第191話 超先史文明の使い方
4月22日。
エルフ村からクルムさんを連れて帰って来た翌日。
ハウスに帰って朝食を食べながら伝える。
「クルムさん3日間頑張ったから今日と明日はお休みね」
「いいの?」
「いいよ!3日間朝から晩までやってたんでしょ?今日は光曜日で休みだし、2日ぐらいゆっくり休みなよ。クルムさん居ない間に神聖国の布教は終わらせたからね(笑)」
「3月で2年と言ってたのが終わったの?」
「うん、まだ神聖国に報告してない(笑)」
「なんで?」
「僕が暇になったと思って何か言われたらイヤ!」
「「(笑)」」
「アルは働き過ぎよ!ゆっくり生きなさいよね」
「そうだよ!アル君は働き過ぎ!」
「クルムさんも休みにするとパンやお菓子作るくせに」
「あれは、心が豊かになる
「そういう事で!僕は遊びに行きます」
お茶も早々に施設(母船)に跳んだ。
・・・・
休眠装置の部屋。
「ニウー!」
(ここにおります。アル様)
ランプの精みたく煙が集まるように現れる。
「今日は5時間かな?」
「4時間20分程かと、大体その位です」
「お昼までに終わっちゃいそう(笑)」
「誤差はありますが・・・」
そそくさと休眠装置に入りながら聞く。
「そんじゃ、よろしくね」
「はい、アル様」
交感会話状態にすぐ引き込まれる。
ダンジョンの具現化型と実体型。
具現化型はナノマシンの組み換えで、役目を終えると密度を薄くして消える状にしているらしい。
ドロップはそのままマシンの組成を鉱物原子に変えて?原子(分子)の組み換え?で高分子結合強度を調整。ミスリル、鉄、銅、オリハルコンを組成し色々な武器にしているみたいだけど難しすぎて理解できない。
実体化型はそのままバイオマシンの有機分子結合でそのままのモンスターを実際に作り上げている。
人が色々な細胞で内臓組織を作るのと一緒で、バイオマシンが有機物の組成(多分分子の組成から作り直してる)を作り出して?臓器から骨、皮、肉を作り出す。
持たせる武器は鉄組成のドロップアイテムと同じ要領みたい。
驚いたのはダンジョンの装飾だ、岩肌あり、土穴あり、大理石あり、石畳あり。鉱物資源(元素)を使って分子レベルで作り出す高分子結合だ。
全てに原子、分子、ナノマシンの話が出て来るから、そういう小さいレベルで組み替える事で物質を作ってるみたい。俺の知ってる科学は物質変化には必ず反応式って物があって任意の物質は科学反応式による化学変化で作られる。
今語られたのは一切反応式って物が無かった。ナノマシンの集合後のナノロボットの高分子結合は化学式じゃ無い。高分子結合した後にナノマシンとして散って行くってなんだ(笑) それは鉄の塊が元素Feで散って行くって事だぞ!
疑問を聞いても意味不明で理解出来ないって凹む。
船がマントルまで達した地熱は1500K(約1200℃)星が出来た当時の熱が6200℃でその熱は未だに星の核に残っていて、地殻に熱伝導冷却されている。
科学進化の順序として核燃料はマントル以下まで達する穴を掘る科学が発達して手にするらしい。マントルに核廃棄物を放り込めば星に還る。
この星は出来た当初は1日が6時間だったそうだ。
出来た当初は星がグラグラ煮えたぎる粘性流動体だったらしい。
余りに公転角速度が早すぎて、遠心力で最初に小さい煮えたぎる塊が宇宙に飛び出した。それで質量が少し小さくなり1日が8時間に。そこで大質量が飛び出した。これはあっちの世界の月と同じ様な質量だ。
当時の地軸は恒星に対して直角で赤道付近が灼熱し、赤道以外は高粘性の関係で飛び出した大質量の粘性に引きずられる格好で地軸が傾いた。
地球の月を検索した。
捕獲説:月は地球に捕獲された説
分裂説:月は、地球から飛び出してできた説。
双子集積説:月は地球の回りで、地球と同時にできた説。
巨大衝突説:(原始地球)に、天体がぶつかってできた説。
※地球では巨大衝突説が有力らしい。
この星は分裂説そのままだな。
その衛星の引力とこの星の引力が作用し、また公転速度が落ちたために1日が24時間になっている。
余りにも地球と似ているために法則でも有るのかと思ったが特にその辺の情報は入って来なかった。
この星の地軸は北と南の極点を中心に22度の傾きを持って自転し、先述の星から飛び出した2つの雫が天空に有る。
未だに国によって名も統一されてない二つの衛星。
月と同じ様な質量だ、当然海に満ち引きが出来て海水の摩擦も公転のブレーキとなっている。奇跡の星になる理由があった。
タナウスの科学は途轍もなく進んでいた。
タナウスでもこの星と同じ様に淘汰と繁栄が繰り返され、飽和した時にそれが起こった。タナウスの民は、地球の様に戦争を繰り返して星を汚染している最中にそれが起こっていた。
進化だ。
※進化とは生物が環境に適した変化を遂げる事。高次の存在になる事を言わない。
人間であれば46本の染色体を持つ。
タナウスの人型の民は46本の対となる染色体を持っていた。
戦争の最中、突然遺伝子が花開いてしまった。突然変異だ。
染色体の中には生物情報となる遺伝子情報がそこにある。
47本の者が稀に現れた、荒々しく成熟も早く今までの2/3の周期で子を産む種族だ。染色体が対じゃ無かったから助かった。不安定な進化途上の変異種でその80%以上が死産だった。
各地で異変が報告されその原因が解明された頃、星のほぼ1/3の人間の染色体が突然48本に現在進行形で進化した。
これは大変な事だった、種の持つ運動能力と激高性が上がり犬歯が異常に発達して爪が鋭利化する者が出て来たのだ。
朝起きて体の異変に気が付き、性格がトゲトゲしく荒くなっていく、約3か月後には変態し違う生物の成体になっていく進化。生まれる子供も染色体が48本。
高磁力、高放射線、地軸の周期変化による環境の激変。現実の悲惨な戦争が精神に、肉体に、記憶に刷り込まれた結果大きく変異した。100万年単位では地軸も変化し放射線量も変わる。
染色体48本の者は狡猾さと激高する危うさと興奮時は肉体に頼り、有利な飛び道具を捨てる程も高揚する種族に変わった。牙と爪に頼るように変わった。環境に適応して進化した。
本能に支配されやすい人種VS先の人種の戦いとなった。
その歴史はあたかもゾンビ対人間を風刺する様な歴史だった。人間だった者が突然人を襲いだすモンスターに変異する歴史。
敵対した何十万年の後、46本の染色体の種族に44本の染色体を持つ者が突然現れた。46本の人間の半数が44本に突然進化した。
突然現れると、それが普通の様に44本の染色体を持つ人種として何カ月後には人格も作り変えられていく、46本の染色体を持つ者からも生まれる子供は皆44本で生まれてくるのだ。46本の人種は敵対するまでもなかった。人間より本能がなお薄く論理思考の協調型人類だった。
それがコボルさんの遠いご先祖の進化種、始祖世代だ。
サルから類人猿に、類人猿から原人に、原人から人間に変わるように劇的に進化したのだ。
種の意思とは関係なしに、46本の人間から48本の凶暴な牙や爪を持つ人間に進化した後で、それと敵対またはそれを否定するかのごとく種は46本から44本の染色体の人間を生み出しそれが当たり前になって行った。
神のゆりかごを安定させるには、どちらの種が安定するのか星の意思でコントロールされてるみたいだと俺は思った。
タナウスの歴史を学ぶとあっちの世界や、この星の世界の行く末が分かっちゃう。100万年あるとそうなるんだよ。
44本の優秀な染色体の者は論理と科学で他を駆逐した。存在を論理に問う本当の意味での知的生命体だった。
46本の人間から見たら羨ましいよ。
出来る事なら激動無しでそこまで行きたいよ。
逆に激動無くしては行けないんだけど・・・
まぁ、色々と教えてもらった。
とんでも歴史を見せられて唖然としたが、妙に腑に落ちる。毎日変わらぬように見える自然の営みが積み重なってゆっくり、ゆっくりと移り変わっていくのが良く分かった。
俺は栄えたタナウスの先史文明を継いだけど、何もすることは無いと思った。栄えて滅びるのをサルの時代から見せられているのだ。
神のゆりかごを俺の100年程の人生でどうにかするなんてのは奢りでしかない。コボルさんも足掻いて亡くなっただけだ。
俺は確かに受け継いだ。
それはタナウスの民の歴史を知る者が現れただけだ。
誰にも受け継がれず、知られず眠り続けるよりマシだ。
俺の結論はそうだった。
この世の人間にそういうのは任せる。
視たくないはた迷惑な激変は俺が狩る。それでいい。
それでいいんだよ。種を育む宇宙が無くなりそうな時にバランスを取る神様がこの世界にはいるんだから。
・・・・
そういえば、興味深い事も知ったんだよ。
アルベルトの体は魔力特化も身体特化も因子的に偏ってないらしい。魔力循環障害を起こしていた事や、それを神様が治した時にニュートラルに戻ったのかも?と話すとそのままコアに納得された。もう概念の存在を普通に認めてた(笑)
それをコアに聞いて、導師に言われた事を思い出した。
恩寵を導師に付与した時すぐに導師から儂とリード卿はタイプが違うから魔法の恩寵はリードを弱くすると言われたのだ。
元々の魔力量が少ない者は身体特化型で、魔力量が多い者は魔法特化型。そういうサルに与えられた因子を知らない導師が研究か伝承か経験かそれを知っていた。
魔力量が少ない身体特化型が魔力消費が激しい魔法を覚えたり使ったりした場合は体のバランスが狂って弱くなると言われたのだ。
逆に魔力量が多い者が魔力消費が少ない行動を取れば、魔素の取り込みが少なくなり、これもバランスが崩れて弱くなると聞いた。
多分弱くなると言うのは体の変調によって本来の長所が出なくなるんじゃないかとその時は納得したのだ。
進化の過程で因子が混ぜ合わさったサルの系譜。
生まれ出た者はどちらかの形質を受け継ぎ、またはアルベルトみたいなバランス型となって遺伝?と思った。少なくても人の継承遺伝はメンデルの法則の筈だ。
師匠と導師はその最たる者だ。
師匠は戦争で武を讃えられる英雄の傭兵。
導師は宮廷魔術士の中で特筆する技量の魔導師。
共に因子を大きく開花させた個人なのだろうと思う。
二人ってこの世の因子的にMAXレベルかもしんない。
レンツ様は導師より才能上らしいから家系かも?
この星にあの二人が群れを作って闊歩してたら俺も生きるのが辛いと思う。勝てそうにないわ(笑)
また一段落したら二人を調べてもらおう。
ハッ!と気がつくとニウに話しかけられる。
(タイム)・・・12時03分。半日浮いた!
「思考論理の計測とアル様の記憶から、元の世界の文明レベルや概念の世界の理についての観測が終わりました。今コアが行動や言動の予測演算をしております」
「予測して何か防いだりするの?」
「いえ、今後アル様が興味を持ちそうなものについての解り易い説明。危機回避の論理に基づくアル様の納得出来る行動提案をその時に備えてコアがまとめています」
「すごいねぇ!」
「我らは宙航船として危険要因の潜在確率を示して危機回避及び安全マージンを予測し主様に提示する者です。存分にお使い下さい」
「うんとねぇ、トウモロコシとか小麦とか陸稲とかもう直ぐ、あと1~2か月したら種を蒔くんだけど、そういうのの研究って進んでる?」
「コボル様が居た頃までしかやっておりませんが何か?」
「これを調べて、実の糖度が上がって収穫が上がるように出来ないかな?」
「これ以外にもこの国の実や種持ってきたら無害で美味しく虫にやられない沢山実る植物作れないかな?」
「あっちの世の様にすればよろしいのですね。予測しながら遺伝子の設計図を変化させるだけです」
「まずねぇ、ここにある陸稲や小豆や豆、芋、トウモロコシの組成を調べて有機物で合成は出来る?ダンジョンドロップみたいに」
「組成が分かれば簡単です。そのまま同じ分子構造で作れます」
「それは味や形だけが一緒で発芽しないんだよね?」
「はい、本物と同じですが発芽はしません」
生命は科学で作れないって事か・・・地球でも生体細胞からの培養や株分けは出来ても細胞本体は直接作れなかったもんな。
「そんじゃ、組成を調べて量産できるようにしてくれる?」
「かしこまりました」
「量産可能になったら次は進化させて良い種にしてくれるかな?当然人間に無害な奴作ってね。お願いね」
「かしこまりました、量産は明日にでも、進化の件は1か月程下さい、組み換え後に発芽実験が必要になります」
「充分!ありがとう。発芽実験は協力出来るよ」
「アル様がお手すきならご協力ください」
「ニウ一人じゃ、これから仕事多いかなぁ?」
「何でしょう?」
「ニウってさぁ、もしかして何人も一緒に行動できる?」
「仰る意味がわかりませんが・・・」
「うんとねぇ、ニウって10人位普通に出てこれるよね?」
「はい、当然でございます」
「僕の記憶で執事って居たよね?」
「はい、観測しております」
「また今度でいいから一人執事になって付いて来てくんない?あそこまで固い執事は無しで、堅い執事の仕事を覚えてくれるかな?僕の実家で実習して執事の行動や対応や主人との仕事を覚えるのに何日必要?」
「承知いたしました。このままでよろしいですか」
「僕の記憶の26歳ぐらいの男性になってくれる?」
見る間に俺の思い浮かべる感じの執事になってしまう。
「そんな感じで、仕事を覚えてもらうね」
「仕事分野の観測なら2時間程で終わります」
「あ!それは。うーん、観測かぁ・・・」
「分った!連れて来る」
しょうがねぇな、あの完璧超人の仕事は惜し過ぎる。
「女の人にもなれるよね?」
「この様な感じでしょうか?」女の人になった。
「そうそう!」
毒を食らわば皿までだ、ジャネットの仕事ももらう。
「うんとねぇ、2人目はコアがなれないのかな?」
「え?」
「コアが予測してニウが実行するんだよね?」
「・・・」
「コアが予測してコアがやってもいいんじゃない?」
「・・・」
「男性も女性もニウになっちゃうじゃん(笑)」
「・・・検討結果は可能です」
「そんじゃニウは執事に、コアはメイド長になって」
煙が集まり25歳程の女性になった。
「コア!よろしく!会えて嬉しいよ」
「アル様よろしくお願いいたします」
「ニウもコアが動かしてるの?」
「ニウはコアの予測を元に実行する自立する者です」
「そっか、別々の命令系統じゃ無いんだね?」
「・・・」
「・・・」
「検討の結果、コアの予測演算回路のバックアップがそのままニウの予測演算回路に分離いたしました」
「別になっちゃったの?」
「入力情報は一緒ですが、別々の予測演算回路が動かします」
「そんじゃこれからニウとコアと一緒だね」
家族が王都で居ない時にロスレーン家を回させてもいい(笑) ハイスペック執事とメイド長の仕事を頂く。
俺の将来の屋敷の執事とメイド長は決まった。
お固い執事にアル様!と
こないだすごい剣幕で説教されたメイド長の完璧な仕事だけなら絶対欲しい。
腕輪と言い・・・
タナウスの超先史文明を継ぐ者は使い方が変だった。
その結果。
アルの根本的な論理思考形態を持ち、この世の常識的な要因を元に予測演算でアルの考えを先回りして行動するミスタースポックの様な執事とメイド長が誕生する。
次回 192話 赤いWマーク
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この物語を読みに来てくれてありがとうございます。
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