第215話 ムックなるです?
9月中旬。
縮地、縮歩の恩寵レベルを少しでも上げたくて大山脈を放浪してたらコアから>レンガ作って。とタナウス島へ呼ばれた。レンガ作りにシズクと島に来た。
・・・・
六月初頭にタナウス島の開拓を指示して一番艦マリンを持って来てから、俺は報告や質問がある時だけコアと話し、三か月半もほぼ放置状態だった。コアもニウも俺を観測した影響だからか、用事が無いと何も言ってこない。俺が心配になる程何も言ってこない(笑)
だから二番艦ストックの件で呼ばれた時も嬉しかったし>レンガ作って。と呼ばれるのも月に三回ぐらいだけど嬉しかった。
今ではナノロボット五万体以上が三か月半稼働して何をしてるのか。普段説明してる暇もないので言っておく。
まぁあれだ、敵と戦ってる最中・・・
>俺に迫る凄まじい刃風!
そんな剣を視ても解説してると斬られるから説明を省いてる。スマン。まぁ、あれだ。説明回だ。説明会にご出席感謝する。
だから、今回は普段は視えているんだけれども細かくてどうでもよいので説明省く事をつらつらと話そう。
・・・・
すでに港湾施設の岸壁が防波堤の様に250m×2本出来ている。
80m級の魔動帆船が8隻岸壁に付けられる。港湾の
港湾設備はナノマシンの手作業で大石が積まれた。石組は細かい石で固定してコンクリートを流した。さらに俺も石化で固めてこの時代の岸壁を演出してる。
人工的にコンクリートで作られた岸壁とドッキングさせたのは海底の下にあった岩盤だ。綺麗な浅瀬を
色々な国の港湾施設を見て来たので最初から動線や関連施設も視野に入れて作っている。
港から海沿いを見渡せば、左手3km程先に20m程は切り立っている岬もあるような場所。岸壁から神教国の首都予定地に視線を移すと約2度~3度のなだらかな坂で見渡す限りの平地でもなく小高い丘もポツポツある開拓した平野。7.5km先に大山脈の
海抜360mの神教国王城予定地を海から眺めるとそんな感じだ。
だだっ広い首都用地のずっと奥にそびえる大山脈。大山脈の裾野がなだらかに海まで続く大森林地帯を開拓した。そしてその大山脈の裾野を縦横1km×1km程も削って作られた王城予定地。
せっかく開拓した土地を王城で広大に占拠したくなかったので奥にある大山脈の裾野を広大に(レンガの原料として)切り崩して平坦な土地を作り、そこを王城にしようと思ったのだ。(神聖国で売ってる大きな邸宅が置けたら充分だった)
大山脈を背にして王城から海まで7.5km、横の平地は両翼3kmほどの長方形を描いて首都にしようと思っていた。両翼を開拓していたコアに余計な事言った。
「もう充分じゃない?」
「え?驚くコア」
この首都か聖都か王都か分からない開拓した平地でコアに指摘を受ける。
「アル様、王城予定地が小さすぎます」
「え?」
「首都もこれでは小さ過ぎの様な気がします」
「え!」
ガーン! 日本の庶民だった俺には広大な土地だったのに、まさかの言われよう。アルの認識する王城はキャンディル伯の宮殿だった。(五稜郭並みの敷地に立つお城)慌てて日本で考えたら美濃の斎藤道三だって
サント海商国のバーツ議長の家は普通に世界樹がポンと置ける程大きい。580m×80m×傘が450mの世界樹が横にポン置きだぞ。
議長は帝国の皇帝の宮殿買うんだよ。それは英国のバッキンガム宮殿位は楽に有る敷地。あそこ皇太子家族しか住んでないから核家族の家だ(笑) 女王陛下はウインザー城だ。まぁ小さい国でも王城はそれ位は有るって話ね。
そうなんだよ!王城と簡単に言ってるが、どんなに小さい国の王城だって名古屋城の外堀位はあるのよ。日本の皇居は江戸城の内堀って事かな?元々の家康が住んでた江戸城なら外堀までが敷地だ。本来の王城とはそれぐらい大きくても不思議じゃないのだ。神聖国の新教会は皇帝の宮殿があった土地を丸ごと潰した上に、噴水広場だとか参拝公園とかもっと敷地を増やしてる程だ。
ロスレーン家は子爵家だからスマン。250年程前には領地が半分しか無かったから小さいだけだ、世界の国首の居城と比べないでくれ!それ以前に俺は日本の住宅事情に
コアを何とか説得して、衛星都市の方を開拓してもらった。(実は後から困ってコアに謝り首都も王城予定地も3倍以上に広げる事となる)
話が逸れた。
今日コアに呼び出されたのは、レンガ作りだ。
元々の話。採掘モジュールを3カ月前に動かした。採掘して掘り進んで発生した土砂はレンガを作るに最適だった。
首都の道は魔法による石畳にしようと思っていたが、コアが俺の記憶を観測してるのでレンガを立てて道に埋め込む方法を提案してきたのだ。この時代に合った素材で綺麗に整備出来、傾斜のある首都では馬車や馬の滑り止めにもなり雨も土壌に染み込みやすいと言う。
一番の理由はその様な国がどこにも無いことだ。豊かさで国力を示し他国を圧倒するなら足元からとコアに
※この世の建築技術は粘土を乾かす日干し煉瓦。それを焼き固める焼き煉瓦。焼き煉瓦をセメントで積み上げ。それを真っ白なモルタルで固めた物が世の最先端の建築である。王城などは石垣で作ってる堅固な要塞系もある。
王城予定地は結果的に出来た。
レンガの材料を集めるのに大山脈へ続く裾野の坂を切り崩せば一石二鳥で平地に出来て土地が増える。そんな事を国民が居る前でやれば目が点である。いないうちにやるのが吉と裾野を削ってレンガの材料を作って、削ったついでに王城予定地にしたのだ。
そんな訳ですそ野の岩盤を崩して原料にし、表面の荒れたレンガを作った。土魔法ⅢLv4、並列思考ⅡLv4、多重視点ⅡLv4で作る一千万丁の色とりどり(その地質によって)のレンガが俺とシズクによって出来て行く。
日本のJIS規格の通り作った(笑) こっちの世は土地によってレンガの型枠の大きさが違う。しかし土地のレンガは全部その型枠で作る。だから物件単位、土地単位では揃っているのだ。国によって、職人によってレンガの大きさが違う世界、グローバルな基準が無いってそういう事だ。
・210mm×100mm×60mm 正規の規格品A
・210mm×100mm×30mm 半割れB
・210mm×50mm×60mm 半割れC
・210mm×50mm×30mm 半割れD
レンガを縦に道に敷くというのは真っ直ぐな道なら100mm×60mmの面が道の表面に出る。1㎡に167個いるのだ。
全部が100mm×60mmレンガで一千万個なら出来る道は59880㎡。恐ろしい事に20m幅の一本道を作るには直線で3kmしか作れない。実際は半分の面積のレンガも有るから全然足らない。
当然首都中心地の道を作ってたら足りない。
三か月で六回目だが六千万個でも全然数が足らない。
どうすんだよ!港から王城予定地だけで7.5kmだぞ!
まぁ、自分の国だから頑張る。コアたちが頑張って敷き詰めてくれてるんだから何億でも何十億でも作る(笑)
出来てしまえば笑い話だ、何百年経っても残るならやる価値もあるさ。
十字路の予定地には馬車が曲がりやすい様にラウンドアバウトに作られ、その時計回りを示す文様に色付きレンガが並べられていく。レンガが敷かれてない場所は噴水や公園や下水管の取水部に当たるとか都市計画に基づいた施工をコアが行っている。
500体のロボットが休みなしで働くと1000万丁が10日で敷き詰められる。無くなる2~3日前に作ってくれと連絡が入る。その度に大量のレンガを作る。丘陵地だった場所に平地が出来て行く(笑)
すそ野を崩してレンガを作っている最中にコアが、レンガ材料を集めながら一緒に鉱物採取を行おうと言ってきたので資源採掘モジュールを出す話に繋がったのだ。
3か月も前の6月初旬の話だ(笑)
一日8kmのスピードで外筒と内筒を作りながらトンネルを作って行ってる。お陰で土砂は俺が崩さなくて良くなった。
・・・・
タナウスで流通させる貨幣の話もコアとニウとしている。感応会話で話すから30分も話したら結論までは出なくても、貨幣の総量や単位構成、使う合金の方向性が見えてくるのだ。
硬貨の見本は何回かの修正を経て出来た。
表が神谷家の家紋の文様に神教国タナウスの精緻な文字、裏が竜が二匹向かい合う真ん中に数字がレリーフされる文様だ。竜はコボルさんを表す物が出来た。
・・・・
縮地、縮歩の鍛錬も続いていた。
とうとう縮地4.685 縮歩4.612 より上がらなくなった。上がるのは10匹に一回0.10~015上がるぐらいだ。
諦めた。地虫資源の無駄使いに気がついた。縮地をLv4 縮歩lv4に直して、幽玄の笛を原始人に託した。
他の用事も有ったので昼からの時もあったけど毎日地虫狩りに付き合った。
地虫的に未開の地をさすらい、大山脈を渡り歩くエルフと人間と精霊。いや、シズクは縮地と同じような事出来るからいいって言うのに!(笑)
飛空艇から地虫のコロニーをロックオンして半分殺してまた旅立つ。アルムさんの原始人は留まるところを知らない。
最初こそ足首を食われていたが、その内に学習し食われない方法を編み出した。危機感知からの縮地、縮歩逃げだ。器用にジャンプして避けて斬る。ロックオンした瞬間に食いつく地虫を避けるのだ。
俺の場合は偶然じゃ無いと外せない上に、ピョコっと出て来るのを待って斬るのに、現れた瞬間に斬っている・・・のか剣を出て来る所に置いているのか分からないが跳んで逃げた瞬間に現れる地虫を斬る。
だから殲滅が俺の数倍速い。
次から次へと狩って行く、すぐに恩寵がLv2に上がった、Lv4までは行けると言うと夢中になって狩る。
前衛が二人で縮地持ってたら充分!後衛のクルムさんは時間掛かるしいいよ。みたいな事を言ったら。何かの話しの流れで自分の齢を誇るのにポロっとクルムさんに言いやがった!
後衛のを抜いて、時間掛かるが齢だからに改変して言いやがった。
>「クルムさんは齢だからいい」
俺は自ら与えた恩寵Lv10に殺されそうになった。
しかし俺には味方のシズクが居る。
「アル様はそんな事言ってないです!」
怒り狂ったクルムサンをシズクが止めた。止めてくれた!結果的にアホが言った事を解って貰えた。
ゴメーン、間違えちゃったー!言う陽気なアホはシャドが
Gに埋もれたと思えば
そしてクルムさんも同じく恩寵を取った。
性格が大人しいだけで陽気なアホより強いのだ。でも、意地で取った気がしないでもない。
・・・・
そんな9月下旬。
シズクが呼びに来た、収穫だそうだ。
クラン敷地の端に100坪ほどの家庭菜園がありシズクが暇があると見に来ていた畑が実っていた。
南方と違い時期は1月ほど遅い収穫だったがそれは見事に大ぶりの野菜を実らせた。
トウモロコシは2回目の収穫だ、7月に一回収穫して土を引っくり返してまた植えたものだ。痩せた実の少ないトウモロコシではない。身は少々赤味掛かっているがビッシリと付いたトウモロコシである。
ジャガイモも小さな物ではない。子供のこぶし程の大きなジャガイモ、大豆と小豆は実っているが乾燥が足りないそうであとひと月と言う。
100坪で各野菜の実験農場は充分だった。これで収穫量が多いハイブリッドが出来たらタナウスに連れて来た難民も自給できるだろうと思う。コルアーノよりタナウスの方が温暖で生育が良いのだ。コルアーノで育つなら充分だった。
コルアーノで手間さえかけたら十分な量になる野菜が出来た。
小豆はハイランドで手に入れた大量の砂糖で煮てあんこを作ろうと思う。トウモロコシは塩ゆでだ。
クランの畑で収穫してたら、ギルドの研修所に推薦した魔鉄級5位のソロ冒険者が丁度挨拶に来た。
恩寵増やして卒業したら銅級4位なのに必ず雷鳴に来ると言ってくれる。嬉しかった。(でも研修所にいても雷鳴メンバーだからな、勘違いしてるぞ(笑))
「頑張って行って来い!」
10月1日から5人のソロが研修所で磨く。(ギルドから推薦された者を含めると8人研修所に推薦した)
・・・・
秘密会議の後、リズとは教室で毎日会う。日曜日のデートを相談したら平日のレッスンに付き合ってくれと言う。お屋敷の先生の所に話を聞きに行くと、平日の週に一、二回の午前中はダンスレッスンになった。
14歳で成人となったリズが王女としてナレス王都の舞踏会に出るならパートナーで出席と言われ、年末には婚約した二人のダンス披露があるらしいので二人のダンスレッスンは必須だそうだ。
侍女が八人ほどで王宮で奏でられる色々な曲調の生演奏を披露してくれる。迎賓館が邸宅だ、そんな優雅で耽美な(お耽美違う)世界。王女と
(ムックなるです?)
(しゃべる犬だよ?)
(ムックなれますけど)
(ならんでいい)
元々武官の男性は身体強化や足運び、重心移動、ピンとした姿勢でダンス向きと言われる通り、宮廷音楽に合わせて二人で踊るぐらいはすぐに出来た。視ながら覚えてしまうので先生が驚く。
先生もその気になってしまい、もはや弾む心を流れる激しさで表現し、リズを愛しく思う柔らかな仕草までダンスに求められる。
身体強化でリズを4回転半で投げられる事を考えると、すでにアイスダンス選手権だ(笑)
先生に求められる言葉など要らなかった、先生のイメージで何を表現するのか、何を言っているのかズバリ解るからだ。
どの曲を演奏されてもマシンの様にトレースして寸部違わずリードする俺に合わせてリズもダンスが上達した。
舞踊Lv1が付いたと思ったら2週間でLv3にあがった。この経験値がマジ分かんない、基準が何なのか分かんない(笑)
9月26日がリズの誕生日。
前日の朝。
2カ月早い小さな姉さんだったので、婚約後3カ月ぶりにナレスに連れて行った。リズの首にピンクに染まる真珠のネックレスを見て皆が驚いた。俺は家族水入らずで過ごせとすぐに帰った。
翌日の晩にリズを迎えに行くと陛下がナレス王家の指輪をくれた。ナレスのどこに行っても通用する印籠だ。ロスレーン伯爵家の指輪と同じく魔力認証で、ナレス王家の身内。第三王女の婚約者、聖教国皇太子と出る。俺に作ってくれてたのだ。
俺は、まだそんな身分を保証する指輪を上げられない。
結婚する齢までには神教国タナウス皇妃の指輪を作りたい。
・・・・
14歳になったリズだが、ナレスではやっぱ成人年齢は大きいみたいで色々な話の端々でリズの成人年齢の話が出た。
リズが俺みたいに事件に巻き込まれるというか、事件が追って来そうで怖くなった・・・ハムナイの侯爵家のアホとか誘拐の毒牙に掛かりそうで心配になった。俺を呼び寄せるためにやられたら敵わない。
考えた挙句、早いとは思ったがレンツ様の様に秘儀を授けると言って、冒険号に連れて行った。
コアに芝居っけたっぷりに頼んでおいて、さも秘儀を授けてる様に装ってもらった。
コアのリズに対する思考観測はフラウ姉さま並みになってからだ。まだアラームも出来ない子を観測しても、タナウス島に連れて行けないし、あそこの魔獣に勝てなきゃ怖すぎるから案内出来ず意味がない。
相互通信機を耳たぶに入れてもらう。念話と違うから声を出さないとダメだけど
「これでお互いに個室にいたら話が出来るよ、内緒だから聞かれたら独り言と誤魔化さないとダメだよ?」
アル様とお話が出来るとリズは大喜びしてくれる。
一緒に喜ぶ俺たちの外見は子供すぎる。
次回 216話 神教国の正規品
------------------
この物語を読みに来てくれてありがとうございます。
読者様にお願い致します。
応援ポチ。☆も頂けたら嬉しいです。
ポチをしてくれる事。それはとても励みになるのです。
一期一会に感謝をこめて。よろしくお願い致します。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます