第200話  冒険・・・プッ!



5月もあと3日ほどで終わりの光曜日。


飛空艇の造船所へ向かった。


ふくよかなエルフは冒険号で2mのミノタウロスと格闘していたので置いてきた。俺が見てもしてる。冒険号で間食するから明らかに食い過ぎだ!


シズクは呼ぶから来て美味しそうに朝食食べるけど、あいつは元々精霊だ。呼ばなかったら来ないので今日はいない。


クルムさんは、用事が無いとハウスにいる。お昼も勝手に作って縫物だのパンだの薬だの作っている。



今月には出来ると言われていた飛空艇を見に行った。



・・・・



飛空艇が出来ていた。わーい!


2日前に進水して、バランスや海上スピードを見てたって。快速艇(改:魔動回路三連軍用)と青の一号、白の二号が岸壁に並んでいる。



ミールさんの船大工史上で会心の船と言ってくれる。

「えー?」と疑うと小さいながらここまでぜいを凝らした船は皆無と言う。世界樹の船自体が伝説のおとぎ話級でバラスト石の圧縮など見た事ない魔法技術。鉄の延べ棒でも敷かない限り安定性能は上回れないと言う。(もっとも安定すればするほど大砲や荷を積むので不安定になると笑っていた)



ミールさんが褒めてくれるのも分かるのだ。船の外板は世界樹の木材で強いのに、シズクが引っ付けて強度が上がっている。そして魔動回路は軍用を三機(三ノズル)積んでいる。


一号と二号は船体の木材同士が一体化してモノコック構造の上に、本来の竜骨などの船体フレームや追加の梁まで一体化して船体がそのまま塊と一緒だ、そういう理由で船首の喫水下に衝角しょうかく(体当たり攻撃用のとがったミスリルの塊)まで付けられている。


猛スピードで横腹に突っ込めばどんな船も沈むと言う。


これ飛空艇なんだけど・・・。



良くお礼を言って船を三隻受け取り、バーツさんの所へ報告に顔を出す。


「おぉ!御子様、お久しぶりですな」

「バーツ会長痩せてますよ(笑)」

「この忙しさじゃしょうがありませんな(笑)」

「レプトさんはまだですね」

「あいつの出した船ぐらいしか分かりませんな」


「今日、船を受け取って来ました。色々とありがとうございました」


「なんの。世界の海を安心、安全に航海出来る様になりました。こちらこそお礼申します」


「えー、今までだって安全に往復してたんでしょ?」


「それは違いますぞ、紛争海域に入れば攻撃されますので迂回してたりはしたのです」


「え?そんな事もあったんです?」


「それはそうです、敵に軍船の数を察知されたら優位な海域を選ばれますからな。商人の船でも警戒しています」


「優位な海域・・・」

視たら追い風や追い潮(後ろからの海流)を受けた方が魔動回路の推力も乗りスピードが全然違うらしく初撃に有利と知った。(逆だと逆潮の波で上下動が激しくなり、大砲の命中率も落ち、魔動回路の推力が食われてスピードガタ落ち)



「時に御子様」

「はい?」


「そろそろ砲台陣地が出来上がっておりますので置いて頂けませんか?」


「あ!早いですね。一年を目途にと言ってたのに(笑)」


「まだ五割です。重要な所だけ先に作ってました。ミランダ、ハーヴェスが軍船作って来るまで四、五年ありますから焦ってはいませんよ」


「そうですよね、余裕あるって言ってましたよね(笑)」


「そんじゃ何処どこに置きましょうか?」

「左右の岬の防御陣地にお願いします」

「こないだの所は弾薬庫作りました?」

「そっちはもう弾薬も運び終わってます」


サント海商国一番の港。海に開けた湾内はカニの手が守る様に左右から岬が出ている。カニの手の外側に向けてズラリと砲台陣地が出来ていた。蟹の手と簡単に言うが片手が10km以上の岬と言うか半島だ。



歩きながらポコポコ大砲をレールに沿って置いて行く。分厚い防御壁に突き出た砲身。防御壁には照準が描かれている。


鹵獲して来た軍船の大砲は船の中にガイドレールを作って。打ち出した衝撃の反動を車輪で逃がしている。砲台もガイドレールが付いていた。


半島の外側から先端まで大砲を置いて、こんどは岬の突端をUターンして湾内に向けて大砲を置く。簡単に言うが150門の大砲がズラリと並ぶ凄さだ。岬の外側には70門、突端から内側には八十門の大砲が20m置きに並ぶ。港に絶対敵を入れない大砲の布陣だ。



「これは怖くて近付けませんね(笑)」

「使わないのが一番ですから怖がるように作ってます(笑)」


「砲弾はここ?」

「はい、お願いいたします」


「湾内でも撃たれちゃう。見てるだけで恐ろしいです」


「あっちに見える岬まで4kmなのですが船から見るとすぐそこに見えます。怖くて湾内に入って来ない筈です(笑)」


「そんじゃ、あっちの岬も並べましょうか」

「お願い致します」



「これって、この位置に来たら撃つ照準ですよね?」


「そうですな、その位置に来た船なら50%程で当たります」


「へー!揺れて無いとそこまで」

「相手は波次第で揺れますからな」


「あ!そうか」


「50%以下でもこの数の大砲なら必ず当たります(笑)」


「僕も絶対当たると思う(笑)」


「半年で植民地の方は変わってますか?」


「奴隷身分が無くなって収容所から出て、家から鉱山に通ったり、砂糖木の栽培地へ通う様にはなりましたな」


「よかった」


「御子様、まだまだでございます、ミランダから植民地を委譲されてまだ三カ月です。ムチが無くなっただけです」


「気を引き締めてお願いいたします(笑)」


「これって武器庫ですよね?」

「ここに、砲弾をお願いいたします」


入れた後、魔術認証で封印していた。


「これだけ置いて余った大砲はどうするんです?(笑)」


「他の港に3/5は移動して、2/5はこれからの魔導帆船に積みます」


「これからのって世界樹の魔導帆船です?」


「そうですな、乗せる大砲と魔動回路があるので他国より先に最新鋭の交易軍船が出来上がります」


「へー」


「ワールスにも世界樹の部材は出しましたからな」

「バーツさんがその考えなら連合も安泰ですね(笑)」


「あ!そろそろ六カ月ですよね?ワールスに用が有るなら連れて行きますよ」


「うーん、取り立てて大事は無いのですが、報告とり合わせはありますかな?」


「どうします?行っておきます?」


「分かりました。六カ月でお互いに報告もあるでしょうし、今から成果書類をまとめるお時間を下さい。お昼をご一緒してから参りましょう」


「あ!ラムール会長が心配してたんです」

「え?」


「1月から4月の中旬まで行くの忘れてて」

「それはひどい・・・」


「情勢は見ておられたようで、私の顔を見るなり調?と念を押されたんです」


「今回、お誘いしても良いですか?」

「是非!御子様をサントに使わせたお方です」


「ちょっと行ってきますね、昼食はここで食べます」

「会長もお誘いください」

「はい(笑)」


ラムール会長を連れてきた。

話し掛けて来る会長にと握手の手を差し出しそのまま拉致してきた(笑)

馴染の護衛だったから大丈夫だろう。


「御子様、ここは?」

「バーツ会長のお屋敷の食堂です」


「して?何か会食しながらのお話ですかな?」


「会食した後、バーツ会長とランジェロ会頭の所に行くのでラムール会長も一緒に連れて行こうと思って」


「そこは世界の趨勢すうせいが話し合われる席ですぞ(笑)」


「でもワールス行きますよね?(笑)」

「光栄な事でございます」


話してたら食前酒から出てきた。


「ラムール会長!半年ぶりですな」

「バーツも元気そうよな、ツヤが違うわ(笑)」

「お陰様で植民地も安定致しました!」

「国の体裁は武力が一番物を言う(笑)」


なんか色々やってんのね。


バーツ会長が資料を持たせた執事を連れてるのを見てラムール会長もミランダの情勢の資料があるという。ハーヴェス対策に良いと言うのでハムナイに寄って執事と資料を持ってワールス共和国へ跳んだ。


夜の23時だった(笑)

またやっちまったよ!俺のバカバカ!

皆で笑って伝言を残して一回帰った。


今日の晩はバーツ会長の所にお泊りの件と、朝の教室は出られないからキャプターにお願いしておいた。


17時に夕食を取り、夜まで寝た。



・・・・



23時に跳ぶときっかり9時だった。

どうも日付変更線や標準時刻は無いみたいだな。その土地の一年の日の出と日没と緯度からタイムに反映されてるみたいだ。


ランジェロ会頭の邸宅にバーツ会長が顔を見せると、すぐに執事が出て来て4人を迎え入れた。


それを監視している者の視線を俺は逃がさない。


視線の主から大元までドンドン辿ってからベガ(2位冒険者:魔道具屋)の店まで歩いて行った。


俺に尾行が付いていたが構わない。


「ベガさん!お久しぶり」

「今日は綺麗なお姉ちゃん連れてねえのか(笑)」

「今日は一人で護衛ですね(笑)」

「また海商国と共和国の会談か?(笑)」

「そうです(笑)」


「すげえなぁ、こないだ会って六カ月で世界握ってるぜ」


「詳しいですね(笑)」

「お前も気を付けろよ」

「泳がしてるんですよ(笑)」


「まぁ、そうだろうな。ハーヴェスだぞ(笑)」


鑑定持ちには尾行もへったくれも無いってか(笑)


「なんか良いの有りました?」

「結果次第だが有るぞ(笑)」

「良さげな指輪と腕輪持って来ました」

「+3とか+5か?」

「そうそう!」


「そいつは売りやすくていいな。選ばなくて楽だ(笑)」


「そう思って(笑)」


「みんながみんな金持ってる訳じゃない。自分で買える安いので能力上げて生き残ればいいのさ」


「そういう考え方もアリですね」

「ただの道具だよ、最後はどうしても実力だ」


「上行くか?」

「はい」


二階の部屋に行くなり指輪を出した。


「知力、精神が+3 知恵、器用、敏捷が+5か。腕輪が生命+5 体力+5。いいじゃねーか」


「ちょうどいいでしょ(笑)」


「お前指余ってんだから、自分ですればいいのに(笑)」


「恩寵の低い人は欲しいかなって思って」

「分かってるな!低い奴ほど数値が乗るんだよ」


「俺は取り合えずこれを出そうか」

「黒真珠です?」言いながら視た。


アプカルルの涙:全体魅了効果。


「コレはなぁ、恐ろしい代物なんだよ」


「魅了の波長出してますよね?」そんな波長など無い。

「ハ!恐ろしい魔術士だな、見抜くか(笑)」


「これは精神力がねぇと持って行かれると思うんだよ。無い奴が装備すると指輪が人を狂わせる」


「えー!本当に?」

「周りもそいつも人が変わったようになる」


「見た目はなんも変わらない、魅力値が+5になるだけだ」


「装備した奴もこいつに魅入られる」


「えー!(笑)」

「お前信じてないだろ(笑)」


「いえ、怖い事言って子供を怖がらせてる?(笑)」


「頼まれて、泣いて指輪にすがる奴から奪って来たんだぞ」


「何で僕に売りつけようとしてんですか(笑)」


「俺の知ってる中でお前が一番精神が高いんだよ。お前もやられたらぶちのめしてやるから付けて見ろ(笑)」


「呪いの指輪じゃないですか。怖いなぁ・・・」

「お前がダメなら売り先が無い(笑)付けてくれ!」


「商売上手いなぁ・・・」


「小指に付けてみた」もう左手親指しか残らないよ。


「え?」


「どうした?」


「こうなりました」


ロスレーン伯爵家 三男  健康


職業 聖騎士(騎士10UP、精神+10、幸運+2)剛力の指輪(+15)瞬足の指輪(+15)幸運の指輪(+3)アプカルルの涙(10


体力:80(90) 魔力:- 力:58(83) 器用:403(413) 生命:64(74) 敏捷:56(81) 知力:691(701) 精神:733(743) 魅力:84(94) 幸運:87 (92)


現在選択>(裏①:聖騎士。体力+10、力+10、生命+10、敏捷+10、精神+10、幸運+2)

馬術、盾術、身体強化、格闘術、剣術、槍術、聖魔法効果UP。

(表②:神の使徒。数値の向上無し)

(裏③:魔術士。魔力+10、精神、知力+10)

全攻撃、弱体魔法、魔術紋効果UP。

(裏④:治癒士。魔力、精神、知力)

全回復、補助、強化魔法効果UP。

(裏⑤:斥候。知力、器用+10、敏捷、幸運)

気配察知、気配遮断、投擲、弓術、罠解除、罠発見効果UP。


※基礎数値は重複しないがジョブの恩寵効果がUPする。


「魅力+10になってるじゃねーか!」

「ですよね?僕可愛くなりました?」


「バカ野郎!そんな趣味ねぇよ(笑)」


「魅力って可愛くなるんじゃないのか(笑)」

「本気か?本気ならお前の師匠はバカだ!」


「何言って!私のお師匠は賢者ですよ!」


「いや、お前。魅力が可愛さって・・・お前の連れてたエルフの魅力教えてやろうか?」


「あ!ですね!結構です!分かってます!(笑)」

「だよな?驚いたわ(笑)」


「僕、貴族の子供なのですごく可愛がられたんですよ。メイドもすごく可愛がってくれて・・・僕が可愛いから魅力84と思い込んでました(笑)」


84!とか言ってた俺バカみたい。


「まぁ、お前は可愛いよ。すごくバカなところが(笑)」

「・・・」帝大をバカにされた気がする。


(帝大はバカにされてない。お前がバカにされている)



「コレ当たりです?外れると+5なんでしょ?」

「おぉ!当たりだな。一応指輪返してくれるか?」


「はい!幾らにしてくれます?」

「よし!返せるなら魅了されてねぇな」


「このショボイ指輪全部と交換でどうだ?」

「またまたぁ!」


「いいだろうが、良い取引だと思うぞ」

「ほんとにいいの?」


「あぁ、間違いのない奴が使えたらいいのさ」

「ありがとうございます!」


指じゃ無くてシェルのチョーカーに通してもらった。


(シェルが上がったりして(笑))

(アル様が上がってますから大丈夫ですね)

(良かった。指に宝石だと悪趣味になりそうで)

(アル様のご友人本当に悪趣味ですね(笑))

(そういうのがカッコイイ時代が有るのよ)

(穢れの指輪を選ぶのがそもそも)

(それあっちでは穢れじゃないのよ)

(え?禍々しいのに!)

(それがあっちはカッコイイの(笑))


「おいおい!それ切れないのか?」


「絶対切れないです、魔力が無くならない限り」


「それ魔道具なのか?鑑定できねぇぞ」

そりゃ人好き精霊の王様だからな。


「アル坊主は、護衛以外何してんだ?」

「冒険してますけど」


「冒険?・・・プッ!」


「あ!噴いた!何それ?」

「いや、こっちの話だ」


視たら娼館を冒険してる奴を思い出していた。

冒険しすぎてFBIに連れられた宇宙人みたいのと冒険している話が視えて「プッ!」と俺も噴く。


「どこを冒険してるんだ?」その質問!


「大森林でオーク狩ったり」娼館に置き換えるな。

「オーク?肉のだよな」娼館のオークじゃねぇよ!


もう視ない!視たら負けだ。

南方のオーク体型のご婦人視せられると耐えきれない。


「はい、です。こないだ上位種と変異種狩りましたよ」


「お!ヤルじゃねぇか、それなら冒険してるな」


「してますよ!もう2位になりましたよ」

「え!何処のギルドだ、半年前5位って言ったよな」


「普通の冒険者ギルドですよ」

「4位と3位はいつなったんだ(笑)」


「なってませんよ5位からいきなり2位です」

「本当かよ!魔石で買ったのか?(笑)」


それは酷い、でも分かるわ(笑)


「本当ですよ、ホラ!」ゴールドプレートを出す。


鑑定している。


「鑑定しないで下さいよ!」

「俺の鑑定は鈍って無いよな?」


が言いやがった。



「ベガ!表へ出ろ!(笑)」




次回 201話  裏の皇帝

--------------


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               思預しよ

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