第190話 集合体ニウ
4月21日。
気合を入れて神殿に飛んだ翌日。
朝から高笑いの原始人に叩きのめされクランに走る。
いつもと変わらず教室に来たアルを見てキャプターが笑う。
「来られたんですね」
「うん、用事も片付いたしね」
「それは結構」本当に何も無くて結構だよ。
気分が乗って朝っぽいラジオ体操第一をチョレスで弾いてしまった。朝っぽいの俺だけだ!
イントロまではテンポ良いのに遅せぇー!弾いて気がついた。なんだこの遅さは(笑) 体操担当いないとダメだ。遅くてやってらんねーので途中から投げ
聞いたことないロックなラジオ体操第一を聞かされて「???」と寮から皆が出て来るので触れずに流す。
最近は生徒が増えても4つの教室に割り振るので2~3人しか増えない。俺の書き取りも進む。慣れ親しむと記号の様に覚えていた字のバランスが分かる様になって記号が文字になってきた。例えると外人の書道だ(笑)
俺自身が汚い字になる意味が解った事が大きい。地球生まれの俺には覚えて読み書き出来たら良いだけの記号だったのだ。
読み書きを教える教室で字を練習してる俺。
平民と貧民の子供と俺が並んで貴族にあるまじき姿だ。
でも頑張る。
ハウスに帰ってもさもさの
食後の8時前に二人とエルフ村に跳ぶ。クルムさんの友人の薬師さんの家だ。
「おはようございますー」扉をノックする。
ドアを開けて出てきたイケメンお兄ちゃんが驚く。
「おぉ!御子様。おーい!御子様が見えたぞー!」
間違いなくおっさんだわ。
「はいはい、おはようございます。おはようございます」
エルフの家族に集られる向こうにクルムさんがいた。
「クルムさーん!どんな感じ?」
「今日一日で終わりそうよ」
「頑張ったねぇ、3日で本当に教えちゃうんだ(笑)」
「他の薬師も居るからね、皆で写して作ればすぐよ」
「それがいいね、残るしね!」
「代々伝えていくのに、後は皆が本にするわ」
「それがいいね(笑)」
「クルムさん、今日は何時頃迎えに来ようか?」
「17時頃お願いできる?」
「わかった、二人置いて行くね」
二人がエー!という顔をする。
「
「こないだ帰ったよ!」半年前だ。家が嫌いなのか?
シズクも不満顔って、なんだその顔は!不良少女か!家に帰れ!ちとマテ!アレは家なのか?アレの精霊だから自分に帰れとシズクに訳が分からない事を俺は言ってるのか?
訳が分からなくなって違う方向から攻めた。
「はい、シズクの。大きいのに会わせてやれ」鉢を渡す。
大きいのと小さいのが会って嬉しいのかどうか知らないが、まぁシズクが可愛がるから大きいのも喜ぶだろう。
・・・・
そのままコボルさんの部屋に跳ぶ。
「ニウー。いる?」
(はい、いらっしゃいませ。アル様)
フワーッと急に現れるニウ。
「思考を測るって13時間って言ったけど8時間と5時間に分ける事って出来る?」
「出来ます」
「そんじゃ、そうしてくれる?」
「はい、分かりました、こちらまでどうぞ」
コールドスリープの箱みたいなのに案内される。
「これって休眠装置じゃないの?」
「兼ねております、本来は測定よりもコボル様が休眠間の観測情報を投影して議論しておりましたので、その様な用途に使います」
「起きたら1万年後とか嫌だよ(笑) 8時間で起こしてよ」
「はい、本日の16時46分まででよろしいですね?」
「うん、お願いね!ニウ」8時間ピッタリの時間だった。
「それではお入りください」
普通宇宙船のコールドスリープって縦じゃねぇのか?横だと棺桶みたいだよ。
パカッと空いた棺桶に滑り込むと蓋が締まった。
箱に入ってしばらくすると交感会話状態になった。あの40分が2分とかの時間間隔だ。交感会話だけじゃなく情報投影と言っていたけど宇宙船の図面まで頭に広がる。ニウが俺を観測するのと双方向で母船の膨大な情報が流れ込む。
寝てるけど起きてる状態と言おうか。
勝手にどんどん情報が流れ込んで来る。
船の全長から区画、実験装置、動力形態。
ダンジョンの目的やモンスターの配置。意図された意味。
ミッチス情報もあった。
そしてニウの正体。
ニウは1nm(ナノメートル)0.000001mm。人のDNAの1/100の大きさのナノ
簡単に言うと原子の大きさの約10倍だ。
いろんな原子が集まって分子となって、分子の多数連なる結合体を高分子結合体と言って共有結合しているのは中学理科か高校の初等でやるよな?その高分子集合体がニウなんだよ。
簡単に言うとそうなる。
成人の細胞数が約40兆に対して、ニウは同じ体積で4京個のバイオロボットの集合体だ。(兆の上の単位)そういう数で言えば腸内細菌は100兆個と言われている。比較になるか分かんない(笑)
0.001mm~0.002mmと言われる人の一番小さな細胞換算としてニウの実体化のナノマシン集合体はそうなると言うだけだ。
魔力線で見えるのが魔力の信号通信で絶えず通信する一個一個のナノマシンだ、エネルギーは簡単に補給できる物を使ってるだけ。タナウスの標準エネルギーも直接魔素の補給もする。
魔力線しか見えないのは集合してないから。ウイルスの1/20の大きさだ、人に媒介するウィルスの感染。ウイルスの種類によって排出のピークでは50,000個から100,000個の単位で空気に排出されて媒介感染する。
細菌が空気感染しても人間には何も見えず何も分からない。それ程小さい物の1/20の大きさのナノマシンだ。何万個漂っても誰にも見えない。
ナノマシンが密度を増した時だけ実体のニウになる。
俺にしたらソレ概念と一緒だよ。
4京視える訳ねぇ!ナノマシンは命令聞くだけ。意思も魂も持たねぇよ!(笑)
まぁ、そんな感じで色んな事を教えてもらう。
その中で母船のコアが予測した魔素具現化因子による魔素の具現化現象に過去と現在の
本来の魔法と言うべきものを使いこなしていないと言う。
俺あんなに魔法使えるのに、間違ってると言われる。頭の中で母船のコアと睡眠討論会になっている。
突き詰めていくとニウとコアが観測していた昔の人間型と今の人間型の魔法の使い方が違ってる様だ。聞いていたら精霊魔法系?だけどなんか違う。呪文も無いなら俺と同じだけど・・・もしそうなら俺と同じで自由自在に使ってた訳だと納得はした。
俺の生まれてから死ぬまでの20年間の明の記憶や創世の神々との邂逅、コルアーノに転生してからの俺の記憶を
同時に今の魔法の使用状況やステータスボードの現状の使用法まで検証していく。
フッと引き戻された。
目の前にニウがいる。
「アル様16時46分になります」
「思考論理とか測れた?教えてもらってばっかりだった」
「はい、まだ70%程の測定ですが、感情抑制理論型と行動原理比較追求型の思考パターンが見られます」
「良いのか悪いのか分かんない(笑)」
「思考バランス型に分類されます」
「ふーん」わかんない。
「とりあえずまた明日来ます」
「お待ちしております」
・・・・
エルフ村に跳んで3人を連れてきた。
アルムさんはすぐにシズクと山菜サラダを作り始めた。視ると二人で一日採取してたみたい(そんなに家は嫌か?)春は山菜多いよな。クルムさんがリビングに報告に来た。
「アル、ハイエルフの秘薬は村の薬師に伝授したわよ、シロップはアルがくれた奴を今度の部族会議の祭りで振舞うって。今回世界樹の若葉でうちの分も三樽漬けたからね、来年から自家製が出来るわ」
「うん!ご苦労様!ありがとう」
言いながら・・・
クルムさんのマジックバッグから出るわ出るわのお土産の山。
エルフの郷土料理を沢山作って持たせてくれたそうだ。もち麦と木の実を混ぜて揚げたカリカリの膨らんだ揚げ餅?見た目は豆腐ステーキ。視たら御子様へのお供えとクルムさんが言われている、生き仏にされている。
食事を終えて、お茶で一服しているとお客が来た。
「アル君。クランのルミナスさんが来たわよ」
「え?何だろ?」
ルミナスさんに入って貰おうとしたら至急と言う。
玄関口まで出て応対する。
「なんかありました?」
「アル様、大山脈での狩り予定の教官とPTが19時半でも帰って来ないのでリナスさんがアル様に連絡をと参りました」
(タイム)・・・今、19時52分。暗くなって2時間か。
「教官は誰かな?」
「リネとマルスです」
子ぎつねか!固いあいつらが17時に上がらない自体がおかしい。
すぐに顔は動かさずに大山脈を視界に入れた。
子ぎつねとオーガを視界に入れた刹那、オーガが止まった。
ルミナスさんと問答してる間にシズクが子ぎつねを追うオーガ二匹を吊るした。
(シズクとアルムさんとクルムさんは三人でPTの救出。俺が近くまで連れて行く、後はクランまで帰って来い)
「ルミナスさん、ご苦労だけど捜索隊の心配は要らない。夜の大山脈は二重遭難で危ない、今から俺のPTが捜索に行く。そのまま関係者だけクランハウスで待つように。ルミナスさんはリナスに報告後家に帰るように」
「はい、分かりました」
ルミナスさんはクランに走って帰った。
(子ぎつねとオーガは俺が行く)
(はい)
「アルムさん、クルムさん。PT救出に行くよ」
四人で手を繋いでPTの近くに跳んだ。もう真っ暗の山中だ、PTも岩陰に隠れて動かない。
「そんじゃクランまで連れて帰ってね、シズクが何処に隠れているか知ってるから。綺麗なお姉さん達が来てくれたら喜ぶと思うよ(笑)」
「分ったわ(笑)」クルムさんが精霊魔法のライトボールを無詠唱で出す。大山脈の二合目だ。ここまで
そのまま、子ぎつねとオーガの間に転移した。
吊るされてるのを冷やして首とスネ切って穴掘った。
「おーい!子ぎつね!もう大丈夫だ。出て来ーい!」
(アルの方が年下だが、油断すると二十三歳の明が出る)
逃げるの必死で熊笹のガザー、ズザズザーという音で聞こえてない。ライトボールをひょーいひょーいと照明弾の様に子ぎつねたちの前方に上げる・・・止まった止まった(笑)
「おーい!もう逃げなくていいぞー!」
「オーガはやっつけたぞー!(笑)」
200m以上先でガサガサいう。吊ってからわずかな時間で、この山岳地帯の急斜面をあんな遠くまで逃げてた。(視た時は30~40m差で追われていた)逃走経路の途中に渡った崖、60度以上あるんじゃねぇのか、オーガだって足滑らしたらタダじゃ済まねぇぞ。
コレ逃げ切ったかもしんねぇな(笑)
急斜面から引き返して少しはマシな斜面に生える熊笹をかき分けてリネとマルスが出て来る。
「二人共無事だったか?(笑)」
俺の顔見てホッ!としてるよ。よかったなぁ。
「鉄級のひよっこPTは逃げ切ったぞ!」
「ホントですか!」姉が聞く。
「うちのPTが見つけた、もうクランに向かってるよ」
「姉ちゃん!やったなー!」マルスが喜ぶ。
「うん!(笑)」リネも笑う。
「お前らよくやった!5位じゃとても敵わねぇ相手だ」
指を差して後ろに吊るした2.6mのオーガ二匹を見せる。
吊られて血抜きされてるオーガ見て目が点だ。
「オーガと
「腰のベルト見な、大熊や剣虎の牙で装飾されてるぞ、全部この樫の棍棒一つで狩ってるな」
剣でコンコン叩く恐ろしく太い樫の棍棒が血を吸って赤黒い。
「剣で受けた瞬間叩き折られて潰されるな。お前らがこいつら連れて逃げなきゃPT全員死んでたな(笑)」
「・・・」
「よくやった!」
「お前ら二人臨時ボーナスだ!今から二体の
周りの木にライトの魔法を煌々と灯して実習した。
精霊魔法で冷やしながら血抜きを行ってる1時間。その間二人の武術の研修をしてやった。包む用の葉を見つけてスーパーの食肉コーナーの様に綺麗に包むのを見せてやる。
吊るしたオーガの魔石から角から皮から肉から解体して3人で背負って大山脈を降りてきた。ギルドの買取とポイントは二人のボーナスだ。
買取カウンターに素材を置いたのは23時だった。2人のポイントにしろと言って、先に無事を伝えて来るとクランに急ぐ。
買い取り額の高さに目を剥くがいいわ!(笑)
23時過ぎに帰るとクランハウスにうちの3人とキツネ夫婦と逃がしてもらったPTがソワソワ待っていた。
「アル様!」「マスター!」呼び方が増えてる。
「二人は無事。ギルドで買取して帰って来るよ」
夫婦はホッとしてる。
「お前たちの娘と息子は最善の選択をした。あの選択が無ければ全滅してただろう。よくあの二人を育てたな。冒険者はああじゃないとダメだな(笑)」
「・・・」皆はオーガの
「凄ぇ斜面を逃げ回ってたぞ、きつね獣人はやるなぁ?(笑)」
夫婦がすごく喜んで照れる。
「PTは二人の教官に命を救ってもらったな?よく礼を言っておけよ!分かったな?」
「はい!」
オーガ見てションするぐらいちびってるわ(笑)
「お父ちゃんお母ちゃんは風呂用意してやれ。褒めてやれよ!」
きつね夫婦がウンウン頷く。
「リナスは良い判断だった!事務の四人に褒美をやる。あ!小さいのがいるな。五人に褒美をやる」
新婚のルミナスは帰ったが四人がまだいた。
「そんじゃ皆、解散!」
・・・・
よく考えたらオーガ二匹は凄いよなぁと思った。あいつら棒給より遥かに稼ぎやがった(笑)
なんて思いながら寝る前に応接で書いていた。
パンケーキの店、ミッチス。
パンケーキセット無料券。一回限り有効。
(※店員はこの券と引き換えにセットを出す事)
ざら紙に俺のサインを魔術刻印する。
魔力を通すと浮き上がるサインだ。
※パンケーキセット
・パンケーキorバニー焼き
・メイプルシロップ
・ヨーグルトドリンク。
・アイスクリーム。
・食後のラズベリーティーorペパーミントティー。
大銅貨三枚(3000円)の大人気セットだ。
ミッチスはおめかしして行く、デートスポットになっている。(超ハイカラなお店なの)
曜日開けに一人二枚を事務員に渡す。
デートの相手はルミナス以外は居るのか知らん。
いなけりゃお母さんと行け。
結構・・・ふふっ。
綺麗な字で書けたので、使われたら回収する。
次回 191話 超先史文明の使い方
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