第227話  観光誘致の楽園画像



12月21日。



朝、教室でリズの手紙を受け取った。

封蝋の紋章が国旗の紋章って、当たり前なんだけど凄い。俺は小物なのか、こういうのを見るとナレス王家のお姫様とビビってしまう。平民はそんな凝った事しないから、恐れ多いと思ってしまう。


タッカート師匠と鍛錬をして、ハウスに帰る。クリーン掛けて風呂に入り貴族服に着替えたらお坊ちゃんの出来上がり。八時半、まだ早いかなぁ?身内なら良いかなぁと悩みながらも行く決心をする。九時になってお客さんと鉢合わせても嫌だった。


お城の防御結界前の第二ゲートに跳ぶ。門の近衛が毎回俺を見るとギョッ!と身構える。子供が笑って手を上げるだけで普通の顔になるから大丈夫。指輪でナレスの王族を示すとメイドさんに執事長の所に案内される。執事長のジョルノーさんは俺を見るなり最敬礼してくれる。


「通信機で聞いております」

「はい。リズより預かって来た手紙です」


「は!確かに。リズベット様のお手紙お預かりいたします」


何枚書いてるんだと言う程も分厚いリズの手紙を5通手渡すと、押し抱いて懐に入れた。


その間にもメイドさんがお茶とお菓子の用意を並べるので近況を和やかに話しながら頂いて帰って来た。九時から査問が行われる(物騒だな!)との事で陛下には会えなかった。


視たら査問は貴族対貴族の喧嘩だった。王宮騎士団員の妹に一目惚れしてまつわり付いた酔った貴族子弟と騎士団員が喧嘩になって王都で暴れたらしい。領地から王都に着いたばかりなのに、両親が当事者を連れて別室に控えている。まぁ平和だった(笑)


(朝食もまだなので)ジョルノーさんと話しながらも出されたお菓子をモソモソとたくさん食べる俺はそのまま子供に見えたろうな(笑)



リズをナレスに送るまで四日程あるのでポヨーン村の人達の移住への目途だけ付けようとタナウス島に向かう。


そんな理由で、何度もやってる家の並べ替え(笑)

これって終わりが無いよ!ベター、モアベターみたいにキリがない。並べる度にこだわりの箇所が変わって進まない。


今回準備をするに当たって、王都の建物を全部取ってまで建物の並び変えを行っているのは、人が住んだ途端にそういうトンデモ文明やトンデモ魔法が使えなくなるからだ。 普通の国はそんな事出来ないんだってば!


今までロスレーンの整備で忙しくて後回しにしたけど、ねずみ騒動でもらって来た家を無秩序に寿司詰めに置いたのが最初の間違い。ぽよーんのお婆ちゃんが来た時はひどいありさまだった。ここに住みませんか?と言うには俺の人格を疑われるほどひどかった。


王宮の前に広場も何もなく民家が寿司詰めであったら引くわ。


そんな物さえ見せなければ!

王都に高さ30mの天空の用水路が流れる美しい街。


今はコアとニウに見てもらいながら大通りにあるラウンドアバウト交差点の中心部に作られた噴水や憩いの広場に作られた噴水広場が綺麗に見える様に低い家から同心円で背の高い家を置いて行く。家を置き変えながらポコポコと噴水広場の街灯も整備する。


ロスレーンで好評のクリーン施設とトイレの施設も作って行く。


ポヨーン村の移住が決まり、王都を整備しだしてからコアが栓をして通水してなかった噴水とそこから伸びる小さな用水路を開通させた。デコレーションケーキの様に作られた噴水から蝋燭が伸びる様に水が噴き出す。噴水から伸びる小さな用水は路地裏を走って海まで続く。下水は裏路地の下に海まで一直線の大穴を開けて石化してある。使った水の排水はそちらに繋がる、


裏路地には洗濯も水浴びも出来る水深20cm幅1mの20mもあるプールがあるのよ。上水が20cm溜まると排水溝から下水に落ちていく。洗濯物並べて女の人がバチャバチャ踏んで洗うお母さんの社交場だよ。夏の暑い時に赤ちゃんを入れてくれると嬉しいなぁと思って作った。(常夏のワールス共和国の下町におばちゃんがワイワイする水場があったんよ、赤ちゃん水場に入れて洗濯してたの)


そのうちに水の都と呼ばれる筈だ。


そうそう!掘っていた大山脈の横断トンネル。

すでに衛星都市予定地まで開通してトンネル照明まで付いている。


6か月半200日で掘りも掘ったり総延長1500km。未だに採掘モジュールが毎日8km掘っている。リズと知り合う前から掘ってるからそりゃ総延長も伸びる。


大山脈に作った大空洞は転移用のドーム。そこから時計の文字盤そのままに12方向に延びるトンネル。1~5番と7~11番の10方向は100m行くと途中で中型ドームスペースの隊商待合所。そのまま100m行くと各大陸へ転移するクリスタルの広間送迎門へと続いている。それは島国タナウスから10大陸へ続く相互転移の広間だ。


12時の方向は宮殿脇に出る首都の大通りに続いて行く道。大通と言っても銀座とかそんな感じじゃ無いよ。馬車の荷役スペースはあるし、倉庫付の店舗だし、ショーケースの街並みからは程遠い。強いて言えば石畳になってる西部劇の街、空き地は歯抜けに有るし店舗はレンガ作りで、街を作ってる感が凄い。


6時方向のトンネルは衛星都市へ向かうトンネルだ。その方向には王都を取り巻く五都市に接続するジャンクションがある。六叉路で五本の専用道を通ってタナウス衛星都市に向かう交易路となる。


南に向かい300km、北に向かい260km 西に向かって220km 南西へ250km 北西に350km。直径30mの外殻トンネルに作られた20mのインナーチューブの内殻トンネルだ。インナーチューブは上下に分かれて下の部分に上水、下水、上の部分に街灯、交易路、野営場などがある。(街灯だけはインナーチューブが生成されると付いてしまったタナウスの科学だ)


トンネル内で上水(給水紋と馬の水飲み場)、休憩場(飼葉置きと継続紋のかまど)、野営場(飼葉置きと継続紋のかまどとキューブハウス)、宿場町がある。(荷車を引く家畜を大陸単位で見るとラバ、ロバ、馬、牛、ラクダ、騎竜きりゅうなど様々)


各大陸からタナウスへ転移し、タナウスで交易の場合は交易トンネルを使えば天気に関係なく、盗賊にもモンスターにも襲われない快適な旅が約束される。どの大陸からでもタナウス島を経由させたらタナウスも賑わうだろうし人も集まって来ると思う。



今日は俺がやる気になって来てるけど普段は呼ばれるまで来ない。呼ばれる時はコア達が施工しても時間が掛かる時だ。レンガはコアも生成出来るが一気に何千万個なんてさすがに無理。原料の土を用意して俺とシズクが作る方が早いのだ。俺が自分で汗を流したいことを知っているから例えレンガでも作ってと通信が入る。


移住する人は、景観整備済みの王都や王都近郊に住ませたら他の衛星都市は後からなんとかなる。この国は言えない秘密が多すぎてドン引きだわ、どんな国やねん(笑)


なかなか駆け込み寺の国って難しい。最強の宗教国家といっても俺だけの宗教だ!俺教だ!笑うわ。幸いどこの国でもネロ様が神様みたいだから俺もネロ様をあがめたてまつる所存だ。


アホな事を思いながらも体は動かす。


なかなか発展途上の街を演出するのも難しい、建物置き過ぎ、建物取り過ぎで雰囲気がガラっと変わってしまう。王都の区画を結構歯抜けな地域に仕上げて行く。チリウ王国の元執政官たちが移住する一角は商品を買う人もいないのに色んなお店が開いてナノロボットがそれらしく店で暮らしている。


・・・・


夕方に一旦ハウスに帰ってからギルドの解体場に向かう。昨日のダチョウの魔物はこの辺に居ない鳥な上に体がでかくて羽をむしる湯が大変だと思ったのだ。お金出してもさばいてもらいたい。

明日の夕方以降に来るように言われた。


解体場から出ると、眼に何か引っ掛かったので二度見。


視ると稼げない魔法覚えたての回復士。大きなカバンを背負しよって今日の宿代を手の中で除けて皮袋に入れていた。露店でお腹の膨れる麦のおかゆでも食べようと思ってた。

路上で歩きながらお金を数えてる人はそうそう居ないから眼に引っ掛かった(笑)


良く視た、16歳、水魔法のヒール一本。普通は薬師や医者の所で下働きして軽症の患者相手にLvを上げないと威力が弱くて金にならない。田舎の薬師の手紙を持って出て来たのは良いが、お目当ての治癒士は4年前に高齢で引退してもう居なかった。


治癒術ギルドで師匠の当てを探しながらのその日暮らし。今日は一日、北門で冒険者をながめてかすり傷のけが人を探してた。


光魔法と違って水魔法のヒールは本人の治癒力活性じゃ無いからな、自身の魔力一本で癒さなきゃならない。自分は魔力消費で疲れて相手が元気になる水魔法だ。


「お姉ちゃん、回復士のお姉ちゃんだよね?」

子供モードで話しかけた。


「え?なぁに?」

「北門にいたお姉ちゃんだよね?」

「・・・そうだけど」


「治してもらいたい人いっぱいいる所あるよ」

「え?ホント?」

「本当だよ」


「その人たちお金持ってるのよね?」

お!固いな!スラムなんか連れてかないよ(笑)


「持ってるよ、冒険者だもん」

「連れてってくれないかな?」

「うん、いいよ」


クランの雷鳴食堂に連れて行った。

6割ほど席の埋まった食堂で言った。


「回復士のお姉ちゃんが来てくれたぞー、切り傷、擦り傷あるやつ治してもらえー!見習いだから安いらしいぞ(笑)」


医者や教会に行けば診察で銀貨1枚は相場、回復治療の追加で2~3枚取られるのは当たり前。底辺の冒険者は爪が剥がれた位で医者や教会怖くて行かない。1週間我慢すれば痛くなくなるので自力で治す。


「アル様ー!」手を上げる奴が居た。


足の親指の爪を割っていた。血が固まってる。


「うわ、どうしたコレ?」

「昨日魔獣に噛まれて先っぽだけ割れた(笑)」

「それ大丈夫だったのか(笑)」


すねまれるのけたら靴の先をガブッと(笑)」


「脛じゃなくて良かったな(笑)」


※脛だった場合、冒険者が何日間働けませんとリナスに申告に来る。さすがに2週間以上狩りに出ず、上がりの10%が無いと追い出されそうで心配して申告に来るのだ。そんな時は俺の所に報告が上がるのでその場で治してやる。擦り傷や切り傷は知らん、動物は舐めて治すとリナスに言ってある(笑)


「これだと幾ら?」

「治ったら大銅貨3枚で」(3000円)


「踏み込むと痛いんだよ、頼むよ!」


「ヒール」見る間に治った。

「治った治った!ありがとう!はい大銅貨3枚」


「そんな安いなら俺も!」

ひじをザーッと擦り剥いていた。


「ヒール」すぐに治った。

「風呂入る時痛かったんだよ、ありがとう」

大銅貨3枚をもらう。


「こっちもお願い!」

靴ズレだった(笑) 森や山入るとね。


「ヒール」

「これで痛くねぇ!(笑) はい大銅貨3枚」


「歯痛も治るかな?」

「歯痛は魔力が多いと思うので治ったら大銅貨4枚で」


「治るならやってみてくれない?」

「ヒール」

目の前の物をモグモグ食べる。


「治ってる治ってる!ありがとう、大銅貨4枚ね」


「こっちも」


「済みません、あんまり魔力が無いんです。明日でもいいですか?」


「明日の朝8時とかなら出来る?」

「はい、出来ます!ここに来ますね」

「バンズだ」

「ベルです」メモに名前書いてる(笑)


他に3名が朝に予約取ってた。


突き指やら、切り傷、擦り傷は大森林や大山脈入れば日常茶飯事だ、まともなヒールなら高いから冒険者は誰も治さない。


「お姉ちゃん、終わったらこっちに来て」

「ありがとうね、助かったわ!」16歳の輝く笑顔。


視たら、これからここでお客を探そうと大喜びだった。お金の心配いらないだけで幸せになっちゃうよな。


大銅貨2枚くれた(笑)


クランハウスに連れて行った。


「リナス、この子。今大銅貨13枚稼いだからな。はい大銅貨2枚、お釣りの銅貨やって女子寮入れてやれ。ソロの回復士だ、うちに入って貰え」


リナスが珍しそうに女の子を見る。


「え?」

「はい、お釣り銅貨7枚ね」


「この子、薬師ギルド(正式名称:治癒術師ギルド:通称治癒士ギルドとも言う、各種の薬やポーションを売ってるので薬屋とも言われる)っぽいから、冒険者ギルドのうちのクランの事教えてやって。それと風呂の用意も無いと思うから世話焼いてくれないかな?これ手数料(笑)」


ミッチスの無料券を2枚渡す。


「この子まだご飯食べて無いから、ミッチスで食うならもう2枚やるぞ」


「今から二人で行って説明します!」

そんじゃ追加の2枚な(笑)


「あ、あの、私ベルって言います」

「僕はアル」

「私はリナスね」


「リナスから説明聞いて、その気になったらベルはうちに入ればいいよ、ここに入るなら名目上は僕の弟子だからね」


「え?」


「師匠持ちの弟子なら、辻ヒールしなくていいって事」

聖教国発行の治癒士の証を見せてやる。


「浄化や状態異常の患者が出たらリナスに言えば僕が治すから必ず報告する事」


「・・・」目が点だ。


「分った?」

「はい」


「師匠が出来たからって、回復士の証出して正規の値段取るなよ(笑) まだ癒す力は赤ちゃんだ、今まで通りの値段でLv上がるまで頑張れ!」


「はい!」


翌日から、ソロの回復士が食堂常駐となった。

朝、昼、晩の忙しい時期に食堂の片隅に店を構える回復士。


回復士のを雇う訳には行かなかったが、庇護ひごは与えようと俺の弟子として名前札を作って、クラン雷鳴のメンバー証をリナスから渡しておいた。回復士の世界も厳しいのだ。親の名前(師匠の名前)が大きい、師匠も信用も無い個人は苦労する。まぁ取り合えず生活も安定するだろ。


2日目には、券売嬢兼回復士で食券を売っていた。


食券売りながら>20:20に食堂でモルガンさん、>20:30に食堂でリンダさん、と回復魔法の予約のメモを付けるベルの姿は、旅館のマッサージ師みたいに思えた。


・・・・



12月22日。


最近減って来たダンスの稽古を教室でリズに誘われた。


年末28日に毎年旧年に感謝する王宮主催のダンスパーティーがある。今年は第一王女:マリアンヌ(19)婚約者:スラブ王国王太子アキーム(21)第三王女:リズベット(14)婚約者:アルベルト(14)がナレスの社交界にお披露目のパーティーになりナレスの王宮も力が入っていると言う。リズが言うには俺の場合、聖教国のブランドがあるので踊れたら合格らしい。本当の事を素直に良かれと教えてくれてるのは分る。裏表なく俺の味方してるのは分かる。


でも、その気遣いで俺のプライドをズタズタにする奴だ。俺の事言う前に自分がダンスを磨け!お前しか先生に注意されてないだろうが。


元々これで良いだろうと用意していた白の貴族服を出して先生に見てもらうとOKもらった。男は黒か白なんだって。分かりましたと静かに言って、踊ってる最中に白の貴族服から赤いローブの教皇セットに変わってみた。言われた途端のチェンジで音楽を奏でる侍女隊が止まった。先生を呼吸困難にし、リズを引っくり返して笑わせた。


「白か黒って・・・あははは、もう!アル様」

「・・・アル様、それはなりません・・・」


先生がヒーヒー言いながら「絶対に!絶対!ダメです!絶対!赤は・・・」教皇セットのままで「絶対なんですね?」とクラウンを頭に乗せて真面目に言うと、また笑う。笑いながら本気で怒って念を押して来るのが可愛かった。


笑いが収まった時に白の貴族服になったらまたツボにはまった。俺のせいで曲もダンスも出来なくなりお茶の時間になってしまった。


気になったので聞いてみた。


「リズが結婚するとお屋敷の侍女やメイドはどうなるの?」


「求婚を受ける者も多いかと思います」

「求婚されてる人多いの?」


「年頃であれば2~3人はいるかと思います」


「え!2~3人?返事とかどうするのさ」

「ナレスの王宮勤めが明け次第の返事になります」

「返事すると辞めなくちゃダメなの?」

「はい」


「お屋敷の先生や使用人に聞いてみて良いかな?」

「何をです?」


「僕は結婚した後に国を持つ。宗教国だから普通の国より男尊女卑はゆるいんだよ。例えば結婚して子供が出来たら仕事を一旦辞めるけど、手が掛からなくなったら、又は家で面倒を見てくれる親がいるなら仕事を続けられる、仕事を続けたいなら僕の国に来てもいいよ」


「教皇になられるのですか?」

「うん、そうだよ」


執事長、メイド長始め一緒にお茶を飲んでいたダンスの先生や侍女たちまで色めき立つ。


「初めてお聞きしましたけど!」

「初めて話したけど!(笑)」


「アル様!」睨んで来るお子ちゃま。

「なに?」余裕で受け応える。


「聖教国を受け継ぐのですよね?」

あー!皇太子と思ってるからな。


「受け継がないよ」

「え!」


ふーむ、どう言おう。


「聖教国は受け継がない」

「え?」


「今、作ってるんだよ、宗教国」(笑)

「作っていらっしゃるって。その、国をです?」

「うん、結婚式には間に合わせるつもり」

「リズが眉をへにょりと曲げて考え込んでいる」


「何考えてるの?(笑)」


「ここの演習場はどうするのです?」

「どうもしないよ、今まで通りのクランだけど」

「演習場が国と仰るかと思いました(笑)」


「コルアーノの中に国を作ったらダメでしょ(笑)」


「ちゃんと他の場所なのですね?(笑)」

「うん」


「未開の土地を切り取るのです?」

「えー!どんな国よ!(笑)」


「アル様!」


「未開の国にリズはお嫁さんに来るんだね(笑)」

「そうでしたね、私が行くんでしたね(笑)」


「話しておくか!(笑)」



「僕の国は聖教国の10倍以上あるんだけど」(笑)

「え?」


「わかんない?ナレス王国の10倍は大きいよ」


「「本当でございますか!」」執事長のセオドラとリズ。

「うん、10倍はあると思うよ」


「リズが連れて来るなら使用人は何人でも受け入れる。使用人の家族も親も婚約者も婚約者の親もだ。婚約者が騎士団なら騎士団で受け入れる、執政官なら執政官で受け入れる、親が大工なら大工で受け入れる」


「・・・」頭が回って無いな。


「一回みんなで見に来る?」

皆がウンウン頷く。


「使用人全員集めてくれる?」

聞くまでも無かった、全員興味あった。


相互通信でコアに連絡する。


「王女様以下27人客人で王宮に招くからお茶の接待をお願い」

「かしこまりました」


皆で王宮に跳んだ。


王宮を案内する(笑)

背には大山脈、王宮と言うかお城タイプじゃない宮殿のテラスから王都を望む。


「国の名前がまだ仮だから聖都か王都か首都か皇都なのか決まって無いの。案としては神教国タナウス。読み方的には略称で「しんきょうこく」にするつもり」


皆が望むそのテラスからは、信じられない光景が広がっていた。宮殿から望む大地が緩やかに傾斜して街並みが海まで繋がる街。見える噴水の数を数えるだけで10数基も動いている。


普通の国なら魔力を利用して街に一つ、王宮に一つの代物だ。


「皆はナレスの立派な王宮メイドや侍女達だ、先生も結婚で家に引っ込むのは勿体ない。婚約者とその家族が来るなら家族の住んでる立派な家はそのまま持って来て空き地に置いてあげる。婚約者と結婚するなら好きな場所の家をあげるよ」


「この庭を見てよ、庭師に求婚されてる人いないの?(笑)」

皆が笑う。


「あと4~5年後には世に国として宣言するからね」


「それまでは誰にも内緒に・・・出来ないか(笑) 婚約者を誘えなくなっちゃうね」


「結婚した途端にリズはタナウスの王妃になる。皆が付いて来る気があるなら、そのつもりで考えてくれ」


(コアが観測した)王都の有名レストランのコース料理を生成して昼食を出してくれる。こんな事も想定して、もっと料理を集めないとダメだな。


「コア、これから皆で王都に出る、様子を撮ってくれないかな」


「かしこまりました」

「移住用プロモーションビデオ風に(笑)」


「Yourtube風の字幕動画が分かりやすいかと」

「それでいこう!」


皆が何を言ってるのか分からない。


・初夏の用水路に生足を突っ込んで涼む侍女たち。

・海に向かってなだらかな丘を下って行くメイド達。

・噴水でキャッキャウフフなリズとメイド達。

・波打ち際で打ち寄せる波とたわむれるメイド達。

・海風をはらむスカートを押さえるメイド達。


あっちでバズりそうな動画が出来た。


見たら太陽サンサン、波がエメラルドグリーンに弾けて、サンゴ礁が煌めく海!遠くはマリンブルーに水平線が続く。観光誘致の南の楽園画像だった。いつのまにか動画で騙して連れて来る感じになっている。これはイカンと、取って付けた様に原風景的な川沿いの農村の風景も入れた。


気が付いたら16時だった。


慌てて皆と帰ってダチョウの魔物の肉をもらって来た。


そのまま雷鳴商店に寄ってスルマン店長(36)達を呼ぶ 、ジョシュ(33) トウリ(35)の兄弟も集まって来た。門の内側にどでかいキューブハウスを建てて盗賊の鹵獲品の武具を置いて行く。休みを聞くと光曜日の定休のみ、兄弟の当番制で新年もずっと店は開けると言う。


「この武具は新年割引きでメンバー証を見せたら市場価格の1/2で売ってあげて、10日までの特売ね。メンバー証無い奴は普通の金額で売ってね。余りに安いと他の武具店も困るから普通の値段でお願いね」


「わかりました、これはアル様が退治された盗賊ので?」

「うんそうだよ、ミウムからランサンまでの街道に居た奴と去年の秋から狩った盗賊の分」


「すごい数でございますね、うちの親父も2位で凄いがアル様はすでに1位なのでは?」


「あはは、1位だ!と言ったらモンスターが逃げて行けば便利だけどね(笑)」


「そう言えば、肉の在庫はどんな具合?」


「お陰様でバラ肉をメンバーが持ち込むので、新鮮で安い肉が欲しい近隣の住民に売れてます」


「そっか、メンバーが買いに来る新年のご馳走用もあるね?」

「充分ございます」


「そっか、ありがとう!これ年末年始にみんなで食べて」

大壺の葡萄酒とピリ辛のヨージ鳥、サントのお菓子を渡す。


家は3軒寄り添ってるが、馬を飼うついでにロバやヤギ、コモラン(スズメ系の鶏)の小屋、すでにミニ牧場まで持って串屋の店長に肉を卸したりしてる。12人家族で演習場に移住してきたのだ。子供もヤギの乳まで絞って手伝ってる。


2位冒険者夫婦ラウム(67) シーズ(64) 一族共同体。

長男スルマン(36) 嫁セリア(34) ルイ(5) ジョシュア(3)

次男ジョシュ(33) 嫁ショーン(29) マジョリ(3)

長女夫婦トウリ(35) 嫁フェリサ(31) シルザ(4)


一族は子供達がこれから生まれて大きくなる。それは雷鳴商店がこれから大きくなると言う事だ。




次回 228話  真砂屋の記憶

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