第198話  Tie a yellow ribbon


5月12日。


お兄様とアインの帰郷パーティーにお呼ばれした。


今日は良い天気!外なのでメイドが少し早い夏衣装になっていた。頭に被ってるボンネットも日除けのひさしが付いている。


メイドの服も語って無かった。

(198話目かよ!アル蔵の心のツッコミ)


冬はブラウスに濃紺のコルセットドレスとエプロン、防寒ズボン、フェルトのボンネット(フリル付きベレー帽を深く被る系)


夏は7分袖ブラウスに薄い辛子色のゆったりしたドレスエプロン、レースのボンネット。夏の外では、大きなひさしの付いたレースのボンネット帽子で、庭の作業ならあごの紐をキュっと締めて顔全体がレースに隠れるようになる。

今日はひさしの広いボンネットだ。


あっちの違う職業の魅せるメイドじゃ無い、ホワイトブリムとかニーソにミニスカのメイド服無いから。俺だって正直言ってアイマスのメイド服とか着せて萌え死にたいわ。しかし言っておく、ロッテンマイヤーさんに着せたいと思うのは間違ってる。お茶くみだけならあれでもいい、夏なんか腕まくりしてクリーンの粉とかチリ取りで集めてるんだぞ、かぼちゃパンツドロワーズのお尻見えちゃうぞ。ロッテンマイヤーさんの。


すまん、あっちの世界に旅立ってた。



俺と3人はジュース、お茶、酒、お菓子の係で取り皿の近くの机にしてもらった。今回は人数がこないだの1/3以下なのでアイスクリームのお代わりがある。


ゲストで呼ばれるってメチャ気が楽だ。


アインが挨拶に来た。

「アル様、お久しぶりです」

「領地の任官おめでとう!おかえりなさい」

「ありがとうございます」


「アイン。凄く大きくなって遊んだ頃と大違い」


「8年前です。お互いに大きくなってます(笑)」

「うん、マーフと王都で暮らしてたんだよね?」


「そうです。アル様に会いたがってましたよ」

「え!ほんと?」


「バラライカを頂いた時色々聞いて心配してました」

「ホント、色々あったからね(笑)」


一時期不吉だからと継承順位破棄とは言っても廃嫡とはだれも口に出さなかったほどデリケートな問題だったのだ。貴族の廃嫡は健康だった場合、マジ家を出される勘当だからだ。


わざわざ口に出さずに話を流す。


「こちらは僕のPTメンバー。冒険者やってるの」


「聞きましたよ。なんですか!無役の騎士爵で冒険者って!聞いた事無いです!そんなのありえないでしょ。騎士団で一緒にロスレーン守りましょうよ!(笑)」


「(笑)・・・」


マジ何も言えん。ロスレーン騎士団の給料もらって、領地守らず冒険者って遊んでるそのままだ。


「こっちからアルムさん、お姉さんのクルムさん、あと同じ年の魔法使いのシズクだよ」


「美しいお嬢様方。アイン・オブライエンと申します、今日はパーティーにお越し下さりありがとうございます」


皆が席を立ってドレスをチョイとやって会釈する。


グレンツお兄様が微笑みながらこっちを見てるが、もう皆には挨拶終わってるから来ないな。


少ししてお爺様が皆に挨拶をした。


「堅苦しい挨拶は抜きじゃ、グレンツとアインが帰ってきた。大人になった顔を覚えてやってくれ。めでたい報告もある。相手は第三騎士団のチャック・セバストンじゃ。こっちも皆で十分に祝ってやってくれ、以上だ。シュミッツ、ジャネット。後は頼む」


お兄様とアインがお辞儀の後に、メイド達の並ぶ中からセリーナが一歩出てお辞儀をした。


ボンネットの後ろからのぞく髪はワンテール。尻尾にチョンと黄色いリボンが結んであった。見覚えがあった、結婚式のリリーさんがベールの後ろに編んだ髪に黄色いバレッタ髪留め


幸せの黄色いリボンだった。


メイド達の顔にワッ!と華が咲く。

騎士からの求婚は夢物語だもんなぁ。



そんな喧騒の中、馬丁が馬の鞭でハエを追う。


師匠もリリーさんと来てたので冒険者2位のタッカートと言う75歳の傭兵を知ってるか聞いたら、俺の師匠より10歳以上も上の傭兵なら、名前は知らずとも見たら確実に分かると言う。そこらじゅうの紛争地で俺の師匠を見たなら一流の傭兵だと言った。


言いながら師匠のエール(ビール)が止まらない。オーバン家のメイドのルナとうちから行っているアリエラに焼いてもらったピリ辛食ってプハー!っと飲みまくる。


メイド二人も焼きながら一緒の席で食べている。

この家師匠もリリーさんも元平民だから楽だよなぁ(笑)


前回でピリ辛の肉の味を知って皆が壺に集る。お爺様もお父様もピリ辛を焼かせている。


今回は調理長が卵と小麦粉でピリ辛を油で揚げる。セセリの唐揚げなんて最高!冒険号コレクションに是非欲しい逸品だ!ヨージ鳥の唐揚げをポテトフライと一緒に出してもらった。


揚げたてのヨージ鳥バスケットにキンキンのエールだ。唐揚げにハイボールも良いけれどエールだって負けてないぜ。


俺は料理長が作った料理を一品ずつ食い物冒険号に持って行く。絶対コアに観測してもらう!


周りを見ると・・・

メイド服で焼肉焼いて、メイドが自分で食ってる絵が変だ(笑) うちの3人娘もドレスで肉焼く。クリーンが無いと絶対無理だ。


良い陽気の中の焼肉は陽がキツイかなとも思ったが通り抜ける風が陽当たりの火照りを取ってくれる。ホント美味いわ。オーク肉なんてトントロみたいに油ジュウジュウで塩コショウが合う。普段一切飲まないのにエールが進む。


俺も皆も酒が回って、何を話しても良く笑う様になってる。


お父様が来たと思ったらと言われた。と言いながらミニチョレスを出して腕輪の伴奏の中、主役の前で陽気な讃美歌を弾いて回る。


手拍子が入り皆が歌いだす。

4曲もやると酔っぱらったお爺様とお婆様。お父様がお母様と踊り出す。皆が手拍子で歌って笑いあう。ダンスを止めたお爺様とお父様がふーっと席に着いたのを機に5曲目を奏でる。


最後は皆の知らない曲。伴奏も無い独奏

共鳴箱に反響魔術紋を仕込んだ特別な音色で皆が???と思う曲を弾きながらセリーヌの前まで行って弾いてやる。


皆もその意味が良く分かった。

異世界でも関係ない、そういう曲なのだ。



愛のオルゴール。


・・・・


冒険号に帰ってコアに料理を観測解析してもらった。


料理長が朝焼いたロールパン、とクロワッサン、パンケーキ・バニー焼きのボタンが増えた。


サワークリームのエビサラダとキラーバイソンのステーキ、オーク焼肉、ヨージ鳥のピリ辛壺漬け焼きのボタンが増えた。


ヨージ鳥の唐揚げのボタンが増えた。


食べ物冒険号は順調だ。



・・・・



翌日の朝。


教室が終わり次第、全クランメンバーの集会を行った。新しく入った60人を紹介して言った。(外部PTの奴も折角だから参加しろと無理矢理先頭に並ばせた)


「肉を沢山取ってきた、と言いたいところだが沢山いるからな。800人が晩に一斉に肉を焼くとエライ事になりそうだ!そういう事で3つの組に分ける」


「この列からここまで1組!肉が食いたきゃ18時に集合」


「ここから2組、明日雨なら晴れた日の18時に集合」

「ここから3組、2組の後の晴れた日の18時に集合」


ドンドン説明していく。


「飲み物やサラダやパンが欲しけりゃ早めに上がって買って来い。肉貰ったらすぐ焼ける様に準備してから来いよ。


教官は家族も居るし、いない奴は生徒とやれ(笑) 18時に来たらキラーバイソン・ヨージ鳥・オークの3種で一人3kg以上渡せるはずだ。最上級の肉だぞ!


教官や事務員はその3日間なら食う分だけ取りに来てもいい。


1組のPTは食いきれなかったら、2組か3組のPTを誘え。どうせ食えない量だ。今から各組のPTで打ち合わせしておけ。6人PTなら18kg以上の肉だからな。たらふく食って体を作れ。


晴れた日にエール飲みながら焼くと最高の季節だ。昼から雨が降ったら翌日に順延するぞ。


エールだけは管理塔の前でうちのメイドがギルドと同じ値段で売ってやる。樽で買ってくるのも大変だからな(笑)


あとうちは岩塩採掘してるロスレーン家だ、岩塩ならたくさん出してやるから買ってくるなよ。買うなら儲けて胡椒買って来い」


「以上!解散!」


ギルドに行って4~500人で酒盛りやるのでエールを樽でどれぐらい要るか聞きに行ったらギルド長が出てきた。酒の手配でと言う。


エールはと言っちゃったからもうダメと言うと、その3日間は酒が凄い量売れる筈なので、出張販売してくれることになった。エールと飲み物の樽だけで馬車2台出してくれると言う。


マジでそんなに飲むの?と目が点になった。


「ギルドのエールが無くなりません?」

「見せてやるか(笑)」


ふふんとギルド長が不敵な笑い。ギルドから1km程行った大きな建屋に案内された。


「これが3万人の飲むエールビール醸造設備じゃ(笑)」


「・・・」


5m程はある巨大な寸胴が廊下の横にビッシリ並ぶ。

エールの釜にまるで家の塗り替えの様な足場が組んである。途中までの寸胴には加熱の魔法紋が刻んであった。俺が大きな釜の前を歩いてるとまるで豆粒だ(笑)


この世は麦から出来る小麦粉で出来るパンが主食だ。


麦芽の粉砕機で大勢が働いてる。原料の加工工程によって通路が出来て大きな部屋ごとにエール(ビール)の仕込みの工程別になっている。部屋ごとにギルド長が案内してくれる。


こんな感じだった。


・釜で粉砕した麦芽をいれて麦汁を作ってる。

・釜で温度を調整して香草やハーブを加えて煮沸してる。

・冷却槽で煮沸した透明な麦汁を発酵温度まで冷やす。

・酵母を加えて「若いエール」を作りだす。

・貯蔵タンクに入れて寝かして熟成させる。

・熟成過程で季節や温度管理を踏まえて熟成時間を見定め、品質の揃ったメルデスエールが出来る。


樽詰めして出来上がり。

香草とハーブを入れて香りと味付けする時に代わりにホップを入れるとお馴染みの地球のビールらしいがホップでも香草でも俺には正直あんま分かんない。


ギルド長の流暢な説明と見上げるような釜達に脱帽した。酒の蒸留器や貯蔵タンクの様な発酵して気圧が掛かる容器の不具合をドワーフの職人に伝えると、我先に作りに来てくれたり治しに来てくれるそうだ。


酒が無い人生のつまらなさを大いに語って直してくれるらしい。


あっちの世界でも知らなかった知識が増えてしまった。やるじゃん!この世界も!まだ時間じゃ無いが乾杯したくなった。


と思ったらギルド長が品質管理じゃと一杯注いできた。受け取ってそそくさと建屋の影まで二人で来る。


二杯をキンキンに冷やして乾杯して飲むと作り立て美味い!最高! エール(ビール)は作り立てを飲む事を推奨する!アホみたいな事かも知れないが発酵するとマジでシュワシュワ(笑)


このピリ辛が美味しいんですよと冒険道具を出して、携帯かまどの上で火魔法でGO! ウマウマと二人でツツキながらのエール最高! 俺は連日何やってんだ(笑)


「ちょっとこのままで・・・」


視たらギルド長が2杯目貰いに行ってた。

隠れてサボって昼酒って最高やな、二人でもっともらしいギルドの話題を話しながら手は忙しなく動いて肉を焼く。ピリ辛を冷えたビールが心地よく流し込んでくれる。火照った喉に心地良い。


「プハー!たまりませんね!(笑)」

「たまらんの、やめられんわ(笑)」


エール3杯ずつ飲んで帰って来た。


3杯目の時、さすがのギルド長も目が泳ぎながら注文していた。


エール工場で注文してる事が可笑しいわ。

焼肉してる時点で可笑しいな。また連れて来てもらおう。


・・・・


クランに着いたエール馬車。


ギルドの御者と売り子の目が点になった。


アルムさんとクルムさんはギルドの馬車が着き次第にエールをキンキンに冷やす。


人。人。人。800人近い人が調理棟のかまどを中心に入り乱れる。何処の町のカーニバルだ、と言う位だ。


気の早い奴は14時頃からに待機していたらしい。誘い合えと言ったら、みんな誘って結局全員揃ってる。


並ぶPTリーダーをリナス(34)が名簿でカウントする。


ルミナス(28)マイア(18)とエレクトラ(18)カレン(9)の4人の事務員がPT6と申告して俺の所に連れて来る。


鍋を持って来たらドサドサと肉を出してやる。

最初は鍋に入りきらなかったが、誘った他のPTの鍋や釜を持ち寄って6人PTなら20kgずつ盛って行く。メガ盛りだ!


飴屋のお婆さんヘーゼ(56)がと鍋を持って並ぶのでピリ辛の美味しい所を付けてやった。


ミッチスのアンリ(20)が女子5人男子2人夕食分と鍋持って並ぶ。アンリそう言えば夕食当番で皆に食わしてるわ。


キツネのマル(41)が獣人4人分と来たので20kg持たせてやった。獣人らしく死ぬほど食え!※獣人だからって肉を山ほど食らう訳ではありません。ミッチスでパンケーキも食べます。


事務員たちもPTのチェックが終わると人数と量を言ってもらって行く。教官たちは気の合う同士でかまどを囲んで焼いている。


店長:ポンス(51)は串焼いて売りモノをエール飲みながら仲間と食ってる。串屋:ロスダン(35)とタッカート(75)夫婦が一緒に焼いてエールを飲んでる。

ポンスしか来てないから、このメンバー3日やるつもりだ。


人がグチャグチャすぎて掻き分けるのが大変だ。眼だけ飛ばして皆の笑顔だけ視せてもらった。


アルムさん達が何樽ものエールと蜂蜜酒を始め飲み物を冷やし終わったら、4人で北東ギルドの大食堂でスパゲティープレートを食ってハウスに帰ってきた。


翌日の朝、クランに行くと朝からエール売ってる(笑)

また今日も18時に来てねとお姉ちゃん達に3kgずつギルドに返す。


焼肉で800人が朝までエール飲むと馬車が3往復したそうだ。


いつまで経っても終わらず。かまどの前で寝る奴続出。



朝5時40分のチョレスで地面から皆がヨロヨロ起き出す。

「手前ら水浴びてシャキッとしろー!」と怒鳴り倒す。


後ろ姿に「!」と追い打ちを掛ける。


読み書き教室は1/4の生徒しか来なかった。肉を食いまくった子供達は天元突破で元気だ。


キャプターが頭押さえながら生徒に教える、普段飲むのに珍しいなと視ると、クランメンバーの女性陣や事務の姉ちゃん達に肉焼いて貰ってだいぶ飲まされたみたいだな、キャプターモテ期か?インテリ系冒険者はモテる。メモメモ!



今日もいい天気だ!


ハウスに帰る途中でバゲットや卵の入った藤のバスケットを持つクランメンバーと何人もすれ違った。視ると朝食のメニューでゴロゴロ肉の入った野菜スープとか考えてる。女の子いるといいよなぁ。


一日目の朝はそんな感じだったんだよ、良い感じ!


そして、そう!二日目も三日目も晴れだった。


一日目で味をしめた外部PTメンバーはギルドで喋った。


「お前たちも行けば食いきれない美味い肉が貰えるから俺達を誘ってくれ!」


合言葉のように二日目、三日目と増えて1000人突破した。

丁度2000人まで増設してた調理棟のお陰でパンクしなかった。


昼は狩り、夜は焼肉大宴会でメンバーは朝まで地面。


メンバーがもう肉は当分いい。と言うほど食った。


クランで語られる伝説の3日間となった。


この季節の一年一度だけだ!風紀が乱れる。


さすが白夜城のギルドだった。二日目は売り切れ時間を見越して交代のエール馬車が来て待ってたそうだ。売り子は深夜交代で朝までエール売っていた。



うちのクランで焼肉無料のビアガーデンは危険(笑)

ギルドで高値で売れる肉。そして肉の食べ放題なんて経験が無いからみんな動けなくなるほど食っちまう。12歳から21歳位までうんうんうなる程食って朝まで転がってる。


身体が欲しがってるんだよ、転がってたらいいさ。




次回 199話  魔物の生命力

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