第194話  パワーメイクアップしない


5月に入った。


読み書き教室の後、月初め1日の恒例で全員集会をやった。身体強化を覚えた奴が2人出て来たんだよ。恩寵を教えた魔鉄5位の先輩メンバー2名を演台の前まで呼び出し、褒めて皆の前に掲げる報奨金を渡してやる。今月は師弟の申請が増えて泣き叫ぶ奴が増えるだろう(笑)


報奨金を渡した後には、いつもの集会と一緒。最近クランで気が付いたこと、注意事項を述べた後に>稼いで来い!と叱咤激励しったげきれいするだけだ。知らずに見たら山賊の集会か、三国志の義勇軍かというぐらい武具がたち。


6位と7位の鉄級、紙級・・・中学生位の男女がめいめいに考えた武具を付けてるんだよ、鉄の冒険鍋かぶって取っ手の穴にあごひも通してたら可愛いんだよ(笑) 誰も笑わないし皆が可愛いと思ってる、このクランの魔鉄5位の奴ら(17~21歳位)はその年代に通って来た道だからだ。一緒にいるだけで同じ仲間がいたら安心するし応援もする。


・・・・


クランから帰って朝食を取っていると、ハウスの前に立派な馬車が停まったよ!とクルムさんが食堂に入って来る。


何処の貴族がお客に来た?とワタワタした。


出てみるとミウム辺境伯からの使者だった。口上を聞くとキャンディルム伯への使者である。


すぐに起こして来ますと返答し、応接でお茶の接待をクルムさんにお願いした。


慌てて聖教国に跳び、すでに研究室の一部が導師の部屋になっているので部屋に掛け込むと魔法具を持った導師が慌てて振り向いた。


「導師!」

「アルか。なんじゃ朝から」


「ハウスにミウム辺境伯からの使者が来てキャンディルム伯を呼んでます(笑)」


「なにぃ、何じゃろな?」

「多分、私に用かも?」

「?」

「ミウム拍は大叔父に当たるのです」

「そんな縁があったのか?」

「お婆様がミウム伯の妹なのです」

「え!そうなのか(笑)」


何か取り出して見ている。


「確かに!ルシアナ殿は前ミウム伯の次女じゃな」

「何です?」

「去年の物じゃが貴族名鑑じゃ。お主知らんのか?」

「初めて見ました」

「ばかもん。普通の勉強もせい!」

「はい」


しゅん・・・


「じゃないや!顔洗って下さい(笑)」

「そうじゃの!(笑)」



・・・・



導師がさも起きてきた風に応接で使者の書状を預かる。

アルムさん、クルムさんはキッチリと導師の後ろに立つ。


導師が書状を開封し内容を読む。


「アル、明日の予定はどうじゃ」

「空いておりますが?」

「演習場を有益な施設に変えたとメルデスの代官から聞いてミウム伯が視察に来たいそうじゃ」


何処どこからでしょうか?」

何処どこからとは?」


「朝は6時から読み書きを教えているのです」

「朝から行っておったな、そうか・・・」


「ここを何時に出ておる」

「5時半ですが」


「早いのう・・・御使者殿、聞いた通りじゃ。最初から見るのならば5時半にこの屋敷に馬車を回すようにミウム伯にお伝えくだされ」


「あ!それと、今は700人を超える若い冒険者が暮らしております。皆平民か貧民だった者達です。大貴族の視察となればギクシャクして逃げかねません。視察を知らせずそのままの状態を見て頂きたいのです。朝食はこちらで相応しい物を用意させますのでお付きの執政官にもお伝えください」


ミウム伯一行は8~9名になると使者は指折り教えてくれた。


「仔細は承知したとミウム伯にお伝え下さい」


使者は帰って行った。


「導師、さっきの貴族名鑑は何処で売ってます?」

「貴族院じゃが、その年の叙爵じょしゃくを元に半年程して貴族家に届く。領地が遠いと12月頃じゃの」


「家にあるんですね。知りませんでした」

「去年のじゃがこれが最新版じゃ、これをやる」

「良いのですか?」

「貴族家が頼んだ部数しか送って来ぬ。街の代官は必ず持っておるしロスレーンはただでさえ街が多いじゃろ(笑)」

「あはは」


喋りながら貴族院、コルアーノ王国騎士団の項を見ていると第三騎士団にグレンツお兄様とアインの名前が載っていた、ロスレーン伯爵領 嫡子って書いてある!すごいや!


「儂は、明日の朝ミウム伯にお会いして礼を述べたらご無礼するからな、後はお主が上手くやれ」

「はい」


「それでは儂は・・・」

「待ったー!」

「何じゃ(笑)」


「こないだ会った、人間の味方をした方々とお会いしました」

「なんじゃと!アレと会えたのか?」

「味方をした方の家があります。行きますか?」

「おぉ!行こうではないか」

「味方をしてくれた方は亡くなってましたが、精霊の様な者が今でも家を守っていました」

「そうであろう、あの尋常ではない魔力じゃ」


うちのPT3人と導師を連れて行った。


「ここがご主人の家ですね。主は亡くなっています」

「ニウは知ってるよね?神殿にいたベント導師」

「コアもニウからうかがっております」上手いなお前。

(お前を真似てんだよ)


「導師、コアとニウです」

「コア殿とニウ殿、ベントじゃ、よろしく頼む」


「アル様のお師とうかがっております、よろしくお願いいたします」

うかがってない、アルの記憶観測しただけ)


「先史文明の生き残りの具現化した精霊と思って下さい」

「本体があの密な魔力なのじゃな?」


「そうですそうです!そっか導師は見てますよね。うちの3人は見て無いので分かって無いんです(笑)」

アルムさんが分かってるわよ。と言う顔しても無駄だ。あんたが一番分かってない。


「主人の家に付くとはのぅ」部屋を見渡す。

感慨深げだがそれは違う。家と一緒に作られた(笑)



「導師!こっち来て、美味しい物があるから」

「ん?何じゃ」

「先史文明の食べ物!」

「ほう、興味深いな」


じじいなので変な味の炭酸コーラは避けてミルクティーを出したら、甘くてとろける様な茶と喜んだ。

こういうのは当たりだ!お茶とミルクと砂糖。ニウが観測出来る物は間違いなく当たる。


「先史時代は流石に酒は無いようじゃの?」

余計な事言った。


「なんかこう、貴族の食事の様に洗練されておらんの、露店で平民が食べておる一杯幾らの雑炊みたいじゃ」

自販機の絵を見て。正解で唖然とする。


コアがなんか表情キツクなった気がする。


起き抜けなので胃に優しい?と天ぷらうどんを押した。

味は試行錯誤したらまで進化した、食べられるのだ(笑)


天ぷらのかき揚げは野菜を千切りで小麦粉で揚げてるから本物を観測している。

昆布と干物でうまみ成分の出汁を取って塩で味付け。こっちの実物を観測してうどんのつゆを予測合成してるが、俺には魚のアラで作ったうしお汁のうどんでもエルフは美味いと喜んで食べるのだ。


マテ!なんで光のランプが降りて来る。これあっちの世のじゃねぇか!即時出てたのに何で遅くなってんだよ!あっちをリスペクトして風情は出てるけど・・・まぁ、それはそれでいいか(笑)


(その結論に行きつくアルの思考論理を予測してるの!)


30秒ほどして、下の口からドンブリが出てきた(笑)

やってんじゃねーだろうな。



「これは美味いのぅ!さすが先史文明じゃ。コースではなく、この様に一品の味を追求し上品に高めておるな?」


日本のうどんを知らないと先入観無しに美味いのか!


「・・・」何も言えねぇ。


コアが満足そうに頷いている。思考錯誤してるしな。


一々検証しながら、自身の感じた事、見習うべきことを研究者らしく述べて行く。述べるのは良いけど後が怖い。


うどんの後にみたらし団子とが似合うガンダルフ。伯爵が美味しそうに団子を食す。


名前はみたらし団子だが、ので大豆を粉に引いて砂糖を混ぜてまぶした団子にしたら普通のきな粉団子で美味しくなった。


きな粉で手が汚れるとコアがすぐに濡れた手拭きを差し出す。タイミングが凄くてホント笑える。クリーン使わせない程だ。


みたらし団子とポテチを持たせた。お土産で持たせる中では唯一の当たりでそれ以外は突飛過ぎてお土産で持たせられない(笑)



導師にも訳して聞かす。


じゃがいもの素揚げ。岩塩風味。 新じゃがいもです。



・・・・



導師が聖教国に帰り次第にハウスに跳んで明日の用意を始めた。


「3人は俺と一緒の冒険者PTでミウム伯に紹介するけど、みんな貴族風の平服でお願いね。あ!クルムさん貴族の平服みたいの持って無いよね?アルムさんの借りるか、無かったらロスレーン・・・」


「あるわよ!東町でアルムと作ったじゃないの」

「あ!あの時作ってたの?アルムさんさすが!」


「ちょうどアル君の褒章の後だったからね、アルムも初めて貴族服作って貰ったからドレスも一緒に作ったのよ」


「よかったー、後で実家から馬車と馬持って来るね」


「馬車はいいわよ。今日お屋敷持って来るんでしょ?お昼にはみんなで荷物持ってクランハウスで待ってるわ」


「それなら要らないね、馬丁も借りようと思った(笑)」

「新しいお屋敷で初めて泊るわよ!」嬉しそう。

「それでは、お昼頃お屋敷持って行くね」



・・・・



食べ物冒険号に跳ぶ。


ニウとコアに仔細しさいを説明し、クランにお屋敷を持って来てミッチスのパンケーキセットでミウム伯に朝食を考えている事を伝える。


ニウがこんな感じ?と2人の執事が現れる。

コアは6人のメイドを作り出す。

何も言わなくても予測してるのを実感する。


「うん、年代も丁度いい。一番下の子の設定は何歳?」

「17歳です」<「うん そんな感じだね」

「執事も一番下を18歳にしようか」

「畏まりました」


メイドはコア(25)のメイド長から年齢順で名前と身体情報を記憶してくれるかな?

マーキュリー(22)ビーナス(21)アース(20)マーズ(19)ジュピター(18)ルナ(17)ね。

「かしこまりました」


執事長ニウ(26)から年齢順に名前と身体情報を記憶してね。

フォボス(20)ダイモス(18)ね。

「かしこまりました」


「紋章腕輪はアル様の家紋でよろしいですか?」

「そうして!何から何までありがとう」

(アルの将来の気付きを予測している)


この子達、名前だけ戦隊みたい。

太陽系惑星の名前を直接は安易過ぎたかな。

パワーメイクアップしなくてもメチャクチャ強いよなぁ。


元はあのミノと一緒だもんなぁ。



・・・・



ロスレーンに行くと王都から帰る家族の先触れの騎士が着いていた。今日の朝ロストを出て晩に帰って来るそうだ。

(貴族馬車は軽いので荷馬車の3倍速い)


三月の下旬に王都から帰って来ているお爺様に会ってメルデスを視察に来たミウム伯が、明日演習場にも視察に来る事を伝えると、王都でも演習場のお礼を言ってくれていた。


ミウム伯の演習場視察の用意があるので今日は帰れないと謝っておく。視察の朝が早く、ミウム伯を朝食に誘うので屋敷を持って行く事を伝えると、ミウム伯一行もあの屋敷なら納得するだろうとお爺様も賛成してくれた。


屋敷に納得なの?と視たら、視察中の宿や外食や休憩は執事長が全てコントロールするらしい。急な予定変更や爵位に相応しくない場所や食事は執事長にとって様だ。


そんなの学院行ってないから知らないよ(笑)

でも王都行く時、シュミッツが必ず付くのはそれだな。



・・・・



明日の行動予定をまとめて順路に沿ってクランを歩いていく。


朝の教室を見てもらって、途中の管理棟の壁面にある名前札を見せて教官と事務員以下の構成員を説明する。


和やかにクランハウスにご案内。

12月から4月までの実質的なギルドでの収入の変化(税収の変化)を報告して有望な冒険者はメルデスの支援を得てギルドの研修に送り込んだ話に繋げていく。


冒険者収入の伸び(税収の伸び)=クランの収入とを折れ線グラフで描いてミウム伯と代官の前に置けばいいな。


同じ様に収入に対する支出の伸び(教官の数と棒給)をグラフに対比し健全な運営がなされている事をアピール。



リナスとルミナスを呼ぶと事務員が全員寄って来た。


ざら紙に帳簿の〆の月収支の数字を書き込み、リナスとルミナスに棒グラフの見本を見せる。出来た棒グラフの頂点を結んで収入と支出の折れ線グラフを3枚作る様に指示しておく。


俺が見ても右肩上がりの素晴らしい収支グラフが出来上がる。ルミナスはギルド嬢で経験も長く、書いてる最中にグラフ表示の意味を理解してその様な表示方法がある事を驚いていた。



冒険者ギルド長から有益性を報告されたメルデスの代官がクランに研修所の補助金を出したのだ。顔を潰すわけにいかない。


例え、カレノフ様(ミウム伯)の又甥またおいに対する忖度そんたくであってもその辺はキッチリしないとな。


税収で領は運営されてる。そういうのが一番大事なの。領が良く治政ちせいされて富む事が貴族の誇りだ。



クランで説明が終わると大体7時半、それから屋敷で食事だな。

それ位から演習場で鍛錬とかアスレチックでサーキットトレーニング始めるだろ。そっち向きに食堂をセットだな。



・・・・



食堂の窓からサーキットトレーニングが見渡せるように屋敷を配置した。食事後に話に詰まったら2Fのコテージに案内する。


食べ物冒険号からニウ以下2名の執事。コア以下6名のメイドを連れて屋敷に跳ぶ。


跳んで来たらアルムさん達が屋敷に向かって来るのが視えた。


執事とメイドが揃った上で3人をお出迎えた。

「何!アル君すごいじゃない!」

「伯爵様が来るから借りてきた」

「凄いよ、本当のお貴族様だよ」

「ニウとコアに執事長とメイド長をお願いしたの」


3人に新しい執事とメイドの皆を紹介する。


ここがアルムさんの部屋。今と同じ位置でいいよね?

ここがクルムさん。今と同じ位置で研究室広いよ。

シズクは鉢の小壺を応接の出窓に置きな。


皆の部屋を割り振ると執事とメイドの数が部屋数とピッタリだった。あ!部屋数知ってるわ(笑) 執事長とメイド長までこの部屋かよ。生体ロボみたいなもんだから気にしないのかな。


アルベルト邸。

https://gyazo.com/3083c68985f085ab4e23f4632430e76c


4人で弁当を食べるが、横目で見てたらメイド達が普通にクリーン掛けている。


えー!ナノロボットのメイドが魔法使ってる。

聞くと科学的に解析し発現していると言う。魔力食って魔法出すロボットって(笑) 何でもアリか!


怖くなって、お屋敷にいる時は水を飲んだり食事を取ったりトイレ入ったりするように言っておく。その辺で無言のメイドが魔力線で通信するのが見えて何とも言えん・・・


コアは有機物の燃料だと効率が悪いので魔素の直接摂取を推奨と言ったが、屋敷にいる時はダメと言って、全員に弁当を食わせた。


ニウとコアにマジックバッグとお金を持たせる。


何かもてなしに必要な物を揃えてと言うと、すぐにスッと近寄ってきたメイド(ルナ)にお金とバッグを持たせる。


「ちょ!魔力認証を・・・」

「全員同じにしております」

「・・・そう・・・」


メイドが出て行った。お互いに無言だよ、喋って無いよ。魔力線で通信してるよ。不気味だよ。


「誰かいる時は止めてね。ちゃんと名前を呼んでから

とお願いすると「当然です」と驚かれた。オイ!大丈夫か。


※アルを観測して時間の無駄を省いていた。アルが周りに何も説明せず、時間短縮で解決に動く思考論理と一緒の行動を取っている。(置いて行かれる者は何やってるか分かんない)



ニウとコアを連れてミッチスで明日の7時半に23人前のパンケーキセットを頼む。パンケーキの横にバニー焼きも一切れ付けてと指示する。この格好をした執事とメイドが取りに来ることを伝える。


3台分の厩舎と馬車スペースをクランハウスの横に建てる。

これなら20人来てもOKだ。


一緒にお屋敷までの道を石畳に変えておく。


屋敷に帰るとテーブルクロス、カバー、カーテンと仕舞った倉庫から出して準備されている。スゲー!


日に焼けるので倉庫に仕舞っていたのを出している。いや出さなきゃダメなんだけどさ。ホント俺って貧乏性だよなぁ、コアに負けた気分。



やっていたらルナが花を買って来た。


イヤ、俺じゃ気が付かない。負けている。





次回 195話  カードキャプター

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               思預しよ

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