第226話  タナウスの新型爆弾



12月19日。


前の晩にレンツ様より双方向通信で連絡が入った。フラウ姉さまをキャンディルに連れて来たいそうだ。来年春に嫁に行くので貴族学院最後の冬休みを家族で過ごしたいらしい。


朝、演習場から戻り次第に、レンツ様の所へ行った。

朝からうちのPT三人は大陸ぶらり旅に出ている。


お屋敷に跳んで、レンツ様に転移Lv10とインベントリLv10を付与し、持ってる恩寵を全部Lv10にした。驚くレンツ様を俺が立ち寄る主要な所へ引き摺り回した。当然、俺のクランも導師の研究室も連れて行った(笑)


神の恩寵じゃったか、と納得していた。編みを見ようとしても見えないからどの様な魔法かと思っていたのだ。


導師の驚く事!

俺が与えた=神の御許しをレンツ様が得た事も同義。と言わしめた。レンツ様には導師からキッチリと二つの魔法を教えて下さいよ。と言って導師に預けて来た。フラウ姉様を大喜びで迎えに行くだろう。


師匠に俸給を届けておく。PTの三人は大陸に旅立った。行く前にナンパの対応について重々言って聞かせた。


旅立つに当たって、先日アルムさん、クルムさんにもインベントリLv10を付けて飛空艇二号機とコテージハウス、ドンゴロスに入った芋やパンの食料を大量に持たせ大陸の見聞に行かせた、本当の旅行のつもりで村や街に入り込んで領地の噂話から丁寧に丁寧に情報を集めて貰う。


特殊なチートクラスの恩寵を付与することで己に課したかせが外れた。俺が責任を取れる範囲で欲に狂わず悪事に使わない人には恩寵を付与して行こうと考えが変わった。


何かあれば俺が背負えば良いのだ。そう思えるようになった。


・・・・



タナウス島に行った。


懸念があったのでコアに相談に来たのだ。

ポヨーン村の話で迫害を受けている村や埋もれてしまった人材発掘に向かって、迫害しているチリウ王国と揉めた場合の懸念だ。アルはナノの率いる宇宙戦闘用ナノロボットを戦闘執事と戦闘メイドにして護衛に付けようと思っていたが、本当に戦闘になった場合にシャレにならないと思っていたのだ。


現場の戦闘は末端同士の戦いになる。罪のない者同士の戦いとなりやすい。その国の法に沿って指揮に従い、自分の意志関係なく戦うからだ。そんな戦いになるぐらいならアホな上を潰した方が良い。


潰すのは簡単だが、アルは困った人だけ助けたい。バカ国のアホ王を叩きのめしたい訳ではない。そんなのは自国の中で淘汰されるか、弱体化して周りに呑まれるまでがワンセットで付いているから関わりたくない。


そういう迫害を受ける村を助けたり、世に隠れた才のある者を探し出す時には、別の場所で騒ぎを起こして国の目や武力をそちらに向けるのが良いのではないかと考えていた。


新年開けてポヨーン村のタナウス島移住を行った後、具体的な埋もれるに惜しい人材の獲得に動く。ボケっとしていたら現場で衝突が起こる・・・と言うか迫害される村行ったら戦闘メイドのが起こりかねない(笑)


なんかそうなった時点で新教国タナウスVSチリウ王国になる気がする。そうなる前に理不尽な所業を知って俺がキレるからベクトルは余計に加速する。 そんなフラグは真っ平だ。


コアにその様な事を説明した。

それで人間種が恐れる飛竜の編隊を目くらましに王都上空から近くの山まで飛ばす案や、村の脇をゴブリンに行進させる案を話した。敵対する武装勢力が有ればそっちに引き寄せられていく筈だ。


コアはもっと簡単な方法があると言う。お尻の肛門腺から猛烈にくさい液を噴射する動物がいると言い出した。スカンクか!(笑) このタナウス島にもイタチの魔獣が居て凄いにおいと言う。


検索したらレッサーパンダのような可愛いラスカルっぽい奴だった。興奮すると毛を逆立てて怒り、尻尾をまくり上げ液を噴出する。


アグレッシブ烈子・・・。

これが元ネタじゃないだろうな?イヤ、ここは異世界だ!そんな訳ない。とにかく納得した。ってそういう事なんだ!


アルは一つ頭が良くなった。


知らずに巣穴を踏み抜いて肛門腺から激臭の液を食らって気が遠くなりながらも逃げたなら儲けもの。気絶すると魔獣の餌になってしまう。クリーンで落ちるが魔法範囲より激臭範囲が広いので助けにいくと二重遭難になる。何を隠そうコア達が開拓中に何度も食らって烈子をぶっ飛ばしていた。コア達はロボットなのでお構いなしにクリーン出来る。



「アル様がそのおつもりでしたら」と激臭爆弾を作ってくれた。


戦闘メイド一人に激臭爆弾を持たせて炸裂したら気絶するので戦闘も無く簡単だと言う。聞いてた俺はラグビーを思い浮かべた。相手陣地に激臭爆弾のトライを決める戦闘メイドで終劇だ、戦闘は終わりノーサイドの笛が鳴る。


そこには健闘を讃え合う相手のいないノーサイドだ。


コアが言うにはの激臭観測は出来てるので、兵器らしく有効成分を3倍にしてオーガも気絶する激臭にしてもらった。


大中小の爆弾。小は通常弾頭。中は拡散弾頭。大は決戦兵器。炸裂した瞬間に液体が300m飛び散る。辺り一面が腐海に飲み込まれる。風下の被害はその時の気象状況によりコアでも予測不能らしい。


オークで実験したら、気絶から覚めた瞬間、腐海にまた落ちる。行動不能、これダメだ。飲まず食わずで衰弱死する。脳まで匂いが染みついてしまうのか、助け出してもフラフラで後遺症まで残ってる。殺傷兵器なんじゃないのかコレ。



最強の化学兵器だ。恐ろしい非殺傷兵器がこんな簡単に手に入ってしまった。


「紛争時には敵陣にショートジャンプで送り込めます」

「うわ!相手の主力壊滅する」


「アル様のお優しさが生んだ武器ですね」

「僕じゃ無いよ!コアが生んでるでしょ!」


「いえ、アル様は必ずここに辿り着きます」

「・・・」


「タナウス星の悠久の歴史にも無い兵器です」

「僕、これっぽっちも考えて無いよ!」


「非殺傷兵器を研究し、必ず考案されます」

「そんな事言われても知らないって!」


「深く考察されてますよね?」

「!」 図星だった。



一発食らえばオワタ式最終兵器だ。


斜め上の核兵器だ。


新教国タナウスの主力兵器が異次元の方向から生まれた。それは一滴も血を流さぬ宗教国の兵器だった。



新教国メイド隊が腐海を浄化したら住めるようになる。迷惑なバカ王国は王宮汚染してやる。激臭と戦って半生を磨け!


放射能除去装置を求める宇宙戦艦を思い出した。


「優勢になるから優勢爆弾と名付ける」

コアが笑った。 あ!元ネタ知ってるわ(笑)


海戦で使用したら平和そうだね?と言ったら海戦用炸裂弾まで開発された。相手の風上、頭上で激臭液が炸裂、船が汚染され漂流、座礁する。当たらなくても良い兵器、これはもはや防御不能。


非殺傷兵器だけど非人道的兵器じゃなかろうか。


護身用に通常弾頭を10個ほどもらっておいた。

(コイツ何かあれば理由付けて攻撃するつもりだ)



飛空艇に乗って海賊の船を探しに行った。


その日の夕方、弾が無くなったとアルが取りに来た。

護身用に100個くれとコアに言った。



アルは投擲Lv4になっていた。



・・・・


新年明けた各地の大陸。砂浜や岩礁地帯に海賊船が流れ着いた。拿捕に向かう兵団に二重遭難が相次いだ。


・・・・



12月20日。


読み書き教室からタッカート師匠と模擬戦を行った後、教官始め事務員、メンバーに年末年始の勤務に付いて伝えておく。


・12月29日。教室終わりの朝7時に年末の訓示を行う。

・12月30日~1月7日はクラン雷鳴はお休み。

・メンバーは教官も含めて休むも狩るも自由。

・休み中の八日間は教官二名と事務員一名の回り持ちでクランハウスで三名体制で駐在して異変や緊急に対応する。

・緊急事態(外部PTの怪我含む)が起こった場合には相互連絡装置でアルに連絡、指示を仰ぐ。

・十二歳未満の子供には大銅貨三枚の成長祝いお年玉支給。

・1月8日。教室終わりの朝七時に新年の訓示を行う。


各寮の掲示板とクランハウス前に張り出してもらった。



・・・・


そして朝から向かうタナウス島の整備。


丁度北半球のコルアーノが年末の冬なので南半球のタナウスはこれから夏で特に南緯が高い辺境部はやっと雪が解けた所。


木材の保管場所としてタナウス島で湿度が一番低く、年中気温が変わらない大山脈の穴蔵は最適なので大空洞の倉庫を作る。


現在は王都予定地近くの転移集積場予定地の大空洞に保管してある木材資源。わざわざマリンとストックの資材格納コンテナに入れて三カ月の減圧乾燥期間を置いたしっかりした木材になってる。


リンダウの兵器を納めた兵器倉庫を作って慣れたもの。ガンガン掘って固めてガンガン掘って固めて、調子に乗って首都圏外郭放水路も真っ青なぐらい掘った。それ程大掛かりな保管庫だ。冬の次期には雪に閉ざされる場所だ。 



「巨大なシェルター及び私兵を持つ者が強者となる」

でも俺の地下王国出来ちゃったからペリカ出来ないなぁ。タナウス島の通貨単位はペリカ・・・。


アホな事考えながら水路と同じコーティングで固くしていく。さすがに無限の魔力と多重視点、並列思考と眼を使い鬼の土魔法でも丸々四時間掛かった。昼を食ったら材木の搬入。もう簡単、保管庫へ行き木を並べているパレットごと強奪。地下木材保管庫に同じ様に置いて行く。


気分転換に外に出たら山の中腹にダチョウの群れが居る、俺が乗れるぐらい大きい。視たら食用魔獣だった。三匹ほどシャドに締めてもらい吊って血抜きしておく。近くの巣のコロニーに大きな卵が山ほどあった。視て新鮮な卵を選んで五つもらって来た。美味しいらしいので年末年始のご馳走にする。


あとはゆっくりタナウス王都の整備。


年末年始とポヨーン村、タナウス島の整備と細々した事は結構あるので準備だけは万全にしておきたい。


新年からタナウス国民第一陣が移住してくるのだ。心配性が顔を出して過保護な面が出てしまい、余計な用水路まで作っている(笑)


そして、どうせなら迫害されている行き場のない村の人達は、状況を見て出来るだけ助けてあげたいと思っている。と言うのは行きたくないと言われたら連れて行けないからだ。俺だってロスレーンという故郷を離れるのは嫌なのだ。慣れ親しんだ国や村は年齢が行けば行くほど出られないと思う。


まぁ村を見に行くという用事を作って、そのついでに武装化して他国を侵略する宗教国も見て回りたい。ぐらいのつもりでいる。



考えていた事を思い出してコアに聞いた。


「執事をクランに常駐できないかな?」

「どうかなさいましたか?」


「タナウスの国民を探すのに時差が10時間とか12時間ある国に行くとメルデス帰ってから辛いの。そんな時に気にせず読み書きの先生をしてもらえたり、僕が居ない間の危急に僕の論理、倫理思考で指示の出せるコアかニウが居てくれたら安心なの」


「ニウより私の方がリズ様と同じ女性タイプで先生向きかと思いますが如何でしょうか?」


「うーん、コアはねぇ・・・ニウも一緒か。小柄の女性にして実体化してくれる?コアもニウも僕と色んな国に来て欲しいからクラン常駐は違う容姿がいいな」


「こんな感じでは如何でしょうか?」

すぐに小柄な女性に姿を変えた。


「そうそう、そんな感じ。クランに常駐してくれるかな?」

「かしこまりました」


「そんじゃ、新年8日からロスレーン家から来たクラン雷鳴、副クランマスターのイコア・シャロットさんで紹介する。普段は貴族の平服に帯剣で、教室有るからスカートの方が良いかな。危急の際はミスリル鎧のドレスの恰好で」


ミスリルのドレスをコアに渡す。


「はい、かしこまりました」

ドレスを一通り眺めて返してくれる。


僕の不在でも副クランマスターなら皆に指示を出せる。


「演習場に伯爵家の邸宅を出しておくよ、今預かってるコア(25)マーキュリー(22)ビーナス(21)アース(20)マーズ(19)ジュピター(18)ルナ(17)を出して一緒に住む?」


「アル様が危急の場合にお使いください」

「そんじゃ、五人ぐらいイコアの部下となるメイドを作って、僕の使って無い屋敷を置いてあげるから住む?それなら十分に貴族っぽい感じで生活出来るよ」


「管理棟が全く使われてないご様子なので、ナノの戦闘メイドで六人作って管理棟を管理させて頂きます。クランメンバーの救出もメイド隊が次元跳躍で向かえます」


「その時は観測衛星を自由に使ってね」

「はい、連絡があり次第に向かえます」

「それじゃ、クラン雷鳴のイコアPTとして紹介するね」

「そうして頂ければ、動き易くなります」


「それじゃ、新年八日の七時に管理棟に来てね」

「かしこまりました」

「寝具とか色々用意しとくね」


「アル様のお屋敷の時に観測した物なら作れますので大丈夫です」


「それじゃ、お願い」



・・・・



一旦、クランに帰り、リズに双方向通信で話をする。


「リズ、年末年始はナレスで一緒に過ごそう」


「アル様が忙しければ十二月二十八日のお披露目のダンスさえ出席して頂ければいいのですが」


「いや、ダンスだけして帰るのもまずいと思って(笑)」

「ありがとうございます」


「リズの誕生日も送り迎えしかしてないからね、今回もそれをやったらさすがに陛下に失礼だよ。だからナレスの新年を二人で楽しもう」


「はい!」


「リズの都合はどうなの?」


「学校の冬休みは十二月二十六日から一月十日までですから私もその様な予定です」


「そんじゃ、二十五日の晩にナレスに帰ろう、リズの屋敷にいる使用人は全員ナレスに連れて行く、先生や侍女たちはナレス王都出身だ、使用人も新年ぐらい実家に戻してあげよう、十日まで居る?」


「はい、皆に伝えますが、九日までに致しましょう。十日から陛下の謁見準備で王宮は忙しくなります」


「ナレスは謁見が早いねぇ」


「ナレスの冬、北部は完全に雪と氷に閉ざされますので領主様方はソリ馬車で年末、年始の謁見を南の王都で過ごされますよ」


「へー!雪で動けないならそっちが良いかもね」


「僕は二十九日の読み書き教室が終われば新年三日までナレスで一緒に過ごそうか?」


「はい!よろしくお願いします」


「通信で陛下に伝えてくれる?」

「伝えますが手紙を書いてもよろしいですか?」

「え?」


「通信機は便利なのですが、その場に出るのは家族なのか使用人なのか分かりません、通信機にマリリンメイド長も良く出るのです(笑) 手紙なら家族の皆が読めます」


「分った、手紙にしてくれる?(笑)」

「ありがとうございます」


「手紙の方が喜ぶと思う。間違いなく届けるよ」


「今日の晩書いて、明日の教室でお渡しします」

「うん、それじゃお願いね」

「はい」


新年はなぜか休み中にバタバタするテンプレが構築されている。アルもバカではない。十一歳から十三歳の新年はそんなのばっかだ。今回は万全の用意をしてナレスに逃げる。メルデス、ロスレーンは恩寵の自動付与する人もなかなか居ない状態だからたまには休む(笑)


※メルデスは大森林が近く、農地が無いので農民がそんなにいない、冒険者には採集を行う者しか付与しない。そもそも稼げるようになったら宣誓の儀を行うのでステータスボードを持って採集を何度もこなした者しか採集恩寵を付けられない。


新年はナレスで新年を楽しみながらナレス王都近隣のステータスボードを持たぬ村民に付与したいと思っていた。


それはナレス王国と縁があったアルの感謝のお返しだった。


・・・・


大陸ぶらり旅のアルムさん達に双方向通信で連絡を取った。


「今の旅はどんな感じ?」

「国によって酷い国はホント酷いの!」

「どゆこと?」


「今は、町に医者も薬師もいないのよ」

「治してあげてる?」


「うん、クルム姉が治してる。当分掛かるわよ、流行り病でだいぶやられて当分動けないかも」


「そういうのは全然大丈夫だから自由にしてね」

「あ!アル君は何だったの?」


「新年の予定を聞こうと思って」

「あ!そうよね、アル君はどうするの?」


「リズと一緒にナレスで三十日から新年三日まで過ごすから一緒にナレスの新年の街回らないかなって思って」


「それじゃ、二十九日にみんなで一旦帰るね」

「うん、またその国の話も聞かせてね」


・・・・


相互通信の後。ゆっくり準備をする。


1:教皇セット:変身イリュージョン(OFF)

2:貴族平服セット 

3:寝巻きセット

4:ミスリル鎧セット:変身サンバ(OFF)

5:貴族服謁見セット

6:聖騎士セット

↓ここから各大陸を歩けるように見越して作った。

7:御子服セット

8:平民セット

9:平民冒険者セット


御子服セットはすでにつんつるてんになっていた御子服の替えを祭礼用の色違いで四着貰っている。半年後用と1年後用の貴族服と貴族平服を作った。同じくサイズ違いで平民冒険者服、平民服を作っていた。


婚約お披露目の白の貴族服は良いが、聖教国の皇太子の手前、スラブ王国のアキーム王太子やナレスのマリアンヌ第一王女とも三十日から一月三日の間でお茶を御一緒するかもしれないのでスラブのアキーム殿下が自国の正装なら俺も聖教国の御子服かなと気を使っている。


・・・・


>酷い国はホント酷いの。


大陸を歩き、ひどさを視て回る。

武力で攻める宗教国を視るついでだ。


泣く者から搾取さくしゅするだけの国があるなら裁いてやる。


転生したから分かる、あちらもこちらも同じだと。


誰もが糧を得る為に働く。

その糧で家族を養い、未来へ子孫を繋いでいく。

少しでも豊かになり嫁や子供に食わせたい愛がある。

それを希望に人は歩き未来に繋ぐ道程となる。



巡り巡って糧を得る方法も変わった。


リスク商品への投資で儲かるのはいいが誰かから搾取さくしゅした物とは思わない。失って泣く人の事は考えない。ルールに従って危険な賭けをする者同士の正当な取引だ、その通りだ。人のルールで合法的に儲けて何も悪くない。


パイは決まっている、集まったパイから手数料を切り取って残りを参加者同士で奪わせる商品なのだ。胴元が儲かる様に仕切るのがギャンブルの世界。華やかに着飾って裏を見せない世界。


経済的な弱肉強食の世界だ。

金を食われた者は失う。未来を失うのかも知れない。


しかし。


人はそうやって生きる生物いきものだと本当に思っているのか?


根源を忘れて欲に囚われ踊るのだ。


人が自分で編み出した勝手なルールだから、ルールに従うならどう踊ろうが構わない。ウォール街ではさじ加減一つで世界がひっくり返るマネーゲームを仕掛けて意のままに操る自身を神としょうする人間が多くいる。金を集めてむしり取る神だ。何も生まない神。イヤ、人が群がるパイを創造して自由に利益を切り取る神だ。


おごり高ぶり創業者が努力と公益を目指して作った企業を収益だけで天秤にかけ、時価が上がる、時価が下がるとバラバラにして売りさばく。従業員は解雇だ。今しか見ていない、点の利益しか見ていない、投資や投機の対象だから当然だ。先祖の苦労を知らない、先祖どころか家庭も顧みなくなって行く。


糧を得る為の仕事だった事を忘れる。


根源を忘れて本末転倒で欲に囚われ踊るのだ。


アルの眼はごまかせない。

そこには幸せが無い。金を幸せと勘違いする者の楽園だ。楽園でまき散らすその一握りでチャリティーすればいいさ。その後ろに血を流す何千万のむくろをしょってチャリティーすればいいさ。


そして1%の者が星の富の80%を所有する。

地球も異世界も一緒だな。1%に憧れる異世界(笑)



国の根源とは何か。


家族:男と女が奇跡の出会いで二人になる家族。

二人から生まれる小さな未来を守る家族。


地域:家族が健やかに生きる為に所属する経済圏。農民商人職人がお互いの産物やサービスを持ち寄って作るコミュニティー。


領:地域が集まりお互いに豊かになろうとする方向で協力しあう地域の集合体。


国:地域は家族の集合体。領は地域の集合体。国は領の集合体。根源は家族の小さな幸せを守る集合体。世界に対し排他的だろうが協調的だろうが構わない。根源が間違って無ければそれは国だ。


アルがポヨーン村を視て感じた事。


間違う奴は、領を束ねる位から間違う。領に住む家族を守る代表のお父さんが、地位や名誉や財産に囚われて根源を忘れる。家族に暴力を振るうお父さんになる。個々の幸せを守るはずのお父さんが間違う。領民をイジメる領主の出来上がりだ。


領より国になった場合は特にひどい。生まれた時からその国が出来ている。建国の闘争、家臣との心の繋がり、一緒に分かち合う悩み、苦しみ、民の泣き笑いを知らぬ王子。王の子と言う肩書しか無い奴が欲のままに踊り狂う。何も持たぬ、何も努力せぬ王子を周りは甘やかし、王を恐れて注意せず王子の悪事は隠す。まぁそれは召された時に自分が負うんだから狂えば良いんだけどな。それで巻き込まれる民はたまったもんじゃ無い。


だから。


根源を勘違いしてる国は狩る。

を見て回ろうと思っていた。

ロスレーンは2000人程の街から回復士や薬師が一人はいる。そんな最低のサービスが出来ない国の根源を視る。


そこに国の意味はあるのか視たい。税が何処に集まって、集まったパイから誰が切り取るのか視たい。国の意味が無ければ地域に戻る方が良い、皆が出しあうお金で薬師は雇えるよ。


ひどい国はホントひどいの。


アルムさんが考えなしに思わず出ちゃった言葉。



国は違うがその言葉に真実が視える気がする。


多分チリウ王国は根源を忘れ王子をしつけなかった。


守る物を間違えた、民を守らず新王を守った。


人は必ず失敗するからしょうがないな。人も国も一緒だ、人が作るんだから失敗したら反省してやり直せばいい。


クスと笑ってクソ真面目なアルの顔が優しくなった。





次回 227話  観光誘致の楽園画像

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