第205話  湯浴み着の王女



「お風呂の用意が整いました」侍女が呼びに来た。


お風呂に行って噴いた。


「お前、小さいとは思ったが。本当に小っさいな(笑)」


王女をお前と言い、気にしてる事をズバッと言って笑う。俺が小学校の5年生まで風呂に入れてた雫なんてもんじゃない。小学校入ったかどうか? イヤ2年生位の雫だわ。


色々考えながら服を脱がせてもらう。ロスレーンの屋敷でアニーにやってもらうまま、自由にして裸になるのを待つ。


湯浴み着が長すぎるのでひざ下で縛ってあった。

視たら身長122cm。ならそうなるわなぁ。頭のつむじを見下ろしながら138cmが言う。


すっぽんぽんにしてもらった。


「アルベルト様、よろしくお願いいたします」

「うん、初めては分かるから普通に洗ってくれ」

「はい・・・」


ごめん、メイドのつもりだから正面からヤングコーンが丸出しだ。


「クリーン」お!もう覚えてるのか子供の癖に。

(王女はあと3か月程で14歳になる、アルより上だ)


お湯でクリーンの粉を流してくれる。


「ぬるいぬるい!寒くなるわ」

「ごめんなさい」風呂の入り口で侍女が祈ってる(笑)


「あつい!あつい!」

「ごめんなさい」出口に侍女が集まって来る。


「お前!やってもらってばかりいないで覚えとけよ!」


王女もまさか自分がやるとは思ってもいない。


「すみません」うちの2人ものぞきに来る。

「そんなんじゃ使い物にならないぞ」

「はい、気を付けます」

「そうそう、そのぐらいな」


香油の石鹸で香を付けてもらう。


「そうだな、その温度だな。覚えたな?」

「はい」


「お前も待っていたら寒いだろ。一緒に入れ」

侍女達も王女がお前呼ばわりされてイラついてる。


風呂の中から出口に向かい怒鳴りつける。


「王女が頑張ってるのに使用人がイラついてどうすんだバカ者共ぉ!侍女兼護衛だろうが!気配ぐらい消せ未熟者ぉ!(笑)」


風呂に反響してもの凄い怒鳴り声だ。


気配消しても視られちゃう。

侍女は逃げ散り、為す術もなく翻弄ほんろうされた。


「温まったか?「はい」そんじゃ出るぞ」

雫に30数えさせたなぁ・・・王女には数えさせない。


濡れた体を拭いてもらって着替えさせてもらう。

王女も当然してもらってる事を俺もしてもらう。


着替えて出てきた俺たち二人を見て皆がホッとしている。


着替えて来ると部屋に行き、こないだ作った真新しい濃紺の貴族服に着替える。


部屋から出た時には、立派なお坊ちゃんだ。


王女も侍女もアルベルトを見て見惚れた。今は悪ぶっているが黙っていたらとても可愛い子供なのだ。


侍女達の感想は視たら分かるが顔には出さない。


「リズベット・アナ・ヴォイク・デ・ナレス」

「はい」

「そなたの婚約を承知した。アルベルト・ロスレーンが受けた」


「はい」涙目になっている。

「良いな?」流し目で侍女たちを見る。


「大叔父様に謁見えっけんする。支度をせよ」


3人がたちまちに着替える。


「宿に行って謁見えっけん出来る服装に着替える様に」

キツネにままれる様な顔をする王女一行。


「アルムさん達、この人達の護衛してあげて」

「「はーい」」大喜びで手を取って立たせる。


皆が出かけたらニウとコアに通信を入れる。


「ニウが執事、コアがメイド長で付いて来てくれる?」


「畏まりました・・・今、Enterprise冒険号に生成されました」


「ありがとう、迎えに行く」


2人を連れて、飛空艇も持って来た。


「今日はもしかしたら王族の所へ行くかも知んないからそのつもりでお願いね」


「かしこまりました」



・・・・



なんか凄い6頭立ての馬車がやってきた。

スラムがどよめく煌びやかさだ。


皆が着替えて来ていた、ヨシ!謁見えっけん出来るな。って王女の正装てタスキに勲章にティアラかよ(笑)


「それでは手を繋いで」3人はすぐ繋ぐ。

「リズ手を繋ごう、そっちの手は侍女たちと」


戸惑いながらも皆が繋ぐ。シズクはチョンと俺に見える様に馬車を触った。名前でいきなり呼ばれた王女は真赤に固まった。


一瞬でミウム辺境伯邸前に跳んだ。


「聖教国の秘儀だ、驚かなくて良い。口外無用!」


ナレスの第三王女とロスレーンのアルベルトが来たと伝える。


すぐに執事が走って来た。

「大叔父様はいらっしゃいますか?」

「はい、お待ちです」


大叔父様に婚約を報告した。

コルアーノの婚約のしきたりを聞いた。両家の親が納得しないといけないらしい。クーリングオフやりやがるから知らせたくない。


「大叔父様が親代わりでも良いのですが・・・」

「うーむ、事情は知っておるがそれはダメじゃ」

「お願いが有るのですがよろしいですか?」

「なんじゃ?」


「王女の馬車と馬をナレスに送ってください」

「王女はどうする」


「賢者の大魔法でナレスに送りますよ(笑)」

「囁かれとる噂は本当なのか?」


「さぁ、噂は知りません」

「ナレスに取られたなら王家も驚くじゃろうの」


「え?そんな話が!」

「お主が大きくなったらじゃ(笑)」

「あはは」


「ハルバス公が裏におるぞ、気を付けよ」

「あー!そっちからですか(笑)」

「なにかハルバス公と絡んだのか?」

「はい・・・キャンディル伯経由で」

「どうりでのぅ、隠せぬ才よ(笑)」


導師が開発したと相互通信装置を説明する。


「馬車はお願いいたします、ナレス道中のマルテン侯爵にもよろしくお伝えください。万事収まり次第にご挨拶に参ります。今からロスレーンへ行って参ります」


「見せてもらおうかの」

「口外無用で」

「わかっとる(笑)」


手を繋いで手を振りながら跳んだ。


ロスレーンの俺の屋敷前。


屋敷をインベントリに入れる。

ナレスで受け入れられない場合の念の為だ(笑)


王女一行が息をのむ。


「家族には恥ずかしくない挨拶を頼むよ」

仮にも一国の王女一行に言う言葉ではない。


「アランお父様とエレーヌお母様だからね」

ブツブツ覚えている。


お父様の部屋にノックするとセリーナが出てきた。


「お父様に報告が有るのですが」

すぐに通された。俺の後ろにすごい恰好のリズが居てセリーナが固まる。


「お父様、報告が有ります」

「うん?何だい」といいながらリズを見てビビる。


「アルベルト・ロスレーンはこちらのナレス王国第三王女、リズベット・アナ・ヴォイク・デ・ナレスと結婚の約束を致しました」


「!」


「ナレス王国、第三王女、リズベット・アナ・ヴォイク・デ・ナレスでございます。アラン様よろしくお願いいたします」


「まて!アリアより下なのか?」まずそこか!

ALL「・・・」


「私と同じ13歳ですが」


「あ!成人?失礼。そうか!13歳か。え?王女?ナレス?セリーナ!皆を呼べ、違う!領主執務室にシュミッツ、ジャネットを含めて家族全員を呼べ!」


取り乱し方がすごい。


「コルアーノは12歳が成人だから、コルアーノなら結婚させられてたね(笑)」

「はい(笑)」


家族が揃って会議室に集まった。

かのリード師匠が追い詰められた由緒ある場所だ。


お爺様が怒る。


「先触れも無しにナレスの王女殿下を連れて来るとは何事じゃー!」すごい剣幕だ。


「やんごとない事情があって・・・ね?」


「はい、アルベルト様は何も悪くありません、悪いのは私でございます。ロスレーン伯爵様お許しくださいませ」


静々しずしずと立ち上がり、膝を折ってスカートを後ろに持ち上げながら完璧にこうべを垂れる王女殿下。俺はそれを知っていた、カーテシーという王侯貴族女性の目上に対する挨拶だった。


「頭をお上げください王女殿下!」

お爺様がタジタジだ(笑)


「話は分かった、ナレスに挨拶に行く前にアランとエレーヌの許しをもらいに来たんじゃの?お主にしては上出来じゃ」


「よろしいですか?」


「王女殿下の求婚にお主が応じたのじゃ、認めぬ訳に参らぬ」


「本音で言うが、二人共とても成人しておるとは見えぬぞ」


「小さいのはしょうがないです(笑)」


「それでは、行って参ります」

「王城へ止めよ、手前から行けよ(笑)」


俺を何だと思ってんだ(笑) 討ち取られるわ!


「王女様にお城に入れてもらいますよ」

「そうせよ」皆がホッとするのがムカつく!


「アル、ナレスの王が何か言ったら破棄して良いからな。うちはコルアーノだ」


安心して下さい、そんな親なら俺がぶっ飛ばします(笑)


「そんな事はお父様に一言も言わせません!ご安心ください」


王女が叫んだ。王女も親をぶっ飛ばす勢いだ。


「あ!なら良いんだ。よろしく頼むよリズベット」

「はい!アランお父様」


「昼も近いのう・・・折角だ、うちで食べていくか?」


「はい!お願いいたします」


使用人食堂でうちの執事ニウメイドコアが接待されている(顔は違う)うちのメイド服と執事服に酷似した物をニウとコアが着ているが若草色と藍色あいいろで誰も気が付かない。王女の侍女はうちの3人と末席で固まって食べている。


メイドが噂を聞き付けて厨房の裏口から入れ替わり立ち代わり王女を覗く(笑) 噂が千里を走っていた。皆がアリアより小さく可愛らしい王女に驚いて、俺も小さいからお似合いだお似合いだと頷いてる・・・複雑だ。


てか、ギブラル首長国王太子(22)ってのを撃退して初めて成功だからな。追跡捕捉して撃退準備しないとダメだ。



皆に手を振りナレスに跳んだ。そんな振りをして裏山の平な部分に出た。


飛空艇を出す。

タラップを土魔法で作って皆で乗り込む。王女一行はもう諦めて驚くのを止めた様だ。言われたままに動くようになった。


そのまま浮かんで一気にマルテン侯爵領方面に向かう。ギブラル首長国王太子の居る方向と距離が眼に映る。


早く捕捉したくて魔力込めたらどんどん早くなる。恐ろしいぐらいに早くなる。改造してジェット魔動回路になってるからな、お客乗せてはここまでのスピードだな。



いた!もう大河の手前だ。と言うか近衛を連れ過ぎだろ。大名行列か! 思わず深く視えちゃったら、何処に行くにも恥ずかしくない王太子の標準装備だった。王太子さんよ、長男に生まれたあんたのその役目も大変だな。マジこんなのに追われたら両手を上げざるを得ない。


上空から侍女長に馬車の位置を見せた。ナレスの王都まで約10日だと言う。そのままナレスの王都郊外で着陸して飛空艇をしまう。


王女一行として門をフリーパスして守備隊の詰め所で馬車を頼んで人数の確認している。


30分ぐらい待って、馬車が回されたので2台で王城へ向かう。


気が重くなってきた。俺が一番嫌いな所かも知れない。でも城門の兵士が見せた心配顔を見たら安心した。もう大丈夫だ、リズを心配する人は全部俺の味方の筈だ。



3か月にも及ぶ長旅の経緯を家族に説明するのに時間をくれと王女に言われる。


ゴメンねせっかちな性格で。


ロスレーンの家族とのあの対面は無さ過ぎるよな、と今反省したからお爺様の怒り損だ。実際の所、王女と婚約と聞いた女性陣は目が点で、中でもお母様は泡を吹きそうだった。アリアは妹を見る視線だった。


待ってる客間の執事とメイドがソワソワ俺の容姿を品定めして来る。でも、ギブラル首長国王太子(22)を退けるための婚約者が来たのだ。どこの公爵家か、侯爵家かと知りたくてしょうがない。


調べる時間を与えるか。

愛想笑いを浮かべる執事とメイドに自己紹介をする。

普通の貴族はそんな事しない。


視てるとマジ面白い。

自己紹介した途端に喜んでたのがクルクルと表情が変わり落ち込んだりする。伯爵家で悪かったな!王家からしたら格下なんだろうさ。バカにした瞬間チビらしてやるから覚悟しろよ。ギブラルの王太子より格下と思ってたくさん心配しろ(笑)



第三王女と侍女が王様と王妃始め家族全員に、俺の凄さを伝えようと頑張ってくれているが効果はいまいちだ。コルアーノのロスレーン伯爵家と聞いて岩塩と結び付けてる所が王家の政略結婚ぽくテンプレ踏襲とうしゅうだな。



視てるとマジ笑える。


・ミウム辺境伯から演習場を賜った件。

・冒険者5位から2位に特進した件。

・聖教国の聖騎士になっている件。

・一瞬で各地に跳べる魔法使い。

・お屋敷を持って行こうと消した件。

・飛空艇に乗って、空から王太子の一行を追い抜いた件。


頭を疑われている(笑)


いきなり会ってそんなのまくし立てたら逆効果で頭を疑われるわな、かと言って言わなきゃ伝わらないジレンマ。


王太子と結婚したくない一心の嘘と思ってる。


普通の人ならそういう反応になるのね(笑)


視てたら楽しい。でもなぁ・・・どうするよ?


だんだん面倒臭くなってきた、信じて貰わなくても良い様な気がしてきた。なんか自分の嫌疑を晴らす感じ、何も悪い事して無いのに無実を叫んで回る様な気になって来た。


成る様になれと思った。ムカついたら〆る。

(相手が王族なの気にして無い)


知らんわ!王女に求婚されて渋々承諾しょうだくしてナレスまで来たんだ。何か言ってみろ、ぶっ飛ばしてやる。〆てやるから、遥々はるばる助けにきてやった恩人に無礼を働いてみろ!


俺に対するリズと侍女のかばい様に王家が敵に見えて来た。


あー!コルアーノの貴族名簿を執事がチクった!廃嫡はいちゃくがバレて言い合いしてるわ。負けるな!リズ!頑張れ。(応援が完全に他人事だ) 


王太子の所がよっぽどマシと言われリズが泣いてしまった。


泣いてたら負けだぞ頑張れ!


お前が頑張るなら、俺も頑張ってやるからな。


あ!人質を取った(笑) 自分を人質に!


王家から出て行くと言っている。二度とナレスには来ないと言ってる。侍女たちに付いて来るかとブラフもかます。


娘って・・・こんなに強いの?

王様含めて家族全員黙っちゃった。


なんか、いつの間にか究極の二択を迫られている王家(笑)


婚約を認めるかアル様に付いて行くかの二択になっている。それどっちも一緒じゃないの?この子こういう手を使えるの?と言うかそこに誘導してる。視えるから戦略がエグイの解っちゃう。


詰めがすごい。

ナレスの名前も捨てて、リズベットの体一つで付いて行くと言う。ナレスの物は何一つ要らないと言う。酔ってるのかお前は!いつの間にか逃避行のイメージになってる。 


あー!物語にそういうのが有るのね。物語を知ってる女性陣が憧れていく。親に揃えてもらった物を捨てるってそんな意味なんだ(笑)


愛に生きるのね。だぞ(笑)


愛じゃ食ってけないぞ、それで皆が餓死してるんだからな。王家ならしょうがないな、貴族でさえそこまで頭に無いからな。愛にじゅんじて尊い二人だけの生活するのね。



お前は物語の様に料理できるのか!

生活魔法もまだじゃねーか。

その生活は俺が料理作る生活だ!

お前の奴隷じゃねーか(笑)


お姫様脳はマジ笑えるけど本気過ぎて可愛いなぁ。


孫に会えなくなるとか、なに親を揺すっとんねん(笑) もう少し大人にならないと無理だろ、お前は7歳位だし。生んで育てるのはお前だぞ(笑)


気が付いたらアルムさんとクルムさんが俺の百面相見て笑っている。慌てて真面目な顔になった途端とたんに言われた。


啓示けいじ受けてたんでしょ?」

「うん、今回色々あってさぁ」

「そう思った」今の事とはさすがに言えない。


執事とメイドが耳をそばだてるがそれ以上はNG。


1時間以上待った時にお迎えが来た。


「王家の皆様がお待ちです」


「ご苦労」


俺は席を立ちあがった。


リズを泣かせた王家をやっつけに行く。

廃嫡はいちゃくのどこが気に入らんねん、なめるなよ!





次回 206話  Yes!Fall in love

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               思預しよ

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