回 234話  海のロマンス

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