第201話 裏の皇帝
「鑑定しないで下さいよ!」
「俺の鑑定は鈍って無いよな?」
真贋のベガが言いやがった。
「ベガ!表へ出ろ!(笑)」
「アル坊主が上等だ!(笑)」
面白がっている。
ベガに目配せする。
「議長と来た子供に用があるみたい(笑)」
「そっちかよ!(笑)」
「集まって来たみたい、やる気満々(笑)」
「そりゃ、護衛とは思わないよな(笑)」
「店を包囲してますから少し出ます」
妖精の靴を履いてから出番のないスコッツ武具店で作った新品の冒険靴を出して言う。
「普通に店先まで出て、これを袋に包んで渡して下さい」
「高そうな靴じゃねーか」
「誰か来たら売り物の靴を渡したって言って下さい」
「済まねえな」
「僕が連れてきちゃいましたからね」
「気にしてねえよ(笑)」
「迷惑かけてすみません」
「手加減してやれよ(笑)」
「(笑)」
店を出る時見送りに来たベガが袋を渡してくれる。
「ありがとうございました(笑)」
「おぉ!まいどありー!(笑)」
・・・・
店から離れると三人が付かず離れず追って来た。お屋敷は厳重だから狙いは子供だよな(笑)
(シェル、危ない時頼むよ)
(はいです)
(シャドは影縛りでいいからね)
(はい)
海岸に向かって追手を引き付けながら、内偵状況を視て行く。ワールスとハーヴェスはそんなに遠く無いからな。
ミランダと海商国は東京とオーストラリア程も離れているがその半分の距離ならハーヴェスの内偵も入るわな。
ワールスが使用している出所不明の武器から、何年も掛けてワールスが糸を引いていると推測してる。
一番得をした国を調べたらそういう推理になるだろうな。ハーヴェスが武器を盗まれたタイミングにワールスが大砲や魔動回路を変えて動き出したから時期もドンピシャだ。
調べて驚くほどの武器持ってたら疑うよな(笑)
たまたま武器商人のラムール会長が来たからラムール商会経由で大砲や魔動回路を仕入れたと思ってる。
核心には至って無い。
盗まれた武器弾薬、魔動回路と大砲の行方は掴んでない。ハーヴェスの盗品はこの星の裏側のサントにある。兵器の形も意匠もすでに変わっている。小型の魔動船ではサントにも武器が集まってる情報を掴むのはまだ先だろうな。
難しいな。覇権国だったんだ、情報の重要さを知っている。構築してるネットワークを考えるとグチャグチャにしておかないとまずいな。
絡んでるのがハーヴェスの軍閥、要人、商人の既得権益者。投資した額が全部吹っ飛べば皇帝にモノ申すわ。結構裏事情が分かって来たな。皇帝もここまで弱くなれば既存勢力に叩かれるわな。
うーん、後で会長たちに相談してみよう。
前回マジックバッグを解錠していた場所の近く、見るとハマナスが群生して花を付けている砂浜は広く、海は遠い。
海沿いの店が途切れ始めた頃。
そろそろ来るかなと思ったら来た。
やる気満々だ。どうしてくれよう(笑)
「坊ちゃん!」
「はい、何です?」
「その袋は何だい?」
「え?」袋を大事そうに隠す。
内偵は目配せをする。
「何ですか?物盗りですか?」
「袋を見せてもらいたいだけだよ」
「これはダメですよ。高かったんだから」
「見せてくれたら良いんだよ」
「あなた方じゃ履けませんよ?」
「へ?」
「これ靴ですよ」
「本当か?見せてみろ」
「盗りません?」
「盗らないから!見せてくれ」
「はい」袋を開けて見せたら取られた。
「上等な冒険者の靴じゃねぇか」
靴を色々調べている。
「そうですよ。高かったんだから返して下さい」
「何もねぇな、いい靴だ」
靴を返してくれた。
「何でした?なんかの間違い?」トボケてみる。
「坊ちゃん、サントの議長と一緒に来たろう?」
「え?」
「一緒に居るのを見たんだよ」
「そっち関係?物盗りじゃないの?」トボケまくる。
「物盗りじゃねぇよ(笑)」
「なにか聞きたいの?」
「坊ちゃんや議長が何しに来たか聞きたいんだよ」
えらいストレートに聞いてくるなぁ(笑)
「何かおごってくれます?飲み物とか」
話しちゃうよ な空気を出しまくる。
「いいぜ!あそこの店に入ろう」
いいのかよ!おごってくれるのかよ!
なんか、妙にフレンドリーなので視たら三人共魅了になっていた。マジか!これあぶねぇ!ベガが恐れる訳だわ。使い方あるのかな?
(シェルが包んで効果無くしますよ)
(あ!ありがとう、面白いからこのまま行く)
(会話を重ねたら重ねるだけ魅了していきますよ)
(だよね。最初は襲う気満々だったもの)
普通に海水浴の服とか色んなものを売ってる食堂だ。
「僕、この赤色の実のジュース」
「坊ちゃん。この国来たらコレだぜ」緑の実を指す。
あんたこの国の人じゃないだろ。本心で勧めるなよ(笑)
「そんじゃ、それにする!」
「こっちはエールだ。三杯!」
酒飲み始めるって一体・・・常夏だから普通か?
「坊ちゃんは何しに来たんだっけ?」
目的薄れてるぞ(笑)
「あ!ホント美味しい!」
グアバジュースだな。視たら南国の種だ。
「だろ!みんな最初は驚くんだよ」
あんたもな!(笑)
「僕、議長の護衛ですよ」
「おぃ!護衛だってよ、可愛い護衛だぜ」
「冒険者ギルドで受けたんですけど(笑)」
「え?そうなのか」
頭ユルユル(笑) 議長の護衛がなんで依頼票に出るんだ。
「うん。コレ」ゴールドの認識票を見せる。
「本当かよー!」
「本当じゃねぇか!」
「俺たちじゃかなわねえなぁ(笑)」
バカなの?魅了ってバカになるの?
「お代わりいいです?」
「お!気に入ったか、いいぞ!」
「ありがとう!」
おばちゃんについでに壺にも入れてと持って行く。
作れないならコアに観測してもらう(笑)
バカ言ってないで始めるか。
「議長の護衛は船酔いで私が付いて来ました(笑)」
「そうだよなぁ!普通は大人の護衛だよな(笑)」
そもそも子供の護衛時点で変だろ(笑)頭おかしいぞ。
(何を聞いても肯定してしまうです)
(マジ魅了ってすごいね)
(アル様も女の人の魅了に気を付けるです)
(マジで?)
(本能に訴える同じの持ってます)
(え!)
(そういう時はシェルがたすけるです)
(お願いね!本当にお願いね!)
(たすけるです!)
「何が聞きたいんでしたっけ?」
「議長が何しに来たかなんだよ、俺達ハーヴェスから来てんだけどな、そういうの調べてんだよ」
言っちゃってるよ、イヤ逝っちゃってる。
「僕も冒険者の端くれですが、護衛やっていて少しは耳にした情報持ってますけど幾らで買います?」
「お!売ってくれるのかよ。いいのか?」
「僕達の仲じゃないですか(笑)」
どんな仲やねん。
「おい!今から行って金持ってこい」
一人が店を出て走って行った。
「それなら濃い話聞かせようかな」
「おぉ、頼むぜ坊ちゃん!」
「とりあえず戻って来るまで飯でも食って待ってよう」
「いいんです?」
「おおよ!いい仕事になりそうなんでな」
何も話してねぇぞ(笑) 楽観的なの?ねえ、そうなの?
「そんじゃ、良い物食べさせて貰おうかな!」
「坊ちゃんは育ち盛りだ、たんと食べな」
すでに身内扱いになっている。エールも三杯目になり饒舌の上に笑い上戸になっている。
肉野菜炒めとロールパンとスープのセットでコルアーノ換算大銅貨1枚(1000円)さすが首都だけあって海沿いの食堂でも高い。
途中でお金を取りに行っていた仲間が帰って来て、エールを追加したので、情報を売った。
アルが考えたシナリオを虚言(方便)スキルLv5が最大補正し、国すらも騙される壮大な物語が語られる事になる。
・・・・
「4月の頭に冒険者ギルドに依頼票が出たんですよ。ワールス往復の約三か月の護衛任務なんですけどね。どうもミランダが植民地をどっかの商国に
「ほう、ミランダがなぁ・・・」
「ミランダとサントは仲が悪かったせいで植民地
「なるほど、それで?」
「問題は
「ほう!」
「そこに、今回サントの議長とラムール会長がワールスに来た理由があったんです」
三人がにじり寄る。
声を小さくして重要部分を印象付ける。
「その理由はですね・・・」
もっと声を小さくする。喉から手が出てるぞ!聞き逃さない姿勢は評価するぞ(笑)
「
「それでミランダは大砲や武器を国営工場が横流ししてた話が元から国内にあって、その件で横流しが明るみに出て大問題になったみたいですね」
「国営工場から最新型の大砲が人目をはばからずに運ばれて来るから、横流し品とは知らなかったミランダの商人が他国に売ってたら、いきなり捕まって処刑されたそうですよ」
「本当かよ!」囁く様な声で驚いてる。
「本当ですよ、そう言ってたんだもん」
「おう、そりゃそうだよな」
「僕は護衛だから議長やラムール会長の話しか聞いて無いですけどね、処刑された商人の名誉とかもあるし、処刑された商人に払ってしまった手付けのお金も大砲や魔動回路だから凄いらしいんです」
「注文の武器が届かなくなって商国が連名でミランダに抗議したいんですが、なかなか強い国らしくて出来ないみたいですね。ワールスもラムール商会から買ってた国みたいで、その説明や善後策の協議みたいですよ」
「それは、武器商人もさすがに参りそうだな(笑)」
「その点は正規品として国営
「ミランダは相当バタバタすると思いますよ、消えた大砲や魔動回路の代金がどっかに行っちゃってるらしいですからね」
「坊ちゃんよ、そんな話はどこにもあんだよ。エライ人がぽっぽして持ってってんだよ(笑) 上手い事すりゃ一生遊べるからな。そりゃな。国の上層部丸ごとだぞ、俺の聞いた感じじゃソレ、上層部丸ごと黒だわ」
「ですかねぇ・・・まぁ僕は冒険者なんで護衛依頼のサインもらえたらそんで良いんですけどね(笑)」
「俺たちみたいな下っ端にゃ関係ねえよ(笑)」
「ですね、噂を買って貰えるだけ、ありがたいです」
「おう、良い話聞かせてもらった、ありがとうよ!」
「あ!2カ月前の話ですよ、ずっと1月半魔動帆船の中でしたから今のあっちは何してるか知りませんよ」
「まぁ、そんな会議してるみたいです」
「ありがとう友人!本当に助かった。これは俺たちの気持ちだ!取っておいてくれ!」
そりゃ視ながら誘導して一番食いつく様に教えたんだもの。ワールスの大金貨1枚もらってもなぁ(笑) (100万円)
「ありがとう!友人!」笑顔で受け取っておいた。
・・・・
もっかいベガの所に行った。
「三人の追っ手からお礼貰ったー!」
ともらった大金貨1枚を見せたら大ウケした(笑)
「本当にスゲーな!いきなりそれかよ!」
「って言うかこれ危険過ぎ!よくも人に渡しましたね(笑)」
「ん?」
「襲う気満々の追っ手がバカ丸出しになっちゃう」
「今、俺はなってねぇだろ?」
「あ!・・・どゆこと?」
「敵意や害意を持つ者を魅了して無害にすんだよ(笑)」
「え?本当に?」
「本当だったじゃねーか?思い出させんな!わはは」
いたずらっ子のような顔で言う。
「だからお前の前でバカ丸出しになる奴は敵意持ってるぞ、海商国の議長様を護衛してるんだ、守ってやんな」
「説明してやる。さっきは急だったからな(笑)」
教えてもらった。
アプカルルの涙
アプカルル(人魚)の二人目以降の王女が女王の群れを割って種族を連れて分家になる時に自らの魔力で生成する。
群れから出る王女は今まで女王に忠誠を誓っていた群れのアプカルル(女の人魚)とマーマン(男の人魚))に反意を持たせない為に宝石を作り出す。
「そういう事だ。分かったか!」
「ベガ!ありがとう!」
「いいって事よ!安心して渡せる奴が居ないのは本当だ、精神数値の高い悪人に持たせたら大変な事になるぞ(笑)」
「こんな悪人に持たせて!大変な事になりますよ(笑)」
「お前はバカだからいいんだよ(笑)」
ベガの手に大金貨をパーンと叩きつけた。
・・・・
ランジェロ会頭の邸宅に16時頃行ってみた。
守衛に話をすると、しばらくして執事が迎えに来てくれた。
ランジェロ会頭に会うなり言った。
「ハーヴェスの密偵がかなり入りこんでますよ」
「そうでしょうな(笑)」
「こんな作り話をしておきました」
カクカクシカジカと接触した事から何から話しておいた。
三人が腹を抱えて笑う。
「うちは疑われるのを警戒して何も掴ませない様にしているのですが、大砲の出所を疑われてはしょうがありませんな。ハーヴェスの軍人がワールス船の大砲を見たらすぐに今までとは違うと分かるでしょうしな」
「さしずめ儂は、横流し品をワールスに流した商人ですな」
「そうなっちゃいましたね(笑)」
「儂は正規品しか扱わんと以後の口癖にしましょう(笑)」
皆が大笑いする。
「ミランダに聞いても答えないと思うが(笑)」
「だって噂だから、そんな事実は無いって言いますよ」
「イヤ、御子様。有ったとしても事実は無いと言いますぞ」
「あ!そうですね、有っても無くても否定しますね」
「だから、良いのです(笑)」
「唯一武器を売っていたリンダウにハーヴェスが接触して大砲と魔動回路を買おうとしてますが、植民地を奪った敵国ですから、なかなかウンと言わないそうです」
そりゃ、自分の国の武器が無いからだよ(笑)
「あと未確認ですが、ハーヴェスは港内の地盤が隆起して魔動帆船自体が入れなくなったとか」
「本当ですか?」俺がやったから本当だ。
「新しい植民地を調査に行っていた魔動帆船が帰ってきたら座礁したそうなんですよ」
あーそういうのも居たんだ。
「また脅しに来ませんかね?」バーツさんを見る。
「5隻や10隻帰って来ても何も出来ませんな」バーツさん。
「大丈夫です?」
「商国連合の船だけで何千隻もありますからな、表だって敵対したら何も物資が届かなくなります。制海権という軍備が無くなった後に、バーツとランジェロが組んだ時点で世界は逆らえませんな。今の制海権は商国にある(笑)」ラムール会長。
「それほどまで?」
「内偵を放っているハーヴェスでさえ、ワールスと協定を組み労働者を派遣し、外貨を稼ぎワールスから物資を買っておりますからな」
「ミランダは今まで押さえつけてきた傘下国の物資を一手に引き受けて海商国圏の商国に頼み中間マージンをとっておりますな。いわゆる商国の真似です。武人の商売は底が知れております。一年待たずして周りの国と紛争ですな、その後ハーヴェスと同じ道を辿る」
「へー!」
「表の事しか見えぬ者は分かりますまい。しかし商国連合に参加しておる同盟国は違いますぞ、表と裏の皇帝が誰だか分かっております」
「安心しました、お二人ともお願い致します」
「頭をお上げ下さい、御子様」
「それで、どちらが裏の皇帝です?(笑)」
バーツ議長とランジェロ会頭がお互いに指差した。
次回 202話 タナウス王国(案)
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