第208話 呑まれる村
キャンディルの村が魔獣の群れに呑まれます。
過激な表現が苦手な方はご遠慮下さい。
R15指定
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朝からセイルス商国の教材商会に出かけていた。
約束していた砂黒板の追加注文を聞きに来ていた。
砂黒板を使った私塾の評判など聞いている時。
コアからの緊急通信が入った。
「ベント卿からの緊急通信です、お繋ぎしますか?」
「1分待ってね、そう伝えて」
緊急の呼び出しと後日の注文伺いを約束して商会を出る。
導師から
・・・・
「猿人がキャンディルを襲いおった。3つの村が呑み込まれて壊滅した。その数は大体6000だそうじゃ」
導師の知る猿人を視て戦慄した。旧人だった。
(地球で言うネアンデルタール人:アルはサル原人と言う)
自分のせいか?と考え。すぐ打ち消した。
「これ以上やられる訳にいかん、儂とお主で
「はい」
「どうした?」
旧人視て
「いえ、甘い自分が出ただけです」
「アル君、大丈夫?こないだのは絶対ダメだよ」
「大丈夫だよ、ちゃんと殺したでしょ?」
「どうした。何の話じゃ?」
「オークの母子を哀れと迷い攻撃が止まりました」
「よい。殺したんじゃの?」
「はい」
「猿人は知恵が回る、狡猾ぞ。この時期に来たは増えすぎた群れの分派じゃ。元の猿人集落も襲うぞ。良いか?」
「はい」
「私たちも「よい!アルと二人で行く」」
「
「・・・」
アルは旧人(サル原人)も新人(人間)も人食いを否定する答えを出したくなかった。コアに提示された候補の島。出来るなら2番の島がサントとワールスの中間で良かったが先住民で人食いが居た。だから3番の島にしたのだ。
3番の旧人も新人も住まない島があってホッとした。
その生活を否定せず、殺さずに済み安心していた。
しかし許してもらえなかった。
俺が逃げたから追っかけて来やがった。
やがて島で人食いをやめて進化したり、文明が入り込んで普通の植民地クラスの未開部族になれば良いと見逃した。
見逃したと思っていた。そう思い込んでいた。
追っかけて来やがった。
追っかけて来たって事は俺は逃げていた。
自然の営みは甘くなかった。
難しい顔をして考え込むアルを見て導師が笑った。
「ふふっ。そんなに色々と考えるな」
「え?」
「バカが!勉強せよと言ったが宮廷のアホを真似んでも良い!」
「は?」
「お主は動いておらんじゃろ?頭の中だけで考えて恐れておる。現場で戦わぬ宮廷のアホそのままじゃ、宮廷に任官するなら紹介状書くぞ(笑)」
「そんな酷い事言わないで下さいよ」しゅん。
「良いか、王宮のアホはこうなっとる」
・失敗してはいけない。
・一度で上手くいかないといけない。
・正しい答えに辿り着けないといけない。
・真の正解はたった1つしかない。
・やるには完璧でないといけない。
・成果を継続しないといけない。
・下調べや事前に準備を万全にしないと挑戦出来ない。
「思い込みがある奴は、能書きだけで
「王宮にアホが揃うと帝国が
なんか、そういう事が昔あったんだな。
「グダグダ考えておらんで戦場に踏み入れよ、おのずと成す事が見つかろう。村が襲われているに考える必要などない。そのまま動けばよいのじゃ」
そうだよ、俺・・・全部当てはまってるわ。
王宮のアホだったんだ。
「能書きだけで
人食い人種やサル原人がやがて進化すると思って現状を見ずに目を背けてた。力が抜けて気力が湧いてこなかった。だから2番が良いと言えなかった、動けないの当然だわ。
俺は文官と一緒の症状だった。
神聖国の時にも計画を立てたが、失敗したら次の手、次の手。間違ったり失敗してもどうせ帝国の悪人だからちゃぶ台返しで良いと腹を
俺の考えでは、
俺的に伝統ならしょうがないよね?と言うのがあった。食うためだから敵の村を襲うよね?本能ならしょうがないよね?だった。
悪い事してる訳じゃ無い。本能に従って生きて
そんな人間に思っていたが甘かった。それはオークも同じだ。他の魔獣だってそうだ。
俺は今まで悪しか見て無かった。悪意を持つ者に裁きを与えてきた。
だからブレて間違いをした。
放置したらこんな被害となっちまう切実な問題だった。こいつらを生かしておいちゃダメだった。オークと同格だ。
キャンディルの村を
やられて黙ってどうする。
人の形をしていても、
変なこじつけ理論で武装する所が弱いアルだ。
アルの顔に生気が見えた時導師が言った。
「人食いは
「は?」
「人食いなど珍しくもない。モンスターは全部人食いじゃ。秘境のどこにもおるわ、猿人は人の様に
「そうですね」
「襲ってきたら殺すだけじゃ」
「はい・・・」苦笑した。
でもまぁ、納得した。襲ってきた奴は容赦せん!
「行きますか・・・(笑)」力無く笑う。
「言っておくぞ、最初は見せ付ける様に残忍にやれ」
「・・・」
「人食いは言葉が少ないでの、強き者ほど力を誇示する」
オークでもゴブリンでも狼でも人も脳筋はそうだな。
「3人娘は将来子育てもある。置いて行くぞ?」
「はい!」力強く頷く。
イァ!シズク大精霊な事忘れてる! 俺も忘れるけど。お婆々も預かれば子育てするか。物申さず行こう。
「アル、大丈夫じゃの?晩までに片付けるぞ」
「はい、大丈夫です」
(シズク、お前完璧に実体化してるからお留守番な)
(はい(笑))
(シャド今日は導師が居る、死角からの攻撃を頼む)
(はい!)
(シェルはいつもの通り僕を守って)
(はいです)
・・・・
バカ野郎が。逃げたらいつまでも追って来るって知っててもやっちまう。越えなきゃならないって事だ。お前が自分で言ってた事だ、責任取って乗り越えろ。
襲われた村は
アルと導師が向かう方向から道を
パニック映画みたいだ。
視て分かる。ホントに旧人だ。槍持って農民を
行列を横目に見ながら転移で丘から丘に跳ぶ。
「知りました、このまままっすぐで群れの中心です」
「そうじゃの、行くぞ」
もう殺されるどころじゃ無いよ。
クソ猿が俺が幸せになれと恩寵配った村を襲っちゃったよ。どうすりゃいいんだよコレ!
俺に食う所を視せんなよ。これ見よがしに視せんなよ。
おまえら絶対許さん。
村の手前に先発隊がいる。おーおー!統率取れてるわ。
危機感知に早くも反応があった。
茂みに隠れた吹き矢部隊だ。
俺よりも早く導師の物理結界が現れ吹き矢を防ぐ。
「ボケっとしとるな!殺しに来たぞ。仕返しせよ」
視ると植物系神経毒だ。生かして狩るのかい、そうやって備蓄して食いやがるんだな。視た瞬間、
山間を抜ける旅人や冒険者の戦い見て学習してやがるぞ、吹き矢、鎗、剣まで奪って使ってやがる!
旧人の格好で完全に人類だわ、こいつらマジ新人(ホモサピエンス)に進化するわ。バカ野郎が
吹いた奴をその場でアーススパイクの串刺しにした後、十字架に
次々と吹き矢が来る。
俺を見た瞬間に死が確定するからな、しっかり見てくれよ。吹いた相手を串刺しで次々と磔にして俺たちの周りをクルクルと回らせる。
俺達の周りを2重に十字架が回る頃、サルの吹き矢部隊は村に逃げ帰った。
「これは効くのう、次の戦場はこれが良いの(笑)」
まだ行く気だよこのガンダは!まだ100年生きそうだ。
「儂らで正解じゃ、兄者の兵を失わずに済むわ」
「はい、これは魔法使いの戦場です」
「こんな
今度は集団戦法か。槍持って
モンスターより狡猾に遠隔で神経毒を放つ相手。俺たちが現れた途端に音もなく忍び寄る人食いサル野郎。
こんな攻撃方法だから楽な鳥、豚、鹿、ヤギ、イノシシ、牛、人間へ行くんだな。一番狩り易い人間を狩るんだな。
オークを狩るのは集団で囲んで槍の
強い俺らも集団戦法だ。すでに60にもなった棘付きの磔十字架がサルを貫いて殺して行く。
農家に女子供を隠そうと誘導するサルは
サル野郎の記憶を覗いたが、病気(細菌)による死亡、新生児死亡率が異常に高い。だから平均10人以上、毎年生む多産。病気で死んだ同族まで食ってやがる。
俺は今殺す人食いを視ようと眼を背けなかった。背けなかった分憎しみが倍増した、
確信しないといけない。こんなのが進化して世に出て来ない事を。絶対世に出してはいけない事を。
この種族が生きる事の出来る世界は原始。混沌で
女子供を十字架で挟み撃ち。戸惑った瞬間に怒られ、導師が魔法で瞬殺した。
「
一瞬の戸惑いも許されなかった。どうしてそこまで強くなれるのか聞きたかった。
視たら、それはそれで凄かった。
戦場の記憶が凄かった、こんな綺麗な戦いじゃないドロドロの戦争だ。もう無茶苦茶だ。人の所業ではないオンパレード。
戦争は土地の貴族、豪族皆殺しで略奪。傷ついた兵士は敵に
キャンディルの過去の歴史もそうだった。そうやって村が襲われ殺され奴隷で連れて行かれた豪族時代なのだ。
始祖セリムの時代もそうだった。
ロスレーンもそうだったろう。
地球だってそうだ。
何も変わらないと呪文の様に唱えた。心が痺れた。
目の前の光景を心が直視せず流そうとする。
土魔法ⅢLv1(1up)、魔法攻撃Lv4(1up)、並列思考ⅡLv1(1up)、多重視点ⅡLv1(1up)、精神耐性Lv5(2up)、魔法防御Lv2(1up)、精霊魔法Lv8(1up)が一瞬で付いた。
多分加護持ちが居たんだと思う。
「アル。充分じゃ!戦おうとする奴は居なくなった。逃げ回っとる奴らを包囲して大きな群れから
「はい」
背後の山脈目掛けて逃げ散る群れを、500にも増えた磔十字架が追い越して立ちはだかる。無残に死んで
(シャド、ありがとう)
(はい)
導師が固まって死ぬサル達をインベントリに入れていく。
見て
そんなに口慣れてはいないが肉は肉だった。
キャンディル領を潤す冬の肉の収穫だった。人に近いだけで人と認識していない。オークは豚、イノシシ系 サル系の肉なだけだった。そういや地球でもサル食うよ・・・俺の考え自体が異端だった。この世の人を批判など出来ない。何様だ!
俺は一体何をやってるんだと自問自答した。
こんな事をしている。
能天気に異世界などと言っていた自分。
余りのアホさ加減が嫌になった。
導師が死体を漁ってる間、シャドと一緒に殺しつくした。俺からは逃げられない。俺が眼の前の1600の逃げ惑うサルを逃す筈がない。
何度も反復して心に言い聞かせた。
成熟していない世界はこうだ。
恐竜もいる世界を舐めるなよ。
目の前の大山脈でも人間は生きられないほど過酷だ。
生きて行ける場所は奪う世界だ。舐めるな。
滅ぼした数だけ強くなる。
タナウスだってそうじゃないか!
今やってる事がそうじゃないか!
地球は何種類絶滅したんだろう、その上で俺は生かされてのぼせ上がっていた。現代人の全ての先祖がそうやって勝ち抜いてきた末に俺たちがいる。人の悪い癖だ、見たくないモノに蓋をして見ない。
人間狩りをしてきた先祖の事をテレビは言わない。植民地の未開人を殺し回った先祖の事を言わない。ネイティブアメリカンと最近は言うが、元はインドと間違えてインディアンと殺し回った。
インカ帝国の息を止めたのはスペインだ。ムチャクチャやっている。未開人は人じゃ無いのだ。
やってることは一緒だ、豊かな土地を奪い、生き物を殺して肉も食わず毛皮を取る、その国が持つ金を大部屋一杯差し出せと未開人に無理難題を吹っ掛ける。その為だけに原住民も土地の生き物も根絶やしにする。
日本だってそうだ、弥生時代より先の時代は部族が出来次第に豊かな地を奪い合った。住居跡が防衛施設の砦になってたらしい。貝塚から出る人骨には色々説があるらしい。言いたくないよな、そんなこと。研究費が止まるしな。
言えば良いのさ、土地の奪い合いは何も変わらない。戦国時代だけが同族の殺し合いじゃない。
誰が糾弾できるんだ!そうやって人間の先祖たちは勝ち抜いてきた。生き抜いてきた!その上に俺たちがいる事実に蓋をする。
あっちの世の自分が生かされた平和な点の時代を見て分かった気になっていた。
歴史に学べ。
歴史は繰り返す。
お前は身を以て体験している。
目を逸らすな、逸らさない分だけ強くなれる。
逸らさない分だけ生き物に優しくなれる。
そう思いたかった。
四方八方へ逃げる奴らを多重視点で確実に
導師が俺の魔力を頼ってくれてる。
この後ダブルヘッダーだ、導師は温存しないとな。
殺して行く、ただそれだけ。
どっちがマンイーターか分かんねぇ・・・
心が麻痺して頭が停滞すると俺の動作がギクシャクする。すかさず導師から叱責が飛ぶ。
「主はそんなもんか!神の使徒じゃろ。しっかりせい!」
「はい!」
「
心のブレが少なくなり、仕事が確実になって来るにつれ導師は手を出さず護衛に回るようになった。
俺の多重視点に操られた針の様なアースバレットが四方八方へと逃げるサルの
危機感知Lv3(1up)、精神耐性Lv6(3up)、土魔法ⅢLv3(3up)、魔法攻撃Lv6(2up)、並列思考ⅡLv3(2up)、多重視点ⅡLv3(2up)精霊魔法Lv10(3up)
キャンディルの村奪還戦は終わった。
しかしまだ終わってない。
第二戦は大山脈の
大山脈を2つ越えた渓谷にそれはあった。
岩棚の下の大きく裂けた亀裂の大空洞を利用して住んでいた。
奥が3km以上ある洞窟だ。たぶん何万年前の地下水路が地上に出て来たと思う。
多重視点でサル原人の生活を視て行く、生活を視て行く。
文化はある。
食い方に料理もあり首を狩ってたりもした。洞窟の中で家を作ってた。枝を組み合わせた柱に尖った葉で屋根を葺いて、葉を織った敷物の上で暮らす。
毛皮が全てだ、織物など無い。渓谷に挟まれた森林だから生きて行けるのか。
他に生きていた旧人が追われてきた方が正しいのかもしれない。砂漠や荒野や大山脈地帯などの自然厳しい所を除いて中央大陸はすべて武装した国だ。行き場など無い。
洞窟で一定の温度か?キャンディルの冬を越えられたのか?群れが増えて飢えたんだな。獣人やエルフと一緒だな。食料のある所に行かなくちゃ種族が死ぬもんな。
オークを含め全ての獲物の干し首が蔓で縛って何千も並ぶ洞窟はホラーの世界だ。今でも旅人や周辺の国の人を狩ってる。新しいのもある。生活してるんだ、新しいのもあるさ。
骨を焼いて日に焼けた顔に化粧を施す。骨を煮込んでスープを作るんだな。オークを殺して食う人間だって
ここは弱肉強食の世界。
大山脈のあっち側の国に分派すれば滅ばなかったろうに。踏み込んだらダメな所に来たんだよ。ここの土地はダメだよ。
もう容赦しなかった。人類の敵だった。
キャンディルの地で戦ってる俺はタナウス島とダブらせていた。タナウス島の住んでも居ない先住民を殺してる様な感覚になっていた。
何も考えずに殺すために、他の事を考える。自我が崩壊しないような防御機能かも知れない。殺す理由を考える。
困っている人を助けるには、人任せではダメ。戦争被害者を他の国に連れて行けば、流民のレッテルだ。流民の開拓村には地位も財産も名誉も無い。領主に受け入れて貰っても
助けるには俺が国を作らなければならない。
ラムール会長が言った。
「攻めて奪い取った者が建国する。負ければ侵略者と言われる」
全ての国がそうだといった。
お前たちの眠る大地の上に俺は国を作る。
困って泣いてる人たちを視たくないんだ。
だから死んでくれ。
どんどん召されて行く、俺に襲われ魂が召されて行く。
魂の灯が消えていく。
俺はお前たちが死んだ土地の重みを背負って生きて行く。お前たちの死も俺が進化するために必要だ。俺の国に生まれて来い!使徒の俺が祈ってやる。
次は磨ける人生が待っているぞ。俺の国に生まれて来い。
俺が作る最高の国に生まれて来い!
勝手な事をほざきながら俺は泣いていた。
相手はキャンディルのサルなのに・・・
最近涙もろくてダメだ。
危機感知Lv4(2up)、精神耐性Lv6(3up)、土魔法ⅢLv4(4up)、魔法攻撃Lv7(3up)、並列思考ⅡLv4(4up)、多重視点ⅡLv4(4up)、精霊魔法ⅡLv1(4up)
次回 209話 呪いを解く呪文
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この物語を読みに来てくれてありがとうございます。
読者様にお願い致します。
応援ポチ。☆も頂けたら嬉しいです。
ポチをしてくれる事。それはとても励みになるのです。
一期一会に感謝をこめて。よろしくお願い致します。
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